ふかふかダンジョンでエンジョイ&エキサイティング!   作:RAP

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第24話 原作開始前・奥義伝授

 セルヨーネ侯爵家の屋敷内で僕がどのような会話をビケワ嬢としたのか、本人からも使用人達からも報告が上に伝わっていることだろう。連中から見れば、僕は権力の前に心が折れかけている小僧でしかない。ビケワ嬢が栄光を手にすると共に僕は彼女の前に屈して、その後はセルヨーネ家に財をもたらすだけの傀儡人生を送ることになるのだ。

 哀れなグラスちゃんは、ビジョレ兄様の側室として子宮破壊レベルの扱いを受けてしまうに違いない。父親が女の子の子宮壊して遊んでるんなら息子も多分やるやろ。はー、おクソですわ。

 カモン、白面金毛! 今ならすぐにセルヨーネ侯爵邸に案内するよ!

 

 現時点におけるユニコーンの逸話を調査してみたが、やはり「暗黒大陸で貴族子女がユニコーンになにかした」という話は今のところ無い。今が原作開始前であることを考慮するなら、ビケワ嬢の旅路は創世神の加護を得た絶対安全の観光レベルになると思われる。であるのなら、ビケワ嬢が彼の地にて伝説的な偉業を成し遂げる確率は高い。

 

 最低半年。仮に()()()()()()として、その後に再度()()()()()()、追加でさらに半年。約一年ぐらいは稼げる。

 ユニコーントラップには博打要素もあるが、僕は「仔馬を誘拐しろ」なんて一言も告げちゃいない。勝算は高い、と思う。最悪の場合は将来的にユニコーンの馬刺しを大量生産する覚悟を決めるだけである。……馬刺し、か。醤油は開発するつもりだから、刻みニンニクと生姜だな。

 

 対セルヨーネ侯爵家への仕込みはまだまだ続く。

 武器開発や鍛錬をはじめとする戦力強化も必要だし、愛息のことも考えてあげたい。

 

 敵は殺す。女は犯す。

 「両方」やらなくっちゃあならないってのが僕のつらいところだな。

 覚悟はいいか? 僕はできてる。

 

 僕はブローノ・ブチャラティ兄貴のようなキメ顔で思考を巡らせていた。

 無理に犯さなくてもいいけど、エンジョイ&エキサイティングはしたいよね。

 

 

 ここは貴族寮。僕が住んでいる部屋の居間に相当する場所。

 問題があるとすれば、現時点の僕の姿勢だろうか。

 

 両腕を広げ、やや前傾姿勢をとり、足は交差気味に構えて。

 その上で、右手に金色の風車を持って、それを眺めている。

 

 原作9巻をお持ちの方は、白面金毛の「百斬無斬の理」ページの左下コマを見て欲しい。

 『膨大なフェイントで混乱させてからの無拍子』をした後の白面金毛ポーズである。

 そのポーズのまま、槍を風車に置き換えたのがいまの僕です。

 

 僕からすると「そこまでフェイントを重ねてもあんまり意味が無い」のだが、原作には「白面金毛が何をしているのか気がつけたアラクネちゃんは驚いた。気がつけたアラクネちゃんも凄い」とわざわざ書いてある。やっぱりこの世界には術理的なものが欠けている。亜人達が近接戦時に拳打を想定していない理由が本気でわからない。

 その意味では、ジャン君はジャン君で白面金毛のマウントをとったり、地面にうつ伏せにして制圧することに成功しているのに、創世神が力説するところの「即時無力化」を実行できていない。オサン流なにやってんの? RIZINとかのルールあり格闘技だから後頭部への攻撃は禁止です、とか言わないよね? ジャン君、脱力を用いて白面金毛を地面に()()()()あの瞬間、腕なり肘なり膝なりをアイツの後頸部に添えて頸骨を折っておくべきだったんだ。そうすればふかダンは完結して……完結? ごめんジャン君、前言撤回。アレはアレでいいや。僕が許そう。許した。

 

 亜人側のネームドの英雄たる白面金毛は、『最強のレッドキャップは害獣駆除に奔走する 〜頭おかしい連中が絶滅戦争仕掛けてきてるので一匹残らず駆逐しますね〜』という物語の主人公だ。主人公だから当然強い。レッドキャップらしからぬ腕力の持ち主だし、神が造形したかのようなイケメンだし、当然だがハーレムも充実している。

 将来的に想定しうる僕の人生の流れを大きく「人類ルート」「亜人ルート」「共存ルート」と分けた場合、亜人ルート以外では白面金毛を絶対に殺す必要があるし、仮に亜人ルートを選んだとしてもわりとウザそうだから()()()()()()()()殺してさしあげて構わないとも思ってる。

 亜人ルートになったとしてもその時僕の隣にいる人間の嫁さん達と離縁する気は全く無いから、もし僕の嫁さん達に対して殺意のひとかけらでも向けたらその瞬間から僕は「赤帽同盟の殲滅」に思考を切り替えるだろう。その時は、日本住血吸虫病を根絶するレベルで徹底的にやる。全リミッターを解除して害虫の駆除をする。

 

 

「……あの、ユーリ様……お話があるとのことでしたが……」

「こう? こうですかユーリ様?」

 

 僕が白面金毛の謎ポーズのままシリアス顔で風車を見つめている光景に、バーチェが困り顔で声をかけてくる。

 アイリスはアイリスで、僕の白面金毛ポーズを真似している。

 

「ああ、ごめんね。ちょっと考え事をしててさ」

 

 風車、というか魔法がマジで良くわかんないんだ。どうすりゃいいんだろこれ。

 『そういう力が「ある」と知って「見よう」とすれば見えるし「掴もう」と思えば掴める』とエルフのアールフさんは栗結パイセンに語っていた。

 さらに言えば、僕は栗結パイセンより次元的に一つぐらい上位の存在だと思うから、その意味でも彼よりは気づきを得やすい、はずなのだけれど。

 

 どーゆーことでしょうか三尋木プロ?

 わっかんねー。全てがわかんねー。

 僕の脳内で「咲-Saki-」の三尋木咏(みひろぎうた)がそう答える。

 

 

「大きな仕込みを終えたから、次の仕込みに移ろうと思う」

 

 姿勢を直して、金色の風車をテーブルに置く。

 僕は二人の前に立ち、話を続ける。

 

「僕は前から言っていたよね。仮想敵は、人間と亜人とモンスター、その三種だと」

 

 僕は指を1本立て、2本立て、3本立てる。

 

「まずは人間。近いうちに亜人。その後にモンスター。君たちが短剣術をはじめ、色々学んでいるのは承知だ。だが、それでもなお、『殺す』という行為への忌避感を徹底的に消去しておきたい。僕達はもう既に、死ぬか殺すかの戦争に巻き込まれている。僕は殺せる。でも僕だけじゃ駄目だ。君たちにも、殺せるようになっておいてもらいたい」

 

 バーチェは真剣な顔で聞いている。アイリスは謎のドヤ顔で聞いている。

 アイリスさん? 聞いてます?

 

「ビジョレ・ハーベラ・セルヨーネ侯爵令息の周囲にいる複数の取り巻き達。そこからソーコラ・テキト・モーブ男爵令息を除いた全員を今回のターゲットとして消去していく。ただし」

「ただし?」

 

 バーチェの問いに、二人の顔を見ながら。

 

「『縛り』を入れる。まず、遠距離武器は封印。素手にしろナイフにしろ、近接で殺してこそ相手の死を実感できる。次に、不意打ちも封印とする。相手に気づかれないまま殺すのは今回に限り許さない。自分の存在を相手に認識させてから殺せ。言うまでもないことだが、ターゲット以外の者に発見されないような場所に誘導して殺しをおこなうように」

 

 バーチェは静かに頷く。アイリスはこくこくと何度も頷く。

 

「僕はさらに封印の縛りを重ねるつもりだが、君たちにその縛りを強制するつもりはない」

「ユーリ様は、どのような縛りを追加なされるのですか?」

「うーん、そうだねぇ……たとえば」

 

 僕は右手の甲をバーチェのお腹にそっとあてて、真下に少しだけ撫でた。

 その『少し』だけで、すとん、とバーチェの腰が抜け、バーチェはお尻をつくように転んだ。

 バーチェの顔が混乱で染まる。アイリスは興奮したのか、鼻息が荒い。

 

「な、なぜ転んでしまったのか、よくわかりませんでした」

「背中の力を手の甲から伝達させて、バーチェの重心を崩した。技というより、身体操作かな?」

「身体操作……ですか」

 

 Youtubeに美人女性が同じ事をやってる動画がある。それを再現しただけ。

 

「僕が考案した套路(とうろ)、あるでしょ? あれの動作を分解して理解できるようになればバーチェにだって同じ事ができるようになる。つまり僕は、こういう……わかりにくいやつをやらないようにするつもりだ」

 

 僕は手を伸ばし、バーチェを立ち上がらせる。

 

「とはいえ、君たちを突き放すつもりは毛頭無い。妾だって立派な僕のお嫁さんです。なので、今回のミッション用に技を教えておこうと思う」

「わかりました。私たちの未来のために」

 

 バーチェとアイリスは顔を見合わせ、頷きあう。

 決意に満ちた顔。いいね。

 

「バーチェには、今のバーチェだからこそ使える、今のバーチェにしか使えない、幻の奥義を伝授する……その名も」

「その名も?」

 

 ごくり。バーチェが息を飲む。

 

「奥義『JKリフレ』」

「ジェイケーリフレ?」

「うん。とても恐ろしい奥義だ。僕には出来ない。だがバーチェなら出来る」

「そんな……そんな技を、本当に私が使えるように?」

「できる。必ずだ。そして相手は死ぬ。完全に決まれば僕とて逃れるのは難しい」

 

 アイリスが挙手をして質問してくる。

 

「はい! ユーリ様! 私は? 私もその、ジェイケーリフレを?」

「アイリス、きみにJKリフレはまだ早い。ふむ、そうだな……」

 

 僕はアイリスの外見や体型をじっと見つめる。色々考えられるが、ここは。

 

「奥義『初心義妹』」

「ウブギマイ?」

「うん。『可愛い』をある程度極めて貰う必要がある」

「……『可愛い』をある程度極める!?」

 

 アイリスが突然大声で驚いた。なんか凄くびっくりしてる。

 えっ、なになに。僕なんか変なこと言った?

 

「あ、うん。後先を考えない一人ずつの始末なら、恐るべき手段だ」

「ふわぁ……『可愛い』を、極めちゃうんですね……」

「アイリス? ねぇアイリス、聞いてる?」

「あっ、ハイ! 頑張ります! 私頑張ります、ユーリ様! なんでもします! しゃぶればいいですか? 私のお尻を研究しますかッ!?」

 

 アイリスが突然僕にしがみついてくる。

 上目遣いで、必死に懇願してくる。えっ、なに、ホントなんなの?

 

「おっ、おち、落ち着いてアイリス! 修行は厳しいよ?」

「ハイ! やり遂げます! 絶対に!」

「う、うん」

 

 あるぇー? なんか思ってたんと違う。

 

「そ、それでね? 殺した後の死体の始末なんだけど……」

「ユーリ様! 私にお任せください! 研究済みですッ!」

「あ……そうなんだ。研究済みなら、仕方ないよね……アイリスに全部任せて、いいかな?」

「はいっ! 大好きです、ユーリ様!」

「うん、ありがとね」

 

 アイリスのテンションが、なんか妙に高い。

 死体の始末が大好きなのか、僕のことが大好きなのか、ちょっとわからなかったぐらいに。

 

 ぶっちゃけ、モーブ男爵令息以外はバーチェ達でも余裕でいけると思ってる。

 モーブ男爵令息、アイツは腰帯剣(ヤオダイジャン)が届いたら殺す。

 

 そんなわけで、二人に奥義を伝授したら。

 僕はその夜アイリスに押し倒され、徹底的に絞り尽くされた。

 腹上死ならぬ腹下死を覚悟したのは、前世を通して初めてだった。

 

 義妹じゃなくて、メスガキか小悪魔路線の方が良かったか?

 僕は真剣に悩んだ。

 

 

 

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