ふかふかダンジョンでエンジョイ&エキサイティング!   作:RAP

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第56話 原作開始前・クコロvsソーコラ

 

 作法にのっとった正式な決闘がおこなわれるということで、学校は盛り上がっていた。

 暇で金のある貴族共がわざわざ観客席まで作り上げてしまっていた。

 札束ビンタで近隣の土木業者を動かしたのだろう。

 もっと違うことに金と業者を使え。

 

 「何故決闘が発生したのか」という理由自体は観客にはどうでもよく。

 「正々堂々とした殺し合いを合法的に閲覧できる」という一点のみで皆が騒いでいる。

 ……理由は本当にくだらないから、みんな知らなくていいと思うよ。

 

 娯楽が少ないため、中世の死刑は公開される娯楽として大人気だった。

 絞首刑だの火刑だの、そういう公開処刑は常にお祭り騒ぎ。

 

 つまり、大勢の生徒や教師が観客として見守っていて。

 飲食の出店までだしている馬鹿までいる。

 祭りかよ。祭りだね。クソが。

 

 

 あれからキッチリ一週間後。

 ビケワ・ハーベラ・セルヨーネ侯爵令嬢の代理人、ソーコラ・テキト・モーブ男爵令息と。

 セスレ・マイゴーノ・アドリ=ブヨーワ公爵令嬢の代理人、クコロ・カンド・サンゼバー男爵令嬢の決闘がはじまろうとしていた。

 

 ソーコラ・テキト・モーブ男爵令息は、いつものロングソードに量産板金鎧(マスプロデュースド・プレートアーマー)姿。

 

 量産板金鎧(マスプロデュースド・プレートアーマー)は通常のプレートアーマーと違い、やや細かい板金のパーツを皮の布に縫い付けたもの。隙間が多く防御力が少し劣る代わりに、規格化されたパーツを自由に増減して体格に合わせることができ、それが大量生産を可能にした。

 プレートアーマーは貴族ですら代々受け継ぐほど高価なものだが、その数十分の一の価格で水力機械により大量生産される。

 この鎧によって、兵士のほぼ全員を鋼で装甲することが可能になった。その防御力はほぼ全ての矢を防ぎ、想定されるほぼ全ての罠を無効化する。ドラゴン相手でもなければ負けない(負けないとは言っていない)無敵の歩兵(無敵とは言っていない)である。

 

 本来ならばナイツ王国が開発に成功し、自国の重装歩兵小隊に配備するシロモノだ。

 この世界線では僕が開発し、中央大陸中に特許を送り付け、生産時に特許料を巻き上げている。

 だがセルヨーネ侯爵家は、僕の許諾により、販売しない限り生産時に特許料を必要としない。

 つまり自領兵に限り安価で融通することができる。

 

 元を辿れば、僕自身が鎧を強化した上で特許料無しの製造許可を出したのだから、ビケワなビジョレの護衛であるモーブ男爵令息が量産板金鎧(マスプロデュースド・プレートアーマー)を着ているのは、至って普通の当たり前というか、僕にとっての自縄自縛というか、ですよねー、と頷くしかない。

 

 

 一方のクコロ・カンド・サンゼバー男爵令嬢は、当世具足(とうせいぐそく)に日本刀と脇差しの二本差しスタイルという、由緒正しい侍スタイル。

 甲冑全体は黒塗装。これは僕が使おうと思っていたからだが、闇夜に紛れることもできる実用的なもの。そこに、クコロのイメージカラーを具現化したような、白と金の刺繍がほどこされた青地の陣羽織を着用している。

 

 クコロの白めいた金髪が、風に流れてたなびいている。

 彼女のトレードマークの青リボンに合わせて仕立てた、青地の陣羽織がよく似合っている。

 クコロは手にしていた兜を被り、顎の部分を紐で縛った。

 

 日本中が殺し合っていた戦国時代、鉄砲が主力武器となった時期。

 鉄砲の威力に対抗するために、頑丈かつ軽快に動ける甲冑を皆が求めた結果生まれたのが当世具足(とうせいぐそく)。鎧の構造としては、西洋のラメラーアーマーに近い。

 

 前世的な見方をすれば、この戦いは西洋vs東洋とも言えるし、ロングソードvs日本刀とも言えるし、簡易プレートメイルvsラメラーアーマーとも言える。

 おいおいジャン君、なんでこの場にいないんだい?

 この祭りはもう止められないから、たこ焼きでも食べながら観戦してなよ。

 

 

 * * *

 

 

 ビケワ・ハーベラ・セルヨーネ侯爵令嬢のドレスを着たビジョレは、優雅に日傘をさしたまま、微笑んでいる。ビケワなビジョレはオーラも含めて女装以上の完璧さなので、もしかしたら誰にも女装と気づかれていないかもしれない。

 

 前世の僕はFate関係は二次創作しか知らず、本家のエロゲもソシャゲも未プレイだったが、それでも今世の自分の風体がFGOのオベロン似だと知っていた(3月のライオンの読者だったし)のと、つけくわえるなら僕が死ぬ前に「プリテンダー/オベロン・ヴォーティガーン」のフィギュア造形が発表されて将来アルターから5万円ぐらいで発売するというニュース記事を見ていた記憶もあって、なんとなく「オベロン・ヴォーティガーン」のコスプレっぽい衣装をしていた。

 なんかこう……両肩のふさふさが格好いいよね? ゲーム知らんけど。前世の僕は格好いいフィギュアなら、原作を知らなくてもフィギュアを買っちゃうタイプの人間だったので何も問題は無い。可愛い女の子ならとりあえずバニー衣装を着せれば売れるというフィギュア界隈の風潮に文句は言いたかったが、ふかダンの原作扉絵でも色んなキャラがバニー衣装を着てたから、やっぱりバニー衣装が最強なのだろうか。

 

 

 両肩ふさふさな僕は、頃合いを見て大声で言う。

 

「それではこれより、ビケワ・ハーベラ・セルヨーネ侯爵令嬢の代理人、ソーコラ・テキト・モーブ男爵令息と、セスレ・マイゴーノ・アドリ=ブヨーワ公爵令嬢の代理人、クコロ・カンド・サンゼバー男爵令嬢の決闘をとりおこなう」

 

 モーブ男爵令息は無言でヘルムのスカル(顔面装甲部分)を下ろす。

 クコロは無言で顔の下半分を覆う面頬(めんぽお)を装着した。

 

「双方初期位置へ」

 

 双方が抜剣・抜刀し、初期位置へ歩いていく。

 正統派西洋甲冑マンと、正統派女武者の一騎打ち。

 

 僕は、モーブ男爵令息が動きにくそうにしているのがわかってニヤりとした。

 プレートアーマーは貴族ですら代々受け継ぐほど高価なもの、つまり着る機会がほぼ無い。

 量産板金鎧(マスプロデュースド・プレートアーマー)は堅牢で動きやすく見えるが、まだこの世界に広まりはじめたばかりだ。

 つまり、モーブ男爵令息には鎧を活用する経験または術理指導が足りていない。

 

 僕が手を挙げる。

 モーブ男爵令息は以前のような脇構え。

 一方のクコロは、八相の構え。

 

 脇構えも八相も、鎧の有無でその様相が全く違うものとなる。

 鎧のせいで斬れる場所が無くなり、隙が無くなるからだ。

 例えば半身の脇構えの場合、頭は兜で守られ首は見えず、腕と足は縦となり盾となる。

 八相も同様に、隙の全く無い合理的な構えに変化する。

 

「はじめぇぃ!」

 

 僕が手を振り下ろす。

 観客が待ってましたとばかりに叫ぶ!

 

 ロングソードを脇構えしたモーブ男爵令息は、じわじわとしたすり足で近づいていく。

 クコロは動かない。八相のまま、じっと見ている。

 

 モーブ男爵令息の運足は、鎧無し時の平服を前提とした素肌剣術のままだ。

 鎧の重さに苦慮している印象を受ける。

 

 やがて、軽く踏み込んだモーブ男爵令息が、脇構えから上に斬りあげた。

 そのままなら、その剣はクコロの顔面を両断する。

 

 ほぼ同時に、クコロが八相から刀を斬り下ろした。

 相打ちか?

 

 違う。

 二寸五分(約7.5cm)の影の運足。

 わずかに横にずれたクコロの(たい)が斬りあげを躱しつつ、左小手を斬る。

 

 モーブ男爵令息も観客も、同じ事を考えた。

 馬鹿め、そこは防具で守られている、と。

 

 案の定、クコロの刀の剣先は小手の防具に止められる。

 しかし次の瞬間、異変が起こった。

 

 モーブ男爵令息の左膝から力が抜けたように、彼の身体が前に崩れたのだ。

 あの左小手への一撃は、そこまでの剛剣だったのか?

 非力な少女の、何でもなさそうな一撃でよろめくほどに?

 

 流れるように、クコロの身体が時計回りに半回転した。

 

 軽快に動ける甲冑ではあるが、軽いわけではない。鎧は重い、当たり前の話だ。

 ゆえに通常時はともかく、戦闘時は移動方法が変わる。

 歩くというより、軸で回りながら動くのが最善になる。

 甲冑の重さを利用し、股を開いてくるくる回るように移動するのだ。

 立ち止まって斬るのではなく、甲冑の重さに揺られた軸回転の遠心力を利用して斬る。

 

 まるでそうなって当然と言わんばかりのクコロの斬りあげが、モーブ男爵令息の顔面を狙う。

 モーブ男爵令息は無理な体勢で斬りあげを回避しつつ、強引に反撃を試みた。

 

 ざしゅっ!

 

 モーブ男爵令息の顔を覆うスカルが下から斬られ、スカルごと下顎から左頬まで一気に切断せしめた。左目を斬られる寸前で回避できたのは、彼の天性の才能か。

 そして、彼が無理な体勢で突いた剣は、クコロの顔面に当たるかのように見え……ギリギリで首を左に捻ったクコロの面頬(めんぽお)を横から貫き、破壊した。

 面頬(めんぽお)の下から、クコロの美しい顔と、極限状態の壮絶な笑みが露わになる。

 

 だが、左目を守りつつ反撃をしたため、彼は余りにも無理な姿勢になりすぎた。

 反時計回りに軸を回して右脚を前にだしつつ、クコロが手首を返してモーブ男爵令息の左目を突き、さらに押し込みながら刀を回す。

 

 観客から悲鳴があがる。

 モーブ男爵令息の左目は刺されるだけでなく、抉られた。

 先ほどの一撃と加えて彼のスカルの左半分は破壊されており、斬られた左顎・左頬、抉られた左目のラインが痛々しい。

 

 本来なら左目だけではなく、脳を抉っていた一撃をモーブ男爵令息は下がって回避した。

 クコロが右に、つまり彼にとって見えない左側に回り込もうとするのが見える。

 

「チィッ!」

 

 モーブ男爵令息は左手のみで剣を持ち、身体を回転させてクコロがいるあたりに剣を振った。

 確かにクコロはそこに居たし、彼はクコロを斬った。

 だが、それがまずかった。

 

 クコロは、刀の切っ先と柄尻の二点をそれぞれ両手で支え持ち、彼の剣を待ち構えていた。

 

 刀を指で握っていない。

 薬指と小指の指二本分、その手の平のみで柄尻を握る。

 もう片方も、親指と人差し指を使わず薬指と小指の下の手の平が、切っ先の裏を支えていた。

 

雷切(らいきり)

 

 クコロがつぶやく。

 ロングソードと日本刀が触れあった瞬間、おかしな出来事が起きた。

 身体を左回転させ左手で剣を振っていたモーブ男爵令息の左肘が突然大きく跳ね上がり。

 鎧で守られていない左脇を開けたまま、彼の方からクコロに倒れるがごとく体勢を崩した。

 

 一閃。

 

 脇の下を流れる大動脈を切断された彼は、それでも崩れた体勢を直そうと右脚で踏ん張ろうとする。しかし前のめりになっていた彼の後頭部を、無慈悲にも刀の柄が強打する。

 

 流石のモーブ男爵令息も、衝撃で地面に倒れ伏す。

 抜き身の日本刀を地面に置きつつ彼の右腕を背中側に回し、全体重をかけて膝で押さえながらクコロは脇差しを抜く。丁度、肩と首の間が彼の鎧の隙間、つまり皮の布だったので、そこ目がけて脇差しを突き刺し、捻る。

 

 モーブ男爵令息はそれでも暫く動いて抵抗していたが、やがて動かなくなった。

 脇差しで彼を抉りながら残心していたクコロだったが、ゆっくりと身体を離した。

 日本刀と脇差しを納刀した後、クコロが荒い息を整えながら僕の方を振り向く。

 

 僕は大声をあげた。

 

「セスレ・マイゴーノ・アドリ=ブヨーワ公爵令嬢の代理人、クコロ・カンド・サンゼバー男爵令嬢が決闘に勝利したとみなす! ビケワ・ハーベラ・セルヨーネ侯爵令嬢の主張は、認められない!」

 

 同時に観客が大歓声をあげる。

 一応、人が死んでるんだけど。安いなぁ……。

 

「承りましたわ、ユーリ様。それでは、またのちほど」

 

 モーブ男爵令息の死がなんでもなかったかのように、ビケワなビジョレは日傘を差したままカーテシーをしてみせて。

 優しく微笑んでから、彼の死体すら放置して立ち去っていった。

 

「おめでとう、クコロ。見事な雷切(らいきり)だった。これをもって雷光流の免許皆伝とみな」

 

 最後まで言う前に、僕の口はクコロの口に塞がれた。

 クコロからの強烈なハグと強烈なキスに、観客は盛り上がる。口笛まで聞こえる。

 

「来て」

 

 クコロが僕の手を物凄い力でぐいぐい引っ張っていく。

 僕は慌てて皆に指示を出す。

 

「……あ、後始末をよろしく! 死体とか! 観客席とか!」

 

 

 * * *

 

 

 剣術などの、外の授業で活動する際の運動着に着替えるための専用の施設がある。

 日本の学校のように教室でひとまとめで着替える、とかではない。

 メイドや使用人に着替えを任せる貴族もいるので、ちゃんと個室が割り当てられている。

 といっても結局は札束ビンタがモノを言う世界なので、男爵令嬢のクコロが使っている着替え部屋は正直狭い。

 

 その狭い着替え部屋の壁に押しつけられながら、僕はクコロにずっとキスをされていた。

 クコロは部屋に入るなり甲冑を脱ぎ捨て、僕を壁に押しつけてキスをする。

 キスをしながらどんどん脱いでいく。甲冑の下の作務衣的なものも含めて、全部。

 

 同時に、僕も剥かれていく。

 オベロン・ヴォーティガーンのコスプレっぽい服とか言ったが、画像検索してもらえればわかるが滅茶苦茶脱がしやすい服装だ。

 クコロが割と力任せに左右に引っ張っただけで、僕の上着は脱がされてしまう。

 

 繰り返すが着替え用のスペースで、しかも男爵用の部屋だ。

 ベッドなんてあるわけないし、オイル切れのオイルランプしか無いから部屋も暗い。

 木製の床に絨毯が敷いてあり、着替えをしまうタンスがある程度の気遣いだ。

 

 その、暗くて、狭くて、ほぼ何も無い部屋の中で。

 全裸に剥かれた僕は、同じく全裸となったクコロに押し倒されて、何度もキスをかわしていた。

 

 

 僕がはじめてモーブ男爵令息に出会った時の、あの戦闘モード。

 実際に戦闘をしていない僕ですら、興奮が凄くてバーチェ達を抱き潰してしまったのに。

 

 死と隣り合わせだった戦闘と。

 格上を乗り越えられた幸福と。

 僕に抱いてくれていた愛情と。

 もうどうにもならない運命と。

 色々な、様々な、複雑な感情。

 

 生存本能だとか、種の保存だとか、そんな言葉がどうでもよくなるぐらいの。

 脳内麻薬の分泌とかで、なんか頭の中がぐっちゃんぐっちゃんになったクコロが。

 劣化織津江アイなんて使うまでもなく、ただただ純粋に僕を求めてくれていた。

 

 破瓜の痛みだけ気にかけはしたが、乗馬と剣術を頑張っていたクコロに処女膜はなく。

 むしろ、多少の痛みなんてガン無視でセックスはしたんだろうけれど。

 僕だって、あの戦いを間近で見ていて本気で興奮してしまったので。

 

 騎乗位と女性上位で一度押し倒された後は、入れ替わり立ち替わり。

 正常位だの屈曲位だの腰高位だの座位だの側位だの対面立位だの駅弁だの。

 思いつく限りの体位で思いつくままお互いに腰を振って。

 

 獣のような、というより獣そのもの。

 セックス、というより交尾と呼んだ方がいいそれ。

 

 何がなんだか自分でもわからなくなって。

 創世神の性癖でもある、射精時に「孕め!」と連呼するやつまでやらかして。

 もう何度クコロの中に吐き出したのかわからないぐらい、散々抱き合って。

 

 

 * * *

 

 

 次の日の朝、クコロの着替え部屋で僕が目覚めると。

 僕にはタオルがかけられて、部屋の中は拭き掃除がされていて。

 僕が着ていた服は丁寧に折りたたまれていて。

 

 クコロが昨日脱ぎ散らかした装備や服は部屋のどこにもなく。

 

 『ありがとう、さようなら』と走り書きされた紙片だけが残っていた。

 

 

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