ふかふかダンジョンでエンジョイ&エキサイティング!   作:RAP

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第47話 原作開始前・不穏な空気

 雌豚セスアーネこと、セスアーネ・マイゴーノ・アドリ=ブヨーワ公爵令嬢は、僕から言わせれば『科学的に存在しうるクリーチャー娘の観察日記』でいうメイヤさんの若い頃そのものだった。

 外見的にも似ていて、『科学的~』6巻123Pの若メイヤさんの眉毛をセスレ嬢のように太眉に置き換えたのがセスアーネの外見となる。

 国の暗部にならず、貴族子女として普通に結婚しようとした若メイヤさんのありうるルートの一つといったところか。

 

 彼女の婚約者(彼女自身は婚約者候補だと言い張って粘っていたようだが)は、ネイト・ラーレ・タクラーン辺境伯令息。辺境伯と公爵家、それこそ大貴族同士の婚姻なわけだからこれ以上ない縁組みのはずだった、のだが。オサマ王国のメイド達に嫌われていた時代の織津江パイセンのように、超絶卑屈な性格の令息のようで。

 要は『相性が悪い』のだ。どうしようもないぐらいに。

 

 さらに言うなら、ネイト・ラーレ・タクラーン辺境伯令息の妾は誰一人、子供を産んでいないという。セスアーネと結婚できそうでできない苛立ちを妾達にぶつけているはずなのに、誰一人として孕む気配が無い。つまり種なし疑惑が彼にはある。未来の辺境伯を継ぐ子供が産まれない可能性が非常に高いと囁かれている。

 

「……私がネイトと結婚して彼に抱かれたとして。子供の生まれた時期が初夜と計算が合わず、生まれた子供の顔にネイト似の部分が何一つ無かったとしても。子供の髪の毛が銀色か黒色なら、辺境伯家は笑顔で全てを受け入れることでしょう。何も問題はありません」

 

 僕があげた黒いチョーカーを毎日のように愛用し、僕の精液に染められていない場所なんてどこにもない雌豚セスアーネは、目隠し緊縛状態で散々嬲られた後、嬉しそうにそう言った。

 ていうか名前が「寝取られ托卵令息」だもんなぁ……遠慮なんていらねーから好きにしろよ、という創世神のメッセージを感じる。

 

 だから毎晩のイベントとは別口で、「病気療養で伏せっているお嬢様」に毎日のようにお見舞いを続けた。

 ドレスのスカートをめくりあげて前戯なしに突然立ちバックでぶちこむとか。

 後ろ手に縛った上で、容赦ないイラマチオで喉奥をガンガン責めるとか。

 

 最近は縛り上げた彼女を抱くたびに、マイケル・ジャクソンのBillie Jeanを鼻歌して、歌のリズムに合わせてノリノリでセスアーネのポルチオを突きまくっている。

 

 ネイト辺境伯令息、セスアーネ(Billie Jean)はあなたの恋人で、運命の人さ。 

 生まれた子供の目は、きっとあなたに似ているよ。

 あなたはその子の、父親だもの。

 

 

 * * *

 

 

 結果として僕は、抱いた大量の()()ほぼ全員と、西住流家元……じゃないオカサ夫人と、雌豚……じゃないセスアーネ公爵令嬢を無事に孕ませることに成功したらしい。

 妊娠検査薬があるわけでも、まして多少生理が遅れたからといってそれだけで妊娠は判断できるようなものではないはずだが、『女としての感覚が子を孕んだとわかる』らしい。

 ……うーん、異世界の女性はすごいね?

 

 妾以外の女性を先に孕ませたことになるので、嫁一同からの視線はわりと冷たい。

 うう、許して。最優先でバトさんを孕ませるよう頑張るから。

 

 子供を孕ませる云々はともかく、様々なタイプの女性を少しでも気持ちよくさせようと毎晩必死に挑戦したことで経験値が溜まってレベルアップでもしたのか、織津江パイセン程ではないにしても、相手の思っていることがなんとなくふわっとわかる、ような気がしてきた。考えてみればこれは相手の『思う』を察することが大事な武術にも相通ずるわけで、織津江流古武術の達人たるパイセンなら出来て余裕……なのかなぁ?

 

 

 * * *

 

 

 13才となり、二年生に進級した頃(学校のイベントは全部スキップ! セスレの卒業式すら不登校キャンセル! 貴族なので問題ありません!)、アドリ=ブヨーワ公爵家に港から速報が入ってきた。

 

 セルヨーネ侯爵家遠征隊は失敗に終わった。

 中央大陸に帰ろうと、アイギスから出た途端にビケワ嬢はユニコーンに寄ってたかって串刺しにされ、空中で引きちぎられ、ぐちゃぐちゃに踏み潰された。

 ビケワ嬢の指示通りに仔馬を攫った冒険者は全員串刺し。

 護衛の領兵達は、生き残りはしたものの、全員ユニコーンに轢かれて大怪我を負ったという。

 唯一怪我無く無事に生き延びた女性画家は精神をやられてしまったのか、血まみれの紙の束を決して手放さず、なにか小声でブツブツと独り言を呟き続けているそうだ。

 

 

 帰りの馬車には、セスレとメイド2名と護衛の女騎士を載せた馬車が一台増えることになった。

 

「呼出状があろうとなかろうと、遅かれ早かれ君はニク=ドレ卿に会うことになる。その時は必ずセスレを連れていくといい。セルヨーネ侯爵家がセスレに何かをすれば即座にアドリ=ブヨーワ公爵家が動く。……そもそも、ビケワ嬢が辿った運命をニク=ドレ卿が知って三日と経たずに、ユーリ君とセスレの結婚式は大々的に発表され、最低でも半年は君を大きく動かすことは誰にもできなくなる。……言い換えれば、多少は動かせてしまうということだ。十分に用心したまえ」

 

 見送り時、オットー卿は優しく僕をハグしてくれて。

 イケオジヒゲマンは、僕の耳元でそっと囁いた。

 

「ユーリ君、なんなら私も望むかね? 抱いても抱かれても良いが」

「ひいい」

 

 ぼっ、ぼかぁノンケなんで!

 思わず後ずさると、オカサ夫人とセスアーネがそれぞれ僕の腕を掴んで同じように囁いてくる。

 

「いつでもいらっしゃい。歓迎するわ、()()()

「二年なり三年なり、適当に頃合いを空けてタクラーン辺境伯家に遊びに来てもらえないかしら? 妹夫婦が遊びにくれば、辺境伯家もきっと家族が増えると思うの」

 

 妹夫婦が遊びに行くと、何故姉夫婦の家族が増えるのでしょうか。

 僕にはよくわかりません。

 

 状況が不透明なこともあり、当面はアドリ=ブヨーワ公爵家の聖都屋敷を使うといいと言って貰えた。公爵家の屋敷は貴族学校からも近いそうなので、貴族寮はそのまま、拠点を公爵家屋敷にさせてもらうのは防衛上の観点からもアリだろう。

 

「本当は、バトさんが使ってたあの店舗、あそこで『若返りの秘薬』を売るつもりだったんだよね」

「……()()()()()()はアホちゃうか? 店が襲われて在庫が全部()ぅなる程度ならまだマシで、ウチやったら関係者全員拉致って製法やらなんやら全部聞き出して山の中にポイやで、ユーリ?」

 

 あ、駄目でした? そっかー、駄目か……。

 僕は一体何のためにあの店舗、聖都のメインストリートの地味に高い場所を土地ごと買ってしまったんだ……。

 

 

 帰りの馬車は、僕とセスレは固定として、同乗可能な二名は毎日くじ引きで決めることにした。

 流石に妾勢のストレスが溜まりすぎていたというか、「ユーリ成分が不足している」と言われては僕には返す言葉が無い。

 

 僕はバトさんの膝枕で、うとうと寝入りながら考え事をしていた。

 向かいには、セスレとバーチェが座っている。年上組だね。

 

 

 ……特許をとらずに、ボーラ・シューターを作っておくのはアリだな。

 特許は未来のアロちゃんが取ればいい。

 

 牙簽弩(ヤーチエンヌー)腰帯剣(ヤオダイジャン)を作りはしたけれど、考えてみればこの世界でバネは普通に作れるから、織津江パイセンが鞘を飛ばしていたように、スペツナズナイフを作るのは有効か?

 あるいは、射程距離や残弾数を犠牲に超絶小型化した緊急用ボーラ・シューターはどうだろう?

 

 皆の安全を、皆の無事を、皆の幸せ、を……。

 

 

 * * *

 

 

「……ったく。気ぃ張り詰めすぎやで。ようやく寝よった」

「私の家族が寄って(たか)ってやりたい放題だったもんね。休ませてあげないと……」

「側室サマの事は、どう呼べばエエんや? 奥方様? セスレ様?」

「ううん、様なんていらない。貴族との交渉の場とかダンスパーティとか、そういう固いところだと奥方様になっちゃうかもしれないけど……普段は呼び捨てで全然いいよ? 私はあなたのこと、さん付けで呼びたいな。バトさん」

「さよけ。まぁ、正直、ユーリはどこかズレとるというか……頑張っとるんは、わかるんやけどな。危なっかしくて見てられへん。だからウチらが、見といてやらんとな」

 

 盲目のバトは微笑みを浮かべ、寝入ったユーリを優しく撫でる。

 ふふっ、とバーチェが笑う。

 

「ミルヒとカカオが言ってました。ユーリ様は色々凄いけど、ポンコツなんだそうで」

「うっくく……ポンコツ。ポンコツかぁ」

 

 セスレが思わず噴き出す。

 

「私も、妾のみんなも、なんか色々心に抱えてるっぽいけどさ。そんな私達をユーリは好きになって、私達もユーリのことを好きになっちゃったんだから、仕方ないよね」

「セスレも覚悟しとき。ユーリの夜はとんでもないで?」

「あっ、やっぱり? なんかねぇ、旦那様っていうより、ご主人様って感じがするんだよね」

「……あの、ええと。セスレ様の姉君は、ユーリ様に雌豚と呼ばれて、大変喜んでおいででした……」

「あー、あん人か……お見舞いの度に、なんていうかこう、()()()()()()()()お人やな?」

「ユーリに貰ったチョーカー、毎日大事につけてたしね……あんまり言いたくないけど、公爵家が酷い」

「あんたも公爵家やないかい!」

 

 バトの右手ツッコミが決まる。

 セスレは苦笑して肩をすくめる。

 

「……そうね。公爵令嬢だったからこそ色んなことがままならなくて……お姉様には辺境伯令息がいたけれど、私には丁度いい人がいなかった。だから女騎士になるものだと思っていたし、今頃は連合国軍で軍人研修とか受けてたかもしれない。でも今はこうして、ユーリを支える女の一人としてみんなと馬車に乗っている。ユーリはセルヨーネ侯爵家と戦争とか言ってるし、私はその戦争に巻き込まれるのではなく、手伝ってあげたいとも思ってる。……本当、人生ってよくわからない」

「わかることが一つあるなぁ。ユーリの嫁が、もうちょい増えそうな気がするわ」

 

 バトの苦笑に、バーチェが答える。

 

「ユーリ様が社交界デビューなされた時、ファーストダンスこそハサマール子爵夫人でしたが、セカンドダンスはグラス・タレーメ・マンセー子爵令嬢で、サードダンスはクコロ・カンド・サンゼバー男爵令嬢だったそうです」

「えっ、そこからの仲なの? 去年の入学式の時、その二人にユーリが挟まれて両腕を掴まれてたのを壇上から見てたよ!?」

「側室に二人追加やなぁ。身体は保つんか、ユーリ? 皆で絞りとったるで?」

「あっ……そういえば。ユーリ様の嫁が増えすぎて、ユーリ様の身体が保たなくなってきたら、とても良い解決法があるってアイリスが」

「うん? あの()は何を言うてたん?」

 

 バーチェはとても優しい瞳で、熟睡しているユーリを見つめる。

 まだ少年の面影を残しながら、青年になりつつある愛しき夫。

 

「ユーリ様に、女の子になってもらえばいいんだそうです」

 

 馬車に一瞬沈黙が満ちてから、三人揃って静かにくすくす笑い出した。

 

 

 会話をこっそり聞いていた御者は、お尻をきゅっと締めて身震いした。

 

 

 * * *

 

 

 聖都に戻ってすぐ、二年生になった僕と、卒業したセスレの結婚式が大々的に発表された。

 子爵家の三男ごときが、正妻に侯爵令嬢長女、側室に公爵令嬢次女を迎える。

 書類は両方とも問題なく王家に受理されている。

 

 そして驚くべきことに、セルヨーネ侯爵家は直系の息子たるビジョレではなく、正妻ビケワの夫となるユーリ・アイダ・ハサマール子爵令息をセルヨーネ侯爵家の次期当主に指名すると正式に公表した。本来ならあり得ない夢物語だが、僕が『革命』の提案者だと知っている者は、そういうことがあっても不思議ではないと納得する。

 

 低位貴族が、ある日突然、高位貴族の上澄みになってしまう。

 何も知らない同級生達は、純粋におめでとうと声をかけてくれる。

 

 側室との結婚式を挙げてから、本妻との結婚式を挙げるのかい?

 高位貴族になる人はやることが違うねえ!

 

 

 ……僕とセスレの結婚式が発表されたということは。

 侯爵家遠征隊の失敗とビケワ嬢の結末を、既にニク=ドレ卿は知っていることになる。

 ビケワ嬢が打ち立てた伝説は流布されていない。

 彼女が死んでいることを誰も知らないまま、僕は彼女との将来の結婚を祝福されている。

 

 

 * * *

 

 

 やがて、セルヨーネ侯爵家の紋章入り封蝋手紙を持参した使者が、アドリ=ブヨーワ公爵家の聖都屋敷を訪れた。ニク=ドレ卿からの『お呼び出し』である。

 

 文面には、「セルヨーネ侯爵家の次期当主の正式指名における説明と、それに伴う()()()をしたい」とある。

 

 ミルヒとカカオは置いていこう。アイリスでギリだ。

 僕、セスレ、バーチェ、アイリス、バトさん。

 

 僕は当世具足ではなく、趣味で作成しておいた「肩当てと胸甲はあるけど、その他はデザイン重視の日本RPG主人公系っぽい貴族礼服」姿。試作品の日本刀と脇差し。背中には弓胎弓(ひごゆみ)、右腰には弓矢ケース。

 セスレは原作16巻表紙のような重装甲の女騎士姿(姉が一度着たからと必死に清掃していた)。原作3巻P82のクコロがつけていたロングソード装備。

 バーチェは原作4巻表紙のナギさんのような弓兵系重装甲鎧に、試作品のコンパウンドボウと薙刀、右腰には弓矢ケース。

 アイリスは原作12巻表紙のマユリちゃんのようなラケットメイス術士の姿……のようだが背中にバックパックのようなものを背負い、ラケットメイスにチューブのようなものが繋がれた装備(アイダ領の研究所から届いたばかりの最新装備だ)を手にしている。盾は中型タイプ。なおマユリちゃんのような帽子や服装はしていない。由緒正しい魔法少女スタイルである。ジャン君がこの場にいたら速攻でツッコミをいれてくれると期待したい。

 バトさんは原作8巻表紙のような、暗黒大陸時の冒険スタイル。当然手には仕込み杖。

 

 まるで冒険者が冒険に出るときのような格好で、僕達五人はハーベラ領へと旅立った。

 公爵家仕立ての、六人座れる大型馬車に乗って。

 

 高位貴族で、位人臣(くらいじんしん)を極めた軍務大臣。彼の人柄に対し、憂国烈士と評する者すらいる素晴らしい人物。ニク=ドレ・ハーベラ・セルヨーネ侯爵、その人に会うために。

 

 

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