ふかふかダンジョンでエンジョイ&エキサイティング!   作:RAP

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第146話 原作時間軸・帰還

 

【アップデート内容のご案内】

 

・剣技を知らないボーゲンにセイは驚きますがセイも似たようなものです

・『思う』の無い行動にセイは対応できません

・セイはボーゲンに繝輔Ν繝懊ャ繧ウ縺ォ縺輔l縺セ縺励◆

 

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 * * *

 

 

 セイちゃんの涙目を堪能していいのは僕だけだって言ってんだろボーゲンぶっ殺すぞ!

 

 百のフェイントというか、百斬無斬の(ことわり)に創世神は固執してる雰囲気がある。でもそれって『フェイントがフェイントだとわかる人』以上、『フェイントとか関係無い領域の人』未満が相手じゃないと通用しないんだよね。

 

 究極的には、フェイントは不要になる。

 起こりも『思う』も無い、防御反射を越えた世界。

 ただでさえ回避もガードもできないのに、触れた瞬間勝負が終わる。

 術理の行き着いた先は、そういう世界だ。

 

 セイちゃんの聖剣は剣の術理の大半を投げ捨ててる。

 重さとリーチのある棍棒代わりにしか使ってない。

 

 だから、セイちゃん相手に小細工はいらない。

 カタナちゃんには小細工が必要。

 たったそれだけの違い。

 

 ていうかセイちゃん弱体化してない?

 まぁいいけど。

 僕の世界線は、もう詰め将棋の段階に入ってるから。

 

 

 ――ふかふかダンジョンver7.317 に更新完了しました。

 

 

 * * *

 

 

 アイギス港街の、セルヨーネ侯爵邸。

 随分懐かしいな、と思いながら僕は邸内に入っていく。

 門の時点で門番が涙目で報告に走って行ったから、僕の帰還は既に伝わっていることだろう。

 

「ユーリ!」

「ユーリ様……ご無事で」

「ユーリ君!」

 

 セスレ、バーチェ、グラス。

 僕に気がついた嫁達が、出迎えに来てくれた。

 

「ただいま。今の状況を教えて……」

「やだあああああああ」

 

 ドタドタと足音を立てながら、物凄い勢いで銀髪ロングヘアの女性、というかどう見ても僕を女性にした感じの人、が奥から全力疾走してきた。

 アレか。女として生まれた平行宇宙の僕か。

 お面を外した黒面銀毛ですわね。

 

 彼女はずざざーっと音をさせながらスライディングして僕の足にしがみついてきた。

 ひしっと僕の足を抱きかかえたまま、ここから動かないぞ、という意思を見せる。

 ……まだ玄関から邸内エリアに入った直後なんですけど。

 

「……ええと?」

「あー。彼女は、ユーリ女侯爵の略で、ゆりこちゃん。あなたが不在だった間、あなたの代わりに頑張ってくれてた……んだけど……」

「まだ帰りたくないぃぃぃ、こっちで友達作るうううぅぅぅ!」

「えええ……」

 

 僕の足にしがみつきながら、喚く彼女。

 セスレは苦笑する。

 

「ちょっとやりすぎちゃったみたいなのよ、彼女」

「やりすぎちゃった?」

「ごめんなざいいいいい」

 

 ゆりこちゃんが、涙目になる。

 自分と似た顔が泣いているのは、変な気分だ。

 

「とりあえず、応接室へ。シャワー……ええと、風呂も食事も済んでるから、飲み物だけお願い」

 

 一体なにやらかしたんだ、この女。

 僕がやれやれ系主人公になっても許される展開?

 

 

 * * *

 

 

 つまり、こうだ。

 原作では、逆張り個体こと娼婦のイライザが、【死の森】前要塞から無事に脱出してジャンパーティに保護された。

 それがきっかけで【死の森】前要塞を奪還すべく、嘆きの街から教会軍500と冒険者200が出撃。即席破城戦車まで急造で用意して、色々あって敗退する形になるのだが……。

 

 ゆりこちゃんは脱出者を許さない作戦を提示し、なおかつオーク帝国の使者も殺してしまった。

 『子供を連れた娼婦とか狙い目』とか余計な台詞まで言ってしまった。

 だから娼婦のイライザは子供ごと死亡。要塞内の人間も亜人も大量に死亡。

 

 嘆きの街に情報が伝わった頃には、もはや奪還どころの話ではなく。

 【死の森】前要塞と嘆きの街の中間にある川の防衛ラインもがっつり固められ、原作と違って錘連弩(おもりれんど)を亜人達が使用許可するレベルに。

 亜人達は要塞のバリスタを一つも壊すことなく占拠に成功したため、原作よりも防衛力は高い。

 人間達は、迂闊に奪還作戦を実行できなくなってしまった。

 

 【死の森】前要塞で人間も亜人も大量に死んだため、亜人は防御だけで手一杯になった。

 オークは人間女の捕虜を、アラクネは人間男の捕虜を欲していたが、死兵との戦いの結果、憎悪が憎悪を呼ぶこととなり、人間達は全員『殺すなら殺せゴルァ』モードに突入。

 想定の半分どころか10分の1以下の捕虜数、かろうじて生きている捕虜も四肢欠損または心が死んでいる人間が大半で、捕虜として活用するより彼らは解放した方が良いのではと亜人達が悩んでいるらしい。

 

 そして赤帽同盟は、【死の森】前要塞戦において先陣を切ったのは良いが、主戦場は明かりもある上に狭い城壁内部。

 速度差を活かせず、白面金毛ほど強い個体が多いわけでもなく、種族の良さを発揮できない。

 だから思ったより人間の兵士に押されてしまい、赤帽同盟は大きく衰退することになった。

 

 ただでさえ犬狼部隊が不定期に拠点を襲撃、レッドキャップ過激派を殺し回っているためにレッドキャップの過激派の数は減っていた。

 さらに今回の作戦で大きく数を減らしてしまったため、オーク帝国在住の穏健派レッドキャップと数が逆転。赤帽同盟の長老はまだ生きているが、穏健派に傾きつつあるという。

  

 ……結果的には、悪くないのでは?

 確かに死者は多かったのかもしれないが、計画全体として見れば……。

 

「死者が多すぎて亜人も私にドン引きしちゃったんでずう"ぅぅぅ」

 

 ゆりこちゃんがギャン泣きしている。

 

「亜人の友達を作るつもりだったのにぃぃぃ」

「何を言ってるんだ?」

 

 思わず素で突っ込んでしまった。

 ああ、作戦で頑張れば亜人にちやほやされて友人が増えると思ってたのね……。

 

「はぁ……」

 

 ソファに座っていた僕は、片手で頭を抱える。

 

「ジャンハーレムに入るのは解釈違いなんだっけ?」

「はいぃぃ」

「この世界線はクロス君が別パーティだから、開き直ってもいいんじゃ」

「そっとしておきたいんですぅぅ」

「ボーゲンの嫁にもなれるけど」

「あの人は弓しか見てないぃぃぃ」

 

 原作のバトさんに謝ろう?

 キミの前世、本当に僕なの?

 

「はぁ……世界一の美少女男、ちょっとあり得ない美形、白面金毛ことプラチナの彼氏とかどう? ワインちゃん以外は死んでるしブラウィドは僕の嫁だから、単純に彼の二人目の妻ってことになるけど、それでもよければっ!?」

 

 ずずい。

 僕の目の前に、ゆりこちゃんの真剣な顔があった。

 

「詳しく……説明してください。いま、私は冷静さを欠こうとしています」

 

 あなた、僕の前で冷静だったことありました?

 僕の目を見ながら、ゆりこちゃんは続ける。

 

「白面金毛は素顔すら見ずに殺しちゃったんです。詳しくお願いします」

「言った通りだよ? 今は中央大陸で聖教会の一番腐った部分に、身体を張って侵入してる。口もお尻もプライドも、何もかも犠牲にして、教皇を殺す為に毎晩頑張ってるはず」

「……そんな……レッドキャップに口でさせるのは屈辱的な行為のはずなのに」

「だからこそ、だよ。プラチナは貴女が僕ではないと一目で見抜いてしまうかもしれないけれど、最後は受け入れてくれるはず。なんだったら、そのままハーベラ領を統治しておいてもらえると助かるかな。中央大陸に戻るまで、まだもう少しかかると思うから」

「つまり、私はこれから中央大陸に行って教皇を殺せば良いのですね」

 

 そういう話だったっけ?

 僕はため息一つ。

 

「元の平行宇宙に帰らなくていいの?」

「そもそも帰る方法がわかりません。友人どころか彼氏まで作れるのなら、こっちの世界に骨を(うず)める覚悟です」

「そ、そう」

 

 前世が同じとはいえ、彼女は僕と違って空間把握の鍛錬をしていない。

 だから三次元視覚を持っておらず、四次元空間に対応できない。

 四次元空間に対応できないから、転移ができない。

 

「わかった。じゃあ、身体を張ってメンタルがズタボロになってるはずの白面金毛(プラチナ)を、身体を張って慰めるのが貴女の新しい任務ってことで、どう?」

「……からだを……はって……なぐさめる……」

「マジ美形。男の()とかそんなレベルじゃなくてマジ美少女なのに男。あと僕に仕えるってことは正式にセルヨーネ侯爵家の一員になるから、化粧品も使いたい放題……」

 

 がしっ。

 両肩を強く掴まれる。

 

「男の私。たった今より、女の私はあなたに忠誠を誓います。私は女侯爵として事務処理を孤独にこなしてきたので、ハーベラ領の統治程度、とるにたりません」

「そ、そう。ハーベラ領の本邸にはアドリ=ブヨーワ公爵家から定期的に化粧品が送られてくるはずだから、好きに使っていいよ」

「イエス、ユア・マジェスティ」

「それは大陸制覇しろってこと?」

 

 僕は苦笑する。

 マジェスティは、皇帝とか、そういう立場の人に対して使う言葉だ。

 

「その方が早くないですか? なんだったら亜人側も統治しちゃいましょう。世界征服RTA、協力します」

「はぁ……行きは送ってあげるから、一段落するまでに彼と恋人同士になるといいさ。深き不可知の迷宮戦だけ総掛かりで片付けよう。それでいい?」

「行きを送る……とは?」

「そのままの言葉だよ。中央大陸に転移させるから、着替えとか準備しといて」

 

 

 * * *

 

 

 しかし、まいったな。

 【死の森】前要塞の奪還戦でわちゃわちゃやってる時に、ヒィロを殺すつもりだったけど。

 

 あー、待てよ?

 【死の森】前要塞に、僕が直接乗り込めばいいのか。

 

 ブラウィドも要塞に移動してるのかな?

 まだ死の森にいるのかな?

 明日、会いに行ってみるか。

 

「ユーリ君、なんか凄く落ち着いてるね。何かあったの?」

 

 グラスちゃんが、僕に声をかけてくれる。

 

「あ、うん。終わりが見えてきたからだと思うよ、グラスちゃん」

 

 子供を産んだからオキシトシンの分泌量が増えて母性本能が強くなっているからかもしれない。

 ……なんて冗談は、話せるはずもなく。

 

 僕は、曖昧に微笑んだ。

 

 

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