宇宙世紀に転生し、自分から強化手術を望んだ異常TS少女の話   作:Xn

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第二十一話:血塗れのグリプス

始まってしまった戦闘は、宇宙世紀の歴史においても類を見ない、四つの勢力が入り乱れる大混戦の様相を呈している。

グリプス2という巨大な構造物を中心に、シロッコ派のティターンズ、エゥーゴ、アクシズ、そしてリリア派の艦隊とMSが、それぞれの存亡と野望を賭けて激しく衝突する。

 

各勢力の艦隊が、互いにその生存圏を賭けて熾烈な砲撃戦を繰り広げる。

無数のビームが交錯し、ミサイルが宇宙を走り、弾の当たりどころが悪かった艦艇は断末魔代わりに閃光を放って爆散していく。

MSの破片や、大破した艦艇の残骸がデブリとなって戦場に散り、レーダーをさらに狂わせる。

 

それでもなお、各艦隊は陣形を維持し、あるいは大胆な機動で敵の側面を突こうと、死力を尽くして戦い続けていた。

 

リリア自身も、勢力の立て直しのために一時的に自派艦隊に戻っていた。

 

リリア派旗艦「エーオース」のブリッジは、絶え間ない爆発の閃光と衝撃で激しく揺れている。

レーダーやセンサーが捉える無数の光点が明滅し、オペレーターたちの怒号にも似た報告が飛び交う。

 

「敵シロッコ派、アレキサンドリア級より艦首メガ粒子砲の照準及び多数のミサイル接近! 本艦右舷、距離8000!ミサイルは着弾まで15秒!」

オペレーターの絶叫に近い報告。

 

艦長が怒鳴り返す。

「取り舵一杯! 最大戦速で艦首も下げろ! 全対空砲火、ミサイル迎撃に集中!

主砲及び副砲、どれでもなまじ狙わず撃つ準備を! 回避後、直ちに反撃だ!」

 

エーオースは巨大な艦体を傾け、艦首を下げながら急加速。メガ粒子砲の直撃は辛うじて回避したが、迎撃しきれなかった数発のミサイルが右舷装甲に命中し、艦橋を激しく揺るがす。

 

「右舷第二装甲ブロック大破! 火災発生! 消火急げ!」

 

「サラミス改級巡洋艦『フェンリル』『スレイプニル』、前へ!

旗艦の盾となれ! 主砲、敵のブリッジを狙え!

陽動だ、MS隊は隙を突いて砲門を黙らせろ!」

 

艦長の冷静な指示が、混乱するブリッジに響き渡る。

 

フェンリルとスレイプニルは、エーオースを庇うように艦体を晒し、艦首メガ粒子砲と多数のミサイルで敵のアレキサンドリア級に応戦する。

 

敵もまた、その巨体からメガ粒子砲を乱射し、フェンリルに直撃、艦体に深刻なダメージを与える。

 

スレイプニルは、その砲撃を巧みに回避しつつ、その側面へ向けて集中砲火を浴びせる。

その隙を突いて、リリア派のマラサイ部隊が敵の対空砲座を次々と破壊していく。

たまらず敵アレキサンドリア級は煙を吹き上げ、徐々に戦線を後退し始めた。

 

ミノフスキー粒子が濃密に散布された戦場では、広範囲な艦隊の統制は困難を極める。

しかし、リリアはアストライアーのコックピットから、事前に共有された作戦計画と、得られるリアルタイムの戦術情報を元に、旗艦エーオース及び麾下のMS部隊に対して、短距離レーザー通信や光信号、あるいは僚機を経由したデータリンクといった限られた手段で、的確に方針を出し続けていた。

 

エーオースの艦長も、リリアの目的を即座に解釈し、自艦そして艦隊を巧みに指揮する。

 

リリア派の艦隊は、数では劣るものの、その統率された動きで、シロッコ派の物量に立ち向かっていた。

 

彼らの艦隊は、密集陣形を基本としつつも、状況に応じて柔軟に陣形を変え、敵艦隊の弱点を的確に突く。

時には、数隻のサラミス改級巡洋艦が囮となって敵の注意を引き付け、その隙に主力とMS部隊が集中砲火を浴びせるという、大胆な戦術も展開していた。

 

 

 

その頃、戦場の中央部では、シロッコ派旗艦ジュピトリスがその圧倒的な巨体で戦場の一角を支配していた。

 

ジュピトリスの周囲には、シロッコ派のアレキサンドリア級やマゼラン改級戦艦が鉄壁の護衛艦隊を形成し、ジュピトリスへの接近を試みるエゥーゴやアクシズの艦を容赦なく迎撃する。

 

エゥーゴ艦隊旗艦アーガマは、シロッコ派のメガ粒子砲の射線を巧みに回避しつつメガ粒子砲で反撃。

その一撃は、シロッコ派のマゼラン改級戦艦のブリッジを直撃し、轟沈させる。

 

ラーディッシュとアイリッシュ級巡洋艦数隻からなるエゥーゴの別働隊は、アーガマと連携し、巧みなフォーメーションでシロッコ派艦隊の側面を突こうとする。

アイリッシュ級の一隻が、シロッコ派のアレキサンドリア級の集中砲火を浴びて大破。炎上しながら戦線を離脱していく。

ラーディッシュは、単艦でシロッコ派のサラミス改級巡洋艦二隻を相手に奮戦。一隻を撃沈するも、もう一隻の特攻に近い突撃を受け、艦体に大きな損傷を負う。

 

そして、この大混戦に、まるで死神のように割って入るのがアクシズ艦隊だった。

 

グワダン級大型戦艦を旗艦とし、その左右にはグワンバン級戦艦が陣形を組み、後方からは多数のエンドラ級巡洋艦が支援砲撃を行う。

 

彼らは、ティターンズとエゥーゴの潰し合いを狙い、戦況を見極めながら、シロッコ派を最優先にしつつも、効果的なタイミングで両軍に無差別な攻撃を加えていた。

 

グワダンの主砲が火を噴き、その極太のビームはシロッコ派のサラミス改級巡洋艦を貫き、轟沈させる。

 

その火力は、戦場にいる全ての者たちに恐怖を与えた。アクシズのMS部隊も戦場を攪乱し、ティターンズ、エゥーゴ双方のMS部隊に大きな損害を与えていく。

 

 

 

リリア派の艦隊も、この三つ巴、いや四つ巴の激戦に加わりつつある。

エーオースは、シロッコ派のアレキサンドリア級との激しい砲撃戦を制し、さきほどついに撃沈に追い込んだものの、自らも少なからぬ損害を被っていた。

 

エーオースから少し離れて警戒を行っていたサラミス改級巡洋艦が、シロッコ派からの長距離砲撃を運悪く受け、一瞬にして閃光の中に消える。

 

「僚艦、轟沈! 生存者の確認、急げ!」

 

「右舷よりエゥーゴのネモ部隊接近!」

 

「後方、シロッコ派のバーザム部隊が回り込んできます! 」

 

ブリッジは怒号と警告音で満たされ、一瞬たりとも気の抜けない状況が続く。

 

リリアは、アストライアーのコックピットから、冷静に方針を指示する。

 

アストライアーのコックピットで、リリアは爆発を網膜に焼き付けながら、自らの心を鋼鉄の檻に閉じ込めた。

 

(また、失われていった……。私の判断が、彼らを死地に追いやった……)

 

度重なる戦闘による精神の摩耗か、彼女の心は悲しみに鈍感になりつつありはした。

しかし、心の奥底で、冷たい痛みが疼き続けるのも、確かに感じていた。

 

(感傷に浸っている暇はない。この犠牲に、勝利という結果で報いる。

それが、指揮官である私の、唯一の贖罪……!)

 

彼女は、その痛みを強引に思考の奥底に押し込め、冷徹な計算へと切り替えた。

 

戦況はリリア派にとって不利に傾きつつある。シロッコ派の物量はやはり優勢で、巧みな艦隊運用によってリリア派は徐々に包囲されつつあった。

特に、マゼラン改級戦艦「アルゴス」を中心とする一隊は、その弾幕でリリア派の進路を完全に塞いでいる。

 

「このままではジリ貧です。どこかで一点をこじ開けなければ……!」

 

リリアは、判断を下す。

 

「ボルク少佐、聞こえますか」

 

通信回線を開き、直掩部隊の一角を担っていたベテランパイロットが率いるマラサイ部隊に指示を出す。

 

「……おう、聞こえてるぜ、リリア『閣下』」

 

「今から貴官の部隊には、座標X-57の宙域へ最大戦速で突入し、敵シロッコ派のマゼラン改級戦艦アルゴスを中心とする艦隊とその直掩の注意を引きつけてもらいます。

貴隊の任務は、5分間、アルゴスとその護衛部隊の攻撃を一身に受けることです」

 

ノイズの濃い通信の向こうから、ボルクが息をのむ気配が伝わる。それは、生還は望み薄な、捨て駒としての任務だった。

 

「……へっ、そいつは俺たちに死ねと言っているのと同じじゃねえか、大尉」

 

ボルクの掠れた声が返ってくる。

 

「……その通りです。

私のコンピュータによる予測では、貴隊の生還率は12%。しかし、貴隊が5分間耐えることで、敵艦隊の側面に巨大な綻びが生まれる。

その一点を、別働隊が突破し、『アルゴス』艦隊を無力化できる確率は85%まで上昇します。この作戦の成否は、あなたの部隊にかかっています」

 

ただ、冷たい事実だけが告げられる。

 

(ごめんなさい、ボルク少佐。あなたたちを見捨てる方法しか、私には浮かばないのです……)

 

彼女の内心の嘆きは、誰にも届かない。

通信の向こうで、ボルクはしばらく沈黙していたが、やがて、覚悟を決めたように、低く、しかし力強い声で答えた。

 

「ちっ、分かったよ。閣下がそこまで言うなら、やろう。

俺は軍人だ。

あん時の迷惑料もずいぶん高くつくもんだ。だが、これで俺の貸しのほうが大きくなる。地獄で高くつくと思えよ!

お前ら行くぞ! リリア閣下のために派手に散ってやろうぜ!」

 

「生き残るための行動を意識してくださいね!」

 

「おうよ!」

 

気休めは流され、通信が切れる。リリアは、唇を強く噛み締めた。口の中に、鉄の味が広がる。

戦争を指揮するということは、人に死ねと命じることなのだ。

その重みが、彼女の肩にあらためてのしかかる。

 

ボルク隊のマラサイが、死地へと向かって加速していく光跡を、彼女はモニター越しに、ただ見つめることしかできなかった。

 

「サラミス改『シンドリ』はネモ部隊の動きを牽制!

エーオースは、アクシズ艦隊との距離を保ちつつ、グリプス2へ向かう部隊の支援を!」

 

リリアは、続いて指示を出す。

 

(多くの兵士たちがまた星になる。

これ以上、無益な犠牲を出すわけにはいかない。 この戦いを終わらせるために、私は……!)

 

彼女は葛藤を意志の力でねじ伏せ、思考をクリアに保とうと必死だった。

 

そして、外部甲板で急ぎの補給を終えると、戦場の中心へと再びアストライアーを向ける。

 

コロニーレーザーを止めねばならない。

 

 

 

そして、戦闘をしつつグリプス2へ向かっている最中、ついに、リリアは強烈なプレッシャーと共に急速に接近してくる機影を捉えた。

巨大なMS――パプテマス・シロッコの専用機、ジ・O(ジオ)だった。

その機体から放たれる威圧感は、他のどのMSとも比較にならないほど強大で、リリアの背筋を凍らせる。

 

「リリア、ここに居たか!」

 

周囲のシロッコ派MS、特に練度の高いパイロットが駆るガブスレイや、多数のマラサイやバーザムの部隊が、ジ・Oに呼応するようにアストライアーへの包囲網を狭め、リリア配下の機体と戦闘を始める。

 

「シロッコ大尉……いえ、パプテマス・シロッコ。

あなたの野望こそが、この地球圏にさらなる混乱と戦乱をもたらす元凶です! 私が、あなたを止める!」

 

リリアは、アストライアーの全スラスターを噴射させ、ジ・Oへと真っ向から突撃する。

碧き翼と濃黄の巨体が、グリプス2を背景に、死闘を開始した。

 

アストライアーのビーム・ライフルがジ・Oのコクピットを狙うが、シロッコはジ・Oの巨体からは想像もつかないほどの俊敏な動きでそれを回避。

大型ビームライフルを連射し、アストライアーの回避コースを限定する。その弾幕は、リリア派の護衛MS、マラサイを巻き込み、爆散させる。

 

「その程度の動きで、このジ・Oを捉えられると思うなよ、小娘!」

 

シロッコの嘲笑が響く。ジ・Oの隠し腕から急に繰り出されるビーム・ソードが、予測不能な軌道でアストライアーに襲い掛かる。

リリアは、強化された反射神経とアストライアーの機動性を駆使し、紙一重でそれをかわし続ける。

 

アストライアーのバインダーに内蔵されたビーム砲で応戦するも、シロッコの巧みな回避の前にはまるでダメージを与えられない。

 

ジ・Oから放たれるプレッシャーは、リリアのバイオセンサーとMSI制御コアを通じて直接脳を刺激し、激しい頭痛を引き起こす。

 

(速い! そして、このプレッシャー……!

彼の思考を読み取ろうとしても、まるで霧に包まれているようだ……!

これが、シロッコの、本物の力!)

 

リリアは、アストライアーの指向性ジャマーを起動し、ジ・Oのセンサーを一時的にでも無力化しようと試みる。

しかし、シロッコはそれをあざ笑うかのように、ジ・Oの対策装置の出力を上げ、ジャミングの影響を最小限に抑え込む。

 

「無駄だ。君のその小賢しい妨害は、私には通用しない。

君の全ては、私の計算の内にあるのだよ」

 

ジ・Oのビーム・ソードが、アストライアーの左バインダーを切り裂き、火花が散る。

機体のバランスが大きく崩れ、リリアは衝撃で操縦桿を握りしめる。

 

(くっ……! やはり、まともにやり合っては……!)

 

センサーの片隅が、シロッコ派の防衛線を突破してくるエゥーゴのMS部隊の接近を捉えていた。だが、今はそれに対処する余裕などない。

 

リリアは、戦場に散らばるデブリや、味方(リリア派)のMSを利用した陽動戦術を展開する。

リリア派のハイザックがジ・Oの周囲を高速で飛び回り、ビーム・ライフルによる牽制攻撃を仕掛ける。

そして、ヒート・ホークをジ・Oの至近に持ってくることに成功するが、直後にジ・Oのビーム・ソードの餌食となり、閃光と共に消え去る。

 

「アストレア大尉! 私はここまでです!」

 

仲間の悲痛な叫びが、リリアの心を抉る。

 

「負けるものか!」

 

リリアは、アストライアーのビーム・ランサーを最大出力で展開し、迎撃しようとしたジ・Oの隠し腕の一本を破壊。

しかし、それも虚しく、反撃のビーム・ソードがアストライアーのビームランサーと右腕を捉え、切断する。

 

「がああああっ!」

 

激しい衝撃と、右腕を失ったかのようなフィードバックされる幻肢痛がリリアを襲う。戦闘能力が低下する。

 

「終わりだ、リリア・アストレア。君のその歪んだ理想も、ここまでだ。」

 

シロッコは、勝利を確信しているかのように述べる。

 

だが、彼女は諦めるわけには行かない。脳裏に、ロザミアの笑顔と、これまでに散っていった仲間たちの顔が浮かんだ。

戦い続ける。それは、強化人間としての力によるものでも、転生者としての知識によるものでもない、リリア自身の、生きる意志、そして世界を変えたいという純粋な願いによるものだった。

 

その意志に呼応するかのように、アストライアーのMSI制御コアが、これまでとは比較にならないほどの高エネルギー反応を示し始めた。

コックピット内の計器類が激しく明滅し、警告音が悲鳴のように鳴り響く。

まるで内側から爆発しそうなほどのエネルギーを溜め込み、リリアにぶつけ、流し込もうとしているようだった。

 

そして、アストライアーに残された武装――右肩部の小型ミサイルポッド――を使う。それはゼロ距離に近い位置からジ・Oに向けて一斉に発射された。

リリアが切り札として独自に装備し温存していたそれの利用は、自爆に近い攻撃だった。

 

「なるほどな」

 

シロッコは一瞬だけ驚愕の表情を浮かべ、すぐ平常にもどる。

ジ・Oはかわしきれなかったミサイルを1発受ける。コックピット内にも衝撃が走り、機体の装甲にダメージがついに入った。

だが、致命傷からは程遠い。

 

「小賢しい真似だな。この程度で私が倒せると思うなよ!」

 

シロッコはなおも戦闘継続の意思を見せる。

 

その時、戦場に新たな嵐が吹き荒れた。

 

エゥーゴのΖガンダム、百式が、このリリアとシロッコの死闘が繰り広げられる宙域へと急速に接近してきたのだ。

 

彼らは、シロッコという最大の脅威を排除すべく、この戦いに介入する。

 

「シロッコッ! お前の好きにはさせない!」

 

カミーユのΖガンダムが、ウェイブライダー形態で突貫してきた。ΖガンダムはそのままMS形態に変形し、ジ・Oに格闘戦を挑む。

 

ビーム・サーベルとジ・Oのビーム・ソードが激しく交錯し、周囲に高熱の粒子をまき散らす。

 

「みすみす貴様を傍観する私と思うなよ」

 

シャアの百式もまた、ビーム・ライフルを構え、ジ・Oと、そしてその周辺に展開するシロッコ派のMS部隊に狙いを定める。

 

その射線上にいたシロッコ派のMSが、一瞬にして光の中に消える。

 

リリアの居る場所も、ティターンズの二つの派閥とエゥーゴ、そして砲撃戦をするアクシズが入り乱れる、四つ巴の地獄絵図と化した。

 

ジ・Oは、Ζガンダムと百式の猛攻を受けながらも、その圧倒的な性能とシロッコの技量で巧みに捌き、反撃の機会を窺う。

損傷したアストライアーを駆るリリアは、この混戦の中で、コロニーレーザーの無力化という最大の目的を達成すべく、最後の力を振り絞る。

 

(この度を越した混乱……! これが、私が望んだ結果なのか……?

いや、今は感傷に浸っている場合ではない! シロッコはまだ生きている! コロニーレーザーも健在だ!)

 

リリアは、百式がシロッコ派のMSを引きつけ、Ζガンダムがジ・Oと激しく交戦している間に、損傷したアストライアーをグリプス2の管制ブロックへと向かわせようとする。

 

「クワトロ大尉! シロッコを頼みます! 私はコロニーレーザーを破壊したい!」

 

リリアは、シャアに向けて短距離通信を送る。

 

「フッ、好きにしろ」

 

エゥーゴも、コロニーレーザーを破壊したいという気持ちは同じだ。

 

この混戦では、下手にコロニーレーザーを奪おうとしても奪いきれないし、仮に奪えても、かつてのバスクの指示によってセキュリティを大幅に強化されたグリプス2のクラッキング・再利用には時間がかかりすぎる。

すぐに別勢力が妨害に来る。

 

つまるところ、壊すしかない。

 

シャアは、リリアの意図を察し、一時的な共闘とも言える形で、シロッコ派のMSの足止めに集中する。

 

彼の百式は、次々と敵機を撃破していく。

 

しかし、シロッコも黙ってリリアの行動を見過ごすわけではなかった。

彼は、ジ・Oの損傷をものともせず、リリアのアストライアーへと再び狙いを定める。

 

「逃がさんぞ、小娘。お前にはまだやってもらう事がある!」

 

ジ・Oのメガ粒子砲がアストライアーを捉えようとするが、その瞬間、戦場に渦巻く死者の思念が、カミーユのニュータイプ能力を刺激していた。

 

「お前のような奴がいるから、戦いは終わらないんだッ!」

 

カミーユの絶叫に呼応し、Ζガンダムが動く。

機体から放たれたオーラは物理的な圧力のようになり、ジ・Oの動きを一瞬鈍らせる。カミーユはジ・Oに猛然と突撃し、シロッコにリリアを狙う暇を与えない。

 

(なんだ、この力は……!? Ζのパイロット、奴の力がこれほどとは……!)

 

シロッコですら、その未知の力に一瞬の動揺を隠せない。

 

シロッコと激しく切り結ぶカミーユのΖガンダム。

その凄まじい戦闘が、結果としてリリアへの道を切り開いた。

 

「カミーユ・ビダン……!?」リリアは驚愕する。

 

カミーユは、傲慢に死を振りまくシロッコという存在そのものが許せなかった。その純粋な怒りが、リリアがつけ込める一瞬の隙を作った。

 

この刹那、リリアはアストライアーをグリプス2の管制ブロックへと急加速。妨害を強引に振り切る。

 

何機かの追撃が来る。しかし、今のリリアとアストライアーの敵ではない。

 

鎧袖一触。

 

 

そして、なんとかコロニーレーザーの制御部に到達。

 

アストライアーの残された左腕で、管制ブロックの外部装甲を強引に引き剥がし、内部の重要回路に向けて、至近距離からビーム・ライフルを連射した。

 

激しい爆発と共に、グリプス2の管制システムは完全に沈黙した。

これで、コロニーレーザーはその脅威の力を失ったことになる。

 

しかし、戦いはまだ終わらない。

 

シロッコはエゥーゴとの戦闘でダメージを負い一時撤退することになったが、それで戦意を失うはすもなく、リリアとエゥーゴへの復讐を誓う。

 

そして、ハマーン率いるアクシズ艦隊もまた、この戦場で疲弊した者たちを刈り取るべく、虎視眈々と機会を窺っているだろう。

 

リリアの運命は、そして地球圏は、この血に染められたグリプス宙域で、どのような結末を迎えるのか。

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