ふかふかダンジョンでエンジョイ&エキサイティング! 作:RAP
ジャンは、背と体格に恵まれていた。
その上でひたすら山を走って歩いて跳んで足腰と心肺を鍛え抜いた。
筋肉に惚れる女性達(例:ウォル)がドキドキしちゃう肉体である。
14才時点でも、目を見張る「体力お化け」の身体であったといえよう。
村出身の領兵にオサン流の剣と槍を習い、狩人に弓を習った。
13才で十分な腕と認められ、今は他人に伝授する
才能は無かったかもしれないが、鍛錬自体は楽しかった。
鍛錬を楽しめる、というのはある意味才能なのだが、それはここでは語るまい。
オサン流には「拳で顎を殴るんだ!」と二度も説明される程度には拳打の教えがある。
右手で顎を横から殴れ。鍔迫り合いの時に手が届くなら顎を殴って脳みそ揺らせ。
ジャンの師匠は拳打を念入りに仕込み、ジャンは前世のボクシング技術を組み込んで強化した。
本格的なボクシングではなく、なんちゃって技術だとしても、この世界では十分チートだ。
実際、原作では白面金毛やヒィロにすら通用していた(すぐ真似されていたが)。
諸事情があり、村娘達とお近づきになる機会こそ逃がしまくっていたものの。
その諸事情が無ければ、村娘達でハーレム形成できていた器の持ち主である。
だからこそ。
対人と対モンスターのみならず、対亜人をも視野に入れたこの世界初の武術とはいえ。
雷光流だかなんだか知らないが、あんな
銀髪碧眼ロングボブ、美肌に眼鏡の美少女。
膝丈スカートのメイド服、ホワイトプリムつき。
異国のものか、反りのある片刃の曲刀の大小を腰にさした少女。
見れば見るほど、小説の中の登場人物のようだ。
そんな可憐な美少女が、観客の村人達の前で平然と言ってのける。
「真剣、木刀、袋竹刀、どれでも構いません」
眼鏡の美少女はニッコリ笑う。
「私が勝つにしろ負けるにしろ、雷光流がどのような流派なのか、ご理解いただけるのでは?」
「いや、待ってくれ嬢ちゃん。あんた貴族様だろう。平民が貴族を傷つけるわけにはいかねぇ」
「ならば一筆したためましょう。この模擬戦の結果、何が起きてもこの者に責任を問わず。たとえ私が大怪我を負ってしまったとしても、無罪をお約束します」
「なら、木刀はどうだい。当たり所が悪きゃ死ぬし、目も潰れるし、骨だって折れる。真剣よりは
「わかりました。では、これより一筆書きますので、紙と書くものを用意してください」
ユーリちゃんとハンティ爺さんがサクサク話を進めていく。
ジャンは、女の子に怪我させたくないなぁ、とぼんやり考えていた。
そんなジャンをちらりと見て、ユーリちゃんは言う。
「ジャン。先ほど貴方は、レッサーハルピュイアをキチンと仕留めていたではありませんか。つまり殺せるし、殺した経験もあるということです。それなのに何故、貴方は人や亜人を殺すことを想定していないのですか?」
さらさらと、紙にサインをしながら。
「貴方は今まで、沢山剣を素振りしてきたでしょう。沢山弓を撃ってきたでしょう。その時に貴方が的としていたものは、本当は何の代わりだったのか。考えたことがないとは、言わせませんよ」
「……ユーリさん」
「ジャン。オサン流のジャン。切り替えなさい。本来ならば死をもって学ぶことを、雷光流の深奥の一端を、貴方に見せます」
既に村人達が、村の広場の周囲に陣取って、観客と化していた。
ジャンは複雑な気持ちで仕方なく、木刀を握る。
ユーリは刀の大小を荷車にしまって、ハンティから受け取った木刀二本に入れ替え、腰に差していた。
「はじめましょう、ジャン。……村人達よ! あなた方が見届け人です! そして同時に、私に何があっても皆を罪に問わないことを、改めて宣言します!」
ユーリはすたすたと村の広場に向かっていく。
村人達の歓声があがる。
ジャンがため息と共に広場に向かおうとして……ユーリが怒る。
「何故、鎧をつけないのです。オサン流が素肌剣術だったとは聞いていません。鎧前提の介者剣術ではないのですか」
「……ユーリさんだって、鎧は」
「これは最新素材の服です。その辺の鎧より遙かに強固なものです。雷光流の本質は二刀ですが、貴方が鎧をつけないのなら一刀にてお相手しましょう」
「では、それで」
不満気な顔で、鎧はつけずにジャンが広場に向かう。
……だって、背も体格も違うじゃないか。
背も体格も違うということは、リーチの差があるし鍔迫り合いで絶対に勝てるじゃないか。
それに、俺にはこの拳がある。
ジャンは右手に剣を持ったまま、無意識に左拳を握りしめる。
「オサン流は左手に剣を持つと聞いていましたが」
「俺が右利きなので問題ありません」
「……そうですか」
ユーリは、オサン流が何故左手で剣を持つように指導しているのかとずっと悩んでいたが、最終的に「槍の理をそのまま剣に転用したため」と判断するに至っていた。モンスターがあまりに強すぎて、基本的に槍を使って戦うからだ。言い換えると剣を使って人と戦う機会があまり無かった。槍の教えを軸に剣をサブウェポンとして、即戦力的に兵士を強くしようとした結果、オサン流の教えが原作一巻143Pのようになってしまったのだ、とユーリは結論づけた。
槍が無い状態で仕方なく剣を手にモンスターと戦うからこそ「空いた右手はなんにでも使え」という、生き残るための必死な想いが結実したのだろう。
前世での二天一流は「武蔵の二刀は左に重きを置いた」と伝えられているが、その理由として誤った理由が堂々と広まっている。それは宮本武蔵が左利きだったから左に重きを置いた、という理由だ。ユーリに言わせれば心底アホらしいと思う。それが事実なら、右利きの人間は左利きに修正しなければ二天一流を極められないではないか。さらにいえば、二天一流は二刀を使うから、腕力のある人間でなければ二刀を扱えず、よって二天一流は二刀を剛剣として振るう
武術の秘奥は表向きには秘匿され、口伝などでこっそり伝えられる。もちろん、武蔵が左利きだったから二天一流は左に重きを置く、というのは表向きのフェイクに過ぎないし、二天一流は腕力のある選ばれた人間にしかできない剛剣と思わせ続けているのもまた表向きのフェイクだ。
何度かユーリが述べているように、二天一流の本質は『一刀と合気の二刀』だ。『触れて崩して斬る』の領域に達した瞬間「武蔵の二刀は左に重きを置いた」の意味が別物になる。二刀は剛剣ではなく柔剣を兼ね備えたものとなる。剣か身体のどちらかに剣が振れた瞬間に体軸を崩される剛柔一体の恐怖の二刀が、時には立ち入る隙の無き静、時には止まらぬ舞がごとくの動を瞬時に切り替えて襲いかかってくるのだ。相対する側はたまったものではない。
雷光流、ユーリ・ハーベラ・セルヨーネが、一手ご指南いたしましょう。
そう言った後にユーリは微笑したが、実はこれは『兵道鏡』に書かれている事を実践しただけにすぎない。『兵道鏡』の第一章、決闘に臨むとき相手に対し「笑い」かけるとある。笑うことによって首の緊張が取れる。
また、二年後に出した増補版の『兵道鏡』において、宮本武蔵は理想の姿勢を「たとえば空より縄を降ろし、釣り下げたるものと心にあるべきなり」と記している。近代科学の始まる前に、武蔵は空=天体から身体を論じているのだ。身体の中心を通る地球の重力線と身体の重力の中心である重心線が一体となること、それが一番安定した身体となると戦国時代に語っている。なお晩年に書かれた『五輪書』では「顔はこう、鼻はこう、顎はこう、首はこうでうなじはこうで肩と背はこうで尻と膝はこうで足先と腰と腹はこうで……」としつこく丁寧に「ここまで書けば誰だってわかるだろオルァ!」という怨念すら伝わってくる勢いで執筆しているが、ユーリの感覚では「上から下まで細かく全部指定してくる『五輪書』より、スパッとわかりやすい『兵道鏡 ver2』がいいよね」となる。多分何度も同じことを聞かれて武蔵は内心でぶち切れてたんだろうなぁとぼんやり感じてすらいる。
* * *
奇しくも、ジャンとユーリ、双方が正眼の構えとなった。
しかし、美少女ユーリちゃんは相対した時点で悲しい瞳となっている。
ジャンはジャンで、同じ構えで向かい合っているのに踏み込めない自分に苛立っていた。
ユーリはポツリと呟く。
「これは流派ですらありません」
「……雷光流を教えて貰えるのでは?」
「『正中をとる』のは剣術の基礎です。そういえば、オサン流に正中の教えは無いのでしたね」
苛ついたジャンの脳裏に、オサン流の教えが想起される。
『何でもいいから敵より先に刃を当てる。全身の筋肉を同時駆動させ、必中の速さと必殺の重みをもたせる」
「ツェアアアアッ!」
ジャンが踏み込み、出だしの速度最優先の斬撃を放つ。
狙うは主に脳、顔面、眼球。次いで指や膝など、当たりそうなところ。
ユーリは木刀を振るでも突くでもなく。
なんでもないように、正眼の構えのまま一歩前に踏み出た。
ただそれだけで、ジャンの喉元にユーリの木刀が突きつけられる。
ジャンの動きが止まる。
「正中をとると、こうなります」
言いながら、ユーリが下がる。
元の位置に戻ってから。
「もう一度」
ジャンは縦切りが悪かったのかと、横から振りかぶって斬ろうとする。
その、横から振りかぶろうとした小手に、軽くユーリの木刀が添えられる。
「指を切り落としました」
「……ッ!?」
「雷光流ならこう」
言うや否や、ユーリが木刀をジャンの木刀に重ねて引く。
瞬間、ジャンは前に向かってよろめいた。
一歩踏み込んだユーリの木刀がくるりと回り、柄頭がジャンの顎に添えられる。
「顎、ないし喉破壊」
この時、本当に心の折れた経験のないジャンの負けず嫌いなところが、悪い方向に働いてしまった。今の距離なら左フックが当たる、と、当てる気は無いが左拳打を繰り出してしまったのである。最短最速で、ユーリの右頬にぴたりと添えるだけのつもりだったのだが。
その遊び心が、ジャンの無邪気さが、ユーリの本能の動きを呼び覚ましてしまった。
コン。
周囲の目には、本当に軽く、木刀の柄頭がジャンの顎を下から叩いたように見えた。
この瞬間に崩しが入り、ジャンの頭は軽くあがり、連動して胸骨が緩んでしまう。
その緩んだ胸骨に、同時に肘が入る。八極拳の打法、頂肘だ。
本当に幸いだったのは、ユーリの女性体のチューニングが終わっていなかったことだ。
崩して緩んだ胸骨に、十字勁と沈墜勁を伴ったガチ頂肘が入ったら普通の人間は死ぬ。
つけくわえるなら、いつものノリで震脚をしようとして、途中でユーリが気がついたことか。
「あっ」
我に返った時には、ジャンの身体は周囲の観客のところまで吹き飛び。
ジャンは海老のように丸まって、血と胃液を吐いていた。
なお「身体が吹き飛んでいる」時点で手加減である。
本気で頂肘を入れていたのなら、その場に相手は崩れ落ちている。
しまった。
まだ全然雷光流を見せてないのに。
そんな事を思いながら、ユーリは慌ててジャンに駆け寄った。
* * *
ジャンの実家にジャンを運び(身体の大きなジャンを運んだら驚かれた)、ベッドに寝かせて。
ハンティ爺さんと将来の約束をして、その日の夜はジャン邸に泊まることになった。
夕飯もごちそうになり、お風呂にも入り、後は寝るだけ。
やっぱジャン君のお母さん若いなぁ。美人だし。
とはいえ、カスメが空を旋回しているのがわかってしまったので。
夜中、トイレに行く振りをしてそっと外へ出て、村の外れにやってきた。
この場所なら、うまく林に隠れてるし、カスメとエロいことしても大丈夫かな?
念入りに周辺を確認して、ほっと夜空を見上げてカスメを呼ぼうとしたら。
「……ユーリさん」
「ジャン君!?」
「はい……後をつけてきてすみません。いちち」
胸をおさえたジャン君が、木陰から姿を見せる。
僕と同様に夜空を見上げたジャン君は、勝手に勘違いをして。
「ああ、綺麗な月ですね……これを見に来たんですか」
「……う、わ、あ……あっ、そうですね……はい、そうです」
「ん? えっと? どうしましたか?」
「あー、ええと、その……勘違いしそうになりまして」
「勘違い、ですか?」
しょーがないじゃんシチュエーション的にさぁ!
「
「ん? あっ! あれ、
ジャン君が首を傾げたので、慌ててフォローをする。
「過去にいたとされる異世界人が、そんなことを言った記録がありまして!」
「異世界人……がいるんですか?」
「確認されている限りでは、今はいません」
「……そっかぁ……ですよね」
いけたか? なんとか誤魔化せたか?
ジャン君の後方、わかりにくい場所にカスメが着地したのが見える。
やめろよー、ジャン君は狩人の弟子なんだから気づかれちゃうでしょ!?
「あの、ユーリさん」
「なんでしょう?」
「雷光流の弟子入りの件なんですけど……」
「前向きに考えてくださいましたか?」
そう尋ねると、ジャン君は苦しそうに。
「あのっ、あのですね……ハーレムじゃなくて、ユーリさんを希望するのは……駄目ですか?」
「わたっ、私ですか!?」
真顔で、ジャン君が頷く。
なお、近くでカスメが聞き耳を立てている。あんにゃろめ。
「……私は貴族で、ジャン君は平民です。身分の差が……」
「ですよね……わかります。無理を言ってすみません」
「どうして、私を?」
尋ねると、ジャン君は顔を真っ赤にして。
「倒れた俺を、運んでくれたじゃないですか。あの時に、柔らかいな、とか、温かいな、とか、いい匂いだな、ってずっと思ってて……」
「あーっ……。あっ、そういう……そういう……」
「はい、そういう……感じなんです」
精神的BLタグがつきそうなこと、やめてもらえます!?
くそー、女性体め。ロクなコトしやがらねぇ!
「ハーレムはハーレムで嬉しいんですけど。ダメ元で、聞くだけ聞いておこうと思いまして」
あー、これジャン君的に相当勇気を振り絞ってるな。
ジャン君は正直欲しい。
でも失恋のショックで「オサン流のままでいいです」とか言われても困る。
告白を上手に断りつつ、でも雷光流の弟子の件を受けて貰えそうなこと……。
どうしたもんかな、と困っていると。
カスメがジェスチャーで、自分の口をトントンと翼爪で指し示して。
『手伝ってやるニャ』とでも言いたげな悪い顔をしている。
あー! もー! どうなってもしらねーぞバカヤロー!
なるようになれ、だ!
「変な話ですが、ハーレムで妥協していただくことになると思います」
「そうですか……」
「ですが。一夜限りの夢なら、見せてあげられるかもしれません」
そう言って、僕は髪の黒リボンを外す。
ジャン君に近づいて、木にジャン君を押しつけるように、彼の目に黒リボンをかける。
「見えますか?」
「……見えません」
僕が近寄ってリボンをかけたので、ドキドキしているのだろう。
ジャン君が興奮しているのだと、僕だって理解できる。
「いいですか? これは夢です。夢なんです……だから動かないで、ジャン君」
僕は言いながら、ジャン君のズボン、その股間のボタンを外してあげる。
……そしてここまでが僕にできる限界の限界、ギリギリのラインだ。
カスメを手招きして呼び寄せる。
のりのりでカスメが近づいてくるが、僕はわざわざ『
カスメはジャン君の前で這いつくばると、器用に口だけでジャン君のモノを取り出して、パクッと咥えた。
「あっ」
ジャン君が気持ちよさそうな声をあげる。
カスメはジャン君を咥えながら、脚を少し広げてお尻を振った。
その股間からは、愛液が垂れている。
……こんなことに。
こんな事に、魔法を使っていいのだろうか。
僕はスカートをめくりあげ、自分のショーツを軽くずらして。
スライムに命じて、愛息をONにさせて。
女性体のまま一部が男性になった僕は、カスメの腰を掴んでバックで突きはじめた。
カスメはバックで突かれながら、ジャン君のモノを口だけで頬張る。
目隠しをされた童貞のジャン君は、なすがまま、されるがままだ。
僕とカスメの下半身のみを『
暫くのダブル前後運動の
また来るね、みたいな笑顔で大空へ駆けていった(揚力じゃなくて音をカットしてるよ!)。
気がつくと、息を荒げたジャン君がへたりこみつつもズボンのボタンを閉めていて。
ずれた黒リボンの奥から、ぼんやりと僕の姿を眺めていた。
僕は既に自分の愛息をOFFにしてショーツの位置も修正済みだったし、カスメの存在も上手に誤魔化せたしで、安心して微笑を浮かべたのだけれど。
ジャン君から見ると、手を使わずに激しくフェラチオをしてくれたメイド服姿の想い人が、唇に自分の精液をつけたまま、微笑を浮かべるという。
さらにさらに、僕はフェラしてもらった後のキスは抵抗なくできるよ派だったので。
深く気にせず、自分の唇についた自分の精液をペロリと舐めてしまったのだけれど。
その様子が、ジャン君の心の何かを徹底的に破壊してしまったようで。
数年後、ジャン君がナギさんとウォルさんを抱くようになった時。
原作のようにがっつり脱がしてから抱く、とかではなくて。
メイド姿をほぼ崩さず抱くとか、妙に飲精フェラにこだわるとか、ナギ&ウォルに百合プレイしてもらってわざわざそこに割り込むとか。
なんかそういう方向にジャン君の性癖がかっ跳んでいってしまったのだけれど、誰も不幸にならないのならそれでいいかと未来の僕は放置するのだった。