白騎のナルカ 作:欲丸出汁
前編
カララトリ。艦級としてはクェーサー級強襲打撃艦。
宇宙空間と大気圏内の双方で活動できる高度な複合推進機構を有するこのような艦は、群都においては大殲の壮絶さを物語る伝説の中だけの存在であった。
しかし、砂漠の外では多数現存しており、新造もされていた。
地上と宇宙を戦場にして鎬を削る
傭兵で航宙艦を所有している者は稀とのことで、やはりナルカは非凡な人間のようだ。
赤銅色の戦闘艦に住まわせてもらってから一週間が過ぎようとしている。ナルカとメイドのお姉さん達の授業で、砂漠の外の世界について既に多くのことを学んでいた。
群都が地理的な制約を超えて、砂漠の外と接触を持ったとしても、すぐさまに食い物にされるだろう。
機士は権力の頂点から奴隷の頭という地位に転げ落ちる、間違いなく。
それほどに容赦なく、貪欲な者たちが凌ぎを削る――文明を崩壊させるほどの戦争を経ても、地球は変わらず戦場だった。
「本日の授業はこれでおしまいです。お疲れ様でしたエト様♪」
両サイドにエゲつないスリットが入ったお仕着せで、白い肌を魅せているメイドの美女の声は蜂蜜のように甘い。
本日の授業を担当したのはウェーブのかかった金髪のレプレキア。笑顔を絶やさない明るい女性だ。やはり胸が大きくて、身長はエトを余裕で見下ろす高さ。
様付けされることに、まだ慣れない少年であった。
授業は基本的に一対一で行われている。
先生役のナルカもメイドも途轍もなく色っぽく、すっかり健康になったエトの視線は否応なしの胸やお尻、太股に引き寄せられそうになる。なので、授業の度に理性を振り絞らねばならなかった。
メイド服の下半身は少年にとっては残酷なほど扇情的だ。
黒のサイハイソックスで隠れている部分と素肌の二つに分類される。横から見れば下半身は殆ど裸と変わらない。
前後に垂れ、動作に合わせて揺れたり翻ったりする危ういスカートの下がどうなっているのか、少年はまだ知らなかった。
とにかく、エトは立ち上がる。
「レプレキアさん、ナルカは今どこに?」
「トレーニングルームで格闘技の訓練中です、ご案内しますね❤」
当たり前のように隣に来て、手を差し出すレプレキアである。
包容力たっぷりの優しい微笑みには、「一人で行けるよ」と言わせない圧力がある。
全長600mを超えるクェーサー級の艦内は複雑であり、専門クルー以外の立ち入りを禁じる区画も多い。
安全のため、という名目でエトにはナルカか、メイドが最低一人は付き添っている。
差し出された手を渋々といった様子で握るエト。子供とはいえ男であり、プライドがあるのだ。
「それでは参りましょう~♪」
ご機嫌な調子でレプレキアは歩き出した。エゲつないほど長い脚と長身のため、歩幅が大きい。
なので、身長差を考慮したペースで歩いている。
(あーもう本当に可愛らしい子ですね❤)
一緒に歩いているだけで気分がアガり、肉感的なヒップを嬉しそうに揺らしてしまうレプレキア。
金髪ウェーブヘアのメイドさんとしては、本当はお姫様抱っこしてあげたい。ていうか、自分の歓びのためにしたい。
だが、それは流石に少年の自尊心を傷つけると分かっているので、止めていた。
エトは意識して前を向いている。すぐ隣に、横から見れば丸見えの伸びやかな美脚がある。
綺麗にくびれたウエストから広がる豊かな臀部に太股、脚までの線を隠す布地はない。
むしろ艶やかな黒で締め上げて魅力を増させるサイハイソックスがあるばかり。
カララトリのメイド達の肢体は危険なまでの魅力を放っており、至近距離で接する際は常に精神力を総動員しなければならない。
だから真っ直ぐ前だけを見る。背筋を伸ばして歩くことに集中する。
そんな背伸びしたエトの姿は、
「背筋ピーンってしてますね♪ とってもカッコいいですよエト様♪」と評されてしまうのだが。
*
トレーニングルームでは刀剣を用いた決闘が行われていた。
白線で仕切られたコートの周囲で見守っていたメイド達は、スライドドアが開くと、薄桃髪の厳格なメイド長を除き、一斉にそちらを向いた。
「エト様のご来場ですよ~」と告げるレプレキア。
エトがやってくると、メイド達はさっと身を引いてスペースを作った。
全員、動きやすいトレーニングウェアなどではなく、メイド服で訓練している。
「ちょうどいいところに来たな、エト様。盛り上がってるところだぜ」
エトを見下ろしながら野生的な美貌のゼンギが笑いかけた。
鋭い目つきで攻撃的な容貌で、ショートカットの銀髪に前髪の赤メッシュがパンクな印象を与える。
戦闘担当で切り込み隊長的な立場のゼンギは、他のメイドよりも筋肉質な肉体をしている――とは言っても、色気には遜色がない。
「次は私の番なんですよ。うう、怖いな」
ストレートロングの茶髪に眼鏡のメイド、メガニカが戦闘訓練の不安を打ち明けてきた。
技術担当であり、独自の新兵器を設計することもあるメイドだ。
ハッキングなど現地での工作のために戦闘チームに入れられることも多く、荒事が苦手なのに訓練に参加させられていた。
理知的な美貌と例に漏れず見事な肢体の持ち主だが、情けなく怯えているせいでそれもやや台無し気味である。
そんなメガニカはメカ好きということもあり、エトにとっては特に話しやすいメイドだった。
整備技術ではカララトリのメカニックメイドを驚かせた少年だが設計面ではメガニカにまったく及ばず、二人は互いのスキルを尊敬し合っていた。
今行われているのは、灰白髪に褐色の長身美少女とポニーテールのクールな黒髪メイド、アーリィの試合。
メイド長アンナベルタが審判を担っている。
主従での対決だが、手加減なしの真剣勝負だ。
二人は
いつも余裕の笑みを浮かべている褐色の長身お姉さんだが、今は真顔。額に汗が滲んでいた。
エトは息を呑みながら、勝負の行く末を見守った。それにしても――――
(今日のナルカの恰好は普通だな)
そんな感想が思わず浮かんだ。今朝、一緒に朝食を取ったときのナルカは貫頭衣状の簡素な寝巻姿だった。
今は動きやすい服装に着替えている。
ぴったりしたショート丈の黒いトップスとレザーのホットパンツの組み合わせ。鍛えに鍛えた腹筋が目立ち、健康美をアピールするようなコスチュームだった。
普段のナルカはナノスーツを装着して臨戦態勢を整え、強調された股間やお尻を恥じることもなく艦内を闊歩しており、私服でいるのを見たのは、はじめてだった。
「そこ、もらいました!」
アーリィが凛々しくポニーテールを振り乱し、上段から斬り下ろす。乙女の細腕が発揮する桁違いの剛力。ナルカはそれを刀で受け止める。
激突の凄まじさに風圧――比喩ではなく物理的なものをエトは感じた。
「まだまだ、だね」
痛みを堪えて笑い、挑発するナルカ。振り下ろされた刀を受け止めるために大股を開いて腰を落としていた。
エトが普通と感じたナルカのホットパンツの黒革は、褐色娘の太股の圧力で苦し気にギチギチと鳴っている。
他と比べれば布面積が多いだけで、実際にはかなり際どい格好だった。
このままアーリィが押し切るとエトは予測するが。だが、ナルカは渾身の力でアーリィの刀を押し返す。さらに、バックステップで距離を取った。
「はあっ!」
それは黒髪ポニテのメイドの予想の範疇だった。前後に垂れたスカートを翻し、回転の勢いをつけたサイドキックを叩き込むアーリィ。
再び、エトは息を呑んだ。
スカートが完全に捲れ上がり、垂れた黒布とは対照的な純白の鋭角が――クールに振る舞うポニテの美少女メイドの股間が露わになったからだ。
「きゃっ!」
褐色の柔肌を掠めるほどのギリギリでサイドキックを避けたナルカは、垂れ布のスカートを掴むと、そのまま力づくでアーリィを引き摺り倒してしまう。
強固な特殊繊維で作られたメイド服の頑丈さを逆手に取ったのである。
ナルカは相手が立ち上がる前に刀の切っ先を突き付けた。
「勝負あり、ナルカ様の勝ちです」
ベルタが勝者を宣言し、アーリィは無表情ながら悔しな眼差しで褐色の長身少女を見上げた。
*
「こんな勝ち方ありなの?」
「アリだ。実戦形式だからな」
巨乳を強調するような姿勢で腕組みしたゼンギが応えてくれた。反対側に立っている茶髪ロングヘアのメカ担当メイド、メガニカは試合前からブルっている。
「良い試合でした」
「こちらこそ――エトの前では負けられないよ」
「次は私が勝ちますよ」
気を取り直して立ち上がったアーリィとナルカが握手する。二人は主従でありながらもライバル関係にあった。
ナルカは勝利に誇らしげに胸を張っている。その胸はメイド達の豊かな双丘と比較にならないほど薄い。
カララトリのメイド同士が近距離で話していると双丘が接触しそうになるが、片方がナルカだとその心配はゼロになる。
(あっあれが女の人のパンツ……!)
一方、エトは硬直している。アーリィのスカートの下の全容を真正面から見てしまったのだ。
妙に股上が深く、お腹まで白い布が覆っていたが、局部は扇情的なカット。布地は鋭すぎる逆三角形で、メイド服の内側まで切れ上がっていた。
隠された物を覗いてしまった背徳感が少年を刺し貫いていた。
「おいエト様、どうした? 固まってんぜ?」
ニヤニヤしながらゼンギが呼び掛ける。
その様子にアーリィも気付き、少年の真正面に立った。
ナルカと変わらない年頃の黒髪ポニーテールのメイドの眼差しは鋭い。見下ろされ、その迫力に思わず謝りそうになるエトであった。
アーリィは少年の前で細長い前垂れをたくし上げて見せた。
純白のデルタ地帯が目の前に広がり、濃厚な汗の匂いが解放され、エトの鼻を衝く。
汗の匂いと熱気は造り物のような整った容姿のアーリィが、一人の生きた人間であることを感じさせた。
「ご安心ください、これはレオタードです。見せても問題ないインナーですので、エト様が気に病むことはありません」
鍛えられた腹筋とおヘソが浮かぶ、レオタードのお腹の布地を示すことでアーリィはエトを安心させようとする。
周囲でちょっとした騒めきが起こる。
「アーリィだけズルーい。私も混ぜて♪」
大股で近寄り、アーリィの隣に立つ波打つ金髪のメイドさん。
「このレオタードもお仕着せの一部なんですよ~、とっても着心地が良いし、汚れを分解する機能もあるから安心です❤」
レプレキアがアーリィの隣で同じようにスカートをたくし上げる。
するとそれに触発され、訓練中のメイド達は一列に並び、レオタードを見せた。
エトの目の前にハイレグレオタードの白い鋭角が食い込むように覆う股間がズラリと並ぶ。
メイドお姉さん達の肌の色合いは、透き通るような白から健康的な色合いまで様々。
しかし、レオタードはお揃いのデザインで統一されている。一様に汗の匂いは濃く、運動による発汗でぴったりと張り付いていた。
誰一人として股間に美観を損ねる染みはなく、防汚性能の高さを示している。
「みっ皆さん、はしたないですよ!」
前屈みになり、生理現象を誤魔化せない恰好でエトは叫ぶ。
「メイド長みたいなこと言ってる~エト様可愛い~」
「ただ制服を見せてるだけだぜ? 何か興奮することでもあるのかよ?」
「ふふっ喜んでくれてるみたいね」
等々。メイド達はたくし上げ姿勢のまま、年下の異性の反応を観察している。
「楽しんでね」
薄桃色の髪のメイド長ベルタと後ろで見守るナルカは微笑んでいる。
面白いので助け船を出す気はないが、エトがついに我慢できず"暴発"しそうになったらトイレの場所を教えるつもりだった。