ふかふかダンジョンでエンジョイ&エキサイティング! 作:RAP
さて、セッション風景を1から10まで全部紹介しても仕方が無いので、あらすじ的に説明していこうと思う。
・冒険者ギルドで定期調査任務を受領。冒険者は戦闘がメインではなく、調査して生還するのが基本だと知ってもらう。
・通常大ではなく、猪級の大きさになったアルミラージと遭遇、戦闘のチュートリアル。冒険者は戦闘がメインではないが戦闘力も必須だと学んで貰う。同時に、異常成長・異常発達した特殊個体はどんな生物にもいて、絶対に油断できないと知ってもらう。
・ゴブリンの足跡を発見。通りすがりの狩人NPCとしてハンティ爺さんに出て貰い、わざわざ用意した「本物のゴブリンの足跡のイラスト(ジャン君にお願いして、現場でスケッチしてもらった)」を見せて、ハンティ爺さんに説明してもらった。ハンティ爺さんはノリノリで、原作2巻のジャン君とクロスがやっていた会話を完全再現してくれた。ただのスケッチなのに「ゴブリンの成体、数は4……いや正確には5匹。オスが3匹、子供を抱いたメスが1匹混じってやがるな。草と土の様子から、3日前の痕跡だ。前の足跡を踏むように追従しているが、踏まれ方がおかしい。追っ手を警戒して、時折振り向きながら移動してるんだろう。つまりこれは『威嚇と警戒、大事なものの輸送』。メスが抱いていた子供を守るように移動していたんだろうさ」……と、物凄い正確さで見抜きながら淡々と説明していった一流の狩人の見立てに、アロ達はドン引きした。酒場でメンバーに関して警告してくれたおっちゃんもこれぐらいは余裕で読んでくるだろうさ、とハンティ爺さんが笑って「うだつのあがらない飲んだくれのオヤジじゃなかったんだ……」とアロが理解したところで「あのおじさまは『B級以上のベテランは一度だけ警告する義務がある』と言っていたではないですか……つまり最低でもB級の方だったということです」とナギさんが補足してくれた。
・目的地付近に、ゴブリンの住処が新しくできたのかもしれない。撤退して初任務は失敗とするか、初任務ぐらいは成功させたいとして目的地を目指すか。目的地を目指す場合は森で一泊する必要がある、と説明する。それでも目的地を目指すことにしたらしいので、闇夜の森の中での恐怖を散々説明して、少しでも怖がって貰えるよう演技とか頑張った。
・さて本番。ゴブリンの住居は発見できたが、遠眼鏡の準備も無しに無理に踏み込んでゴブリン達の規模を数えようとしたアロ達に、当然ゴブリンとオークの混合部隊が襲ってくる。村娘ルマノに出てくるオークのように、実物は別にノロマでもなんでもなくただひたすら人間より強いことの説明。弓を改造した速射で命中しても、別にオークは即死せず突っ込んでくるから総合的に微妙なこと。ゴブリンが使ってくる矢は一撃で死ぬ可能性がある毒が塗られていること。それでもアロは女性用鎧を着ているから、ナギとウォルのみが集中的に矢で狙われること。オークのタックルでナギが吹き飛ばされ、ウォルのスコップで必死に守るも、アロが涙目で撤退を決断するしかなかったこと。そういうのを、僕は淡々と説明し、処理を実行していった。
・最終的に逃走した三人だったが、女性だけのパーティなので追っ手が厳しい。皆は仕方なく川に飛び込んだ。どこかの川辺に流れ着いたものの装備の大半を失い、身体中が水浸しだ。ボロボロの鎧を脱ぎ、身体を冷やさない為に全裸となった。生存判定などを繰り返して貰い、石一つから火を起こす行為を仮想体験してもらう。疑似体験とはいえ、今の君達は全裸でこの作業をしているよ、とキッチリ説明する。冒険者ギルドには『緊急生存術教練』という授業があり、何も無い状況から生還することを教えてくれる内容だと教わっていたが、お金が無かったからスルーするしかなかった……みたいな説明も織り交ぜ、どんな状況からも生還できる技術と意思を持つことは大事だと解説していく。
・木と草で作った簡素な服を着たが、ろくに食事もできておらず、疲れが抜けない。状態異常:
・ちょうどセスレが通りかかったので、台本を急遽用意して読み上げて貰った。「私達は連合国軍・第3伝令隊。私は隊長のセスレ軍曹です。伝令の途中なら見捨てましたが、警戒活動任務中のため、要救助人とみなして貴女たちを助けます……アイギスでよろしいですね?」興味無いとか言ってたのにノリノリで演技したセスレに苦笑しながら、君達は連合国軍伝令隊、通称女騎士達に帰りを送ってもらい、無事に生還を果たしたのだと説明していく。自分達は装備の大半を失い、寝込むほどに体調も悪化したが、ゴブリンの住居と大まかの数を報告するという任務は達成でき、後日連合国軍が討伐したのだと冒険者ギルドに立ち寄った女騎士セスレ軍曹に教えて貰った……というところで、アロ達の初冒険は終了とした。
* * *
「ふーん、案外よく出来てるのねえ」
あれだけ興味無いと連呼してたくせに最後はノリノリで演技に協力して、さらに女騎士格好良いを後押しするラストシーンだったためかセスレはTRPGに興味を持ち、『F&F』をパラパラ読みしていた。
一方、アロ・ナギ・ウォルは疲労困憊だった。
特に寝不足だったアロは精神的ダメージが倍増したのか、任務は達成し報酬も得たが失ったものも多すぎたラストに、テーブルに突っ伏して「あ"ー」とか唸り続けていた。
「ユーリ様、敵のデータを上方修正してますね?」
全データを暗記しているバーチェが確認してくる。僕は苦笑しながら頷いた。
「ああ、元々のデータだと敵が弱すぎて瞬殺できちゃうんだ。今回はあくまでも暗黒大陸の疑似体験が目的であって、TRPGとして楽しんで貰うことの優先順位は低かったからね。でも、最後に女騎士と偶然出会って助けて貰うような『可能性としてはあり得るかもしれないがまず遭遇することはないイベント』を入れたりしてパーティ全員を生還させたり、エンターテイメント要素もきっちり入れたと思うよ」
「『暗黒大陸における冒険者の実情』も『村娘ルマノとの違い』も凄くわかりやすかったです!」
ジャン君が目をキラキラ輝かせて喜んでくれてる。
「本とかボードゲームぐらいしかないし」
「案外新鮮だったかも」
ミルヒとカカオがお腹をさすりながらニコニコしてる。
妊娠二ヶ月ぐらいだし、まだそんなに膨らんでるわけじゃないんだけどね。
「足跡のくだりは良かったのう。儂も冒険者できるんじゃないか?」
ゴブリンの足跡のスケッチをガチ読みしたハンティ爺さんはご機嫌だ。
アロ達の度肝を抜けたのが余程嬉しかったらしい。
「ほら、アロ。冷たいジュースだよ。ナギもウォルも、飲んで飲んで」
僕は三人に、冷たいジュースを渡していく。
三人はよろよろと、ジュースを飲んでいく。
「……おいしい……」
はぁ、とアロのため息。
「普段飲んでる水や、温かいお風呂がこんなに大事だなんて、思ってなかったわ……」
「ローリン男爵家は、それなりに裕福でございましたから」
「奴隷メイドの数も、多かったですしねー」
ナギやウォルが、感慨深そうに追従する。
「Z級とか半額とか色々説明したけれど、全部事実さ。そして、娼婦兼雑用というZ級みたいな立場を受け入れてなお、ダンジョンの奥地へ向かう女冒険者は多い。なんだかんだで彼女達も、夢とロマンにとりつかれたどうしようもない人種なんだ。そしてそれは僕達も同じ。夢とロマンにとりつかれた馬鹿貴族が、陛下に許可をとってまで暗黒大陸に行こうってんだからね。正気の沙汰じゃないよ」
僕は大仰に肩をすくめる。
セスレは読み終えたルールブックを僕に渡しながら言う。
「あのね、アロ。あなたが旦那様にしようとしているユーリは、暗黒大陸に行くための準備として、暗黒大陸に新しい街を丸ごと一つ作ろうとしてる馬鹿なんだから。『革命』や『新革命』だけじゃなく、特許すら取得していない完全非公開の超ヤバい技術まで総動員して、要塞でも作るのかってぐらいのモノを建設中よ」
「いえセスレ様、比喩ではなく要塞そのものです。見かけ上はただの港街ですが、仮想敵が軍隊やドラゴンですので」
「え”」
バーチェの説明に、ジュースを飲んでるアロが硬直する。
ミルヒとカカオが苦笑しながら言う。
「ほら、私達だけじゃなくて、子供達も一緒に行くから」
「『絶対防衛ライン』? ってのを作るんだって」
「お金はあるから、ガンガン使って回さないとね。暗黒大陸の物流と不動産もある程度支配しちゃおうと思ってるよ。議会議員を買収しておくのもアリかな?」
「そ、そこまでするんですか!?」
「お貴族様はやることが違うねェ」
ジャン君が驚き、ハンティ爺さんが笑う。
「人類と亜人は既に絶滅戦争に突入しているけれど、もしかしたら……何かの奇跡が起きて、亜人と仲直りしたくなるかもしれない。でもその場合は聖教会の上層部を皆殺しにする覚悟が必要になる。あるいは亜人達に勝つために、僕達が持っている特許申請していない秘匿技術を使わせろと、連合国軍が僕達を脅してくるかもしれない。いつ誰が敵になって味方になるのかわからない以上、やれることは全部やる」
「やりすぎなんじゃないの?」
セスレは笑うが、僕は真面目に首を横に振る。
「制空権も制海権も握れていない人類は、亜人が本気を出してきたら勝てない。中央大陸で500年、暗黒大陸で100年戦い続けて、それでもなお亜人を殲滅できていないってのはそういうこと。そんな亜人と戦っていて、モンスターだって相手にしないといけない……暗黒大陸に行くのは、なにもダンジョンの為だけじゃない。僕は色々見極めたいんだ……今後どうしていくのかを、ね」
「ユーリ……」
「セスレが無事に子供を産んで落ち着いたら、例の下着と生理用品を売り始めよう。生理用品に関しては大量生産できるようになってきた。実際に売りはじめて顧客からの要望がはいりはじめれば、より良いものとなるだろう。売り上げはあって無いようなものだけれど、生理用品で儲けようとは思ってないからそれでいい。下着だけでも大騒ぎになるはずさ、特に富裕層向けの高級なやつはね」
「うん、わかった。暗黒大陸でも、後方支援を頑張るわ」
「アロ」
僕は様々な疲労でぐてっとしているアロに声をかける。
「何のために何をしたいのか、自分と会話してみてほしいな。その上で……今回、TRPGのキャラシートを作っただろう? あんな感じで、自分に何ができて何ができないのか。自分がしたいことの為に必要な知識や技術はなんなのか、自己分析をしてほしいんだ。ただ、僕達が暗黒大陸に行くのは約三年後。移動時間などを考慮すれば、時間はもっと短い。その枠内で何ができるのか、というのも含めて思考する必要がある」
僕はアロのキャラシートの片隅、何気ない落書きを指さす。
なんでもない落書きのようでいて、精巧なラフ。
「求められるのは、戦闘力だけじゃない。優れた調査能力や、優れた記憶能力、優れた絵画能力。S級認定にはそういうものが必要なのだと、セッションを通じて僕は皆に説明した。僕から見れば、アロは発想力や絵画能力に優れている。アロは村娘ルマノのように弓でバッタバッタと敵をなぎ倒したいのかもしれないが、残念ながらアロにそういうのは向いていない。もっと違うことで冒険に貢献できると僕は思うし、その方向性で進化してもらいたいとも思っている。例えば……執事、アイリスの杖を持ってきてくれ」
「かしこまりました」
アイリスの杖。魔改造ラケットメイスこと、レイジングハート。
懐かしいな。シャイニングドラゴン戦のままだ。
アロが首を傾げる。
「……大きいラケットメイス?」
「うん。改造済みの試作品だけどね」
言いながら、
レバー操作で杖が変形する。変形機構に、ジャン君がぎょっと驚いた。
「ジャン君、その辺に軽く足を開いて立って貰えるかな」
「あっはい。この辺ですか?」
「そう、その辺」
僕はそう言いながら、原作アロが三年後に開発する名作ボーラ・シューターを、三年前のアロに見せつけるように……ジャン君の足下に放った。
レイジングハートから飛び出したボーラが、一瞬でジャン君の両足を拘束する。
当然、ジャン君は動けなくなり、尻餅をつく。
ジャン君は驚いて尋ねてくる。
「うわっ。なんですかこれ!?」
「ボーラ・シューター。相手を拘束する、それだけの武器だ。でも……すぐには抜け出せないと、見ているだけでわかるでしょ」
「う、うん……」
「相手を動けなくさせれば女子供だって簡単に敵を殺せる。この武器の特許は出していない。でもアロの名前で特許を出してあげてもいい。そうしたら、すぐにアロはS級冒険者になれるだろうね。僕の側室祝いだ、S級になっておくかい?」
「……やだっ!」
アロは叫ぶ。僕の、原作アロからのパクリ武器を目の前に、それでも。
「……やだ。自分で考える。自分で考えてみたい。考えさせて……」
「いや、この武器凄いですね。ナイフがあってもすぐには抜け出せない。こんなものまで用意しているなんて」
「ジャン君には、暗黒大陸で僕とは別にパーティを組んで貰うつもりだ。その時には、アロとナギとウォルの三人と一緒に行動してもらう。現地でさらに冒険者を増やしてもいい。ハーレムパーティでもなんでも、好きに組めばいいよ。装備や住居など、後方支援はつけるから安心して。パーティを組む仮想訓練も、今後はジャン君、アロ、ナギ、ウォルは完全固定だ。その意味では……何ができて何ができない、何をしたい、というのはアロだけでなく、皆に考えて貰う必要がある。もちろん相談にはいつでものる。僕達は一蓮托生の仲間だからね」
「妹の方のユーリさんと一緒に冒険に出ちゃ駄目ですか?」
「……時間とか、機会とか、そういうのが合えば大丈夫じゃないかな……」
セスレやバーチェのジト目を受けながら、僕は質問に答える。
「どっ……どれぐらい!」
アロが叫ぶ。
「どれぐらい、戦えればいいの……? だって、女は足手まといで……鍛えても男には追いつけないんでしょ? 『半額』って、女として足下を見られてるんじゃなくて……『タダでも要らない』のを、譲歩してもらって『半額』じゃないの?」
「アロは、ルマノのように敵をなぎ倒したかったの? アロにそういうのは向いていないって言ったばかりなんだけど」
僕はアロに近づいて、優しく言う。
「それとも、力で力に勝ちたかった? 人間の成人男性ですら子供扱いしてくる亜人のオークを、腕力でぶち殺したかった?」
「そ、そういうわけじゃ」
「自分の役割っていうのがパーティにはあるんだ。例えばアタッカー、タンク、アーチャー、デバッファーとかね。この辺はジャン君が詳しいかもしれないから相談してみてもいい」
ソシャゲで聞いたような単語が突然聞こえてギョッとするジャン君。
でもジャン君、別にこれはソシャゲ用語じゃないから。
「言ったよね。僕とバーチェは10年鍛えてきた、って。そんな僕達でも、オークに腕力で勝つのは不可能だ。でもオークに勝つ方法は、腕力だけじゃない。僕達には考える頭があり、物を扱える手があり、走る脚がある……腕力以外で勝てばいいだけの話だ。さて、三人寄れば文殊の知恵(※という意味のこの世界版のことわざ)という言葉があるよね。今からでも、自己紹介がてら皆で考えてみたらどうかな? ジャン君、ボーラから抜け出せたのならこっちにおいで。紹介しよう。僕の婚約者のアロと、アロ付きメイドのナギとウォルだ。さあみんな、顔合わせだよ。これから数年間に渡って背中を預け合う戦友だ。こちらはジャン君。僕の弟子の一人さ……」
* * *
原作より三年も前に邂逅したジャン君・アロ・ナギ・ウォルの四人は、なんだかんだで激しく議論を交わしている。アロの命がかかっているから、普段のほほんとしてるウォルも必死だ。ただ、原作のようにジャン君が戦っている風景を見たわけじゃないから、ウォルにはまだジャン君への恋愛感情はない。まぁそんな事はどうでもいいのだ。原作序盤のジャンパーティには会話が足りなさすぎたので、今のうちからガンガン討論してほしい。
ボーラ・シューター以上の変態武器、それこそ現時点では詳細不明のファントム・アレイともまた違った武装をアロが思いついてくれるかもしれない。
「おいで、バーチェ」
僕はお腹が大きく膨れたセスレのそばに行き、バーチェを手招きして呼ぶ。
「セスレ、バーチェ。話しておくことがある」
「なに?」
「はい、ユーリ様」
「暗黒大陸では、僕率いるパーティと、ジャン率いるパーティの二つをメインとして、もう一つ。専用の特殊部隊を組もうと思ってる。セルヨーネ侯爵家直属として雇用する完全な私兵だ。ドラゴン戦でバーチェが使った圧縮空気狙撃砲の完成版をはじめとした各種秘匿武装や、実験用の試作品を積極的に使ってもらう部隊。その特性上、裏切り者には死んでもらうしかない。指示は僕が出すにせよ、管理はセスレにやってもらうことになる。作戦内容によってはバーチェにも特殊部隊に参加して欲しいから今のうちに話しておくね。部隊名は……仮案はケルベロスなんだけど、ケルベロスの実物と出会っちゃうと紛らわしくなっちゃうから悩みどころ」
「……やりたい放題ねぇ。わかったわよ」
「ユーリ様、弾倉のカートリッジ化には成功できたんですよね?」
「ああ、ドラゴン戦でバーチェに苦労をかけさせてしまったからね。弾倉のカートリッジ化は絶対だった。中央大陸から持ち込む高圧空気ボンベは船の沈没の可能性があるけれど、基本的には全部暗黒大陸で生産するから問題無い。その為のアイギス港街だ。仮帽付被帽付徹甲弾(APCBC)の実戦テストもしたいし、忙しくなるよ」
「部隊名もいいけど、子供の名前も考えておいてよ?」
「わかってる! 男の子でも女の子でも、どっちでもいい感じのを考えておくから!」
「ならいいけど?」
三人で話していると、執事のウォルター(コードネーム)が近づいてきた。
「ご歓談中恐れ入ります、旦那様。旦那様が言う『もち米』および『ホップ』に特徴が近いものが発見されたと、現在当家を訪れている商人が言っているそうです。どちらも実物を持参しているとのことで」
「もち米は在庫を全て買い占めろ。ホップは商人に仲介料を払い、産地と直接契約を結べ。農家が手をつけていないのなら、土地ごと買い占めて人を手配してもいい」
「かしこまりました」
執事が去った後、僕は舌打ちをする。
「くそっ、海苔があれば……! いや、チーズとベーコンと醤油があれば全然いける……清酒はあるから熱燗……よし!」
は? 高カロリーのデブ飯だって? 知ったことか!
* * *
アロ達とパーティに関する話し合いの最中だった、ジャンだったが。
『もち米』『海苔』『醤油』『清酒』『熱燗』という聞き捨てならない単語が聞こえてきて、思わずユーリの方を振り向いた。
こっちの世界の人は『米酒』という言い回しをする。
清酒という、まるで濁った酒が他にあるかのような言い回しはしない。
普段温和で厳しい師の姿からは全く想像できない、涎でも垂らしそうなその顔。
海苔、餅、醤油、熱燗……。
享年22才のジャンでも、流石におかしいと思う。
ねぇ、師匠。
俺も食べたいんですけど。一月だし。
ジャンは、思わず唾を飲んだ。
原作時間軸が見えてきました。