ふかふかダンジョンでエンジョイ&エキサイティング! 作:RAP
(BGM:マクロスプラス 「SANTI-U 」作曲:菅野よう子)
「きっと何かの間違い。族滅とか不要。お兄ちゃんはそんなことしない」
半歩後ずさったカタナは、青ざめながらも必死に言葉を紡ぐ。
ユーリは何度も、私にあーんで色々なものを食べさせてくれた。
温かくて優しい慈愛に満ちた笑顔で、何度もあーんをしてくれた。
だから、だから。全部、何かの間違いで……。
「お兄ちゃんに何があったのか確認する。すぐに里で話を聞いてくる」
「テオ。シオンとユウの遺体は?」
カタナの主張を無視して、ユーリが問いかける。
「銀髪の子供は知らん。ケンタウロスに
テオが少し、言いにくそうな顔をする。
だが今のユーリは、平然と心中を読んでくる。
「……レッドキャップか」
「っ、そうだ。そのシオンとやらは我々を殺しすぎた。レッドキャップは一人を残して全員死んだ。一人生き残ってしまった者が、シオンの遺体を辱める儀式をしたとて止める理由が無い。仮に、そこの女達のようにシオンを繁殖に使ったとしても、問答無用でその女の目を抉り足の指を落とす(原作6巻160P参照)ことになっただろう」
人間であるのなら子供ですら平然と殺すレッドキャップからユウを護るという、明確な戦略と共にレッドキャップ達を最優先で殺し続けたシオンの強い意志が、亜人達に伝わることはない。
だが、儀式をしたということは。シオンの遺体は手足を落とされ達磨となり、内臓を抜かれたということだ。
「殺しすぎた、ねぇ……何人中何人?」
「……22人中、12人。その全てが、シオン一人に殺された」
少数精鋭の実力者達が半分以上、たった一人の女に殺された。
オークのみならず、『夜の死神』であるレッドキャップとゴブリンもいる混成部隊を相手に一対多で渡り合い、とんでもないキルレシオを達成した。
「白面金毛が何人殺したのか知っているだろうと言いたい所だが、それを言い始めると誰がこの絶滅戦争をはじめたのかという話にもなる……儀式後の遺体はそのレッドキャップが?」
「そうだ。その後どうなったのかはわからない。焼いたか、撒いたか、肥だめにでも投げいれたか。彼らレッドキャップの性格を考慮すれば、街の前に晒す程度では済まされないだろう」
「……等価報復で赤帽同盟を皆殺しにするのもアリか」
それは等価報復ではない、と誰も言い出せなかった。
「本当に……お兄ちゃんが、人間を
さっきから、ケンタウロスの
震える声で、カタナは問いかける。
ケンタウロスが人間をわざわざ強姦する理由が無い。
ティーチ教官の妻、ティーフは冒険者時代に絶望の草原を調査した報復として強姦された。
わからせ強姦のあと、草原の民の素晴らしさの教育を施しながら子供を産ませた。カタナのような特殊能力持ちが生まれなかったこともあり、強姦から二年でアイギスへ護送された。
テオは、クッコロを座位で跨がらせたままの戦士長をチラリと見る。
ゴブリンのホヤクが慌てて通訳すると、戦士長は頷きながら亜人語で答える。
ホヤクは極力正確に、戦士長の言葉を皆に伝える。
「ケンタウロスが女に深手を負わせ、殴り倒し、鎧を
「略奪と強姦は戦場のならい、将兵の正当な権利」
ユーリが呟く。
どうやら、ケンタウロスの
微笑を浮かべながら、ユーリは続ける。
「ケンタウロスの女は、強姦して中に精を放てば問答無用で妻になる。美人のシオンを、ケンタウロスの作法で妻にしようとした可能性はある……か」
そうだけど。確かにケンタウロスはそういう文化だけど。
私を見て、とばかりにカタナは必死に説得する。
「私のお兄ちゃんがユーリのお嫁さんを殺したのなら、私が代わりにお嫁さんになってもいい」
「逆ハー趣味のカタナちゃん。僕は何十人もいる夫のうちの一人になる気は無い。カタナちゃんはどうしたって他の男達と僕を比べるだろうし。そもそもカタナちゃんのアソコがゆるゆるのスカスカでガバガバしてたら僕の粗チンは満足できないし、カタナちゃんを満足させてあげられないよ」
ユーリはいつもの笑顔のままで、飄々と語る。
ユーリは寝バックが普通にできるので別に粗チンではないが(寝バックは女性側の膣が上つきか下つきかで難易度が変わるが、男性側にもある程度の長さが必要な地味に難易度の高い体位)、ニク=ドレ卿やオークのように巨根というわけでもない。エロ同人の主人公のように絶倫なわけでもない。前世から培ったじっくりと味わうようなセックスの中で、身体を鍛えた男性として二~三回出せればそれで満足という感じだった。
ただ、前世で何度か体験した「セックスしてる気にならないセックス」で腰を振る虚無時間の無意味さを再び味わうのだけはゴメンだった。骨盤底筋のトレーニングによる膣圧向上の記事は前世で読んだ記憶があるが、そこまでしている女にユーリは出会ったことが無い。
「……ゆるゆるの、スカスカで、ガバガバ?」
「そこに見本があるでしょ。オークのちんこのさ」
クッコロに吐き出した戦士長のイチモツを、ユーリは顎で示す。
オークは身長2m越え、体重200kg越えの巨体なので、当然陰茎もでかい。
「だからクッコロちゃんのアソコはもうガバガバ」
「……えっ?」
突然巻き込まれたクッコロが青ざめる。
いや確かにご主人様のチンポは大きかったけれど。
「絶望の草原出身ってことは、カタナちゃんはお父さんで処女を捨てたんでしょ? メスのケンタウロスは
「な、な、な」
言われ放題言われたカタナが、流石に怒りで震える。
かかった、とユーリは判断した。策略的な意味でも馬的な意味でも。
『剣姫』カタナ、いや『剣鬼』カタナは、「地獄門作戦の大英雄」として長めの休暇を貰っている。休暇中なので『中立無関係の通りすがりの観光客』としてアイギスに来て、趣味として冒険者をやっているだけの少女。
つまりカタナは、大英雄と呼ばれる程にケンタウロス一族の最大戦力だ。
だが、ケンタウロス殺戮祭りの可能性が湧いて出てきたのなら、ここで連中の最大戦力の精神をズタズタにしておく選択肢が増える。
そもそもユーリがカタナを愛することはない。逆ハー女を抱いて楽しむ理由がどこにもない。
ユーリだけを愛してくれる女が、ユーリの周囲には数多くいるのだからなおさらだ。
ユーリはようやく抜刀体勢を崩し、刀を鞘ごと引き抜く。
カタナがそうしているように、紐で刀の鞘を縛って固定する。
今から寸止め試合でもしようか、という態度をユーリはとる。
「嫁にするのも旦那になるのも無理でしょ。ガバガバのガバナちゃんじゃ、ヤリ捨てが限界かな」
「……っ、ガバガバじゃない! ヤリ捨て、は……駄目!」
ケンタウロスにとっての最大の禁忌、ヤリ捨て。
「こうしようか。深手はともかく、嫁のシオンは殴られ
「絶望の草原に?」
「少なくとも僕の嫁のシオンは、『名前秘密男』を名乗るケンタウロスに
「お兄ちゃんは結婚していない。お嫁さんはいない」
「それなら、肉体関係があるメスを殺そうか」
「お兄ちゃんと肉体関係があるメス!?」
男のケンタウロスには試し竿と本竿があり、女のケンタウロスには試し穴と本穴がある。
彼らのセックスは試し竿と試し穴でやる「試し」、本竿と本穴のどちらかを使う「本試し」、本竿と本穴でする「本番」と三種類に分かれている。
身近な知り合いなら「本試し」までは普通にやるし、「試し」ともなれば挨拶に等しい。
「試し」が当たり前過ぎて、「試し」より肌を見せる方がイヤだとケンタウロスは考える。
つまり、彼と肉体関係があるメス、という表現の場合、里に住んでいる大半の女ケンタウロスが殺されてしまう。
「息子殺しまで確定したのなら、『絶望の草原』を『絶望の荒野』にしようかな……?」
「……むー、う、う……」
カタナは焦る。
何を、何をどう言えばユーリに伝わるのだろう。
考えて、考えて、考えて――
カタナは、ケンタウロスの思考としては最上級の愛情を込めた言葉を言った。
「肉体関係をもったかどうかで死ぬだの殺すだの、ない。おやつを分け合えない、子供の考えをしなくていい。でも、私がユーリを膣で奉仕するから大丈夫。『病気のつらさ』も治って消える。お父さんに、
里の大人達が言う愛の言葉、里の学校の授業内容。
『ヤク漬けの病気猿』は『生きててツラい』らしいけど、私が治療につきあってあげる。
私は頭が良くないけど、これでユーリもわかってくれる。
人間でいう『愛してる』を伝えたのだから、ユーリは夫になってくれる。
先導者の皆も一緒なら、ユーリが寂しくなることもない。
むふー。
愛の言葉って、ちょっと照れる。
ユーリと仲直りして、ユーリを夫にして、そしたら急いでお兄ちゃんに会って、真実を問いただして、それから、それから――
わかってくれたはずのユーリは、きょとんとした顔で、カタナを見つめていた。
暫くの間、場を沈黙が支配した。
そして。
「いひっ」
こらえきれない、とばかりにユーリが噴き出した。
「くっ、うふぅっ。ふふふっ……あはっ。あはははは!」
空いた片手で顔の半分を抱え、心底可笑しそうにユーリは笑う。
「ははっ……言ったよね、カタナちゃん。僕は麻薬漬けの病気猿だってさぁ……」
「えっ?」
ユーリは鞘を縛って固定された刀を水平に持ち上げる。
そのまま楽しそうに、謳うように。
「僕は『神』? 『獣』? 『その間』とか『別のどこか』だとしたらどの辺?」
正式名称、根底自己認識実態乖離症候群。通称『人間病』。
実質は『獣』なのに、認識は『獣』からズレてしまっている状態。
そして人間の言う、正義・尊厳・平等・理想・宗教・人権各種は『麻薬』。
『病気』も『麻薬』もケンタウロス社会では最優先で警戒される概念であり、否定される。
「……ユーリ?」
突然豹変したユーリに、カタナは呆然とする。
聞きたいことは沢山ある。どうしてそんなにケンタウロスのことについて詳しいの?
隠棲状態のケンタウロスのことを知っている人間は、ティーフぐらいしかいないはず!
「テオ! オークエンペラー・テオ! 本来ならお前等は無関係ではない、だが! 正直に教えてくれたお礼に、許してあげよう! 優しい僕が、皆殺しにせず許してあげよう! 今はまだ、お前が生きていることが大事だから! オーク帝国の中心であり、柱であるお前がいないと、過激派が暴れだして面倒臭くなってしまうから! だからこの拠点にある兵器類を、人数の減ったお前達が涙目で輸送せずとも良いように、僕が手伝ってあげよう!」
突然ユーリに名を呼ばれたオークエンペラー・テオは、怪訝な顔をする。
なんだ? この男は、一体何をしようとしている?
「カタナちゃん! ケンタウロスがやる人間病の診断方法に、僕はこう答えてあげよう! お前達ケンタウロスは、自身を獣と認識できず、正答を返せない人間を馬鹿にして陰で笑っているのだろう? だからあえて言ってやる、お前達にこう言ってやる! 『面倒臭いから神でいいよ』と! 笑うがいいケンタウロスども、腹の底から!」
冒険者ギルド、聖都支部のお姉さんがもしこの場にいたら、面倒臭いって二度も言ったと暴れていただろう。
パチン!
ユーリが指を鳴らす。
隠し拠点に置かれていた兵器群の全てが、最初から炎に包まれていたかのように燃え盛りはじめた。ぎょっとした顔で、オークやゴブリン達が倉庫を見る。
初期消火もへったくれもなく、初手から全力レベルの炎で兵器達が燃えている!
水をかける発想すら湧かないほどに、いきなり手遅れだ。
全裸の四つん這いで縛られたままのメキシは、カタナに言われた台詞を思い出す。
『好きにするといい。私も彼らも好きにする』
彼は。
まさにそれこそ、好きにしているのだろう。
捕虜三人の中で私だけ、「
彼の視線が冷たすぎて、助けて欲しいとすら言い出せなかった。
炎によって熱せられた空気が気流となり、風となりはじめた。
ユーリの銀髪が、紅蓮の炎を背景に、風に流れてたなびく。
「さあ、はじめようか、カタナちゃん。寸止め試合を」
「……ユ、」
カタナは、鞘を縛って固定された刀を強く握りしめる。
私は多分、間違えた。
ユーリにわかってもらうことが、できなかった。
それならばもう、寸止め試合に勝つしかない。
「ユーリィィ!」
「可愛いね、ガバナちゃん♡ クソ淫売がよ!」
上半身裸のカタナは、叫びながら全力で駆けだした。
そんなカタナを、ユーリは愉しげに笑いながら煽る。
* * *
怒れ、焦れ、冷静さを失え。
お前が直情的になればなるほど、僕の勝率があがる。
何故なら僕が、冷静になりきれていない。
明鏡止水だの、相手を殺す前に自分の心を殺せだの。
指導者ヅラして、他人に言うのは簡単だけど。
『読心』のセイと、『時を遅く見る目』のカタナ。
今世で物心ついた時から、どう戦えばいいのかずっと考えていた。
15年越しの片思いってやつか。
処女厨ではない僕ですら、逆ハー思考のお前は無理だ。
同様に、殺戮聖女レピアも聖杖の賢者リリィも無理。
非貫通タイプのオナホとしてなら、使ってやるよ。
ったく。
なにが『私が代わりにお嫁さんになってもいい』だ。
お前ごときが、クコロの代わりになれるわけがないだろう。
ねぇ、クコロ。
もう一度、冒険に出ようよ。
みんな連れてきたから、みんなで一緒にさ。
今のセスレは忙しいけれど、彼女もきっと来てくれる。
ねぇ、クコロ。
会いたいよ。
借り二つ、返せてないよ。
返させてよ。
まさか孕ませて借り一つ返したとか言う?
そんなの返したことにならないでしょ。
二つ目は何を願うつもりだったの?
僕との結婚とか言わないよね。
そんなのノーカンだから。
そうだ、結婚式でダンスをしよう。
今ならすっごい値段のドレスを用意できるよ。
こんなドレスは私に似合わないって言わせてみせる。
二人で手を繋いで、デビュタントの時のように踊ろう。
ダンスは暫くしてないから、エスコートできるか不安だよ。
足を踏んでも許してくれる?
踏み返してくれていいからさ。
僕はボウ・アンド・スクレープ、君はカーテシー。
踊りあったら、二人で笑おう。
あのさ、クコロ。
原作のように、オーク達に股を開く選択肢をとってもよかったんだよ?
生きてくれてさえいれば、僕は君を救えたのに。
死んじゃったら、助けに行けないじゃんか。
どこでズレたんだろう。
どこからズレたんだろう。
出会った瞬間からズレたんだとしたら、どうすることもできないよ。
どうすりゃ良かったんだよ……。
会いたいよ。
会いたいよ、クコロ。
会いたいよ。
ねぇ……。