ふかふかダンジョンでエンジョイ&エキサイティング!   作:RAP

14 / 153
今回はナァルちゃんの「ゴメンなさいっす♡」が乱舞していると脳内補填してください。


第14話 閑話・バーチェ

 朝の日差しがカーテンから差し込み、わたしの顔を照らした。優しい光の目覚まし。ゆっくりと意識を覚醒させていく。天井。わたしに与えられている個室の天井ではない。いつも仕事で見ている部屋のはずなのに、見慣れない角度だと苦笑する。柔らかな毛布の感触が、素肌を通してわたしの身体全体に伝わってくる。つまり、わたしは全裸で寝ていたということ。

 

 わたしの隣で、法的にはわたしのご主人様こと、仕えるべき(あるじ)のユーリ様――いや、今はもう正式な旦那様だ――が、静かな寝息を立てているのがわかる。

 

 そっと毛布をめくり、自分の裸体を確認する。わたしの意識が飛んだ後、身体を拭いていただけたのだろう。あれだけ乱れていたはずなのに、汗をそのまま放置してしまったとき特有の不快感は残っていない。反面、ひやりとした感覚をお尻の下から感じる。破瓜の痕跡とわたしの体液が中途半端にシーツに混ざり合い、乾ききっていないのだとわかる生々しい感触。

 

 彼を起こさないようにゆっくりと身を起こす。わたしの双丘に引っかかっていた毛布がずり落ち、一糸まとわぬ上半身が露わになるが、今更なにを思うこともない。

 

 ……目の前で熟睡されているこの方は、本当にはじめてだったのだろうか?

 破瓜の痛みが少しでも軽減するようにと、前戯で身体の反応を確認され続けて。

 少しずつ弱点を看破され、最後の方は頭の中がぐちゃぐちゃになってしまった。

 

 先達の皆様から事前に教えられていた閨のテクニックなんて、全然役に立たなかった。

 何よりも、互いに奉仕しあう、あの姿勢。ユーリ様はシックスナインと言っていたけれど。

 アレは()()()()()()()()()()()()()()。アレも、独創的なユーリ様の発案なのだろうか?

 

 貴族の妾なのだから、子を産むのは当たり前。ましてや()()()()コミだ。

 だから避妊は無いものだと思っていたが、ユーリ様は避妊具を用意されていた。

 

「ざまぁが……ンンン! えっとね、卒業までは、様子見したいんだ」 

 

 よくわからない。

 妾として正式に迎えるが、子を成すのは先の話にしたいらしい。

 正妻を迎えるのにあと4年はかかるから、その後の話、だろうか?

 ユーリ様が卒業なされる頃には、わたしは20歳を超えている。

 無事に産めれば、良いのだけれど。

 

 

 わたしのご先祖様は、偶然出会ったエルフに強く魅入られてしまったらしい。

 『金髪碧眼』かつ『容姿端麗』かつ『頭脳明晰』な人間を迎え入れ続けよと、一族の掟にまでした。だから、わたしの家系は『金髪碧眼の容姿端麗で頭脳明晰』な人間ばかり。

 

 そんな掟の家に生まれたわたしは、突然変異の『黒髪黒目』だった。

 父親は浮気を疑い、母親は発狂しかけ、家庭は崩壊しかけた。

 粗末な食事だけは貰えるが、放置プレイの育児放棄(ネグレクト)が続いて。

 やがて食事代すら勿体ないと、奴隷商人に売り飛ばされた。

 

 ちょっと面白かったのは、その先だ。

 檻の中で素直にご飯を食べていると、奴隷商人の部下が上司を殺し、わたしを檻ごと運び出す。

 元部下の人は奴隷商人として新たに独立するのだけれど、同じように部下に殺されて。

 似たようなことが何度も起きて、色々な人が色々なところにわたしを連れ回す。

 

 連れ回されている間は、大人しくしているだけでご飯を食べられる。

 実家のようにまずいパンや薄いスープではなく、お腹も壊さないご飯。

 色んな景色も見られるし、これは案外、良い暮らしなのではないのでしょうか。

 

「お前はエルフなんかじゃない。小説に出てくる、淫魔(サキュバス)かなんかだろうさ」

 

 わたしを連れ回す人は次々に代替わりして、最後は娼館に叩き売られた。

 

 つまるところ、私はモノで。

 出来損ないの失敗作で。

 ゴミがごみ箱に捨てられただけ。 

 

 ……この先どうなるのかなぁ、と娼館の掃除をしていたら。

 お貴族様がやってきて、御法度たる禿(かむろ)の身請けをしていくという。

 娼館主は相当ふっかけたらしいが、あっさりと支払われて。

 わたしはお貴族様のメイドとして、さらに居場所が変わることになった。

 

 娼館から買われたということは、そういう目的なわけで。

 毎日慰み者になるだろうから、覚悟だけはしておくんだよと。

 娼館主は金貨の入った袋の重さに笑いながら、わたしを送り出してくれた。

 

 

 新しいご主人様は、お貴族様のお坊ちゃま。

 変わった子供だから気をつけて、とだけ言われたけれど。

 変わっているというよりは、何を考えているのか本当にわからなくて。

 最初からやる事は決まっていて、道筋を辿っているだけのような。

 そんな不思議な男の子だった。

 

 でも、男の子は決してわたしの身体に手を出さず。

 おいしいご飯と、綺麗な服と、温かいお風呂。

 なによりも、わたしが一番やってみたかった勉強をさせてくれる。

 

 わたしは、捨てられたゴミなんですよと。

 何度も男の子に伝えたかったのだけれど。

 男の子、いえ、ユーリ様は、わたしを大事に扱ってくれる。

 わたしの黒髪黒目は、彼にとってとても落ち着くものらしい。

 黒髪黒目だったというだけで、わたしは捨てられたのに、変な話もあるものだ。  

 

「空いた時間で、図書室は自由に使っていいからね!」

 

 そんなことを言ってくださるものだから。

 ハサマール家の図書室にあった本は、もう全部覚えてしまった。

 檻の中に長くいたから、身体を動かすのも楽しい。

 なにもかもが、新鮮だ。毎日が本当に楽しい。

 

 

 一人の人間として認められ。

 一人の人間として愛されている。

 

 それが、どれほど。

 どれほど、わたしにとって。

 

 

 笑顔を浮かべたり冗談を言うのは、いまだに苦手だ。

 いまのわたしは、上手に笑えているだろうか。

 

 ユーリ様が、お目覚めになられた。

 わたしの裸を見て、恥ずかしそうに微笑を浮かべる。

 

 おはようございます、ユーリ様。

 今日はもうしばらく、眺めていてもいいですか?

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。