ふかふかダンジョンでエンジョイ&エキサイティング! 作:RAP
アイギス港街は、大きく分けて4つの区画に分かれている。
まず一つ目、各主要都市や基地へ行くことが出来る連絡駅区画。
開拓城壁都市アイギスをはじめ、色々な場所に高速移動ができる。
アイギスが鈍行&快速メインなら、港街経由は新幹線というレベルで話が変わってくる。
アイギスとアイギス港街の間には定期的に水力車両が往復しており、人々は安価で乗ることができる。港街の方が魚の鮮度が良いので、魚料理好きの人は積極的に港街へ行く。
割とひっきりなしに水力車両が行き来しているので、その気になればすぐ往復できる。
アイギスと名のついた近場の街に対しては、高速馬車道が整備されている。
東アイギスでとれる新鮮な野菜が、近隣へ素早く供給されている。
鉄鉱石の鉱床があるような街や基地に向けては、鋼道車用の線路が急ピッチで敷設されている。
最終的には港街-西アイギス-嘆きの街間を結ぶ予定だが、まだそこまで路線は延びていない。
こういった輸送や流通関連を開発したり管理しているのは全てセルヨーネ侯爵家なので、流石の連合国軍も強引に接収したりはできない。高位貴族に対して迂闊にそんなことをしたら、必ず反撃が来る。『革命&新革命』の特許使用許可を出さない等と言われた日には、自国の技術力が他国に大きく差をつけられてしまう。
だから連合国軍すらも、軍特別価格として割安にはしてもらっているが、侯爵家にキチンと利用費を支払っている。
二つ目、一般的な人達が入れる区画。
美味しい食事処と、上質の娼婦を抱ける高級娼館が主軸の街。
特に高級娼館が有名で、VIP会員は
娼婦側も、抱かれる回数は変わらず一回なのに、中に出されても子供ができない上に、報酬が段違いとくれば大喜び。
少しでも稼ぐために高級娼館へ面接に訪れる娼婦が激増し、必然的に高倍率となった。
なのでアイギス港街で働いている娼婦達は、上澄みの美女・美少女・ナイスバディばかり。
倍以上の値段を払ってまで、生本番で
これはこれである意味棲み分けと言える。金があるから生でヤる、何も間違いは無い。
ただ、港街には居住区が無い。宿泊用のホテルすら無い。
住みたいのならアイギスへどうぞ、港街にはすぐ来れます。
これには二つの理由がある。一つは、アイギス周辺と仲良く共存共栄していくため。
もう一つは、防諜のためだ。この街に寝泊まりできる人間は、本当に限られている。
三つ目、街の中央にある巨大なセルヨーネ侯爵家邸エリア。
見張り台もあって警戒も厳重、簡単には入れない。
美しい庭園を外から見るだけでも観光になるので、デートコースの一部にもなっている。
なお、戦車の類が屋敷の地下に格納されている。
万が一の際は軍隊丸ごと皆殺しである。
そして四つ目。関係者以外は絶対立ち入り禁止の工業区画。
ここは下手にスパイが入ると生きて帰れない。死体すら出ない。
中で50台以上の水車が随時稼働していることだけは判明している。
スパイの死体を見せしめに晒すような行為も一切無い。
なので侯爵家に『迷子の誰かが間違えて侵入したかもしれない? うーん、わからないですね』と言われてしまったら終わり。
本当にそれで終わり。だから連合国軍も聖教会も冒険者ギルドも迂闊に人を送れない。
そもそも港街の仮想敵は軍隊でありドラゴンでありシロミミズリュウモドキである。
スパイごときが潜入したって死体も出ないのは当たり前なのだ。
* * *
で、その人気が高い高級娼館のスタッフルーム。
六人の美少女を引き連れたユーリが訪れていた。
リーダー格のスタッフが、ユーリに対応する。
「……なんスか侯爵閣下、この可愛い娘達は……みんな姉妹っスか?」
「あー、うん、姉妹、姉妹。今後増えるかもしれないけど、とりあえず姉妹でいいよ。彼女達は体温が低いから、部屋は暖かくしてあげて。そうそう、彼女達にはペッサリーを使わなくていい。彼女達に関しては、生本番、
「娼館で販売されている安価なご飯、って一番安いのはパン一つっすよ!? それでこの娘達に生本番の
「うん、マジマジ。生本番OK、
「うっす、わかりまし……た……っす?」
ユーリに説明を受けていた高級娼館のスタッフの前に、姉妹達が集まる。
「われわれを可愛いと思うか?」
「ん? 可愛いと思うっす!」
「うむ。我々の可愛いを提供する。存分に撫でまわし
「……お、おうっす?
すると、スタッフに姉妹達が抱きつく。
「ならば
「
「めぇうあよい」
あまりの姉妹達の冷たさに、スタッフがびびる。
「冷たッ! 冷え切ってるじゃないスか!」
「じゃあ、お風呂に入れてあげて。……ついでに抱いていいからさ」
「マジすか! じゃあみんなでお風呂に行くっす!」
「うむ。お風呂はあったかくてすごくいい」
「うみゅぅ~」
無料で美少女達を抱ける、やった! と喜んでいるスタッフ。
ユーリは手を振って笑顔で見送る。
ふう、これでよし。あとは知らん。
ユーリは真顔で立ち去る。
源氏名通称『
なお、戦士格のアラクネでもスライム娘だと気づけず、栗結パイセンしかその正体がわからなかったように、この世界でも彼女達がスライム娘だと理解できるのはユーリしかいない。
なので、VIPパスポートの初使用ということで高級娼館を訪れたハンティ爺さんが『
ユーリが深く考えずに設定したご飯食べさせオプションは、生本番や
VIPパスポートは高級娼館が何度でも使いたい放題だが、流石に食事奢りは自腹だ。だがセルヨーネ侯爵家で働いているハンティ爺さんはお金の使い道に困っていたので、色々な意味で丁度良かった。
『
……きっと、早くに親を亡くしてしまい、色々と甘えたいのだろう。
ハンティ爺さんをはじめとして、『
生本番も
本番中だし無制限なのに、逆に客が抱かなくなるのは、一体どういうことなんスかね?
高級娼館のスタッフ達は、首を傾げた。
スライム娘達は、部屋が暖かくてご飯を食べられれば、なんでも良かった。
* * *
カタナはティーチ夫妻のところに子供目当てに通うぐらいには子供好きだったので、セルヨーネ邸の子供達ともすぐに仲良くなった。特にクコロの遺児となったユウには、私がユウのお母さんになる! ふんす! とばかりに気合いを入れて接していた。
時を遅く見る目を持つカタナと、ニュータイプ属性を持つユウの絡みは、未来で変な化学変化を起こすことになる。カタナが変なタイミングで動き始めて変な動き方をするので、それをニュータイプ的にユウが解釈してしまうのだ。『後ろに目をつければいいんだね、カタナ母さん!』などと未来のユウが意味不明なことを言い出すのは、また別の話。
アロは側室ではあるが、暗黒大陸にいる間は子供を産む気が無かったので、子供達と接する時間は必要最小限になるようにしていた。
子供達と仲良くなりすぎて、自分の子供が欲しくなっても困ってしまう。
アロはカタナのように子供達に近づかず、ユーリに相談を持ちかける。
「ボーラ・シューターの特許を公開して、皆が使えるようにしたい?」
アロに言われたユーリは、原作展開を思い出す。
そろそろボーラ・シューターを開発した時期だったっけ?
「うん……きっと(釣り野伏せの)役に立つと思うの」
「そっか、わかった。アロが作ったことにしておくね」
「それは駄目。どうしても私を絡ませたいのなら、共同製作扱い」
「……わかった。共同製作扱いで特許を公開しておく」
「全ての冒険者が(穿ち抜きで)使えるようになるってことよね!?」
「そうなるね。ボーラ・シューターは、売れると思うよ」
「やった!」
アロが、飛び跳ねんばかりに喜んでいる。
なんでそんなに嬉しいんだろう?
ユーリは、小首を傾げた。
* * *
武器屋のゴンザは、ボーラ・シューターの設計図を見て感嘆する。
流石は発明家、変なものを思いつく。
「
「売れると思うよ。最初から大量生産を視野に入れていいと思う」
ユーリは笑顔で店内を眺めながら、ゴンザに答える。
そんなユーリに、ゴンザは真剣な顔を見せる。
「わかってると思うけど。発明するのはいいが……」
原作7巻28P。超真剣な顔。
「『禁忌』に手を出すなよ」
忠告されたユーリの視線は、店内の売り物を横目で見ている。
それは、ナフサと灯油。
「モノ開発しようって奴には改めて警告する義務があるから言うが、『禁忌』は作ろうとしただけで問答無用で関係者や家族が連座で火あぶりだ。そんで『禁忌』そのものを作らねぇのももちろんだが……怪しいことも絶対やめろよ。おい聞いてるのかい、ユーリ」
「聞いてる聞いてる。ゴンザさん、灯油買ってくね」
「へっ、まいどありぃ」
ゴンザは嬉しそうに笑う。
ナフサと灯油の原料、知ってますかゴンザさん。
ユーリはゴンザの胸の突起を指さす。
「ゴンザさん、ブラジャー買って下さいよ……乳首が透けて見えてます」
「ははっ、こんなおばさんの乳首なんて誰も気にしないよ!」
押し倒すぞこのアマ。
アレだな、『科学的~』のアラクネのアーさんと同じだ。
自分が性的な対象になるとは、欠片も思ってないんだ。
「こんなおばさんより、ゴメスとゴンゾはどうだい?」
「こんにちわー♡」
見れば、陰からゴメスとゴンゾが覗いている。
原作7巻81Pのように、ぺこりと挨拶してくれる。
「はい、こんにちは」
親子姉妹丼でもしろってか?
幾らだこのアマ。言い値を払うぞ。
「カタナちゃんも妾にして手一杯なんですよ……勘弁してください」
「嫁の10人も20人も、変わらないって! ははは!」
爆乳をぷるぷる震わせながら、ゴンザが笑う。
乳首も含めてばるんばるん揺れるので、ユーリはついガン見した。
* * *
「十文字槍? そんなのもってどこ行くの?」
セスレが尋ねてくる。
ユーリは
「うん、ちょっとアラクネと
「あ……アラクネぇ!?」
「みんなと行きたいのは山々なんだけど、女性が同行してるとアラクネの対応が厳しくなるみたいだからさ。万が一負けた時に、命乞いでどうにかするためにも僕だけで行く。だから皆は連れて行かない……せっかくの休暇だし、子供達をよろしく頼むよ。カタナもユウも加わったし、みんなの交流時間としてちょうどいいでしょ」
「流石に、死の森について行こうだなんて思わないわ」
2Pカラーのセズレさんは、今頃死の森でずっこんばっこん、オーク達に犯されてるはずなんですけど。
この世界線のセスレは僕の嫁なので、アラクネに片手首吊りされるようなこともないです。
6巻148Pのような心配顔で、僕を見てくれている。
「セスレ」
「なぁに?」
「愛してる」
「んっ……♡」
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
僕を止められないと知っているので、セスレは黙って見送ってくれる。
僕はセスレにキスをしてから、港街を旅立った。
(BGM:機動戦士ガンダム 水星の魔女 「The Witch From Mercury」)
青空の下、気持ちよく馬を走らせていると、地面にハルピュイアの影が見えた。
見上げると、カスメが空高く飛んでいる。
僕が手を振ると、カスメはゆっくりと低空飛行で合わせてきた。
「よっ、カスメ」
「相変わらずの服にゃ。鎧とか着ねーでいいにゃ?」
「……これが僕の鎧さ、僕は貴族だからね!」
フルプレートより硬くて弾性があって軽い貴族服。
すっかり僕のお気に入りだ。
もはやトレードマークである。
アラクネ。テオ。白面金毛。
今後の僕がどう立ち回るのか、大事な判断材料。
すぐそばをカスメが飛んでいる。
日差しは温かい。流れる風も涼しくて心地よい。
無職転生なら、ターニングポイントとか副題がつきそうだな。
僕はニヤつきながら、馬を走らせる。
だとするなら。
聖剣の勇者セイ達との出会いが、ターニングポイント2だろう。
ターニングポイント3は、なんだろね。
「なんだか楽しそうにゃ、ユーリ」
「ははっ! 結構満喫してるからね、この世界をさ!」
エンジョイ、アーンド、エキサイティング!
なんだかんだで楽しんでるよ、転生神様!
僕は笑った。