ふかふかダンジョンでエンジョイ&エキサイティング!   作:RAP

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第7話 原作開始前・婚約

 グラス・タレーメ・マンセー子爵令嬢との婚約が決まりました、ユーリ・アイダ・ハサマール子爵令息です。対戦よろしくお願いします。

 

 んー? これどうなるの? もうバタフライエフェクト的な何かがはじまってる? それとも世界の強制力みたいなナニカで原作コースに変化球するの?

 

 転生モノの物語でよくある話として、「前世でXX歳、今世でYY歳、足してZZ歳で合わせてお年寄りだから若い子には欲情しないんだよね、とやれやれ顔で肩をすくめる主人公」がいるけど、あれは絶対嘘です。

 

 種の保存本能、DNA、性欲。呼び方はなんでもよいけれど、二次性徴以降、無限に湧き上がる男の肉欲を舐めたらアカン。脳みそはピンク色で染まりきってる。日本全国の校長先生の一人あたりの売春人数平均値は1.2人なんですよ!

 

 年頃の女性は、視覚と嗅覚と聴覚と触覚の暴力と言い換えてもいい。可愛いは正義だし美人も正義。漂うフェロモンには対抗できない。耳元で囁かれたら身体の力が抜ける。触れば柔らかく、温かく、セックスを知れば快楽も追加だ。世界はいつだってエロが救っている。産めよ増やせよ地に満ちよ! えっちなのはいけないと思いますとかぬかすヒロインは陵辱しろ!

 

 『ざまぁ』の救い手たる王子様連中は、美少女の前では性欲の欠片も無いようなツラしてるイケメン描写ばかりだけれど、男である以上は勃起もオナニーもしてるだろう。

 貴族令息でお手つき可能なメイドやら下女やらがいるなら毎日押し倒して性欲解消してたって全く不思議には思わない。

 

 律儀に処女を守らないといけない貴族子女の皆様は色々大変だと思う。

 処女のままお尻を開発したナァルちゃんをみんな見習って?

 女性にだって性欲はある、という厳しい現実を知った日が大人になるってことなんだ。

 

 現実逃避的に色々のたまったけど、今はマンセー子爵邸の庭園にあるガゼボ(異世界ファンタジーもので一度は言ってみたい単語4位・僕調べ)において、グラス嬢とお茶会という名の初デート中なわけです。

 

 婚約式を取り交わして、手紙のやりとりを複数回。

 

 お元気ですか、今度ご一緒にお茶会はいかがでしょうか、いいですねほにゃらら日はどうでしょうか、ではその日にお待ちしております。

 

 まだるっこしい文通でデートの約束をとりつけて、馬車で乗り付けて以下略。ここまで一ヶ月ぐらいかかってます。電話かメールが欲しいです。禁忌さんよォ……(恨み節)

 

 ガゼボの中で僕たちは向かい合って、白い椅子に座ってる。

 白い丸テーブルには、えーっと、ティースタンド? 丸い皿が三段ぐらい縦になってて下段からサンドウィッチ、スコーン、ペストリーが乗ってる例のアレが置かれてて、他には小皿にクッキー類。で、そばに控えたメイドさんがそっと静かに紅茶をいれてくれます。グラスちゃんは事前に僕が贈呈した銀の簪を頭に差し、飾り気を抑えた薄い青のドレスを着ています。

 

 おおう……僕の色に染めてくれてるんですね……。

 

 彼女の好意が剛速球ど真ん中ストレートで伝わってくる。

 染まった頬。ややうつむきがちなので頻繁に発生する眼鏡の位置を直す仕草。

 それでも一生懸命僕の目を見て話そうとする、でも恥ずかしくなってうつむく。

 控えのメイドがさりげなく紅茶を代えたりして意識を僕に誘導、改めて僕の顔を見て、直接会って話せていることに喜んで、嬉しそうに笑って。

 これに加えて、ガゼボまでは手を繋いで、一緒に並んで歩いてきたわけです。

 

 つまり視覚と嗅覚と聴覚と触覚の暴力。

 可愛い。いい匂い。揺れるロングヘア。

 澄んだ声。柔らかい。眼鏡っ娘。

 ……ケンシロウ、暴力はいいぞ!

 あー。なんだこの可愛い生き物。精通が早まりそう。

 

 見なよ……僕のグラスを……。

 

 僕の方にもメイドは控えているけれど、今日は相手に招かれている形なので、マンセー子爵家のメイドを邪魔しないようにちょっと距離を置いている。ただ、アイリスは顔を真っ赤にしてむずがゆそうに僕を見てくるから、恐らくは僕のお手つきになる覚悟をそろそろ固めておけと裏で指示されているのだろう。バーチェはいつだって鉄面皮じみた無表情だ。無口クール美少女ですねわかります。でも彼女もお手つき候補というか、超高確率で僕の筆おろし相手になると告知されているはずなので、覚悟ガンギマリモードで逆に落ち着いているのかもしれない。最近のバーチェの微笑みは、逆に怖いです。

 

 内心ビビりながら会話してたんだけど、正直なところ10歳ロングヘアささやかなお胸verのグラスちゃんには、カルト冒険者チーム「女性解放戦線」的な思想・発言は見受けられない。

 

 グラスちゃんは『村娘ルマノ』が好きで何度も読み返しているけれど、冒険者になりたいとかダンジョンに憧れるとかそういう興味は全くない。

 

 単純に物語が好きなので、おすすめの物語があったら教えて欲しい。感想を言い合いたい。聖地巡礼に興味はあるけれど、暗黒大陸は危ないって聞いてるから行きたくない。

 

 女性の地位向上だのなんだのそういうベクトルの発言は何もなく。

 ちょっと拍子抜けというか、心理学とか洗脳解除とか真剣に悩んでいたのがアホらしくなるぐらいのまともな女の子。

 

 ここからおっぱい大きくなるのかなぁ。

 たまんねぇぜ。うひひ。おっと涎が。

 

「ユーリ様は、激しく鍛錬なされているのですよね。騎士か、兵士長でも目指すのですか?」

「……そうですね、笑わずに聞いて頂ければと思うのですが。自分がどこまで出来るのか、試してみたいんです。あと、亜人やら魔物やら、色々物騒ですからね。僕の手が届く範囲の人達だけでも、守れるようになりたい――もちろん、グラス嬢。あなたもその範囲です」

「ひゃい……」

 

 瞬間湯沸かし器のように真っ赤になるグラスちゃん。

 かわえー。

 

「あっ、鍛錬といえば。レモン飴を手作りしてみたんです。おひとつどうですか?」 

 

 がさごそと懐からレモン飴を取り出し、グラスちゃんの口の前へ。

 硬直するグラスちゃん。

 マンセー子爵家のメイドさんが、あらあらうふふ、と笑顔になる。

 

「はい、あーん」

 

 レモン飴を、グラスちゃんの口にそっとくわえさせる。

 僕もレモン飴を自分の口に放り込む。

 お互いに口をもごもご。

 グラスちゃんの顔がきゅーっと閉じて、きょとんと落ち着いた。

 

「酸っぱくて、甘いです」

「でしょう? 鍛錬後の疲労回復に効くんですよコレ」

 

 クエン酸たっぷり。ビタミンCも糖分もバッチリ。

 レモン飴を一袋、グラスちゃんに渡す。

 

 茶会が終わり、一緒に手を繋いでの帰り際。

 馬車の前で僕はグラスちゃんを抱き寄せて、口づけをした。

 あわわわ、と混乱するグラスちゃんの耳元で、そっと囁く。

 

「レモン味のキス(ぼそっ)」

「~~~~っ!」

 

 これで今後、レモン飴を食べるたびにグラスちゃんは口づけを思い出すことだろう。

 グラスちゃんは、慌てて僕から離れる。

 

「ふ、不意打ちすぎますユーリ様!」

「それでは、グラス嬢。またお会いしましょう。お手紙、出しますね」

「ひゃぃぃ……」

 

 見なよ……僕のグラスを……。(大事なことなので二度)

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