人形姫のゼーレ   作:Macht und Glück

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捏造設定注意






第二話 城塞都市ヴァール

 南へと続く街道の空は高く澄み渡り、雲ひとつない陽光が若葉を茂らせた木々を透かしていた。峠を越えてから幾日が過ぎ、ゼーレとミリアルデは山の冷気を脱し、開けた丘陵地帯に足を踏み入れていた。乾いた土と草の匂い、そして湿り気を帯びた空気が混じり合う。鳥のさえずりが風に乗って運ばれ、旅の緊張をいくぶん和らげているようだった。

 

 

 

 道の端に咲く白い小花に視線を落としながら、ゼーレは静かに歩を進める。だがその胸の内には、数日前に遭遇した“断頭台のアウラ”の記憶がまだ重く残っていた。

 

 あのときの天秤の気配──魂がかすかに揺らぎ、掴まれるような感覚。ゼーレは無意識に肩をすくめる。隣を歩くミリアルデは、両手を背に組み、やや眠たげな目で空を見上げていた。その表情には、いまだ倦怠感が滲んでいる。陽光の眩しさが、記憶に焼き付いた天秤の残像を拭い去ってはくれない。

 

 

 

「緊張、解けてないね。まあ、無理ないか」

 

 そう呟いた彼女の声には眠気まじりの余裕があり、歩調は緩やかだった。ゼーレの不安を汲んでのことだろうか。あるいは、ただ普段通りの気まぐれなのか。

 

 

 

 ゼーレの肩には藍色の小鳥が止まっており、ゼーレの差し出す干し葡萄や穀物を啄んでいる。この小鳥は、彼女が魂を操る魔法で手懐け、ミリアルデから教えてもらった《視界を共有する魔法》で空から偵察させているのだ。ゼーレは魔族の飛行魔法で空を飛べるのだが、ミリアルデからそれは魔族の魔法であると再三注意され、むやみな使用は禁じている。ただ、それだとアウラのような強大な敵との不用意な遭遇戦が発生してしまうリスクがある。そのことから、ミリアルデの提言で、魂を操る魔法を使って動物を使役すれば良いのでは、ということになったのである。魔力探知でもよかったが、魔法の可能性を探るという名目もあった。

 

 そうして一行が道を進む。

 

 

 

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 やがて、道が緩やかな下り坂へと転じたとき、森の切れ間から視界が大きく開け、遠くに巨大な城塞都市が姿を現した。

 

 それは、灰色の硬質な石で隙なく築かれた外郭を持つ、紛れもない要塞都市だった。城壁は山の尾根をまたぐように高く連なり、正門には二重の防壁が厳重に設けられている。中心には巨大な塔門がそびえ立ち、武装した監視の兵がその上を巡回しているのが見て取れた。門の前には隊列を成した兵士と、数多くの商隊が集い、出入りを厳しく制限しているらしかった。

 

 

 

 ゼーレは肩の小鳥に、上空まで上がるよう指示を出す。《視界を共有する魔法》を発動すると、小鳥の視点から都市の全貌が眼下に広がった。

 

 城壁に護られるように街並みが広がっていた。石畳の広場を中心に、茶や灰色の屋根を持つ木造の家々が並ぶ。規則正しく交差する街路、その奥には市場や倉庫、そしてさらに高い塔のような建物も見える。

 

 そして南の外縁、都市の一番低い場所には、厚く強化された小砦と防壁がさらに幾重にも重ねられており、明確に外敵を迎え撃つための構えを示していた。

 

 その背後には深く刻まれた渓谷が広がり、まさに天然の要害として都市全体を守っている。

 

 中央諸国との境界、リーゲル峡谷に築かれた、軍政と交易の要衝。

 

 ──城塞都市ヴァール。

 

 それはただの町ではなかった。都市全体がひとつの巨大な武器であり、その冷たい構造美に、ゼーレは言葉を失った。

 

「あれが……」

「うん。城塞都市ヴァール。中央諸国の玄関口だ」

 

 ヴァール。中央諸国との境界を守る要衝であり、軍政と交易の交差点。その堅牢な響きは、ゼーレにはやや重苦しく響いた。理由はすぐに明かされる。

 

「この都市の門と城壁には、強固な結界が張られている」

 

 ミリアルデは、あくび交じりにそう告げた。その半眼は、いまだ眠気を多分に含んでいる。

 

「魔族を弾くのかはわからないけど、念を入れたほうがいいかもね。少なくとも、上空は通れないようになっているらしいし」

 

 ゼーレは無言で頷く。姿を変えても、魔力を隠しても、魔族としての本質は変えられない。もし魔族を阻む結界であったら一大事だ。結界魔法を学んだ今では、それをよく理解していた。

 

 二人は都市の外縁部にある、旅人向けの簡素な野営地へと向かった。焚き火を囲み、馬の世話をする旅の者たちで賑わっていたが、その場に漂う緊張は明らかだった。アウラが北側諸国に現れたという情報が流布し、警戒が強まっているのだ。

 

 

 

「結界の構成を見てみるよ。ほんの少し時間がかかるだろうけど、どうせならここの結界も調べてみたかったんだ」

 

 ミリアルデはそう言い残すと、結界の魔力の流れを追って小高い丘の上に陣取った。野営地の喧騒からやや離れたその場所で、彼女は大地に座し、長時間にわたって結界の観察と解析を始める。彼女の瞳は、普段の倦怠感から一転し、一点の曇りもなく結界の奥深くまで見通すかのように澄み渡っていた。

 

 ゼーレはそのあいだ、野営地の簡素な市で小物を売り、旅芸人のふりをしてヴァイオリンを弾いた。

 

 夕暮れ。焚き火の煙が空に昇り、日中の喧騒が和らぎ始めた頃。ゼーレは、広場の中央に設けられた即席の舞台で、ヴァイオリンを構えた。野営地の旅人たちが、物珍しそうに、しかしどこか期待のこもった眼差しを向けている。

 

 弓が弦に触れ、低い唸りのような音が響いた。そして、次の瞬間。

 情熱的な、しかしどこか憂いを帯びた旋律が、夜の帳が降り始めた空に解き放たれた。それは、魂を揺さぶるような、力強い踊りのリズム。

 

 この曲は前世の人であれば、必ず一度は耳にした旋律だろう。

 

 ゼーレの指が、まるで生き物のように弦の上を跳ね、弓が激しく、時に優しく、感情を込めて舞う。速いパッセージは、まるで嵐の中を駆け抜けるような疾走感と、抑えきれない情熱を表現し、聴衆の心を掴んで離さない。低く唸るような重音からは、遠い故郷への郷愁や、人生の哀愁がにじみ出る。

 

 彼女の演奏は、単なる技術的な披露ではなかった。ミリアルデとの旅で見てきた壮大な景色、皇獄竜との死闘、アウラとの遭遇で感じた恐怖、そして野営地で人々との触れ合いから得た温かな感情——その全てが、音となってヴァイオリンから紡ぎ出されていくようだった。

 

 聴衆は息を呑み、その音色に耳を傾けた。疲れ果てた旅人たちの顔に、一瞬だけ、かつて忘れていたはずの輝きが戻る。子どもたちは目を輝かせ、その力強いリズムに合わせて、無邪気に身体を揺らしていた。

 

 やがて、曲はクライマックスを迎え、激しい演奏の果てに、唐突に、しかし鮮烈な終わりを迎えた。

 

 野営地に、割れんばかりの拍手と歓声が響き渡る。

 

 ゼーレは、静かに弓を下ろした。その顔に浮かんだのは、旅芸人としての営業用の笑顔だけではなかった。演奏を通して、彼女自身の内にあった何かが、確かに解放されたかのような、清々しい表情だった。心の奥底から湧き上がった「音楽」が、人々に届いた喜び。

 

 その後は子どもたちに童謡や故郷の歌を教え、わずかな銅貨を得ては食料を買う。村の老女から保存食の作り方を教わったり、旅の若者たちと焚き火を囲んで古い歌を交わしたこともある。そうして、人々との間に小さな絆を築いていった。

 

 

 その夜。焚き火の前でゼーレが沈黙していると、隣の影が口を開く。ミリアルデのいつもの、感情の読めない声だった。

 

「少し時間はかかるけど、これで通れるようになるよ。結界の構成、案外甘かった」

「ほんとうに? そんなことが……」

「うん。まあ、だいたい一か月くらいかな」

「一か月かあ……」

 

 結界の解析には、ミリアルデの言葉通り、きっちり一か月を要するようだった。

 

 

 

 そのあいだ、ミリアルデは野営地近くの小高い丘に簡易の陣を構え、毎日のようにヴァールの城壁と門に沿って広がる巨大な結界が発する魔力の律動を記録し、魔法陣のずれを観察し続けていた。昼夜の温度差や魔力流の変動、天文と連動した魔法装置の影響など、多角的な解析が必要だったのだ。彼女は日中ほとんど無言で過ごし、魔導書とノートに何百もの複雑な構文を書き記し、夜にはそれを星空の下で練り直していた。その傍らには、彼女の魔力によって現れた、いくつもの情報解析用だろうか、魔力球が常に漂っていた。

 

 その異様な光景は、やがて周囲の旅人たちの目にも留まり始めた。最初は物珍しそうに遠巻きに眺めていた人々も、次第に警戒の色を濃くし、囁き合うようになる。特に、規則正しく宙に漂う魔力球の存在は、普通の旅人の持ち物とは到底思えなかった。不安げな視線が、絶えずミリアルデの陣へと向けられていた。

 

 ある夕暮れ、野営地の隅で煮炊きをしていたゼーレのもとに、城塞都市ヴァールから派遣された二人の兵士が現れた。無骨な鎧を身につけた彼らは、腰に剣を佩き、警戒と探るような眼差しを向けながら、ミリアルデについて尋ねてきた。

 

「お連れのあの方は、何をされているんです? このあたりで、魔力を伴う怪しい儀式のような行為があると通報がありましてね」

 

 ゼーレは一瞬、冷たい汗が背を伝うのを感じた。咄嗟に笑顔を作る。

 

「ああ、彼女は変わり者の学者なんです。星の動きと魔力の流れを研究していて……旅の間も観測を続けているだけなんですよ」

 

 彼女の口調は、不審がられないよう、努めて明るく自然なものだった。

 兵士は納得したのか否か、あるいはそれ以上は詮索しないと決めたのか、しばし視線をミリアルデの陣へと向けた後、

 

「あまり目立つことは控えていただければ。この時期は特に、魔族の出没が報告されております故、我々も神経質になっておりましてね」

 

そう言い残して立ち去った。

 

 

 その晩、ゼーレが火を囲んでミリアルデにその話を伝えると、彼女はほんの少し目を細め、「ふうん。人間は細かいね」と無表情のままつぶやいた。その言葉のどこまでが本気なのか、ゼーレには判別できなかった。

 

 

 

 しかし翌日の昼下がり、野営地の広場はにわかに騒がしくなった。ヴァールの衛兵が数人、ミリアルデの陣を囲み、彼女に詰め寄っているのが見えた。

 

「ミリアルデ殿ですね? 貴殿の奇妙な行為について、このヴァールにて事情を伺わせていただきたい」

 

 衛兵の一人がそう告げ、有無を言わせぬ態度でミリアルデの身柄を拘束しようとした。ゼーレは咄嗟に駆け寄ろうとしたが、その場にいた旅の男に腕を掴まれ、制止された。

 

「待ちな! お嬢ちゃん、あれは町の役人が動いたんだ。下手に口出すと、お嬢ちゃんまで厄介なことになるぞ」

 

 心配げな旅人の言葉に、ゼーレは唇を噛んだ。ミリアルデは抵抗することなく、しかし表情ひとつ変えずに衛兵に連行されていった。

 

 野営地から見下ろすヴァールの衛兵詰所。ゼーレは不安げにその様子を見守っていた。尋問は数十分にわたっただろうか。長い時間に感じられた後、衛兵詰所の扉が開き、ミリアルデが姿を現した。彼女の隣には、先ほど彼女を連行した衛兵が、なぜか姿勢を正し、恭しく頭を下げている。そして、衛兵詰所の奥から、いかにも高位の人物らしき初老の男が姿を見せ、ミリアルデに深々と頭を下げた。

 

 ミリアルデは普段と変わらぬ無表情のまま、衛兵たちに軽く頷き、再び小高い丘の陣へと戻ってきた。ゼーレは駆け寄り、その無事を確かめた。

 

「ミリアルデ! 大丈夫だったの? 何を……?」

 

 ゼーレの問いに、ミリアルデは何も言わず、外套の内ポケットから一枚の紙片を取り出した。それは精緻な紋様が刻まれた、重厚な印象の印だった。その印には、女神の翼があしらわれた神聖な杖の紋様が立体的に刻み込まれている。

 

「これを見せただけだよ。少しばかり融通の利く、身分を証明するもの」

 

 ミリアルデは軽く肩をすくめた。

 

「まあ、さすがにそれを無下に扱うわけにはいかないだろうね。向こうも色々と事情があるらしい」

「ミリアルデって、もしかして教会の偉い人?」

「ちょっとだけね」

 

 首を傾げて目をそらす。

 

「数十分は足止めされたけどね。むしろ結界を通ることができて運がよかった。おかげでだいぶ理解できたよ」

 

 ミリアルデは何事もなかったかのように再び魔導書を開き、結界の解析に集中し始めた。

 

 再び解析に戻ったミリアルデをよそに、ゼーレは日々の小さな暮らしの中で人々との関係を少しずつ築いていった。ある日には、近くの森で薬草を採取しに行く女性に同行し、彼女から植物の効能について教わった。夜には即興で曲を作り、子どもたちに聞かせると、純粋な笑い声が焚き火の輪のなかに温かく広がった。失っていたはずの旋律が、少しずつ、彼女の心に灯りを取り戻しているかのようだった。

 

 

 ミリアルデはといえば、食事のとき以外はほとんど喋らず、夜は焚き火の前で眠っているのか眠っていないのか分からないような表情で空を見ていた。だが時折、結界の構造についてゼーレに話しかけてくることもあり、その説明は決して難解ではなかった。

 

「この結界はあくまで物理的に強固な障壁を張るものだったよ。魔族か人類かは判断せず、ただただ侵入させない。あまり面白みはない結界だったね」

 

 その簡潔かつ的確な説明を聞きながら、ゼーレは火にかけた鍋をかき混ぜていた。

 

 

 

 野営地で一か月を過ごした後、いよいよヴァールへと入る日の朝。ゼーレとミリアルデは、野営地から最も近い城門へと向かった。分厚い木製の門の前には、以前野営地で見かけた兵士とは違う、より精悍な顔つきの門衛が二人、厳しい目で立っていた。

 

 ゼーレが門衛に近づくと、一人が無愛想に言った。

 

「通行か? 何用だ。許可証は持っているか?」

 

 ゼーレが答えようとするより早く、隣にいたミリアルデがすっと前に出た。彼女は何も言わず、外套の内ポケットから一枚の紙片を取り出し、門衛に差し出した。それは、精緻な紋様が刻まれた、重厚な印象の印だった。女神の翼があしらわれた神聖な杖の紋様が立体的に刻み込まれている。

 

 門衛は、その印を目にした途端、それまでの厳しい表情を一変させた。彼は慌てて姿勢を正し、恭しくそれを受け取ると、もう一人の門衛にも目配せした。二人は顔を見合わせ、何かを小声で確認し合った後、代表の一人がミリアルデに深々と頭を下げた。

 

「これは大変失礼いたしました! どうぞ、お通りくださいませ。このヴァールへようこそ、女神の御加護あらんことを」

 

 門衛の態度は、先ほどまでの高圧的なものから一転し、どこか恐縮しているようだった。ミリアルデは軽く頷くだけで、特に何も言わなかった。

 

 ミリアルデについて共有されていなかったのだろうか。ゼーレは少し不思議に思ったが、何も言わずにミリアルデについていく。

 

 そして、ミリアルデ達は容易にヴァールへと足を踏み入れた。

 

 

 

 ゼーレは門を抜けた瞬間、空気の違いを肌で感じた。外の野営地に漂っていた土と煙の匂いとは異なり、ヴァールの内部は石と鉄と油のにおいに満ちていた。衛兵の靴音が響く石畳、無骨な装飾が施された武具店、鍛冶場からは槌打つ音が絶えず鳴り響いている。まさしく、()()()()()()()()()()()()そのものだった。

 

 市街の中央を貫く広い通りには、行商人が大声で品を売り込み、兵士と修道士がすれ違いざまに目を合わせるでもなく通り過ぎていく。人々の顔にはある種の緊張と諦念が混じっていた。交易が盛んな都市でありながら、どこか戦地のような空気が街全体を覆っていた。

 

 ゼーレは足を止め、城壁に近い塔のひとつを見上げた。兵士たちが巡回する姿が見える。だが、その中には簡素な法衣をまとった僧侶や、ローブを身にまとったいかにもな魔法使いの姿も交じっていた。彼らの歩みには、武人とは異なる鋭さと気配の張り詰めがあった。

 

「……けっこう本気で守ってるんだね」

「当然だよ。ここは中央諸国の玄関口だもの」

 

 ミリアルデはぼんやりと空を見上げながら答える。

 

「軍だけじゃなく、教会の僧侶や魔法使いも常駐してる。おそらく、あれでも精鋭だろうね。結界だけに頼ってるわけじゃない、ってことなんだね」

 

 ゼーレは無意識に肩をすくめた。その重い空気が、今まで旅してきたどの場所とも違うと感じていた。故郷を離れてからの旅は、常に不安定なものだったが、ここヴァールにはそれとは異なる種類の重圧がまとわりついていた。

 

 すれ違う人々の魂を、ゼーレはつい目で追ってしまう。

 

 雑踏に紛れた老婆の魂は、ぼんやりとした光を揺らめかせながらも、何かを守るように内へ内へと縮こまっていた。洗濯物を干す若い母親の魂は、擦り切れたように色褪せていたが、その中に一点、赤ん坊を抱く腕のあたりだけが淡く温かく光っていた。

 

 武器を磨く若い兵士。その魂は硬質な黒に近く、焦燥と自負が混じり合ってざらざらと軋んでいる。祈祷所の前で目を閉じる修道士。その魂は透明に近く、まるで雲間の光のように凪いでいたが、その奥底には冷たい怒りのようなものが沈殿していた。

 

 ゼーレは、人々の魂がどれも()()()()の境界にあることに気づいた。それは、ただの平和な町ではなかった。魂たちの形そのものが、この都市の緊張を物語っていた。

 

 市場の片隅では果物売りが値段を叫び、下町の一角では少年たちが棒切れで剣ごっこをしていた。老女たちは洗濯物を干し、酒場からは陽気な笛の音が漏れていた。その日常のすべてが、まるで舞台装置のように脆く、だが懸命に保たれているように思えた。

 

「……強い街だね。でも、どこか……哀しい」

「それが、前線の都市ってやつさ」

 

 ミリアルデの口調は淡々としていたが、わずかにその目が陰った気がして、ゼーレは黙ったまま、街の空を見上げた。

 

 

 

 こうして、彼女の旅路は中央諸国へとつながっていく。




Brahms, Johannes. Hungarian Dance No. 5
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