仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ ヒューム×滅炎 DIFFERENT TIMES 作:熊澤しょーへい
怪異:口裂け女を倒した滅炎は、そのまま紫炎を纏った刀で妖気溜まりを斬りつけた。紫炎を浴びて妖気は忽ちに霧散し、二度と怪異を発生させることは無かった。
最後の
「
一呼吸おいて四の姫も五郎の隣に座る。豪快な五郎とは違い物音ひとつ立てない洗練された座り方だ。
「姫さんはなんか知ってるか?」
五郎は四の姫に問いかける。都の警護を承っているといっても武士は対妖魔の専門家という訳ではない。多少の資料はあるが、やはり安部家のそれとは比べ物にならない。
陰陽師の総本山の姫なら何か知っているのでは、そう考えての問いかけだったが、得られた答えは望んでいたものではなかった。
「一通り書物に目を通しているはずですが、あのような怪異は残念ながら・・・」
四の姫は首を横に振る。当時の資料に
(えーとレコードカードは・・・)
一方のヒュームは怪人の元になっただろうレコードカードを探して、口裂け女の消失跡地を捜索していた。どのような温度の炎を操ったのか、コンクリートは灰白色に変色していた。
(・・・あれ、どこかに飛んで行ったかな)
怪異:口裂け女は当然ながらプレイスターではない。いくら探してもレコードカードなど見つかるはずがないが、そうとは知らないヒュームは必死になって辺りを探っていた。
そして、見つけた。レコードカードではないが、それと同じほど厄介な代物。
「種・・・?」
見つけたのは直径5cm程の黒い植物の種。形状はクルミの実に似ているが、発せられる気配は到底普通の植物とは言えない禍々しいものであり、ヒュームは仮面の下でつい顔を顰めた。
砕くべきか、と一瞬考えがよぎったが、果たしてそれが正解なのか分からない。砕くことがあの怪人群の発生条件である可能性もある。
物は相談、ということわざもある。不気味な種を持って滅炎たちに合流しようとしたその時―――
《完了、二倍速。
「あ―――」
どこからともなく掠れた人工音声が響く。警戒していたはずなのに、戦いが一段落した隙を狙われ、滅炎はヒュームに警告を出す暇も無かった。
黒いオーラを纏った斬撃が、地面スレスレを高速で飛来する。
「―――ッ!」
ヒュームの胸に大きな衝撃が加わる。防御力の低いアーチャーフォームであったことが裏目に出た。口から酸素が吐き出るとともに、大きく吹き飛ばされた。
その拍子で拾った種が手から離れる。物理現象に逆らうことなく地面を転がったソレは、黒い人影の足元で停止した。
「―――」
「・・・」
「・・・何者だ?」
足元に転がった種を黒い人影は拾い上げる。多種多様な機械をグチャグチャに詰め込んだかのような異様な姿。関節の動きは生物的であるにも関わらず、鉄の鎧に所々垣間見える配線は人工的で、相反する二つの要素を含有する姿は見るものに恐怖を与える。
第三者の登場に滅炎らは無言で刀を構え、ガレスはインベスティマグナムを向けドスの効いた声を放つ。
「エクセマキナ。貴様を地獄に送る者の名だ、仮面ライダーヒューム」
緊張感が膨れ上がる。先ほどまでの戦勝気分は霧散している。エクセマキナと名乗った怪人は周囲の殺気を見事に無視し、拾い上げた種を手で弄ぶ。
「これは今となっては貴重なものなのでな。悪いが返してもらおう」
聞こえてきたのは何処にでもいるような男性の声。無論声を弄っている可能性もあるが、殺気一つ感じさせない声に、逆に戦士たちは警戒心を上げた。
(
(分かってる。あの種とあいつの胸)
隣同士密着し合った四の姫と滅炎は、小声で話し合う。エクセマキナが持つ種と心臓部に当たる鎧の奥に泥のような妖気が見えるのだ。常人であれば吐き気を催すほどの邪悪な気。その気配には二人とも覚えがある。
(多分、
空亡。滅炎の世界において君臨する巨悪。人の恐怖が生み出してしまった災厄。怪異でありながら怪異とは根本から異なる存在。
そんな特級の怪物の妖気が種と怪人から漂ってくるのだ。二人が警戒レベルを最大限まで上げるのも仕方がない。幸運なのは怪人が空亡本人では無い点くらいだろうか。
そんな二人を置いてエクセマキナはブツブツと独り言を続ける。
「ヒュームはともかく滅炎、それも初代がカウンターとして呼ばれるとはな。・・・いや、全盛の二代目や三代目に比べれば幾分もマシか。だが
よく分からないことを呟きながら種を握りしめる。そしてもう片方の手に握られている短刀―――プレイングスラッシャーの
《再生速度、加速開始》
「―――ッ!」
《1-Reading,2-Reading》
不快な機械音と共に短刀にエネルギーが集中する。視線の先には地面に転がっているヒュームの姿が。ガレスは両者の間に割り込み、銃口を地面に向けた。
《Ruby Shooting Breaking!》
《完了、二倍速。
一瞬だけ早くガレスの動作が間に合い、目の前に真紅の宝石の壁が形成される。ルビーはモース硬度9とダイヤモンドに次ぐ数値を誇り、加えて衝撃を受けると割れる性質である劈開を持っておらず、ある意味ではダイヤモンドよりも強靭だ。
しかし数秒後、美しい宝石の壁は見るも無残な残骸へと姿を変えた。襲い来る斬撃の雨。一つ一つが仮面ライダーに傷を負わせるほどの威力。容赦なく宝石の壁を荒々しく削り取ってゆく。
「―――ふぅ」
だが役割は十二分に果たした。斬撃の雨を余すことなく受け止めきったのだ。無事な二人を見てエクセマキナは眼鏡を押し上げるように眉間に指をあてる。
「フン、村上が造った仮面ライダーか」
「―――ッ!なぜその名前を!?」
村上昭人博士。零課の装備の研究を一手に引き受ける開発研究部の主任研究員にして、ガレスを初めとした三機の仮面ライダーの生みの親。
零課の中でも一部しか知らされていない人物の名前を耳にし、ガレスが驚愕の声を上げる。
「貴様もスクラップにするところだが、今用があるのはヒュームのほ―――」
言葉は途中で打ち切られる。無防備な背後を狙って滅炎が妖気を纏った刀を振りぬいた。狙いは弱点と思われる配線部分。しかし―――
ガギンッ!
「―――硬い」
甲高い金属音と共に、滅炎の手に痺れが伝わる。寸分の狂いなく吸い込まれたが、数ミリ進んだところで弾かれた。
「―――フッ」
「―――ッ」
怪人が振り向きざまに短刀を振るう。滅炎は何とか受け止めたが、エクセマキナの攻撃は一度では終わらない。リーチが短い分、滅炎が振るう日本刀よりも一撃一撃の隙が小さい。
「よく耐える、骨董品風情が」
《再生速度、加速開始》
「させない」
怪人はプレイングスラッシャーを操作し、レコードカードの力を抽出する。妨害しようとする滅炎だったが、チャージ中武器として使えないというわけではない。決定打を与えられないまま時間が過ぎる。
《完了、二倍速。
「大人しく―――」
滅炎に向けて凶刃が放たれようとしたその時―――
「させないよ!」
「させませんよ」
《ALL RIGHT!ARCHER BLAZE SHOOTING FINISH!》
《Ruby Shooting Burning!》
巨大な炎の矢と真紅の宝石群が怪人の背中を襲う。手元が狂ったことでエネルギー刃は明後日の方向へと飛んでいった。
怯んだ隙を見て滅炎は二人と合流し、エクセマキナの反撃に備える。
「―――おのれ、仮面ライダーヒューム。どこまでも私の邪魔をするか」
エクセマキナがゆっくりと仮面ライダーの方を向く。攻撃が直撃したにも関わらず全くの無傷。歴戦の戦士と言えども泣き言の一つでも言いたくなるような硬さだ。
「白いの、仲間?」
「―――え、『白いの』って僕のこと!?」
「・・・?そうだけど」
心底不思議そうにきょとんと首を傾げる。確かに白い仮面ライダーはヒュームだけ。それにしても『白いの』は無いだろう。
「生憎だけど、初対面で命を狙ってくる知り合いなんて―――」
いない。そう言いかけて言い淀む。
(いや何度かあったな。初対面で殺されかけたこと)
本人には絶対に言わないけど。この話題が出るたびに当の本人は死にそうなほど顔を青ざめさせるのだ。他の
「伊藤君、個人的な交友関係に口は出したくありませんが、付き合う人間はもう少し選ぶべきかと」
「瀬良さんまで!?違いますって!」
沈黙をどう受け取ったのか、ため息交じりのガレスの言葉をヒュームは慌てて否定する。自分を何だと思っているのか、何時かは問い詰めなけらばならないと心に決める。
「・・・邪魔だな」
《再生速度、加速開始》
「「「―――ッ!」」」
話している間にもエクセマキナは行動を始めている。響く機械音声に弾かれたように仮面ライダーたちも動き始める。滅炎は前線に躍り出、ヒュームはエヴィデンスアローでその援護、ガレスは再び宝石の影を構築しようとする。
言葉を交わさずともこの連携。流石としか言いようがなかったが、今度はエクセマキナの方が一歩早かった。
《完了、五倍速。
機械音声の宣言と共に、あたり一帯に不快な
その場にいる全員が咄嗟に耳を塞ぐ。しかし完全にふさぐことは出来ず、耳の隙間から入り込む音によって精神が蝕まれてゆく。
きっかり一分。直接攻撃がなく、どこか肩透かし感があったエクセマキナの行動。しかしその前と後では一つ大きな違いがあった。それは―――
《Error》
「何で変身が解けて―――」
「瀬良さん!」
エラー音を吐いて、インベスティドライバーβからルビーレコードカードが排出される。生身で戦場に放り出された詩音を庇うかのようにヒュームが慌てて前に出る。
詩音はレコードカードを挿入するが、何度やっても結果は同じ。ドライバーどころかインベスティマグナムからも火花が出ており、とても機能するとは言えない状態だ。
「滅炎はともかく、貴様にも効かないか」
優勢を確信し、追い詰めるべく短刀を握りなおす。
「しかし、これで一人脱落―――む」
違和感を抱いたエクセマキナは歩みを止める。戦いで負荷がかかり過ぎたのか、プレイングスラッシャーからもバチバチ、と火花が出ている。
エクセマキナは忌々しげに舌打ちをする。
「調整が甘かったか。・・・この場は引こう。次に相まみえる時が貴様の最後だ、仮面ライダーヒューム」
《完了、二倍速。
黒いエネルギーの斬撃が地面に直撃し、土埃があたりに舞う。晴れたときにはエクセマキナの姿は影も形も無かった。
「・・・消えた」
滅炎が呟く。見られているような気配も、あの特徴的な妖気も最早感じられない。ヒュームも同じようで一先ず警戒を解いた。
連戦に次ぐ連戦、気がつけば体が疲れ切っていた。特に滅炎はそれが顕著で、元の世界で戦っていたこともあって思った以上に負荷がかかっていた。
目の前の白い男?も戦うつもりはないようだ。一先ず変身を解除しようと両者ともドライバーに手を掛けたとき、不意に背後から声が掛けられた。
「やっぱり!仮面ライダーだ!」