ふかふかダンジョンでエンジョイ&エキサイティング! 作:RAP
人間と亜人は完全に和解し、手を取り合うに至った。
オーク帝国の悲運は、貨幣経済を含め人間社会と混ざり合う体制を整えたあと、役割を終えたとばかりにオークエンペラー・テオが急逝してしまったことだ。
そして、急成長しすぎたツケがオーク帝国を襲った。
致命的なまでの人材不足。
政治的な後継者も、国を回す人員も、何もかもが足りていなかった。
オークヒーロー・ヒィロが生きていれば、テオの後を継いだことだろう。
サイエンは亜人ではないうえに、補佐向きの人材。
ユーリとレプラの娘は将来有望だったが、あまりに幼すぎた。
結局のところ、オーク帝国は一地方として人間社会に組み込まれることになる。
偶然の出会いの結果とはいえ、過去のテオ達が冒険者パーティ先導者を崩壊させたことがオーク帝国の滅亡の遠因となった。
しかし冒険者パーティ先導者の崩壊原因は、ユーリとカタナのいちゃラブだった。
原因の根っこをさらに辿っていくと『ユーリがこの世界に生まれたから』という理由になる。
この世界線では多くの人物が原作とは全く違う道筋を辿ったが、結局のところユーリが生まれたせいだ。
* * *
セルヨーネ侯爵家は、オーク帝国崩壊の予兆を悟った時から完全に開き直ることにした。
バーピィチピット聖王国を乗っ取り、それを足がかりとして中央大陸を支配することにした。
暗黒大陸はもう制覇したも同然なので、セルヨーネ侯爵家の世界征服計画の実行である。
バーピィチピット聖王国の国王がユーリに出した条件は『血筋だけ残したい。正妻でなく妾で構わないから、行き遅れの第一王女を嫁に貰ってあげてください何でもします』だった。
なので第一王女が妾に追加され、嫁勢の説得に負けてマーメイドのミツカも妾になったので、合計で正妻2、側室3、妾7、亜人3の嫁15人。
ハーレムにも限界があるからここでストップ、今後群がってくる女性は全員ヤリ捨てるという酷い宣言をユーリ国王はおこなった。
前世地球的な感覚では、男として最低最悪の宣言をしたユーリ国王だった。
だが、この世界では最終戦闘において神々の加護を得た神の使徒扱い。
そして英雄付けという文化すらあり、創世神も「ごちゃごちゃ抜かしてねぇで孕ませろ」という性格。敬虔な信徒達は笑顔でヤリ捨てて下さいと懇願してくる。
種付けおじさんって、わりと地獄なのではないだろうか。
沢山の女性を抱きながらも、ユーリは作業で女性を抱くのはもうイヤだ、と内心で泣き始めた。
しかし禁忌を発動させて大量殺人をしたのは自分なので、淡々と種付けおじさんをした。
マムが大空に出現するだけで、全ての他国がひれ伏して降伏した。
有り余る財力もあったので、インフラを片っ端から整えて繋げていった。
気がつくと統一政権が樹立しており、中央大陸も暗黒大陸も制覇するバーピィチピット聖皇国のユーリ皇帝となっていた。
戦闘ほぼ無しの無血開城。
レジスタンスは、神の使徒に刃向かうガチの神敵扱いになる。だから誰も抵抗しない。
圧政どころか、聖皇国は様々な技術革新で国全体の幸福度をあげていく。
産めよ増やせよ地に満ちよ。
仕事は無限にあり、やることも無限にあり、聖皇国民は安心して子を増やすことができた。
技術革新も含め、物凄い勢いで人類は発展していく。
* * *
最終戦闘から15年程が経過した。
セイの娘のイチが、スィーティという名の娘を産んだ頃。
中央大陸と暗黒大陸の間に、高速道路を兼ねた橋がかけられた。
この橋はクラーケンが近づけないような工夫がされていた。
人類と共存できない害鳥や、攻撃的な飛竜達は全て駆逐された。
温厚な鳥類や飛竜しか残らなかったので、人類は空を手に入れた。
過激派残党もいるにはいたが、クコロの遺児・ユウが片っ端から皆殺しにしていた。
雷光流を学ぶ者は多かったが、初代ユーリの後を継ぐ二代としてユウが指名された。
* * *
子が増え、孫も増え、同時に少しずつユーリの嫁も死んでいった。
癌をはじめとして、乗り越えられない病気は無数にある。
死因は様々だったが、みんな幸せだったとユーリに告げて亡くなった。
セイとバトが死んだ時のユーリの憔悴は酷いものだった。
文字通り丸一日泣き続け、暫く引きずっていた。
少しずつ、少しずつユーリの嫁は減っていき。
やがて、ユーリの番が回ってきた。
* * *
「グラスちゃん」
「なぁに、ユーリ君」
ベッドで寝たきりのお爺ちゃんとなっていたユーリの手の上に、しわしわのお婆ちゃんとなっていたグラスの手が重なった。
「先に行ったみんなに会ってくる。グラスちゃんは、できるだけ後から来てね」
「はい、ユーリ君。幸せでしたか?」
ユーリは天井を見上げて、暫く考え込んだ。
「……そうだね。
色々あったな、とユーリは思う。
「ああ、でも。もう、ハーレムはお腹いっぱい」
「まぁ、ユーリ君ったら」
「次の人生があるようなら、嫁は一人に絞るよ……」
「正直無理そうですけど」
「ははっ、違いない」
満足げな笑みを浮かべながら、ユーリは目を閉じた。
「……楽しかったなぁ……」
それが、ユーリの遺言となった。
* * *
バーピィチピット聖皇国の統一政権は300年程度続いたが、それが限界だった。
国は分裂し、覇を競い合い、血みどろの戦争がはじまったり終わったりした。
やがて、バーピィチピット聖皇国という名前すら歴史の影に消えた。
数多くの国が興り、滅亡する歴史が繰り返された。
面白いことに、国と国同士の戦争までは良かったが、それが全地球規模に広がりそうな気配を見せた瞬間に、内燃機関、外燃機関、電気、火薬の全てが使用不能となった。
極端に人類は数を減らし、文明は原始時代にまき戻り、歴史の全てが最初からやり直しになる。
そういった事象が、数千年、あるいは数万年間隔で何度も繰り返された。
それはもはや、必然だった。
何度でも繰り返し、何度でも立ち直った。
人類は愚かだったが、しぶとかった。
* * *
「もしかして、これが例のヤツじゃない?」
「伝承に残る賢者の杖か……これだけ新しく見える」
地下深く、洞窟の奥。
全くの偶然から、塔のような構造になっている広い空間を見つけることができた。
その空間に、蔦が絡みついているのに杖部分は新品同様という、不思議なものが飾られている。
周囲はボロボロで、何一つまともなモノは残っていないのに、これだけが新しい。
彼らは、冒険者だろうか。
男が一人に、女が三人。
二刀を腰に佩き、弓を背負い、革鎧を着た銀髪の青年。
中性的な顔立ちのその青年は、杖の台座を調べはじめる。
剣と盾を持ち、同じく革鎧をきた金髪ポニーテールの少女。
ポニーテールに結ばれた青いリボンが鮮やかだ。
メイスと小型の盾を持ち、ローブを着た小柄な少女が後を追う。
紫色の髪に、薄紫色の瞳。
「まっ、待って、待って下さいユーリ様、クコロ様ぁ」
「ゆっくり来なさいアイリス、貴女は体力無いんだから」
クコロと呼ばれた少女は、小柄な少女に微笑む。
ユーリと呼ばれた青年は、台座の埃を慎重に払う。
「数十万年以上前の古代文字……? なんて書いてあるんだろう。バーチェ、わかる?」
「ええと……」
バーチェと呼ばれた黒髪ロングヘアの眼鏡少女が、台座に近づく。
背負った弓は大きく、本格派だ。
「前半は『楽しい、面白い、味わう』といった意味ですね。後半は……『興奮、刺激的、わくわくする』
「なんかの標語?」
「これ以上は不明です」
ユーリとバーチェが、土台を調べ続ける。
クコロは塔のような空間の、さらに中央にある塔に魅入っていた。
「凄い。ここは地下なのに、陽の光がさしこんで洞窟を照らしてる。どうなってるんだろう」
「ガラスや鏡の類は全部朽ち果ててボロボロなのに、よくわからないです」
クコロの隣に並んだアイリスが、ほへー、と声をあげる。
ユーリは立ち上がって、ぐぐっと背伸びをした。
「よし、進んでみよう! ここの調査だけでも、冒険者ランクがあがるはず!」
「昇格すれば報酬が5パーセントアップだっけ? 世知辛い制度よね……」
クコロのため息。
バーチェが、眼鏡をクイッとさせる。
「さらに昇格すれば報酬10パーセントアップ、宿泊と風呂が無料です」
「宿泊と風呂無料はでかい」
「でかいわね」
「頑張ります!」
この時代、男女比が2:8と崩れ、一夫多妻のハーレムが推奨されていた。
だから、男の子供を産むと助成金を貰える。
妊娠しただけでも、保護は手厚い。
必然的に男女間のセックス回数が増える。
セックスの回数が増えるということは、宿泊と風呂の回数も増える。
なので無料は、大変魅力的だった。
「ユーリはもっと、私達を気軽に抱けばいいのに」
クコロの台詞に、ユーリは苦笑する。
「いやー、なんかさ、流れ作業的に女性を抱きたくないなって……うん?」
「どうしたの?」
ユーリは小首を傾げる。
「昔、同じことを考えたような気がして」
「いえ、その台詞は初耳ですが」
バーチェが、眼鏡をクイッとさせる。
アイリスが、ひょこひょこ歩きながら首を傾げる。
「さっきの杖じゃないですけど、ユーリ様には私達を楽しんで抱いて貰えればとは思います。私の身体だと、興奮できないかもしれませんが」
「そんなことはないよ。クコロも、バーチェも、アイリスも、みんな可愛いので興奮します」
「……い、いきなり言われると、照れるんだけどっ!」
顔を真っ赤にするクコロ。
話を聞いていたバーチェが、ぽつりと言う。
「冒険も、セックスも、同じなのでは? 『楽しい、面白い、味わう』『興奮、刺激的、わくわくする』」
「女体の冒険という意味では、セックスも同じかもね」
「今の言葉風に言えば、エンジョイ・アンド・エキサイティングでしょうか」
「エンジョイ・アンド・エキサイティングねぇ」
やれやれ顔で、ユーリは遠い目をする。
女の子を沢山侍らせるのは、なんかお腹いっぱいな、奇妙な感覚があった。
表だって口には出せないが、個人的には一夫一妻でも構わない。
もちろん口に出すと白い目で見られるし怒られる。人類全体への、反逆者扱いだ。
視界の端、障害物のような岩の影。
フードつきのコートを羽織ったモグラみたいな生物が数匹、顔を覗かせていた。
「きゅっきゅー!」
「ふぁーっ!」
「あ、『ふかふか』です」
アイリスが、モグラを見て報告する。
彼らはダンジョンを作る、ふかふかと呼ばれている生物だ。
「ここは『ふかふかダンジョン』なの? そんな特徴は無かったけど」
「彼らも来たばかりなのではないですか? これから改造するのではないでしょうか」
クコロとバーチェが、小首を傾げる。
ふかふか達のダンジョンは、自然洞窟ではない、人工物とわかる特徴的なものが多い。
「なんか、ふかふか達が手招きしてますよ? 可愛いです!」
「行ってみよう」
ふかふか達の可愛さに喜ぶアイリス。
ユーリは、彼らの招待を受けて進むと決意した。
進んでいくと、岩壁から鉄の壁に通路が変化していった。
神々の許可が再び下りたが、まだ作り方がわからないと言われている電気の明かり。
その電気の明かりが、地下通路を照らしていた。
「だ、大発見ですね……明かりの仕組みだけでもわかれば大金持ちです」
バーチェの声が、震えている。
やがて、ふかふか達はユーリ達一行をある部屋に案内した。
鉄の壁で出来た部屋の中央。
透明で大きな円筒状のガラス筒が鎮座しており、その中に緑色の液体が詰まっている。
そして、その緑色の液体の中。
金髪の、腰まである長い髪。
長耳の全裸少女が、液体に浸かりながら眠り続けていた。
「……伝承のエルフ?」
唖然としたクコロが、間抜けな声をあげる。
腰に手をあてたユーリが、円筒内で眠り続ける伝承のエルフを眺める。
すると、伝承のエルフ少女がゆっくりと目を見開いた。
文献の中にしかいなかったはずのエルフが、ユーリを見て微笑を浮かべ、喋った。
「お待ちしておりました。愛しい人」
くふ、とユーリは思わず笑った。
もしかしたら、男女比が突然崩れた理由がわかるかもしれない。
もしかしたら、未知の、わくわくする冒険が待っているかもしれない。
もしかしたら。もしかしたら。もしかしたら……!
ユーリの口角があがる。にやけ顔が止まらない。
「たーのしくなってきたァ……」
これだよ、これ。
僕は冒険者なんだ!
「ふかふかダンジョンでエンジョイ・アンド・エキサイティング、か」
興奮を楽しむべく、ユーリは前に歩き始めた。
――新しい物語が、はじまる。
原作が完結していないため、原作の更新に合わせてのんびり更新するか、オリジナルのエンディングを迎えるか、どちらかを選ぶ必要がありました。
2025年9月19日に最新原作72話を有料で読んだ時にオリジナルのエンディングに向かうべきだと確信したので、キチンと物語を閉じる方向性に舵をきりました。
原作へのリスペクトとして、もっとR-18シーンを入れる予定でしたが、自分の筆力では皆さんを興奮させることが難しかったため、後半のエロシーンはさっくり目に調整しました。
この二次創作の読者を少しでも増やそうと努力する場合、以下の修正が考えられます。
・「15巻36P」みたいな表記を修正する
・原作キャラの解像度をもっとあげる
・もっと読みやすい文章に修正する
・原作を知らずに読む人のために修正する(不可能)
ただでさえ捜索掲示板で【除外条件】に含まれる確率が高いものが詰め込まれているこの二次創作の、表面上だけ取り繕って修正してもあまり意味はないと考えています。
いつか読み直した際に、読みにくい文章だと感じた部分を焦らず修正するぐらいにとどめるつもりです。
最後までお付き合いしてくれた読者の皆さんに、無限の感謝を。
この二次創作のように、派手で格好良い殺陣(アクション)を全否定した、一瞬でほぼ全てが終わる戦闘ばかりの一次創作を書きたいなぁとぼんやり考えています。
それではまたいつか、どこかで会いましょう。
P.S. 無個性の合気使いが戦うヒロアカ二次創作も時間があれば書いてみたいです。