仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ ヒューム×滅炎 DIFFERENT TIMES 作:熊澤しょーへい
実験番号:153
指定:重要機密(上層部の判断により解除の可能性あり)
実験日:■月■■日
実験場所:実験施設0085
実験内容:[データ規制]遺跡より発見されたレコードカードNo.00(以降『W』と表記)の性質の解明、及び利用方法の確立
投入人員:■■名
主任研究員:荒木■■
経緯:開始後00分 実験開始、『W』の封印を解除
02分 安定状態への突入を確認
05分 安定状態の継続を確認
10分 一部データの解析を開始
15分 解析を継続。進捗は0.00000000008%と予想
20分 解析を継続。進捗は0.0000000000801%と予想
25分 解析を継続。進捗は0.0000000000802%と予想
30分 解析を継続。進捗は0.0000000000803%と予想
35分 解析を継続。進捗は0.0000000000804%と予想
37分 一部データを修正。進捗は0.000000000053%と予想
40分 解析を継続。進捗は0.00000000005308%と予想
45分 解析を継続。進捗は0.0000000000532%と予想
47分 『W』に異常発生。外界との通信が不可に
50分 本部により緊急事態宣言が発令
51分 再封印プロセス起動。人員の避難開始
52分 システム一部動作不良。再封印プロセス遅延
55分 実験室が完全に喪失。範囲1km以内に立ち入り禁止宣言
65分 『W』臨界点に到達。実験施設の大部分が消失
67分 再封印プロセス再起動
70分 『W』再封印に成功。実験の終了を宣言
結果:データの回収には成功。主任研究員含む16名の人員を喪失。実験施設0085は投棄が決定、0085は岡山県■■市に新たに建造される。情報の隠匿は成功。政府・零課共に警戒の様子は無し。
決定:以降『W』の研究は凍結。レコードカードNo.01の研究に注力する
ヒュームの世界
都内某所、資料に目を通した男はそのまま紙を火にくべた。灰皿の中でゆっくりと燃えてゆくそれには目もくれず、男はガラス張りの壁から景色を一瞥する。日本の経済の中心点を一望できるこのビル。そこに拠点を置いているという事実が彼の財力を示している。
懐から葉巻を取り出して口に咥える。ガラスで反射された自分の姿を見て似合わないな、と自嘲する。彼の体格に目立つ点はない。中肉中背、典型的な日本人だ。
ふと男は考える。何時から葉巻を吸うようになったのだろうか。子供たちが自立し始めたとき?違う。
『タバコは身体に悪いよぅ?』
『違う、葉巻だ。煙草なんかと一緒にしないでくれ』
―――ああ、分かっているとも。彼女が死んでからだ。私の世界が完膚なきまでに崩れ去ったあの日、数多の悲劇を生み出したとしても理想を成し遂げると決めたあの日からだ。
そこまで考えて、軽く頭を振る。郷愁に浸るのは計画が達成されたとき、或いは道半ばで倒れた時で十分だ。
「16の人員を喪失、か。死体は確認したのか?」
感傷に浸っていた中年の男はもういない。そこにいるのは数多の命を踏みにじり、世界を根底から覆さんとする一人の怪物だった。
「15人については確認したと。残る一人は肉片一つ確認できませんでしたわ」
怪物の言葉に応えるのもまた怪物。優し気な声色とは裏腹に、まるで温かさが感じられない。碧色の目もどこか虚ろで、人形めいたものを感じる。
「誰だ?」
「どうやら荒木主任研究員のようです」
ふう、と煙を吐き出す。白い煙は男の様々な感情と共に排気口へと昇ってゆく。
「どうします?」
意味ありげに女が問いかける。彼は主任研究員の一人、持っている情報は馬鹿にならない。もし生き延びていて零課に合流されようなら計画の見直しは必至。場合によっては地下に潜ることも考えなければならない。
男は葉巻の燃えカスを灰皿に移す。その中では送られてきた資料が既に灰になっていた。
「―――放っておけ。奴は実験の中心地にいた。おそらくは暴走に巻き込まれたのだろう」
話しながら備え付けられた椅子に座り込む。贅を凝らされたそれは商人の宣伝に違わずしっかりと男の身体を受け止めた。
「世界を移動したなら追いかけられる訳もなし。それと同時に帰ってくることもあるまい。死亡届を出せ。奴への対処はそれで充分。もし帰還したとしても死者の話など誰も聞かんよ」
そもそも正気を保っているかも怪しいが、と付け加える。
「それよりも、だ。『E』の研究と同時にライダーシステムの開発も再開させろ。お前の報告が正しければ
分かるな?と鋭い視線で女を見る。
「承知しています。既に対象との交戦データから開発を進めさせています」
「よろしい」
怪物たちの暗躍は続く。止められるものは誰もいない。既に歯車は
ハーメルンの世界
昭和、平成と駆け抜けて令和に至ったこの世界。世界人口は80億人を超え、スマートフォンなどの情報機械の発展もあり、地球上、中でも地上においては人間が到達していない場所は無いと言っても過言ではない。
「違う、違う・・・」
しかし、人の目が届かない場所というのは確かに存在する。例えば、誰からも忘れ去られた森の中の廃病院。
「違う、違う、違う・・・」
人の手が入らなくなって久しく、雨風によって決定的なダメージが入る一歩手前。バズリ目的の若者でさえ近づかないこの場所で、研究職であろう一人の男が頭を抱えて一人呟いていた。
身なりはボロボロで、研究職だと分かる白衣も所々黒く焦げていた。メガネのレンズには大きなヒビが入っており、メガネとしての機能を果たしているか首を傾げざるを得ない。首から下げている名札にもその影響が届いており、辛うじて「荒木」という名字だけが読み取れる。
苦しむ彼の正面には完全な状態のプレイングスラッシャーが鎮座していた。
「何が違う?彼女の最高傑作であるヒュームを倒す。お前が望んだことだ」
「違う、僕たちは誰かを傷つけるためにこのシステムを開発したんじゃない!」
荒木は顔を掻き毟る。頬からは赤い血がツー、と流れた。
「違う・・・いやその通りだな。私は人間を殺すために研究に従事してきたのではない。私は自分が天才であることを証明するためにこれまで研究を続けていたのだ」
「そんな自己満足の為なんかじゃない!僕は人類のために・・・」
「フン、結局は平行線。
荒木は勢いのまま辛うじて形を保っていた窓を叩き割る。痛みよりも早く暑さが脳内を駆け巡り、切れた刃だから血が滴り落ちる。
「お前は誰だ!?」
「分かっているだろう?私はお前でお前は私だ。呼ばれたわけでもなく無理やりに、しかも二度世界を渡って耐えられるはずがない」
「これが代償だと?」
「違うな、タダの結果だ。耐えられればよかった、しかし私の
そういうなり彼はプレイングスラッシャーを手に取り、共に置かれていたレコードカードを装填する。
《再生完了。
「フン!」
レコードカードを読み取らせるや否や、プレイングスラッシャーを腹に突き刺す。奇妙なことに血は一滴も滴り落ちず、荒木の顔にも苦悶の顔一つ浮かばない。
気が付いた時には頭痛は収まっていた。
「さあ、すべて殺しつくそう!あの女の遺産も、村上の足掻きも、オカルトまがいの骨董品も。何もかもを物言わぬ骸へと!」
怪物は慟哭する。もはや正気と狂気の壁は存在せず、目の奥にはどす黒い明かりが爛々と輝いていた。
「そして証明しようじゃないか!私こそが!真の天才なのだということを!ははははは、あーっははははははははははははははははははは!」