仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ ヒューム×滅炎 DIFFERENT TIMES   作:熊澤しょーへい

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混/二つの(ちから)を合わせて

 落ちる、堕ちる、墜ちる

 

 空気の層は針のように、容赦なく彼女の身体を突き刺す。仮初の地面は無く、必然に彼女は本物の大地へと吸い込まれてゆく。

 

 落ちる、堕ちる、墜ちる

 

 視界には忌々しいほどに晴れ渡った空。綺麗と思うより早く黒い感情が心に湧いた―――ような気がした。とりあえずあれを描いた奴は一発殴る。そう心に決めたのは確かだった。

 

 落ちる、堕ちる、墜ちる

 

 さて、どう上に昇ったものか。懐に収まるは一つのアイテム。(ヒューム)が取りこぼしたそれは、辛うじて彼女(滅炎)によって回収されていた。

 

 このアイテムが無ければ逆転は不可能と言っていい。早急に彼に届けねばなるまい。にも拘らず彼女の身体は動かず、死の秒読みは刻々と進んでいる。

 

『もう、このまま死んでしまえばいいではないか』

 

 妲己のものではない、心の奥底から彼女の下へ声が届く。それは毒のように、するりと彼女の心の中へ入っていった。

 

『分かっているだろう?(お前)ではあの男のようには成れない。()()()()()()()()()()()鹿()()()()()()()()()()()

 

 だまれ

 

『お前は英雄(ヒーロー)に成れない。その資格すらない。ただ怪異を殺す人形としてのみ、その存在が許される』

 

 だまれ・・・

 

『お前は()()()()だ。戦う理由なんてものに悩む必要は無い。不相応な夢は捨て、死の微睡みにふけようではないか』

 

 ・・・

 

 死神が彼女の首に鎌を当てる。温度は無い。冷たいとも感じない。幻覚だろう。しかし抗う気は起きなかった。

 

 彼女の心の荒れ模様とは真逆に、晴れやかに澄んだ空。そこから目を背けるように彼女は空中で器用に身をよじり、運命を受け入れたかのように大地を仰いだ。

 

『本当にそれでええんですか?』

 

 ふと、また違う声がどこからともなく聞こえてくる。誰、と問うよりも早く、彼女の視界が妖力によって強化される。

 

 彼女が操作したわけではない、ましてや妲己でもない。身体を無理やり引っ張られたかのような感触。だが何故か不快には思わなかった。

 

「―――っ」

 

 視界の先には生身で戦う三人の姿が。圧倒的な物量を知恵を持って凌いでいる。しかしそんな戦い方が無限に続くはずもない。『二人の仮面ライダーがエクスマキナに勝利するまで』。時間切れ(タイムアップ)による逃げ切りを前提とした戦い方だ。

 

『いつもあんたを支えとるあの二人も、別の世界から来たあん人も、あんたと伊藤はんが勝つことを信じて戦っとる。そないなカッコ悪いとこを見せて、本当にええんですか?』

 

 ・・・ああ、そうだな。私がどう思われても何も感じない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。きっと、怖かったのは別のこと。私が怪異として扱われるたびに、あの二人がする目。

 

 五郎の目は鋭くなる。態度には決して出さないが、瞳の奥には敵意があった。

 四の姫の目は悲しくなる。いつもは年上みたいなのに、この時だけは年相応に見えた。

 

 そうだとも。あの二人にはそんな目をさせたくない。漠然と、しかし確かにそう想ったのだ。ならば私かこんな無様を晒しているわけにはいかない。

 

 落ちる。堕ちる、墜ち―――ない。

 

「蜘蛛斬り!」

 

 (とお)()()()()()()。主の心に呼応するようにどこからともなく真剣が出現し、滅炎の手のひらに収まる。

 

 ―――そう。私は別にヒューム(英雄)に成る必要は無いし、そもそも成れない。もう悩むことは無い。私の心にはとうの昔から理由(ほのお)があることを思い出せたのだから。

 

 蜘蛛斬りをタワーの側面に思い切り突き立てる。内に含まれている妖気がそれを防がんとするが、それがどうしたとばかりに無理やり刃を突き立てる。

 

 数メートル下がった地点で落下は停止。今度は両腕へ妖気を集中し、同時に新体操の鉄棒のようにグルグルとその場で回転。運動エネルギーが十分溜まったと判断するや否や、その手を蜘蛛斬りから放し、上に凸の放物線を描きながら宙に舞う。

 

 必然、そのままではやがて地面に落ちるだけ。それよりも早く再び彼女は叫んだ。

 

「蜘蛛斬り!」

 

 再びタワーに刃を突き刺し、運動エネルギーを蓄える滅炎。そうやって猛スピードで平面であるはずのタワーを登ってゆく。

 

『ま、待て!お前は―――』

 

『まあまあ、待ちや。奥で一緒にお話ししよか?』

 

 慌てた様子で死神が心の中で声を上げる。しかし全てのセリフを発するより早く、どこかへと押し込まれたかのように気配が遠ざかった。

 

『ほな、これはこっちに任せてな』

 

 もう一つの気配もゆっくりと遠ざかる。その気配に向けて滅炎は声をかける。彼が何者なのか、頭ではなく魂で理解したのだ。

 

「ありがと―――後輩」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――???

 

 何もない透明な場所。建物、人間どころか空、大地すらない。

 

「ぐわっ!」

 

「ほ、っと」

 

 そんな空間に二つの影が転がり込む。一つは怪物。大鎧と呼ばれる骨董品を身に纏っている。中身は人の成れの果てである骸骨。髑髏武者、こう呼ぶのが相応しいだろう。

 

 そしてもう一人は人間の青年。袴に草履と前近代的な服装だが、彼に違和感などはなくむしろこれが普段どうりとばかりに振舞っている。

 

 その表情はにこやか。しかし口角の上がり具合とは逆に、目は全く笑っていない。

 

「よう考えたもんやで。れこーどかーど、っゆうたか?大したブツやなホンマ。撃ち込んだ弾薬に込められた妖気で戦う意思を喪失させる。あん人には効果てき面やろうな」

 

 強そうに見えて意外と心脆いからな、あん人。

 

 怪異という脅威を前にしても余裕そうな態度を崩さない青年に髑髏武者は怒りを覚える。否、それ以前に―――

 

「貴様、何故心に介入できる!?」

 

 そう、ここは(とお)の心の中。普通の人間が介入できるはずがない。できるのは特異な能力を持った怪異か、陰陽師と呼ばれる霊力を操る人間だけ。

 

「あー、ちゃうちゃう。拙者(ボク)は陰陽師ちゃうで。どうもそっち方面の才能はないらしいわ」

 

「今の拙者(ボク)は不完全やねん。呼ばれるはずがなかったけれど、同じ時空に別時代の滅炎が二人いるっちゅう異常事態のせいで引っ張られてきたただの霊体、精神、もしくは概念。正直、現実に介入すんのはさっきので限界や」

 

 ペラペラと一人で語る青年。彼の手にはいつの間にか一つのデバイスが握られていた。それは黒く、細長いデバイス。中央には丸い何かをはめ込むことが出来る空洞が設けられ、左右はレールのように整えられている。

 

「なら―――」

 

「させへんで?」

 

 先程のような手段は使えない。ならばもう一度滅炎を支配すればいい。そう考えて走り出そうとする骸骨武者の足元に一発の弾丸が撃ち込まれる。

 

 コルトM1851ネイビー。コルト社が1851年に開発した44口径パーカッション式シングルリボルバーである。ペリー来航と共に日本に持ち込まれ、その複製品が桜田門外の変で使用されるなど日本でも広く知られている。

 

 怯む髑髏武者。余裕を崩さない男はなお言葉を重ね続ける。

 

「確かに現実には介入できひん。でも心の中(ここ)やったらアンタの邪魔ぐらいはできるで」

 

 気が付くと手に持っていたデバイスは腰に装着されている。

 

《破神ノ宝具!》

 

 空だったレーン、その右側に一枚のプレートが出現、装着される。彼のもう一つの名前に相応しくそのプレートは紫色で、狐の横顔が口を開いてドライバーの中央に向けて牙を立てんとしていた。

 

 青年は透明な硝子玉を取り出し、ベルトの中心に装填。すぐさま狐の額を下に向けて押すと、それに合わせてギミックが作動。ガラス玉に狐の牙が突き立てられる。

 

噛砕(ごうさい)!》

 

 透明だった硝子は穢れを肩代わりするかのように、どんどんと紫色に浸食されてゆく。同時に青年の瞳は紫路に妖しく輝き、獣に切り裂かれたような痣が頬に出現する。

 

「―――変身」

 

 それは人ならざる者へ変わる合言葉。それを合図に炎のような紫色の妖気が吹き上がり、青年の全身を瞬く間に包み込んだ。

 

「グッ!」

 

 あまりの熱量に髑髏武者は思わず交代する。同じ怪異でさえも怯んでしまう圧倒的な妖気。陰陽師ですらない、ただの人間にとっては猛毒に等しい。しかし髑髏武者は警戒を解かない。青年は無事であるという謎の確信があるからだ。

 

 果たして、その確信は現実へと変わる。銃声が二度響き渡り、炎に大きな風穴が開く。二つの穴は瞬く間に拡大し、気が付いた時には炎は完全に鎮火していた。

 

《紫炎を以て魔を滅するもの、(めつ)(えん)~!ヨォッ!》

 

 姿を現したのは一人の戦士。その名にふさわしく狐のお面に紫色の鎧。しかし初代()のそれよりもよりシンプルな、軽量なものへと変化している。

 

「貴様、何者だ!」

 

竹田(たけだ) 十兵衛(じゅうべえ) 吉政(よしまさ)。またの名を2代目仮面ライダー滅炎や」

 

 銃口が髑髏武者の脳天を向く。狩人(きつね)の視線からは逃れられない。できることはただ死を待つか、死に物狂いで抗うのみ。

 

「気ぃつけんと、火傷してまうで?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ッ!」

 

 滅炎の転落。目の前で起こった出来事をヒュームは見過ごすはずもなく、すぐさま後を追うべく飛び込もうとする。

 

「させるか!」

 

 しかしエクスマキナが創造した機関銃がヒュームの行く手を阻む。彼を守っていた炎の壁は既にない。四方八方を凶器に囲まれている状況。ヒュームは滅炎の救出を断念せざるをえなかった。

 

 キュイーン、と機関銃が音を立てる。それは前兆。命を刈り取る弾丸が発射される前兆。参考までにアメリカ陸軍において採用されている機関銃、M134は毎分2000~6000発の弾丸が発射可能だという。まさに死神の鎌と呼ぶに相応しい兵器だ。

 

《ELECTRIC!》

 

 ヒュームの方もむざむざとハチの巣になるつもりはない。機関銃から銃弾が発射される瞬間、ドライバーに一枚のレコードカードを読み取らせた。

 

 即座に引き伸ばされる知覚時間。限られた時間の中でヒュームは悟った。

 

「避けられない―――ッ」

 

 振りかざされた死神の鎌。死角などは全く存在せず、確実に彼の命を刈り取らんとしている。迫る時間制限(タイムリミット)。彼は選択を迫られる。

 

 一つ目の選択肢は新たにレコードカードを使用すること。決戦前に詩音から所持していたレコードカードを受け取っている。しかし弾薬の中には妖気が混じったものも含まれているのだ。囲うように壁を出現させたとして、機関銃の雨に耐えきられるとは考えられない。

 

 二つ目は上空に回避すること。流石のエクスマキナも無から機会を生み出すことは出来ないようで、上空には機関銃は存在しない。しかしその後が存在しない。身動きが取れない空中に回避したところで数秒命が長らえるだけだ。

 

 そして三つ目は―――

 

 ―――引き伸ばされた時間が元に戻る。

 

 ある一転に向けて千、いや万を優に超える弾丸が撃ち込まれる。まさに天の怒り化のような威力に、仮初の大地が大きく揺れる。鉄破片が舞っていて分からないが、この暴虐のなかでの生存は不可能。誰もがそう思ったことだろう。

 

「―――ッ」

 

 しかしヒュームは生きていた、それどころか音もなくエクスマキナの背後を取っていたのだ。しかし彼の体は凄惨そのもの。防御に厚いはずのセイバーフォームの鎧は至る所に穴が開き、一部では完全に破壊されている。一見するとヒュームフォームと見間違うほど。

 

 彼がとった三つ目の選択。それは被弾前提でエクスマキナに肉薄すること。もちろん無差別に弾薬を浴びたわけではなお。当たってもいい部位、弾薬を瞬時に判断。満身創痍になりながらも暴虐の雨から逃れることができた。

 

 あとはエヴィデンスカリバーをエクスマキナの体に突き立てるだけ。効かなくても結構。状況の判断、対応にエクスマキナは二、三手は取られる。その時間があれば滅炎の救助に赴くことは出来るだろう。

 

 即席の策が成ったことを確信するヒューム。しかし―――

 

「―――甘いわッ!」

 

「がっ―――」

 

 振り向きざまにプレイングスラッシャーによる一閃。まともに喰らったヒュームは地面に伏せ、生身の姿へと戻る。

 

 血まみれの身体。奇跡的に急所に傷は負っていないが、膨大な切り傷によって彼の服を真紅に染め上げている。

 

「貴様の動きを見切ったわけではない。だがこの大地は私が造ったもの。貴様がどこに移動したのか、結果だけは手に取るように分かる」

 

 荒い息を上げる海翔。その首にプレイングスラッシャーの刃を当て、エクスマキナは静かに告げる。

 

「・・・終わりだ。遺言ぐらいは聞いてやろう」

 

 勝者の余裕をもって、まるで慈悲であるかのように言うエクスマキナ。しかし海翔は敗者とは思えない、穏やかな表情で彼に答える。

 

「ねえエクスマキナ、人間で一番強い時期って何時だと思う?」

 

「何―――?」

 

「肉体の最盛期を迎える20~30代?積み上げられた技術を存分に振るえる60代?違う、どれも違うね」

 

「貴様は何を言っている!?」

 

 慌てた様子でエクスマキナは短刀を振りかぶる。しかし時すでに遅し。海翔の背後、エクスマキナの正面の崖から滅炎が飛び出し、振り下ろされた短刀を受け止めたのだ。

 

 その機会を海翔は見逃さない。エクスマキナの身体を蹴り、横に向かって彼から離れる。少し離れれば十分。滅炎が海翔の身体を抱きかかえ、人間離れした動きで数メートルだけ距離を取った。

 

「―――そう、子供から大人になる限られた時期。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。この時期の子供は一番可能性を秘めてるのさ」

 

 支えられながらも海翔は自分の足で立つ。既に傷は塞がっており、新たな流血も起こっていない。そんな海翔に滅炎は自らが手にしていたアイテムを渡す。

 

「これ、使って」

 

 E-ジェネレーションバックル。エクスマキナの防御を貫けるだろう数少ない手段。海翔は受け取ろうとして、寸前でその手を止めた。

 

「―――いや。君が使うんだ、(とお)

 

 海翔は人差し指でE-ジェネレーションバックルをとん、と軽く叩く。するとアイテムは即座に分解され、形を変え滅炎のドライバーに装着されてゆく。

 

 一番目立つのは中央に作成された銀色の狐の顔。従来あった硝子玉はその狐の右目の位置に、そして左目に当たる位置にはレコードカードが挿入できる空間が作成された。

 

《M-エクソサイズドライバー!》

 

 変身が解除され、新生したドライバーを呆然と見つめる(とお)。そんな彼女を微笑ましそうに見つめていた海翔は急に胸元に到来した熱に飛び上がる。

 

「熱っ!」

 

 胸ポケットから浮かび上がったのは二枚のレコードカード。一枚はヒュームがいつも使用しているブレイズレコードカード。

 

 もう一枚は三つの手が紫色の炎を次々と受け渡している様子を描いたカード。下部には『METHU()-ENN()』と刻まれている。海翔には見覚えがない。それもそのはず。三代目である結葉が自分の世界から持ち込み、決戦前夜に海翔の服に忍ばせていたのだから。

 

 メツエンレコードカードはそのまま海翔の下へ。一方のブレイズレコードカードは(とお)の掌に収まる。二枚とも一転して温かい炎を放つ。まるで自分を扱えと言っているかのように。

 

 こくり、と二人は顔を合わせて頷く。

 

《AUTHENTICATION! PROVE THAT WHO YOU ARE!》

 

 海翔はウェイクアクセッサーを押し込みドライバーを起動、メツエンレコードカードを挿入する。

 

《OTHER RIDER!REALLY?》

 

 エヴィデンスドライバーの中心から幾何学文字が出現、魔法陣のように海翔の周囲を旋回する。その後レコードカードの挿入と共に三つの炎の塊が出現する。紫色、緑色、そして橙色。三色の炎は海翔を護るように三角形の陣を象っている。

 

 一方の(とお)。ドライバーの中にいる妲己に向けて語りかける。

 

「準備は良い、妲己?」

 

「うむ!一時声が届かなくなったときはどうなるかと思うたが・・・絶好調じゃ!疾くあの不届き物を誅せよ!」

 

「そのつもり」

 

 狐の右目に紫炎が宿る。そしてM-エクソサイズドライバーにブレイズレコードカードを挿入すると、もう一方の目に橙炎が宿った。

 

業炎(GOU-ENN)!》

 

 橙色と紫色。二色の炎が(とお)を包み込む。焼け付くような熱さは感じられない。代わりに癒すような、どこか安心するような温かさが(とお)に染みこむ。

 

 もはや印を結ぶ必要は無い。自分の力を使いこなすのに、そんなものが必要になる道理はない。

 

 準備は出来た。最後の一押しを両者は同時に唱える。

 

「「―――変身ッ!」」

 

《ALL RIGHT!THIS IS POWER OF HUMAN'S HISTORY!METHU-ENN!》

 

 幾何学文字が海翔の身体に収束すると白色のアンダースーツか構築され、そこへ三色の炎が包み込む。

 

 ヒュームの身体に紫色の鎧が装着される。サイドラインにはそれぞれ緑色と橙色の魔力が充填され、頭には狐のお面が斜めがけに装着される。

 

《FIRE WILL BE PASSED ON FROM ONE GENERATION TO ANOTHER》

 

 仮面ライダーヒューム メツエンフォーム。受け継がれし戦士の力を宿した姿だ。

 

《急急如律令心炎退魔!滅炎・業!》

 

 手刀によって炎は切り裂かれ、戦士の姿が露わになる。全身を覆うは白銀の鎧。その姿は武士ではなく、遠い異国、西洋に活躍する騎士のよう。鎧と鎧の関節部分を炎の線が補う。右半身は紫炎、左半身は橙炎だ。

 

 人を容赦なく焼き尽くす炎と遭難者を温かく包み込む炎。二律背反な性格を自在に使いこなす仮面ライダー。

 

 その名も仮面ライダー滅炎・業。誕生の瞬間である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「新たな力が増えたところで―――ッ!」

 

 エクスマキナが激高したかのように叫び、プレイングスラッシャーを振るう。その動きに連動して二人に向けて弾丸の雨が容赦なく降り注ぐ。滅炎・業が庇うように前に出るが、先程の攻防で学ばなかったのかとエクスマキナは冷笑する。彼が所有するスペクターレコードカードの効果もあり、その半数には妖気が含まれており、滅炎が妙な術を用いたとしてもダメージを与えられる―――はずであった。

 

 ガギガギガギガギン!

 

 甲高い金属音と共に弾薬が全て地面に叩き落とされる。いつの間にか滅炎・業の手に巨大な―――それこそ大人一人を優に覆い隠せるような―――円形盾(ラウンドシールド)が握られていた。

 

《エヴィデンスシールド・業!》

 

 美しい白銀の盾は猛攻に晒されても傷一つ負っておらず、その頑丈さを知らしめる。滅炎・業はエヴィデンスシールド・業を軽々と持ち上げると、エクスマキナに向けて投擲してみせた。

 

「―――ッ!」

 

 エクスマキナは何とかその場から引くことで回避。しかし背後にあった機関銃は数十単位で薙ぎ倒され、ブーメランのように滅炎・業の下へ舞い戻る。

 

 即座に別の機関銃で射撃。二人を縫い留めている間に破壊された機関銃の再生成を試みる―――が上手くいかない。それもそのはず。レコードカードの大規模運用に加え、デバイスを介さない同時起動。常人の精神ではとっくの昔にレコードカードに飲み込まれているはずであり、彼の存在に守られているエクスマキナであっても限界が迫っていたのだ。

 

「機関銃を生成していない―――?」

 

 そしてエクスマキナの異変には当然ながら二人の仮面ライダーも勘づくこととなる。再度エヴィデンスシールド・業を投擲しようとする滅炎・業であったが、ヒュームがそれに待ったをかける。

 

「そっちは僕が対応しよう。(とお)ちゃんはエクスマキナに集中して」

 

《対魔拳銃A・MA・NO・HA・BA・YA(アマノハバヤ)!》

 

 ヒュームは二つの拳銃を創造する。一つは2代目滅炎の使用するコルトM1851ネイビー。そしてもう一つは3代目滅炎の武器の一つである対魔拳銃A・MA・NO・HA・BA・YA(アマノハバヤ)。異なる時代の滅炎が使用する拳銃を呼び出したヒュームの左手には一つの指輪が装着されていた。

 

■■■■(■■■■■■■■)READY(レディ)―――》

 

 緑の指輪をA・MA・NO・HA・BA・YA(アマノハバヤ)の銃床の窪みに押し当てる。滅炎・業にはなんと言ったか分からなかったが、電子音と同時に二つの銃に緑色の妖気が集中する。

 

「―――ハアッ!」

 

 ヒュームは銃口を天に掲げると、そのまま二つの引き金を引いた。

 

《―――GO(ゴー)STRANGE(ストレンジ) MAGNUM(マグナム) BREAK(ブレイク)!》

 

 リボルバーからは6つ、A・MA・NO・HA・BA・YA(アマノハバヤ)からも6つ。計12の弾丸が空に舞う。数秒程空を上昇すると、弾丸は()()()()()。まるで何者かの手足であるかのように自由自在に戦場を駆け巡り、設置された機関銃を次々と破壊してゆく。

 

「―――今っ!」

 

 弾丸の圧力が弱まった隙を狙い、滅炎・業はエクスマキナに向けて走り出す。巨大な円形盾(ラウンドシールド)を手にしているに関わらず、その動きは目を見張るほど軽快だ。

 

 滅炎・業はM-エクソサイズドライバーの狐の右目、紫色の瞳に手を翳す。

 

紫炎(SI-ENN)!》

 

 盾が纏うは紫色の炎。生きているもの、死んでいるもの、平等にその肉体を崩壊へと導く死の炎。

 

「―――ッ!」

 

 咄嗟に跳躍することで辛うじて回避するエクスマキナ。盾が仮初の地面に深々と突き刺さったことで追撃はないと安堵する―――が続いての滅炎・業の行動に、仮面の奥は驚愕に染まることとなる。

 

橙炎(DAI-ENN)!》

 

 狐の左目、橙色の瞳に手を翳すと、滅炎・業の左足に橙炎に付与される。その炎は正の炎。時に食物の生育を支え、時に冷え切った身体を温め、時に死者を焼いて(きよ)めるもの。

 

 通常の何倍にも強化された左足は仮初の大地に突き刺さっていたエヴィデンスシールド・業を蹴り上げた。

 

「グアッ!」

 

 滞空しているエクスマキナには回避は不可能。そのまま腹にもろに盾を喰らうと、苦しみを感じる暇もなく、コロシアムの壁に向けて滅炎・業によって蹴り飛ばされた。

 

「クッ―――」

 

 何とかして起き上がるエクスマキナ。当然ダメージを負った彼を滅炎(狩人)が見逃すはずもない。白銀の身を翻してエクスマキナへ急接近する。

 

「―――ッ!舐めるな!」

 

 エクスマキナがプレイングスラッシャーを振るう。それに連動して滅炎・業の足元に機械たち(スクラップ)の刃が次々と出現してゆく。流石の滅炎・業もその足を止め、刃に向けて盾を振るう。この隙にエクスマキナは機関銃を作成する。

 

 もともと生み出していた機関銃はヒュームの手によって9割以上が使用不可能となっていた。滅炎・業には言って使わせた。今度こそその体に鉛玉を―――

 

「―――な」

 

 生成途中であった機関銃は形を保てずにぱらぱらと分解される。―――エクスマキナの胸、妖力が集中している場所に()()()()()()が突き立てられた瞬間に。

 

「何故、蜘蛛斬りを―――」

 

「蜘蛛斬りは使えない、とは言ってない。―――海翔!」

 

 滅炎・業は後方の仲間に向けて呼びかける。

 

■■■■(■■■■■■■)!READY《レディ》―――》

 

「任された!」

 

 ヒュームが構えるは対魔戦斧A・S・T・E・R・I・O・S(アステリオス)。メツエンフォームの能力で生成されたそれは既にオレンジ色の炎を纏っている。

 

 エクスマキナの正面に迫ると、ヒュームは後方に戦斧の刃を突き刺す。そして十分に近づいたところで遠心力を最大まで生かし、斧を大きく振りかぶった。

 

《―――GO(ゴー)MAXIMUM(マキシマム) AXE(アックス) BREAK(ブレイク)!》

 

 狙うはエクスマキナに突き刺さった蜘蛛斬りの柄。まるで釘を打ち込むハンマーのように、刃を急所へと至らせる。

 

「ガアッ!」

 

 二つの妖気。乗算作用によって増幅したそれはエクスマキナに打ち込まれた「種」を破壊するには十分だった。エクスマキナを守っていた「種」の完全破壊。それが齎したのは―――

 

 塔の崩壊である。

 

 塔を構成していた機械たちは下部から順にレコードカードの支配から脱却し、元の形状へと戻ってゆく。しかしその影響で塔は支えを失うこととなり、上層の地面への落下が始まっていた。

 

「おの、れ・・・せめてヒューム、貴様だけはァ―――ッ!」

 

 早くに塔が崩壊したことが原因なのか、驚いたことにエクスマキナは未だに正気を保っていた。レコードカードの力の残滓を操作し、ヒュームを道連れにしようと企む。

 

「いや、その前に―――」

 

「―――終わらせる!」

 

 辛うじて残った足場に二人の仮面ライダーは立ち、落下するエクスマキナを捉えていた。

 

《AUTHENTICATION!WHAT’S HAPPENED?》

 

 ヒュームは再びエヴィデンスドライバーを待機状態に。すると全身から三色の妖気が溢れ、やがて右足に集中する。

 

紫炎(SI-ENN)橙炎(DAI-ENN)―――混成、業炎(GOU-ENN)!》

 

 滅炎・業はM-エクソサイズドライバーぼ二つの瞳に重なるように掌を翳す。同時に右半身からは紫炎が、左半身からは橙炎がそれぞれ溢れ出す。

 

「「―――ハアッ!」」

 

 力を溜めきったと同時に崩壊しつつあった足場から跳躍。ヒュームはアクティブローダーを押すとともに右足を、滅炎・業は二つの炎が混じり合った両足をエクスマキナに向けて突き出す。

 

《ALL RIGHT!METHU-ENN FINISH ATTACK!》

 

「~~~~~ッ!」

 

 力は拮抗する。しかしそれは一瞬のことで、二人の仮面ライダーの同時必殺はエクスマキナの身体を貫いた。

 

 そのままの勢いで二人は久方ぶりに本物の地面に降り立つ。それと同時に言葉にならない絶叫を上げてエクスマキナは爆散した。

 

 異世界での二日間にわたる戦い、その終幕であった。




あと一話、エンディングでおしまいです。





仮面ライダー滅炎(2代目)
 幕末を舞台に活躍する仮面ライダー。伝手を介して手に入れたコルトM1851ネイビーをメインに戦う。





仮面ライダーヒューム メツエンフォーム
 坂上結葉が持ち込んだメツエンレコードカードで変身する姿。3代の全ての武器―――どころか全てのアイテムすら使える。
 一部音声が伏せられているのは重大なネタバレになるため。ご容赦ください(天の声)。

メツエンレコードカード
 坂上結葉が自らの世界から持ち込んだレコードカード。仮面ライダー滅炎の記録が内包されている。何故滅炎の世界にレコードカードがあるのかは[閲覧不可]





仮面ライダー滅炎・業
 M-エクソサイズドライバーとブレイズレコードカード、そして妲己の力が合わさったことによって変身が可能となった形態。肉体の負荷を気にすることなくブレイズレコードカードの力を十分に扱うことが出来る。

M-エクソサイズドライバー
 E-ジェネレーションバックルと調伏之具が合体したことで生まれたドライバー。超火力を内包したとしても戦闘行為には問題ない、恐るべき耐久力を見せる。
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