ふかふかダンジョンでエンジョイ&エキサイティング!   作:RAP

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第137話 ??時間軸・ラァ族の里

 

「俺は栗結大輔。クリ娘ハーレム王になる男だ」

 

 白衣のようなロングコートを着こなした黒髪眼鏡の日本人男性。

 その彼が、自分を右手親指で指しながら自己紹介する。

 

 栗結大輔パイセン。

 『科学的に存在しうるクリーチャー娘の観察日記』の主人公。

 織津江パイセンは最初モブって紹介されてたのに今はダブル主人公だしスピンオフまで出てるけど、この際それは横に置いておこう。

 

 アラクネ娘(ネア)ケンタウロス娘(タウラ)マーメイド姫(カナ)レッドキャップ娘(レキ)エルフ母娘(エルゥとルフ)

 全員が、「またその台詞言ってる」と苦笑いを浮かべている。

 

 此方も抜かねば……無作法というもの……。

 僕は立ち上がり、同じように自分を右手親指で指す。

 

「僕はユーリ! 人間とクリ娘の比率8対2ぐらいでハーレムを目指す男です!」

「おー!」

 

 僕と栗結パイセンがハイタッチをする。

 後ろの女性達が、呆れ顔で『馬鹿が増えた』という顔をしている。

 

「真面目な話、異世界転生と転移の合わせ技なんですよ。お前が異世界の人間というのが本当なら、ラァ族の里に行ってみろとアドバイスを貰いまして。駄目元でこの里に来てみました」

 

 さらりと嘘をつきながら、ライターを取り出して火をつける。

 栗結パイセンの真似だったが、効果は絶大だ。

 女性陣が、おお……と驚く。

 

「……そうか……それならその寒そうな服装も納得がいく」

「そう、その服が問題なんです。六月初旬からこんな真冬に飛ばされたんで、服が無くて。それで、栗結さんに取引を持ちかけようと思ったんです」

「取引?」

「ええ。アラクネ()を使った、格好良いデザインの貴族服と下着類、もちろん真冬の防寒対応。できればセルロースナノファイバーと組み合わせて、一見普通の貴族服だけど防御力も兼ね備えてるヤツがいいですね」

「あぁ……要望はわかったが、ユーリは何を出せるんだ?」

「ふっ、よくぞ聞いてくれました……」

 

 僕はドヤ顔で、コンビニのレジ袋から例のヤツを取り出し、パイセンの目の前に置く。

 

「マルボロ1カートン。ラァ族の里での、当面の宿泊費用込み」

「取引は成立だ」

 

 同じくドヤ顔の栗結パイセンが、右手を差し出してくる。

 僕とパイセンは、固い握手を結んだ。

 そのついでに、チラリとエルゥさんとルフを見る。

 

「いや、しかし。本物のハイエルフは、初めて見ました」

「おぉ。今ならエンシェント王国の使節団がいるから、沢山見られるぞ」

 

 科学的16巻付近の時間軸だろうか?

 

「なるほど。是非とも後でご挨拶に伺いたいですね」

「案外、向こうから来るんじゃないか?」

 

 そう言って栗結パイセンは笑う。

 

「滞在中は、この家をそのまま使ってくれていいですよ」

 

 アラクネ娘のネアさんが笑顔でいう。

 

「ハーレム王が二人に増えても困るんだけど」

 

 ケンタウロス娘のタウラさん。

 僕はキョロキョロと、周囲を見渡す。

 

「どうしました?」

 

 カナ姫に尋ねられたので、僕は苦笑いを浮かべる。

 

「あー。道中で、ゴブリンとラミアを見かけたもので。ゴブリンの女の子を抱いたことはあるんですが、ラミアを抱いた経験はなくて……ラァ族の里にラミアがいるのか気になったんですよ」

「ゴブリンに……ラミアだと……」

 

 栗結パイセンが、ショックを受けた顔をする。

 まあ、見かけてなんていませんけどね。

 これも嘘。

 

「スイッチが入ったでやすね」

「ラミアは色々な種族から敵性認定されていますから、気をつけた方が」

 

 レッドキャップ娘のレキさんと、ハイエルフのエルゥさんが言う。

 ……エルゥさんを黒髪にして胸を数段階減らすとバーチェだな、と内心で思う。

 

「なんにせよ、発注した服ができるまでは里でのんびりさせてもらいます。ああ、そうだ。僕は武術をそこそこ嗜んでいるのですが……」

 

 そう言って、ハイエルフのルフを見る。

 

「ハイエルフは、『手品』を使うと伺いました。是非とも体験してみたいものです」

 

 ルフは、エルゥの後ろに隠れてしまった。

 恥ずかしそうに、僕の様子を窺っている。

 

「あはっ。栗結さんのハーレムに手を出す気は欠片もありません、ご安心を」

「そ、そうじゃなくて」

 

 ルフが、むぅ、と可愛く僕を睨んでくる。

 

「おかしいでしょ! この部屋の中なら、どこに隠れても見つける自信がある顔してるの!」

「僕がまばたきする間に20m以上離れればいけますよ」

「俺の悪友みたいな話をしてるな」

 

 栗結パイセンが、笑った。

 

 

 * * *

 

 

「初めまして。エンシェント王国使節団代表アールフと申します」

 

 その晩、ハイエルフのアールフさんが僕の元を訪れた。

 ラァ族の里を訪れた時の格好だ。

 彼女は、手に金色の風車を手にしている。

 

「初めまして、アールフさん。僕の名前はユーリといいます。ささ、中へ」

 

 栗結パイセンの実験時と違って、アールフさん一人だけのようだ。

 僕にとっては、都合が良い。

 

「ちょっとした実験というか、儀式にお付き合いいただけませんか?」

「いいですよ。温かい飲み物をいれますね」

「ご丁寧に、ありがとうございます」

 

 僕に貸与された小屋の室内。

 テーブルを介して、僕とアールフさんが向かい合う。

 

「僕にこの風車を回してみせろ、ということですね?」

「はい。我が国では子供のころに全員受ける、ちょっとしたお祭りの儀式みたいなものです。未だかつて回せた者は一人もいませんが……」

 

 アールフさんは、バトさんのようなむにゅむにゅ口をしてみせる。

 僕はこのむにゅむにゅ口、好きなんだよねぇ。

 

「ふむ……」

 

 アールフさんは僕に金の風車を手渡そうとしてきた。

 僕はそれを押しとどめ、アールフさんの手に握らせたままにする。

 座ったままのアールフさんから見て、風車は裏側。

 つまり僕から見て正面なので、アールフさんからは風車を回せない。

 

「そのまま風車を持っていてください、アールフさん」

「えっ、あ、はい」

 

 僕はゆっくりと立ち上がり、温かい飲み物が入ったカップを手にアールフさんの方に回る。

 アールフさんのそばに立って、左手で静かに飲み物を飲む。

 

「……ええと?」

 

 戸惑ったアールフさんが、声をあげる。

 僕は軽くしゃがんで、アールフさんの長い耳に顔を近づける。

 

「ねぇ、アールフさん」

「はい、なんでしょうユーリさん?」

 

 僕は右手を回し、アールフさんの肩を親しげに抱く。

 アールフさんの目の前で、裏から風車を回してみせる。

 

 その上で。

 彼女の目の前で、コップの中の温かい飲み物を凍らせた。

 比較できるように、彼女のコップの隣に置いてみせる。

 

 アールフさんの目が見開かれ、驚愕で動きが止まったのがわかる。

 僕はアールフさんに、頬ずりをした。

 

「僕、アールフさんの出産権に興味があるなぁ」

「……三人分は確定かと」

「とりあえず、一人分を貰うね」

 

 アールフさんの爆乳を背後から揉みしだくが、抵抗がない。

 彼女の顔をこちらに向けさせ、背後からねっとりキスをした。

 

 

 * * *

 

 

 アールフさんを毎晩抱きつつ、毎日風車の件で質問されまくりつつ。

 数日間、里でまったりしていたら発注した貴族服が仕上がった。

 科学的2巻の貴族、リーン・ケン・ジーンフォースの貴族服とデザインが同じで笑った。

 

「あはっ。確かに貴族服ですね」

「この辺で貴族服デザインって言われたらそうなるんだよなぁ……」

 

 栗結パイセンが苦笑している。

 

「あ、そうだ。シガヒの街って、栗結さん大事ですか?」

「……いや? 知り合いの冒険者が根城にしているぐらいだが」

 

 僕は貴族服の着心地を確認しつつ、刀の大小を装着する。

 

「シガヒの街、やばいですよ。ミミックに街ごと乗っ取られるのは時間の問題です。知り合いの冒険者に伝えてあげてもいいとは思いますが、レッドキャップ達の協力が無いと一掃は難しいでしょうね」

「レッドキャップなぁ……シガヒはなぁ……」

 

 レキ達の里をぶっ殺した連中の街ですもんね。

 

「あ"ー。防寒着が温かい……」

「コカトリスの羽毛とか入ってるらしいぞ。もう行くのか?」

「ええ。アールフさんが無事に妊娠したかどうか気になるので、様子を見に来られるのなら来たいとは思ってますけど」

「手が早い、早くない?」

「栗結パイセンに言われたくないです」

「……パイセン?」

「ハーレム王の先輩ですから、パイセンですよ」

「なら、ユーリ後輩。またな」

「ええ、栗結パイセン! またです!」

 

 栗結パイセンと別れ、エンシェント王国使節団の皆がいる小屋の扉を叩く。

 

「あら、ユーリさん」

「異世界人! 異世界人だ!」

「こら、おじいちゃん!」

 

 アールフさんをはじめ、他のハイエルフ女性や、おじいちゃんハイエルフもいる。

 

「お別れを言いに来ました。また来られるかは不明です」

「ユーリさん……」

 

 アールフさんが僕に近づいてきて、ハグをしてくれた。

 僕はアールフさんに堂々とキスをする。

 ひゅぅー♪ と、ハイエルフ陣から口笛が吹かれたりした。

 

「皆さん、ろくに理論に答えられなくてすみません。僕もよくわかっていないもので」

「いいんですよ、そんなの」

「……いつか、エンシェント王国に遊びに行かせてください」

「歓迎します。ユーリさん」

 

 僕はハイエルフの人達を見渡す。

 温かくて、良い人達だよなぁ。

 

 そして、僕はさよならとばかりに手を振って。

 手を振ったまま、ハイエルフ達の目の前で転移した。

 お爺ちゃん達の絶叫は無視した。

 

 

 * * *

 

 

「おー。冷えるなぁ」

 

 ラァ族の里に転移した時は、雪景色の森の中だった。

 今回は、雪景色の山の中に転移した。道もない。

 寒さの度合いも全然違う。こっちの方が寒い。

 

 つけくわえると、僕の背後には沢山の罠と鳴子が仕掛けられている。

 風力エレベーターを越えて、最初から()()だろうか。 

 

 死の山脈の、冬の光景。時間は日中。

 リーン・ケン・ジーンフォースの貴族服っぽい防寒具を着た僕は、歩みを進めていく。

 

 キーンコーンカーンコーン♪

 キーンコーンカーンコーン♪

 

「緊急連絡! 人間! 数は1! 距離至近! 繰り返す!」

「止まれ! 我々はゴブリン種ミドリ族の里! 穏便な商取引以外は受け付けない!」

 

 鐘の音と、拡声器による警告が聞こえてくる。

 

 ゴブリンやオーク達による警告、ここまではいい。

 日本語を話すゴブリンやオーク達に、すっげぇ違和感が強い。

 ……さて、どこまでをどう話したものか。

 

「ホテル魔王国に泊まりに来ました。あとは……」

 

 面倒くせぇ。

 正直に話すか。

 

「……織津江大志をぶん殴りに来た!」

 

 カーンカーンカーンカーン

 

「戦闘警報発令! 戦闘警報発令!」

「総員第一種戦闘配置! これは訓練ではない! 繰り返す!」

 

 判断が早い。

 刀を抜いておくか?

 いやでもなぁ。うーん。どうしたものか。

 

(BGM:モノノ怪 「アヤシ怪~ayashige~」)

 

 悩んでいると、一方的に見覚えのある人影がこちらに歩いてくるのが見える。

 思ったより背は低いが、服の中身は筋肉の塊だろう。

 つか魔王様、来るのが早ェ。流石すぎる。

 

「よく罠にも鳴子にもかかりませんでしたね。お見事」

 

 彼は鎧を着ていない。

 14巻124P、日常の服に逆さ長巻と脇差(彼の分類では主力小太刀)を差している。

 

「ふむ。リパブリックの兵士ではなさそうですが」

「ちょっとこれ置かせてもらうね?」

 

 そう言って、ゆっくりとコンビニのレジ袋を地面に置く。

 

「僕を殴りに来たという話ですが、退く気はありませんか?」

「織津江翁からの依頼にて、退く気など無し」

 

 僕がそう告げると、織津江大志の顔がこわばる。

 

「じいちゃんから……?」

「ルールをどうしたもんかなぁ……死ぬか気絶か、参ったで終了?」

「ふわっとしてますね」

「……んー、いいや。抜くか」

 

 僕はそう言って、二刀を抜いた。

 左半身で脇差(アイリス)を斜めに構え、右手の打刀(クコロ)は垂らすように。

 二天一流の五方の構えではない。

 対織津江大志用の、僕の最新の結論だ。

 

「二刀……」

 

 織津江大志が、怖い顔をする。

 二刀流、それ自体は総合系古流なら珍しくない。

 打刀、二刀、小太刀、棒術、薙刀の全てをやるところは普通にある。

 

「貴方より僕の方が未熟なのは重々承知。そのうえで、その未熟を埋める秘奥を織津江翁より受け取った次第。代金として孫を一発ぶん殴ることを約束したので、今はその約束を果たすのみ」

「なるほど。未熟とは言いますが、あなた強いですね」

 

 織津江大志の左手が、柄に伸びた。

 同時に、居合腰へと変化したか?

 こちらからではわからない、横から見ないと判別できないわずかな前傾姿勢。

 

 走り(がか)りからの逆袈裟、袈裟か。

 あるいは……仕込み突き・裏。

 

「『思う』だけで反応してくれる人は久しぶりです」

 

 織津江大志が微笑を浮かべる。

 僕も微笑を浮かべる。

 

「雷光流、ユーリ・ハーベラ・セルヨーネ。推して参る」

「それ、推して参るって言いたいだけですよね?」

「だって、人生一度は言ってみたいじゃないですか」

 

 僕はそう言いながら、挨拶をするような気軽さで歩き出した。

 雪を踏む音が、さくさくと足下から聞こえてくる。

 織津江大志は、微笑を苦笑に変えて。

 

「……織津江流古武術、織津江大志。推して参る」

「言ってみたかったんですね、わかります」

 

 殺気なんてない。

 思うもない。

 起こりもない。

 

 何も無い。

 

 友人が、友人に挨拶をする。

 立ち会いなんて、たったそれだけ。

 

 だから僕は。

 織津江パイセンに、挨拶をしに行くのだ。

 

 

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