ふかふかダンジョンでエンジョイ&エキサイティング! 作:RAP
12歳を目前に、ほんの一ヶ月程度で一気に身長が20cm以上伸びました。
外見は少年を脱皮して青年になりつつある感じ。
寝る前に襲い来る成長痛がわりと洒落になっていないというか、膝のあたりがよく痛むからバーチェ達によくマッサージしてもらってます。
声変わりのせいか喉も鈍痛が走って喋りにくい、そんなユーリ・アイダ・ハサマール子爵令息です。いやマジできつい。
アイリスとバーチェには、ランニングとエコーロケーションの訓練を毎日欠かさずできるだけおこなってもらっている。馬車での移動時とかはどうしようもないけれど、彼女たちの身体はいい感じに鍛え上げられているのではなかろうか?
日本でいえば、アイリスは小学校高学年でバーチェは高校生の年齢。アイリスも僕みたいに急激に成長してきた感がある。
二人に共通しているのはその肢体。
創世神が好む造形であるところの、丸みが強調されて柔らかくふんにゃりとした感じでも、露骨に巨乳が強調される感じでもない。
陸上部のアスリート系女子がごとくすらりと伸びた肢体というか。陸上競技大会に出場している女性選手の盗撮動画がYoutubeあたりに「美少女アスリート特集」的なタイトルでアップされて何百万再生も稼いでしまっているようなノリといえば伝わるだろうか?
バーチェに至っては、うっすらと割れた腹筋のラインを浮き上がらせつつも、美乳ラインを残している奇跡の仕上がり。
アイリスもロリっ娘を脱出して、蛹が蝶に羽化するような時期。
なんでこんな、彼女たちの素肌を見たかのような表現をできるのかというと、実際にほぼ毎日見ているから。それまで僕の風呂は下女担当だったんだけど、正式にアイリスとバーチェが妾候補になったので、みんなで裸になってお風呂にはいって、二人に身体を洗って貰ってます。うぇひひ。
本来ならあと数年はかかるかと思っていたのだけれど、思った以上に革命が進んで広がりつつあるのが功を奏して、RTAじみた速度で二人を身請けしちゃいました。金貨3000枚の2人分で、合計6000枚を叩きつけた感じ。『科学的に存在しうるクリーチャー娘の観察日記』では、一般労働者の月収が金貨3~4枚、上級使用人や専属メイドで金貨6枚、高級娼婦で一晩金貨1枚と説明されていた。金貨1枚10万円相当なので、日本円換算で6億円の札束ビンタ。ハサマール家的には差し引き4億円の儲けになるのかな? でもその4億円と引き換えに、僕からハサマール家への好感度は織津江パイセンがパーラちゃんの自己洗脳魔法を喰らった時のレベルでだだ下がってます。
……ちょっとね、うん。
僕が制御できない存在だと直感したのはいいんだけど、首輪のはめ方が悪かったよね。
別に、即座に出奔するとか縁を切るとか、そういうわけじゃないけれど。僕が人類側に見切りをつけたその時は、実家だろうが容赦なくぶった切る、ただそれだけの話。わかりやすいね。
あーでも、アイリス達にもちゃんと給与払った方がいいのかな? アクセサリだの私服だの生理用品だの、彼女たちだって色々自分で欲しいだろうし。
貴族特有の「望めば貰える」は真面目にやりにくいから、その辺はキッチリしないとね。
この世界の生理用品はどうなってんだ? 綿?
* * *
僕もアイリスも急成長しつつある関係で、当然のように身体操作の感覚が崩れてしまった。これ以降の成長速度は遅くなるにしろ、現時点の身体に合わせて感覚の再調整を施す必要がある。
付け加えるなら、冒険者は12歳から登録できるので、学校に通いはじめたら休日に冒険稼業をしてみたい。でも流石に足りないものばかりだ。
この世界の冒険者はあまり戦わず、調査や採取が軸なんだけど、だとしても不意の戦闘を考慮しないのは間抜けすぎる。
まして最終目標は暗黒大陸入りだ。
そのためには持久力の強化とか、ロッククライミングの訓練とか、武器関係の可能性の模索とか、やっておきたいことは沢山ある。
かのジャン君だって毎日のように大量の薪を背負って山中を駆け巡っていたわけで、足腰の強靱さはとんでもないことになっているはずだ。僕だって負けてらんない。
学校、つまり聖都に行くまでの時間、僕は研究所に新規研究案の指示を出しながら、ハサマール領の兵士達にまじって訓練をする日々を続けていた。
この辺はコネというか、領主の息子特権だね。メイド二人も連れているし、傍目には「お坊ちゃまのわがまま」といったところだろう。
兵士達の訓練はあくまで「動きやすく軽い服装」でおこなわれている。その中に、異質な姿の三人、つまり僕達がまじっている。
僕達三人は、本編でジャンパーティの女性陣が着ていた弓兵用重装甲鎧を着用した上で、手にはロングボウを持っている。
本当はもっと実戦想定で重くしたいが、身体ができあがっていないし筋肉もついていないからこれ以上の無理ができない。
ハサマール領の兵士たちが綺麗に整列し、歩調を合わせて集団ランニングの訓練をはじめた。
僕達三人には、ただでさえ鎧と弓の負荷がある。疲れ果てた時に、訓練を邪魔したくない。
素直に兵士達の最後尾に並んで、彼らに合わせて走り始める。
ざっざっざっざっ。
兵士達は無言でランニングを続けていたが、僕は走りながら大声で叫びはじめた。
「俺らの槍はご自慢の!」
「「おれらのやーりはごじまんの!」」
顔を染めたアイリスとバーチェが、それでも合わせて大声で叫ぶ。
こういうのは照れちゃいけない。ノリが全てだ。僕はさらに叫ぶ。
「あの
「「あのこーもあーえぐながさだぜ!」」
一緒に走っている兵士達全員が、声を合わせてくれた。
「狙った獲物は逃さない!」
「「ねらったえーものはにーがさーないー」」
「あの
「「あのこもかんじるふっとさーだぜー」」
「昼はゴブリン突き殺し!」
「「ひーるはごぶりんつっきこーろし-」」
「夜はベッドで大暴れ!」
「「よーるはべっどでおおあばれー」」
鎧と弓の重さの負荷が地味にきつい。
でも頑張る。アイリスもバーチェもついてきてる。
「一突き!」
「「ひとっつき!」」
「二突き!」
「「ふたっつき!」」
「腰ふれ!」
「「こしっふれ!」」
「ズブリ!」
「「ずぶり!」」
下ネタまじり、どころか下ネタそのものなかけ声だけど。
女性兵士も楽しそうに歌ってくれている。
アイリスもバーチェも完全に吹っ切れている。
「「昨日も磨いた俺の剣」」
「「今日もしごくぜピカピカに」」
「「鞘におさまりゃいいんだが」」
「「おさまりきらないイチモツさ」」
「「オークのケツにねじこんで」」
「「あの
「「火を噴く!」」
「「我が剣!」」
「「立てよ!」」
「「相棒!」」
ミリタリーケイデンスは、軍の兵士たちが訓練中、特に集団でのランニングや行進の際に歩調を合わせ、士気を高め、団結力を養うために歌う、リズミカルな掛け声や歌のことだ。
映画フルメタルジャケットのハートマン先任軍曹がもっとも有名な例だろう。
ミリタリーケイデンスもチートになるんだろうか? 個人的には、整列した軍隊がそのまま移動してくるというのは、十分チート扱いでいい気がする。
「マスかきやめ! パンツあげ! 総員、水分補給後に整列!」
頃合いだと思った僕は、ランニング訓練を中止させる。
息切れが凄い。くっそ、まだまだ全然足りないな。
水分を補給してから、ランニング光景を黙って見ていてくれた
彼らは薙刀が積まれたワゴンを押して運び、兵士達の前に立つ。僕は新たに叫ぶ。
「今日は特別教練ということで、薙刀を得意とする冒険者達に来て貰った! 挨拶を!」
紹介された彼ら、男前の冒険者三人が挨拶をする。
「薙刀術の上位ランカー、カマセだ。本日はよろしく頼む」
「俺はベーテ。薙刀は、ソードスピアとも呼ばれている」
「ラーンだ。槍と何がどう違うのか、少しでも感じて貰えると嬉しい」
本屋で経産婦メイドのナギさんを見かけた時に、ナギさんは
彼らはこの後、中央大陸から暗黒大陸に行くんだろうなぁ、と僕は遠い目をしていた。アテウマちゃんやヒキタテーちゃん、エロモーブちゃんとの出会いは向こうに行ってから、なのかな?
彼女たちがZ級なら、お金を払って一晩ぐらいはお世話になってもいい。
「教官達には、仮想敵として人間と亜人とモンスターの三種を意識した指導をするようお願いしてある! ハサマール領の主要武器は剣と槍だが、もし薙刀が採用されれば、彼らはマージンを得られるだろう! 将来、薙刀が採用されたら、彼らにエールの一杯でも奢ってもらうといい!」
僕が煽る。兵士達が笑う。冒険者達も笑う。
「マージンだけ貰って、北(暗黒大陸)にでも逃げますよ」
「こいつ彼女募集中なんすよ。どなたか立候補はいませんか?」
「デート費用の貯蓄ってことで、奢りは手加減してやってください」
カマセ、ベーテ、ラーンが薙刀を兵士達に配りながら、談笑していく。
なにしろカマセさんは上位ランカーですからね! 優秀なんやろなぁ。
美人の嫁さんもらって子供もできちゃったりなんかして。白面金毛とか一撃ですわ。
和やかな雰囲気で、兵士達に薙刀の指導がはじまっていく。
薙刀は、バーチェが物凄い勢いで習熟していた。才能ってやつ?
カマセさん、唖然としてたよ。アイリスは逆に不得手そうだった。仕方ないね。
僕は僕で、白面金毛がなんかやってたよなぁと思い出す。
左膝を高くあげて片足立ちし、右手に薙刀を立てて構える。
~百斬の念、抱きて迫り~
~されど斬る念無く~
~斬った先の事柄のみ念ずる~
~之、「百斬無斬の理」也~
下がり斬り。払い。流し。回し。横移動。薙いで。
元の片足立ちに戻り、構えたまま残心。
一瞬の連斬に、周囲で見てた人達がぽかーんとする。
大丈夫、ただの猿真似なんで。そこまで驚くこっちゃないです。
とはいえ、僕は片足立ちの残心を維持しながら、真顔になっていた。
……術理がねぇな、この技。
なんでわざわざ、高く片足をあげるところから開始なの?
こんなに高く片足あげちゃったら、避けらんないじゃん。
これからなんかしますよっていう合図になっちゃうじゃん。
他のことをするのに、一旦片足を下げないといけないじゃん。
痛感する。この世界には、武の術理が全然足りてない。
亜人側なんて全員基本スペックだけでゴリ押しだ。
剣姫カタナも聖剣の勇者セイも基本スペックのみだ。
カタナちゃんの刀、特殊武器なのに、全然活用されてないじゃん。
ジャンが学んだオサン流は、術理というより心得だし。
そりゃぁ、織津江パイセンがオーク相手に素手無双しちゃいますよ。
創世神は体重差がどうとか即時無力化がどうとか何度も繰り返すけど。
この世界に重力があり、相手に骨と筋肉があり、重心と反射があるのなら。
真面目な話、わりと術理で色々ひっくり返っちゃいますよ?
時代や背景世界によって、武術はどんどん形を変えていく。
正座を強要される城内だからこそ、座位姿勢での居合い技術が発達したように。
銃の威力の発達によって鎧が変化していったように。
おそらくこの世界には、この世界に最適化された術理が存在する。
……アラクネに、勝ってみてぇなぁ。
アラクネの骨格を含め、ある程度の情報は栗結パイセンが調べてくれている。
勇者セイちゃんは真正面から突っ込んでいったけど、ツッコミどころ満載だ。
そりゃ無理だわ。そりゃ勝てんわ。当たり前やわ。もうちょい考えよ?
本当にこの世界、考えないといけないことが多すぎる。
ふざけやがって。楽しんでやるからな? 見てろよ創世神? クソが。