ふかふかダンジョンでエンジョイ&エキサイティング! 作:RAP
朝の日差しがカーテンから差し込み、わたしの顔を照らした。優しい光の目覚まし。ゆっくりと意識を覚醒させていく。天井。わたしに与えられている個室の天井ではない。いつも仕事で見ている部屋のはずなのに、見慣れない角度だと苦笑する。柔らかな毛布の感触が、素肌を通してわたしの身体全体に伝わってくる。つまり、わたしは全裸で寝ていたということ。
わたしの隣で、法的にはわたしのご主人様こと、仕えるべき
そっと毛布をめくり、自分の裸体を確認する。わたしの意識が飛んだ後、身体を拭いていただけたのだろう。あれだけ乱れていたはずなのに、汗をそのまま放置してしまったとき特有の不快感は残っていない。反面、ひやりとした感覚をお尻の下から感じる。破瓜の痕跡とわたしの体液が中途半端にシーツに混ざり合い、乾ききっていないのだとわかる生々しい感触。
彼を起こさないようにゆっくりと身を起こす。わたしの双丘に引っかかっていた毛布がずり落ち、一糸まとわぬ上半身が露わになるが、今更なにを思うこともない。
……目の前で熟睡されているこの方は、本当にはじめてだったのだろうか?
破瓜の痛みが少しでも軽減するようにと、前戯で身体の反応を確認され続けて。
少しずつ弱点を看破され、最後の方は頭の中がぐちゃぐちゃになってしまった。
先達の皆様から事前に教えられていた閨のテクニックなんて、全然役に立たなかった。
何よりも、互いに奉仕しあう、あの姿勢。ユーリ様はシックスナインと言っていたけれど。
アレは
貴族の妾なのだから、子を産むのは当たり前。ましてや
だから避妊は無いものだと思っていたが、ユーリ様は避妊具を用意されていた。
「ざまぁが……ンンン! えっとね、卒業までは、様子見したいんだ」
よくわからない。
妾として正式に迎えるが、子を成すのは先の話にしたいらしい。
正妻を迎えるのにあと4年はかかるから、その後の話、だろうか?
ユーリ様が卒業なされる頃には、わたしは20歳を超えている。
無事に産めれば、良いのだけれど。
わたしのご先祖様は、偶然出会ったエルフに強く魅入られてしまったらしい。
『金髪碧眼』かつ『容姿端麗』かつ『頭脳明晰』な人間を迎え入れ続けよと、一族の掟にまでした。だから、わたしの家系は『金髪碧眼の容姿端麗で頭脳明晰』な人間ばかり。
そんな掟の家に生まれたわたしは、突然変異の『黒髪黒目』だった。
父親は浮気を疑い、母親は発狂しかけ、家庭は崩壊しかけた。
粗末な食事だけは貰えるが、放置プレイの
やがて食事代すら勿体ないと、奴隷商人に売り飛ばされた。
ちょっと面白かったのは、その先だ。
檻の中で素直にご飯を食べていると、奴隷商人の部下が上司を殺し、わたしを檻ごと運び出す。
元部下の人は奴隷商人として新たに独立するのだけれど、同じように部下に殺されて。
似たようなことが何度も起きて、色々な人が色々なところにわたしを連れ回す。
連れ回されている間は、大人しくしているだけでご飯を食べられる。
実家のようにまずいパンや薄いスープではなく、お腹も壊さないご飯。
色んな景色も見られるし、これは案外、良い暮らしなのではないのでしょうか。
「お前はエルフなんかじゃない。小説に出てくる、
わたしを連れ回す人は次々に代替わりして、最後は娼館に叩き売られた。
つまるところ、私はモノで。
出来損ないの失敗作で。
ゴミがごみ箱に捨てられただけ。
……この先どうなるのかなぁ、と娼館の掃除をしていたら。
お貴族様がやってきて、御法度たる
娼館主は相当ふっかけたらしいが、あっさりと支払われて。
わたしはお貴族様のメイドとして、さらに居場所が変わることになった。
娼館から買われたということは、そういう目的なわけで。
毎日慰み者になるだろうから、覚悟だけはしておくんだよと。
娼館主は金貨の入った袋の重さに笑いながら、わたしを送り出してくれた。
新しいご主人様は、お貴族様のお坊ちゃま。
変わった子供だから気をつけて、とだけ言われたけれど。
変わっているというよりは、何を考えているのか本当にわからなくて。
最初からやる事は決まっていて、道筋を辿っているだけのような。
そんな不思議な男の子だった。
でも、男の子は決してわたしの身体に手を出さず。
おいしいご飯と、綺麗な服と、温かいお風呂。
なによりも、わたしが一番やってみたかった勉強をさせてくれる。
わたしは、捨てられたゴミなんですよと。
何度も男の子に伝えたかったのだけれど。
男の子、いえ、ユーリ様は、わたしを大事に扱ってくれる。
わたしの黒髪黒目は、彼にとってとても落ち着くものらしい。
黒髪黒目だったというだけで、わたしは捨てられたのに、変な話もあるものだ。
「空いた時間で、図書室は自由に使っていいからね!」
そんなことを言ってくださるものだから。
ハサマール家の図書室にあった本は、もう全部覚えてしまった。
檻の中に長くいたから、身体を動かすのも楽しい。
なにもかもが、新鮮だ。毎日が本当に楽しい。
一人の人間として認められ。
一人の人間として愛されている。
それが、どれほど。
どれほど、わたしにとって。
笑顔を浮かべたり冗談を言うのは、いまだに苦手だ。
いまのわたしは、上手に笑えているだろうか。
ユーリ様が、お目覚めになられた。
わたしの裸を見て、恥ずかしそうに微笑を浮かべる。
おはようございます、ユーリ様。
今日はもうしばらく、眺めていてもいいですか?