ふかふかダンジョンでエンジョイ&エキサイティング!   作:RAP

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第4話 原作開始前・少年期

 僕の奇行を見逃してもらうのに、家族との交流を必死にするハメになりました。

 それまでは家族と一緒の食事の時間でも静かに食べてたし、仕方ないね。

 

 今は学ぶのが楽しいので、他家との交流は必要最小限にしたいです、と宣言すると悲しげな瞳で優しくされました。

 大兄も小兄も5歳で婚約者を決めたけど、僕は暫く考えさせて欲しいですと拒絶したら、さらに優しくされました。

 今の僕は友人も婚約者もいらないんです! ほっといてお願い!

 

 あ、一人称はとりあえず(ぼく)にしました。

 ただでさえ変な目で見られているので、庇護欲を少しでも煽れればなって。中性的な顔立ちみたいだし。俺、だとちょっと与える印象が強いかなぁ……考えすぎかな?

 

 この辺は強くあたって流れで変更しよう。

 一人称が変わる瞬間とか格好良くない?

 

 後から知ったんだけど、もしこの時、僕の婚約者候補を決める流れに身を任せていたら、原作の眼鏡っ娘グラスちゃんと嫁候補の一人として出会う可能性があったらしい。

 

 でもこの時期のグラスちゃんは、顔も知らないおじさんと政略結婚して肉便器のように過ごす将来を嫌がって、貴族令嬢としての立場とか全部投げ捨てて「女性解放戦線」という頭のおかしいカルト冒険者チームに勢い余って飛び込んじゃう、ちょっとアレな感じの女性の要素を抱えてしまっているんですよ。……いえね、相手が顔も知らないおじさんじゃなくて、婚約者として交流していたかもしれない僕との政略結婚だったらグラスちゃんは普通に受け入れていた可能性はあります。

 でもそれだとグラスちゃんは彼女が言うところの古い価値観にとらわれたままなので、その価値観の糸をほぐす作業が婚約期間中に絶対に必要になるわけです。

 

 面倒くせえええええ! やってられっかそんなの!

 今の時期にそんなクソ作業には付き合えんわ! 信じてたはずの「女性解放戦線」から集団リンチな総括イベントを受ける寸前の時期になら絡んであげてもいいけど! 眼鏡っ娘万歳!

 

 

 5歳になって、家庭教師(ガヴァネス)の授業の説明を受けた。

 読み書き、算術、礼儀作法、貴族教養、ダンス、地理、法律、乗馬、剣術。

 

 この辺をゆっくりのんびり少しずつ学んでいって、10歳でデビュタントして、12歳~15歳頃の三年間(前世でいう中学生だ)、よくある貴族学校的なやつに通うんだって。特別に頭が良かったり、飛び抜けて金持ちだったり、なんか色々あると平民でも通えるっていう、アレですよアレ!

 

 学校卒業までに婚約者が決まっていたら平均一年間の準備時間をおいて、16歳ぐらいで結婚しちゃうのがこの世界の貴族にありがちなパターンとのこと。

 

 人間(じんかん)五十年、下天(げてん)のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり……この世界の平均寿命はわからないけれど、10~12歳でも結婚しちゃう人達もいるみたいだし、初婚年齢は低そうだ。

 

 実際に、原作のアロちゃん男爵令嬢は12歳で自分の父親より年上の伯爵と結婚したけど、これは貴族学校をキャンセルしてお金を節約したんだろうなって思ってる。お金かかるしね、学校。

 でもアロちゃんの初期~中期は、女性の社会進出のために「女性解放戦線」と似た思想と行動をやらかしてる上に人妻だから、お近づきになるメリットがあんまり無いんだよね。ネームドオーク・ヒィロとの遭遇後にガンギマリになっちゃった後は違う意味で近づきがたい。

 

 というか、アロ付きメイドのウォルちゃんって「法的に奴隷」って原作でキチンと言われてるんですけど。女性の社会進出がどーたら言うなら奴隷解放を訴える方が先なんじゃね?

 必死に尽くしてるご主人様が、奴隷解放運動の前に女性進出云々と目の前でほざいてるわけですよ。ただでさえ君主制社会で貴族と平民の身分差があるのに!? そこんとこどうなの!?

 

 主人公ジャンは5歳で冒険者を目指し始めて13歳で十分な技量と認められ、15歳で指導者の立場になっている。18歳で暗黒大陸を目指して冒険者になるコース。わかりやすくていいよね。

 あー、もー! 貴族学校とか行きたくねぇ! 飛び級とかできんもんかな? 『ざまぁ』イベントとか初手回避でよくない?

 

 色々悩んだけど、両親に真正面から相談してみた。

 領の兵士から槍術と弓術の追加授業。お抱えの医者から薬学と医学の追加授業。領一番の狩人から追跡と解体技術の追加授業。

 デビュタント後でいいから店舗経営も勉強させてほしい。

 夕食後も自己鍛錬するつもりだから専任の従者かメイドを補佐役として正式につけてほしい。

 

 いやぁ、真剣に両親に反対されたね。何を言っているのか、言っている意味を理解しているのか、将来どうしたいのか、何をしたいんだ、と。

 

 「僕はレンジャー試験に合格できるレベルまで自分を追い込んでみたいんです。レンジャー!」と返事しても良かったが、精神科医を呼ばれても困るので、今の自分は何者になれるのか何ができるのかわからない、とにかく今は片っ端から出来ることを全部やってみたい、領地経営補佐にしろ商会管理を継ぐにしろ連合国軍兵士にしろ近衛騎士にしろ、人生は一度しかないのだから、と人生二度目の僕は真顔で力説した。

 

 最終的に両親は折れてくれた。兄上達からはキチガイを見る目で見られた。執事もメイドもみんな哀しそうな目をしてた。うん。ごめんね。でもやるんだ。シニタクナーイ!

 

 貴族・兵士・医者・狩人、四人の家庭教師(ガヴァネス)達の選出と同時に、僕と同年代の美幼女奴隷と、5歳程度年上の美少女奴隷が、僕の専任メイドとしてつけられた。前世地球なら、なんとか坂46みたいなアイドルグループでセンター踊ってそうな、びっくりするぐらい美形の女の子達だ。多分この子達、高級娼館の禿(かむろ)(遊女になる為の弟子として育てられる子供)を、権力パンチと札束ビンタで引っ張ってきたな?

 

 何を考えているのかよくわからない、でも将来有望な息子を、愛とか情とか肉欲とか肉欲(大事なことなので2回)で縛り付けながら、裏では毎日僕が何をしてどんな会話をしていたのか、両親に報告する任務とか背負ってるんですね、わかります。えー、そんなに信用できない? 将来的には家の収益に貢献しまくったうえで家出する予定だから絶対安心大丈夫なのにー。

 

 

 改めて紹介しよう!

 

 5歳の子爵令息の僕こと、ユーリ・アイダ・ハサマール! ボブカットの銀髪碧眼。中性的な顔立ち、つまりイケメン候補! でも頭がおかしい子って思われてる。残念ですね。

 

 5歳の美幼女メイド、アイリス! セミロングの紫髪に薄紫の瞳。将来は絶対美人になるだろうな、という片鱗を既に見せている。なんで奴隷だったの?

 

 10歳の美少女メイド、バーチェ! 姫カット系ロングへアの黒髪黒目。迂闊に街を出歩いたら誘拐される確率が150%。一回誘拐されてから監禁先で内ゲバが発生しそうな美少女ってことね。

 

 なんかアイドルユニット組めそう。

 ユニット名でも考えとく?

 

 美人メイド揃いのハサマール家の中でも頭2つぐらい抜けた美少女メイドをいきなり専属でつけられたものだから、兄上達からイジメられたりしないかなと心配したりもしたけれど。

 兄上達は二人とも「困ったこと、悩み事があったらいつでも相談するんだぞ」ってなにか悟った目で肩ぽんしたり頭を撫でてくれる。

 

 確かに午前も午後もがっつり教育スケジュールで埋まったけれど、僕の感覚だとこの世界の勉強スケジュールが余裕ありすぎなんだよね。

 通常は1日2~3時間、長くて4時間程度授業しておしまいとか言われても逆に不安になるわ。もっと埋めていいよ。休日もちゃんと取れてるよ? ぷんすか!

 

 原作では時間単位で時刻管理されているぐらいなので、この世界には時計がちゃんとある。太陽が沈んでも、ある程度は活動できる。亜人達が近所に住んでなければね。

 

 午前も午後もビッチリ詰まった授業をこなしながら、夕食後は3時間程度自己鍛錬にあてる日々を過ごすことにした。

 地球の学生が塾に通うようなノリ。趣味の時間であり自習の時間であり。

 

 

 メイド姿のアイリスとバーチェには、少し離れた場所で控えてもらってる。

 

 僕は手ぬぐいで目隠しをして、大人用の木剣を正眼で構える。構えるだけで動かない。

 「絶対に振ったりしないから使わせて」と両親に泣きわめいて許諾を得た逸品。

 木刀を構え続ける。結構重いから腕がぷるぷる震える。できる限り長く。耐久1時間コース。

 ……ああ、疲れた。腕に力が入らない。震える手のまま、木刀を脇に置く。

 

「アイリス、バーチェ」

「「はい、ユーリ様」」

 

 専属メイド達に声をかける。僕は目隠しを外していない。

 二人は少し間隔をあけて横に並んでいる。

 

 アイリスは左手、バーチェは右手を軽く前に伸ばす。

 僕は軽い舌打ちを鳴らす。

 目隠しで暗闇の中、ゆっくりと二人の方に歩いて行く。  

 

 僕は両腕を軽く伸ばす。アイリスの左腕の外側に僕の左腕の外側が。バーチェの右腕の外側に僕の右腕の外側が、それぞれそっと触れる。

 

 彼女たちに腕だけで触れたまま、腕を少しだけ前に出したり、引いたり、横に押したりする。

 彼女たちの腕の柔らかさ、肌の質感。骨。つながり。腕と肩は繋がっている。肩と首は繋がっている。首と背骨は繋がっている。背骨を通して重心がある。腰を通じて脚の骨が繋がっている。脚があるから足の位置がわかる。二人の体軸がわかる。

 

 ……沢山の情報が、流れてくる。

 

 そっと両腕を動かす。何かを通して、二人の重心に同時に触れようとする。試行錯誤。

 二人が同時に軽くよろめいた。ちょっとだけ足が動いてすぐに安定姿勢に戻る。

 アイリスはともかく、バーチェの背は僕にとって高いから、少し揺らしにくい。でも、腕を通じて彼女たちの情報が多少なりと入ってくるのは、なんだか気恥ずかしい。二人は本当に美人だから、直視するだけで精神的に気後れしちゃうんだよね。前世感覚で表現するなら、近寄りがたい高嶺の花スペシャル、YESロリータNOタッチが生きて歩いてる存在だから。いや触るけど。

 精通時期になったら、僕は彼女たちから()()()()()()()()ことになるのかな?

 

「離れて。休んでていいよ」

 

 彼女たちの重心で暫く遊んだあと、目隠しをしたまま、僕は微笑む。

 少しだけ歩幅を開けて立つ。正中線を意識。骨盤から上だけが回るように。

 小さなでんでん太鼓のように、両腕がぶらぶら、くるくる回る。ぐるぐる。ぐるぐる。

 丹田から生まれた何かが正中線を伝って四肢の先から放出されていく。

 ぐにゃぐにゃ。肩甲骨。ぐにゃぐにゃ。胸郭、肩、腕。ぶらん、ぶらーん。

 

 よし、今日はこの辺でいいや。

 目隠しを外すと、美幼女と美少女が両手を身体の前で合わせた待機姿勢で佇んでいるのが見える。やっぱメイド服にはこのポーズだよねぇ。

 アイリスは困ったような笑顔を浮かべ、バーチェはできるだけ無表情を装っていた。

 

 わかるよ。頭おかしいよね。うん。

 

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