仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ ヒューム×滅炎 DIFFERENT TIMES 作:熊澤しょーへい
戦闘パートと比べて時間が掛かる
カランカラン
『CLOSE』と札が下げられたドアを章太郎は遠慮なく開ける。静かな鈴が客の存在を店主に告げる。喫茶店特有のコーヒーの匂いがあたりに充満しており、嗅いだことのない香りに平安人三名が首を傾げる。
「ただいまー!」
「おう、おかえり」
章太郎の言葉に叔父である権兵衛がカウンターの裏から姿を現す。
「えらく遅かった―――」
権兵衛の言葉は章太郎に続いて入ってきた五人の人間を目にしたことで中断される。海翔と詩音はまだいい。忍者を想起させるような黒装束で日本刀を腰に下げている
「お、お邪魔してます・・・」
権兵衛の視線にいたたまれなくなった海翔はおずおずと挨拶する。因みに元凶の三人は興味深々と言った様子で喫茶店を見回している。
「おじさん、この人たち仮面ライダーだよ!」
気まずい雰囲気を感じ取ってか、それとも偶然か。章太郎の言葉で権兵衛が纏っていた警戒心の殆どが霧散した。
「仮面ライダー!?そっちの人達もか?」
権兵衛の視線の先には
「すみません。何だか押し掛けるような形になってしまって・・・」
「ああ、それに関しては心配いらん。察するにこことは別の世界から来たんだろう?」
その言葉に今度は海翔が驚愕する番だった。呆気にとられた海翔の顔を見て、権兵衛は笑う。
「どうしてわかったのか、ていう顔だな」
「えっ・・・」
思わず両手で顔を抑える海翔。その行動を見て、権兵衛は笑みで更に顔を崩す。
「あんたら以外にも仮面ライダーに会ったことがあってな。全員がそれぞれの世界から来ていたんだよ」
権兵衛の言葉になるほど、と思うと同時に新たな疑問が浮かんだ。
海翔たち、
一体幾つの世界があるのか。10?100?それとも無制限に?そもそも
(っと危ない、考えが変な方向に向かってた)
何故かこれ以上考えてはいけないような気がして、思考をさっと切り替える。
「まあそういうわけで、だ。寝食ぐらいは提供しよう」
「え、いやそれは流石に―――」
貰い過ぎでは、と海翔が言おうとしたとき、グ~~~っと大きな、それも二つの腹の虫の鳴き声が店内に響いた。
「未来のご飯、気になる」
一人は店内を物色していた平安人、
そしてもう一人は―――
「―――あの、瀬良s」
「違います」
「・・・言い終わらないうちに否定するのは、肯定しているのと同じですよ」
「・・・」
ぷい、と海翔から視線を逸らす。恥ずかしさの所為か、耳が真っ赤になっているのを海翔は見逃さない。かと言ってそれを指摘することもない。気づかないふりをするというのも、一種の優しさなのだ。
だがこれでは断り切れない。ムムム、と唸る海翔を見て権兵衛は苦笑いする。
「まあ遠慮するな。数々の仮面ライダーをうならせた料理の腕、存分に振るってやろう!」
「ちょ・・・」
「楽しみ」
権兵衛は太い上腕二頭筋を見せつけるように腕まくりし、海翔が何か言う前にキッチンで作業を開始した。
待ちわびるようにカウンター席で座る
「そこの三人は着替えて待ってな!奥に服は用意してある!」
「作戦会議をしましょう」
ずらりと並ぶ席の一角に詩音の声が響いた。思い思いの飲料を飲んでいた海翔たちはその手を止める。どこから持ってきたのか、詩音の手には中くらいのホワイトボードとマーカーが握られていた。
「・・・それどこから持ってきたんですか?」
「服と一緒に入ってた」
ここは喫茶店。ホワイトボードを使う機会など見当たらない。もしや何処からか盗って・・・という海翔の疑問は現代風の服装へ着替えた
「助っ人も呼びました」
「まっかせて!兄ちゃんたちの助けになれるように頑張るよ!」
そう言って章太郎が席に着く。
「私たちはこの世界について詳しくありません。加えて他の仮面ライダーたちの戦いを見た章太郎君なら別の視点から作戦を思いついてくれるかもしれません」
そう言うとホワイトボードに何やら顔のようなものを描き始めた。
「こう・・・いやこうだったような・・・」
ブツブツと呟きながら数分かけて描かれたそれは、何やら丸々とした、それでいてごちゃごちゃした不思議な絵。大きなそれの横にはぐるぐると塗りつぶされた丸が幾つか並んでいた。お世辞にも上手いとは言えない。
詩音は満足そうに一息つくとコホンと軽く咳をした。
「まず整理しますが、敵目標はエクスマキナを名乗る戦士、そして彼が使役する複数の敵性実体―――ちゃんと聞いてますか?」
口を開けてポカーンとしている四の姫たちを見て、詩音は不満げに口を尖らせた。
「それ、兄ちゃんたちが戦ってた機械人間なんだ・・・」
「あ」
章太郎がポツリと言葉をこぼす。言ってはならない言葉を耳にした人のように、海翔は情けない声を上げてそわそわと当てもなく動き出す。
「え、もしかして私の絵汚かったですか・・・?」
「う―――」
うん、汚い。そう言おうとした
「個性・・・そう個性的!独特で味があると思うヨ!」
海翔はそう言い募るが泳ぐ視線と滝のように流れる冷や汗で嘘がバレバレである。これでもかと海翔の脳が回転し、必死の形相で四の姫と五郎に視線を送る。受け取った二人は海翔の思惑を察し、次々と口を動かす。
「―――ッ!え、ええ!想像以上の
「あ、ああ!これが未来の技術か、って感心してたんだ!」
弁明するように言い募る三者。しかしそれは逆効果だったようで、詩音は膝から崩れ落ちた。
「不思議に思っていたんです。私が絵を描く度に向けられる子供たちの生暖かい視線・・・ふふ、殺してください・・・」
「瀬良さん―――ッ!」
海翔の叫びも虚しく、詩音は真っ白になってその場に倒れ伏した。灰にでもなったのかと思ってしまうほど存在感がなくなった彼女を、海翔は窓際の席に静かに横たわらせた。
気まずい沈黙が流れる中、何とか進行を進めるべく詩音に代わって四の姫がホワイトボードを握った。
「え、えーと、改めて整理しましょう。敵はエクスマキナと名乗った存在、加えて低級の怪異が複数」
海翔がボードペンを受け取り、顔と思わしき絵の下に『エクスマキナ』と注釈をつける。
「私たちの目標は敵の撃滅、そして元の世界への帰還となるのですが・・・」
「―――?何かあんのか?」
言葉を濁した四の姫に、五郎が問いかける。鎧を脱ぎ、身体が見え隠れする五郎はガラの悪いニーチャンにしか見えない。
五郎の疑問は海翔が受け継いだ。
「帰り方が分からないんだよね。僕たちはスマホからの電話で、四の姫さんたちは突然現れた電話ボックスでこの世界に呼ばれた。だからこの事象をもう一度出せれば帰れるはずなんだけど―――」
「誰が差し向けたのか分からず、その
海翔はダメ押しに真っ暗な画面を何度もタップする。しかしスマートフォンはうんともすんとも言わず、沈黙を保ったままだ。
どうしたものかと悩む面々。そこへ章太郎がビシッと挙手する。
「はい、章太郎君」
「あのね、兄ちゃんたちは無事に帰れると思うよ!」
「どうしてそう思うの?」
「だって他の仮面ライダーたちも敵を倒したらすぐに帰って行っちゃったもん!」
新たな情報が飛び込んできた。聞くところによると自力で世界を渡れない仮面ライダーたちは例外なく、戦闘後に何らかの現象が発生することでこの世界から立ち去っている様だ。
一度だけではなく全ての事例で見られているのだ。敵、今回だとエクスマキナを倒せば元の世界に帰れると見て間違いないだろう。
「ありがとう、章太郎君。お陰で目標が見えたよ」
「えへへ」
「さて順番に行きましょう。最初はエクスマキナです。奴の情報から整理していきましょうか」
四の姫がホワイトボードに描かれた顔らしきものをペンでトントンと叩く。促されて五郎から口を開いてゆく。
「武器は短刀だったから、弓で攻撃するのが一番じゃねえか?」
「相手も遠距離から斬撃を飛ばしてくる。遠距離から一方的に、って言うのは難しいかもね」
「それにあの耐久力。並みの攻撃では倒せません」
海翔の言葉に続いたのは灰になっていたはずの詩音だった。
「・・・生き返った」
「死んでませんよ」
ぼそりと呟いた
攻撃も防御も特に目立つ欠点がない。どうすれば倒せるのか、と全員が頭を捻っていると海翔が静かに語り始めた。
「でも一つだけ隙がある。エクスマキナ、彼は僕を恨んでいることだ」
理由は分からないけどね、と付け足す。
「彼は僕を狙っている。ということは戦う場所を誘導することが出来る」
そう言うと、海翔は事前に権兵衛に頼み込んで貸してもらった、喫茶Hameln周辺の地図をテーブルの中心に広げる。
許可も貰っているので、何ヵ所かの地点を丸で囲んでいく。そんな海翔に詩音が待ったをかける。
「伊藤君、自分を餌にしてエクスマキナを釣ろうという気ですか?」
「―――?そうですけど」
あっけらかんと言い放つ海翔に詩音は大きなため息を放つ。“これ”を十年以上も制御してきたであろう明奈に感嘆してしながらも、海翔を諫めるべく言葉を重ねる。
「―――いいですか?君の自己犠牲の精神は確かに美徳ですが、貴方一人を生贄にするような作戦は許可できません。ですから―――」
「章太郎君、この辺りで人が少ないところって何処かな?」
「それはね―――」
「―――聞きなさい!」
言葉は重ねられなかった。見事なチョークスリーパーが炸裂し、海翔の首を容赦なく絞める。
必死に詩音の腕を叩いて降参の意を示す。結果的に解放されたもののたっぷり十秒以上は絞め技を喰らい、海翔は息も絶え絶えという様子で机に伏した。
「この場において仮面ライダーは貴重な戦力。無暗に消費するわけにはいかないのですよ」
ぱんぱん、と手を払って静かに告げる。
海翔の意見に対して明確に反対する詩音であったが、平安組の反応は意外なものだった。
「―――いや、そんなに頭ごなしに否定する
何やら考えながらもポツリと呟いたのは五郎であった。
「俺が思うに最悪の流れは二つだ。一つは勿論だがこっちが全滅すること。そしてもう一つは相手が警戒して出てこねえことだ」
五郎は人差し指と中指をピン、と立てる。
「章太郎殿の話ではエクセマキナを倒さねえと俺たちは元の場所に帰れねえ。そして相手の居場所は分からねえときた。年単位で粘るなんざ御免だ。引きずり出して全力で叩く。これが一番手っ取り早い」
「付け加えるなら相手の武器は完全とは言い難いようです。相手に時間を与えるのは愚策かと」
四の姫の補足に、詩音がムムムと唸る。確かに敵を倒せるときに倒さないのは愚か者のすることだ。そして詩音にとっても別世界で何年も隠遁するわけにはいかない。
悩む詩音に、海翔はダメ押しする。
「僕としてはエクスマキナが使役している怪異も怖いかな。アレをあちこちに出現させられるだけで僕たち五人はキャパオーバーになる。そうなる前に大元を叩くべきだと思う」
そう、敵はエクスマキナだけではないのだ。
再び沈黙が訪れる。しかし、今回は数秒で打ち切られることとなった。
「小難しい話は終わったかい?」
そう言いながら権兵衛が海翔たちのいる席に近づく。両手にはトレイに乗った料理が出来立てであることを証明するように微かな湯気を立てていた。
「腹が減っては戦は出来ぬ、とも言う。ここは食事で腹を満たして戦いに備えてくれ」
テキパキと手慣れた様子で皿をテーブルの上に配膳してゆく。テーブルの前には三角形に切られたサンドイッチが、各人の前には綺麗に盛り付けられたナポリタンが置かれた。
「良い匂い」
「見たことがありませんが・・・これが未来の料理ですか?」
「なあ、この道具はどう使うんだ?」
サンドイッチ、ナポリタン、そしてフォークと彼らのいる時代から遥か未来に西洋から伝わった面々に、
「日本式の料理にしようか悩んだんだが、せっかく過去から来たんだ。未来の料理がどんなものか味わってもらうのもいいかと思ってな」
熱いうちにどうぞ、そう言って権兵衛は再び厨房に引っ込んだ。
出来立ての料理を放置して冷ますなどと言うことは出来ない。しばらくの間六人の咀嚼音とフォークの使い方を教える声が席を支配した。
オマケ:平安組の現代コーデ
四の姫「可愛いですよ
四の姫 白いワンピース
四の姫「下半身が心もとないですね・・・」
詩音(着替えに下着があってよかったです)
五郎 『HARAKIRI』と書かれた黒いTシャツ
五郎「何て書いてんだ?これ」
海翔(言わない方が良いよね・・・)