ふかふかダンジョンでエンジョイ&エキサイティング! 作:RAP
アイギス冒険者ギルドの最寄りの酒場の店名が、いつの間にか変わっていた。
中央大陸だけでなく、暗黒大陸の街の全てに店舗があるチェーン店。
料理数も多く、量と値段のコスパが良い上に、新鮮で美味しい。
基本メニューの他に季節限定メニュー、期間限定メニューなど飽きが来ない。
世界の定番から知らない料理まで、その全てが美味しい。
老若男女を問わずで必ず好みの料理があるから毎日でも通いたくなる。
人類生存圏における最大手チェーン店。みんな知っている。
店名が変わったことも、便利になったんだなぁぐらいにしかみんな思わない。
生活も大分便利になった。
女性向けの生理用品は、もはや必需品レベルだ。
広告や宣伝の時点で「生理用品は儲けを度外視して安くしているので、その分下着を買ってくださいね」と積極的に顧客に伝えているので、感謝の気持ちをこめて皆が下着を買っていく。
『革命&新革命』のおかげで街全体が活性化して雇用も増え、流通も増えている。
新築に伴う土地の売買や、引っ越しも積極的になった。
開拓をしすぎるとドラゴンが来るので、植林もおこなっている。
自然を損なうことなく、生活の全てを便利に。
そういったことの、大体全ての裏にセルヨーネ侯爵家が絡んでいる。
セルヨーネ侯爵家は国家相手に経済戦争を仕掛けることができるが、誰も気づいていない。
* * *
開拓城壁都市アイギスの一角、ジャンパーティのパーティハウス。
その寝室に置かれているテーブル座席に座って、アロは落ち込んでいた。
両手を組んで、その上に額を乗せて、涙すら浮かべていた。
ああ、悔しすぎる……。
あまりにも酷い結果……。
「あははは……こんなの……顔向けできない……」
クコロの遺児のユウと、新しく妾になるカタナちゃんを皆に紹介するから、夕方までにアイギス港街の本拠地にセルヨーネ家のみんなで大集合して、全員一緒に夕飯を食べよう!
ユーリからはそう言われている。
もうすぐ時間だから、港街に行かなければいけないのだけれど……。
零れた涙が、止まらない。
悔しくて、悔しくて、悔しくて。
「アロさん? どうしたっすか?」
偶然寝室の扉を開けたナァルが、ぎょっとする。
アロは涙を服の裾で拭きながら、返事をする。
「ああ……ナァルちゃん……うん、なんか……ね……」
心配になったナァルは、アロの前の席に座る。
「戦果ゼロ……役立たずというか……足手まといで……」
「はぁ……?」
ジャンパーティがギルドマスターに表彰されたぐらいの大戦果では?
飲み会の時、みんなもアロさんの指揮が完璧だったって褒めてたっすよね?
「首一つ取れなかった……」
「えっ?」
「寝ても覚めても、そればかりで……」
あ、あれ……?
なんだろう……価値観が全然違うっす……あれ?
突然何かに気がついたように、アロが顔をあげる。
「そういえば、戦いの前にジャンが何か言ってなかった?」
「先輩が? んーと……確か、『ブシドハシグルイナリ』?」
うろ覚えで、ナァルは答える。
涙を拭き終わったアロは、真剣に考え始める。
「ブシは……確か、刀を持った人のことだって前にジャンが言ってたわ。『刀を持つ者はシグルイナリ』ってことかしら」
「シグルイ……死に狂うってことっすか?」
「『刀を持つ者は、死に狂え』……ああ、だからジャンは……あんな動きが……」
「あー……なんかエグかったっすね、先輩の技」
思い出しただけで、顔が引き攣ってしまう。
指を持って手を引き裂くとか、エグいっす。
「わかったわ、もっと前に出てみる。死に狂え。いい言葉ね」
「アロさん、最初から最後までずっと突撃してたっすよね?」
アロさんの指示も、ずっと突撃命令だったような?
首を傾げたナァルに、アロがガタッと立ち上がる。
「それよ! それだわ! 『跳び撃ち』!」
「お、落ち着いてくださいアロさん。どうしたっすか」
アロは目を輝かせながら説明する。
「弓隊で横陣を組んで、数列に並べるの。全員で移動しながら、先頭が『跳び撃ち』したとするでしょ? そしたら、先頭が後ろに回って、後ろにいた兵士が前にでて『跳び撃ち』をするの」
「ぐるぐる回って撃つんすか? 逆に後ろにさがって、敵から遠ざかりそうな」
オランダのマウリッツが生み出した、鉄砲戦術カウンター・マーチの概念が突然アロから飛び出したが、情景を想像したナァルが率直な返事をかえす。
それはカウンター・マーチの弱点でもあった。
「じゃぁ、回転を逆にすればいいのよ! 先頭が『跳び撃ち』したら、最後尾が前に出る! 攻撃と移動が同時にできるわ!」
カウンター・マーチを改良したグスタフ・アドルフの戦術に一瞬で昇華した。
……と言ってあげたいところだが、戦闘民族日本人はちょっと頭がおかしかったので、その戦術は西欧よりも早く取り入れられていた。
その戦術を、島津家の『車撃ち』という。
「理論上は……できなくも……ないような?」
「突撃用の槍兵と組み合わせるのはどう? 『跳び撃ち』で先制してから、すかさず槍兵が突撃! 移動を一切止めずに、縦陣突破が可能だわ!」
その戦術を、島津家の『穿ち抜き』という。
「あと……ジャンと白面金毛の一騎打ちがはじまった時に、隠れてた敵の兵士が、みんな戦場に出てきたじゃない? あんな感じで囮が敵を引き寄せる動きをして、敵が出てきたら隠しておいた伏兵に襲わせて、そしたら囮が反転して挟撃……」
「それ囮役がほとんど死ぬっすよね?」
その戦術を、島津家の『釣り野伏せ』という。
ナァルの指摘通り囮役は結構死ぬが、最後に勝てばいいので何も問題は無い。
「……ボーラ・シューター! アレを囮に持たせれば生存率があがるわ!」
「アロさんがボーラ・シューターに代わる凄い武器を開発するのはどうっすかね」
「そういうのは全部、ユーリに任せればいいのよ!」
「言われてみれば
原作の発明家としてのアロの能力が、この世界線では全て戦闘方面に偏っていた。
そんなアロが、ドヤ顔でナァルを見る。
「旦那様はあげないんだから」
「私には、ジャン先輩がいるんで……基本的にデカい人が好きなんすよね」
「細身なのに、ガチガチの筋肉が詰まってる人に抱きしめられる方が……」
アロの顔が真っ赤に染まる。
ナァルは歯がみする。
「くっ、噛み合わないっす……」
武士道は死狂ひなり。
アロは確実に相談相手を間違えた。
相談相手を間違えたので、薩摩インストールが悪化してしまった。
* * *
アロが落ち込んでいたので、慰めてあげようとしていたウォルだったが。
よくわからないけどアロが元気になったようなので、それでよしとした。
しかし、彼女達の会話の最後が、ウォルの脳裏でリピートされる。
ウォルの頬が染まり、心臓の鼓動が早まる。
(わかってないですね二人共……旦那様の細マッチョも、ジャン君のムキムキマッチョも、両方ともオス感たっぷりで選ぶのは難しいってゆーか……旦那様の的確な責めも、ジャン君の荒々しさも両方いいっていうかぁ……)
思わずしゃがみこんでしまうウォル。
(旦那様ともジャン君とも、私とナギさんで3Pをしたことはありますが、そうじゃなくてぇ……)
顔が真っ赤だ。子宮がきゅんきゅん言っている。
(いっそ旦那様とジャン君に挟まれたいっていうか……男が一人・女が二人じゃなくて、男が二人・女が一人の3Pをしてみたいっていうかぁ……)
四つん這いで腰を掴まれ、荒々しく突かれながら、口にも激しく突っ込まれるとか。
前もお尻も突き入れられて、片方にはキスをされて、片方には耳を責められるとかぁ……。
(うわぁ……めっちゃ濡れてる……ヤバい……どんだけ二人とセックスしたいんですか私……)
「ウォル? どうしました?」
「ぴゃぁっ!」
突然ナギに話しかけられ、硬直するウォル。
様子がおかしいウォルを、ナギはじーっと見つめる。
「ウォル」
「ナギ姉さん……」
すっとウォルに近づいたナギが、ウォルの耳元で囁く。
「『若返りの秘薬』が切れそうです。旦那様に4Pをお願いしてみましょう」
「え"」
「……ナァルさんを含めた4Pなら、もう経験済みではないですか」
「あああああっ!」
「男女比率が変わるぐらい、今更でしょう」
「もぉおおおおっ!」
後日、ユーリに相談してみたところ。
覚えたばかりで練習したかったんだよねと言われ、緊縛4Pプレイが開催された。
最初こそ緊張していたジャンだったが、やがて理性が飛んで獣になった。
望んだ通りのイラマ&バック、二穴突きが実行され、容赦なく手荒に扱われた。
ウォルは快楽で脳が回らなくなるぐらい満足して、幸せそうな笑顔で力尽きた。
今度ペニスバンドを作っておくよと、ユーリが苦笑しながら言った。
* * *
セスレ、アロ、バーチェ、バト、ミルヒ、カカオ。
ユーリの嫁6人の前に、新しい妾のカタナが紹介された。
合わせてクコロの遺児、ユウが新しい家族として紹介される。
ユウの面影にクコロが残っていたので、セスレがユウを抱きしめて大泣きしてしまった。
アロとカタナ以外はクコロと冒険したことがあるので、みんなしんみりしている。
ユウはそのまま、港街で他の子供達と一緒に過ごすことになった。
カタナに雷光流を学んでみるかとユーリは尋ねたが、私は頭がよくないから無理だと思う、とカタナは断った。
カタナには時を遅く見る目がある以上、無理に雷光流に染まる必要は無い。
音見も含めて、無理強いはよくない。
ハンティ爺さんも、鍛えるのが楽しくないとダメだと言っていた。
……と格好つけて発言したら、わりと無理矢理に色々仕込まれたミルヒとカカオがキレたので、ユーリはなだめるのに苦労した。
アイリス亡き今、ラケットメイス術をマスターしているのは双子だけだ。
ラケットメイス術あっての魔法少女モードなので、その意味でも二人は大事である。
さらに言えば今は原作時間軸。原作通りの外見で、原作通りの16才。
ミルヒとカカオの美少女度も胸囲力も実力も、全てがエース級に育っていた。
しかも一児の母なので、なんかもう、属性過多である。
カタナを含めて7人、将来グラスが加われば8人。
ユーリが貴族で、しかも侯爵格である以上、嫁の10人は「至って普通」だ。
正妻のいない歪な構成なので、聖王国は何度も王族をねじこもうとしてくる。
聖王国以外の国も、平然と公爵長女や王族をねじこもうとしてくる。
伯爵以上の高位貴族全体で見れば、10人どころか20人や30人の嫁持ちもいる。
彼らは嫁全員を等しく扱っているわけではない。
その手の貴族は、子を産めない年齢の女性から、10歳児まで大勢抱えている。
気分次第で、夜に抱く妻が変わる。
抱かれた回数で、妻は自身の権力が高まったとして第一夫人争いをする。
後継者となる男子が生まれれば毒殺すらありうる、ドロドロな貴族社会。
ローテーションで一人ずつ順番に抱いているわけではないが、それでもユーリは等しく愛情を注いでいるつもりだ。毒殺が絡む愛憎劇なんか、見たくもない。
* * *
久しぶりの港街だったので、セスレ。
白面金毛戦をねぎらう意味で、アロ。
その日の夜は、なんとも贅沢な組み合わせの二人を3Pで抱いた。
初期のユーリは一人ずつ大事に抱く時間を大切にしていたが、ミルヒ&カカオとの3Pや、ナギ&ウォルの3Pを経て『組み合わせの妙もいいよね』といつの間にか手のひらを返していた。
3P属性が植え付けられてしまったとも言う。
例えばミルヒ&カカオではなく、長い付き合いを計算に入れてバト&ミルヒ、あるいはバト&カカオとかにすると味わいが変わってくる。
敬愛しつつも玩具なバトお姉さんに対して、双子セットではなく個人として相対させると、ミルヒとカカオはまるで別人になってしまう。
双子として揃っていれば、バトを玩具としていじって遊べる。でも個人で向かい合うと、敬愛部分が大きく膨れ上がる。敬愛しているバトお姉さんと百合的に絡み合うことになって、ミルヒまたはカカオが緊張でガチガチになるのだ。
そうなると、普段いじられているバトがニヤつきながら強気に攻めはじめる。
バトが言葉責めをしながらミルヒまたはカカオと絡みあい、耳たぶをかぷついている光景とかを見ていると……あ、これは新しい扉が開く奴ですね。
生まれた時の名前がユーリ・アイダ・ハサマールで。
今はユーリ・ハーベラ・セルヨーネなのだから。
僕が百合の間に挟まったり、百合を侍らせたりする行為に対し、恥ずべきことなどない!
百合の間に挟まる男を殺したがる連中よ、次元の壁を越えてかかってこい!
と言いたいけど、自然発生の百合ではなく人工合成の百合なので、ノーカンになりません?
自然発生の百合の尊さは僕もわかってるつもりなので……。
人工合成百合3Pは別ジャンル扱いにしていただけると嬉しいなって……。
誰に言い訳をしているのかはわからないが、変な所で弱気になったユーリだった。
* * *
そんなユーリは、アイギス港街の中央にあるセルヨーネ邸の見張り塔部分に登った。
ここには、栗結パイセンや亜人側が使っている『
さらにいえば、この中央部分以外の、外壁部分を結んだ天井に相当する水平部分には、ワイヤーのような細い糸が安易な侵入を防ぐように張り巡らされている。
セルロースナノファイバーが多く含まれる高強度紙細工ゲルを細く流して乾かした「強糸」。
それを何重にも張り巡らせた「糸壁」だ。
白面金毛をはじめとしたレッドキャップ達が、安易にジャンプでアイギス港街に侵入しようとすると、強糸によってバラバラに切断される。
なので、今ユーリがいる場所に堂々と侵入できるのは、空を飛べるハルピュイアぐらいだ。
夜空を見上げながら、ユーリは桜煙草を取り出して、吸おうとする。
セスレとアロの組み合わせ、良かったなぁ……。
「ユーリーーー!」
「わぷっ」
二人の絡み合いを思い出してぼんやりしていたら、ものすごい勢いで空を飛んできたハルピュイアにユーリは抱きつかれた。なんと、数年ぶりのカスメである。
ハルピュイアなので体格に大きな変化はないが、外見面において多少の成熟が窺える。
「カスメかぁ! 久しぶり!」
「久しぶりにゃ、ユーリ!」
「言葉も随分うまくなっちゃって」
抱きついてきたカスメの頭を、ユーリは撫でた。
「多分ユーリの子も産んだにゃ? 銀色の髪だから多分ユーリの子にゃ。多分」
「僕に顔つきが似てたら、僕の子として認知するよ」
ユーリは苦笑する。
ハルピュイアはガチの乱交文化なので、真面目に父親がわからない。
カスメは、ユーリを探していた理由を実行する。
「テオから伝言にゃ。『亜人を知ってもらうために、まずは亜人の女を抱いてもらうのが早いと考えた。アラクネに興味はないか?』にゃ」
「いいね、悪くない。いまなら、僕の嫁達には子供達との時間を作るために休暇してもらい、僕は僕で息抜きのソロ冒険をしてくると言い訳ができる。最高のタイミングだ」
『
『ジャンパーティ』は、肝心のジャンが右腕の治療ですぐには動けない。
「人間は面倒臭いにゃね。いつでもみんなで交尾すればいいにゃ」
「アラクネ……死の森か。今ならテオもいる?」
「いるけど、
「ははぁん……?」
ユーリは考える。
ジャンとアロからの聞き取り、ギルドの発表、犬狼の報告書。
全てを照らし合わせると、白面金毛は瀕死、ワインだけ生き残ったと推測できる。
ユーリは思考を進めていく。
流石に明日は、僕も子供達と戯れたい。顔を忘れ去られたくない。
『おじちゃん誰?』とか子供達に言われたら死んでしまう。
前々から考えていた構想を相談するには、テオだけでなく白面金毛も居た方がいい。
できるだけ急いで出発するにしても……明後日だな。
「カスメ、テオに返事を。『アラクネに興味はある。僕とテオと白面金毛の三人で話がしたい。明後日にアイギスを出るから待っていて欲しい』」
「……わたしと一緒に行くにゃ?」
「いいね。僕は馬で向かうよ。久しぶりの二人旅をしようか、カスメ」
「ふふーん」
カスメはユーリに頬ずりしてから、耳元で囁いた。
「また殺してやるにゃ、ユーリ」
「……30年ぐらいかけて殺してくれ」
ユーリは苦笑しながら、桜煙草に火をつけて吸いはじめた。
綺麗な月が、浮かんでいた。
やっぱユーリの匂いは甘いにゃ、とカスメは思った。