ふかふかダンジョンでエンジョイ&エキサイティング! 作:RAP
僕達は禁忌案の説明のために内閣府庁舎へと訪れ、指定された待合室で待っていた。
「いやーそれが案外まずくてさ、ドラゴンの肉。笑い話にしかならないよ」
「ドラゴンやクラーケンが美味しかったら、簡単に絶滅してしまうのでは?」
「違いない。ドラゴンステーキを食べるために、連中を絶滅させる自信がある」
彼は室内を見渡すように確認してから、挨拶もそこそこに向かいの席へと座る。
「あ、あのー、エンシェント・ワン様。政府の決定事項をお伝えします」
「……聞きましょう」
「最新鋭の
「はぁ?」
思わず僕が聞き返す。
スーツ姿の男は、怯えた様子で続ける。
「へ、変な真似は考えないでくださいね? どのみちエンシェント・ワンは人間の為に生きるよう、最初から設計されております。時期が早まっただけで、これはそもそも規定事項なのです」
最初から彼女を研究するつもりだった。
彼女に利用価値があるから利用していたが、そうも言ってられなくなった。
偉い人達の既得権益が以下略、権力が以下略、資産が以下略の為に、エンシェント・ワンは遅かれ早かれホルマリン漬けの研究材料となる。
男が見ていた室内のポイントを再確認してみる。
先ほどまでは何の変哲も無い壁や柱、背景の一部だったものに、小型カメラのレンズのようなものが生えている。
二桁単位のレーザー発射口が、僕達二人を見ている。
「……別れの言葉ぐらいは、許されますか?」
「なっ、何かあれば、正当防衛としてレーザーを撃ちますので……」
男は新人か何かで、生け贄の羊というだけ。
ここで怒りにまかせて彼を殺しても、何の意味も無い。
そして解剖は、死体が相手でもいい。
「お兄さん。二つ、お願いが」
「……なんだって聞くよ。言って」
「
「
向かいの席に座っている男は、何のことかわからず首を傾げている。
『お母さん』も、『その二つ』も、彼には意味不明だろう。
僕は彼女の言葉に、寂しく笑う。
まさか、こんな使い方をするだなんて、なぁ。
「おいで、いっちゃん」
「はい。
「ダーリンときたか」
僕は苦笑する。
彼女は、僕の頭を抱きかかえる。
「
返礼として、僕は
「
彼女は嬉しそうに笑ってから――私を殺して、という一つ目の願いを強く思い、顔に出しながら――僕に口づけをした。
僕は、右手に隠し持っていた
「ひいっ!?」
向かいの席のスーツ男は、愛の言葉から突然の刺殺に驚愕の悲鳴をあげた。
彼女の口から溢れ出てくる血が、僕の口の中に入ってくる。
僕の背が少しだけ短くなる。
身体は丸みを帯び、乳房や尻が膨らみ、腰のくびれが強まり、銀の髪が長く伸びる。
私の体内に疑似膣と疑似子宮が生成され、陰茎や陰嚢が体内に格納された。
心臓と肺を損傷した
私の体内のナノマシンが、エンシェント・ワンの受精卵を疑似子宮内に運び込み、子宮内膜に強引に着床させた。
子宮内膜に受精卵が着床することを、医学的には妊娠と呼ぶ。
『ゴシュジンサマのユーリ。暫くは男性体に戻れない』
『わかっています』
私は立ち上がりながら、短刀を引き抜く。
この状態で短刀を抜くと肺の空気が全部出て、呼吸困難となり短時間で死に至る。
上半身が血で染まった
彼女の身体を、灰も残さず燃やし尽くしたくなる。
でもそれをやると、生きている亜人達を全員解剖されかねない。
業腹だけど、解剖もホルマリン漬けも連中の好きにさせるしかない。
どうせ奴らは、何も手に入れることができない。
「れっ、レーザー! レーザーを!」
スーツ姿の男が叫ぶ。
文字通りの光の速さでレーザーが私の身体を貫こうとしたまさにその瞬間、私を一万年前の世界に飛ばした存在が、私を転移させた。
だから数十ものレーザー光線は、何も無い空間を貫くことになった。
* * *
護衛の男がお母さんになれと言われ、
そうしたら、護衛の男が女になった。
正当防衛としてレーザーで反撃したら、部屋の中からかき消えた。
彼の質量も熱源も何もかも、大量のセンサー群の探知範囲から突如消失した。
録画記録は、新人職員が見た光景と全く同じだった。
新人職員は胃壁に穴が開き、入院治療するハメになった。
何十年か後、偉大なる
何も無かった。
小地球にも、
そういうことになった。
だから人類は何事もなく、約150年以上、幸せな日々を過ごすことができた。
人類は150年以上も、現実逃避をすることができた。