白騎のナルカ   作:欲丸出汁

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後編

 作戦行動のため、カララトリは海上を航行していた。

 エトはその甲板で照りつけるような陽射しを浴び、潮風の匂いを嗅いでいる。

 

 ナルカ達が騎乗するマシンを整備していた。

 

 右舷に七機のホバーバイクが並ぶ。スティレットと呼ばれる、カララトリで独自に製作したハンドメイドの戦闘兵器だ。

 

 大気を切り裂いて飛ぶ戦闘機のように鋭い機首。後部には長大なメインスラスター。最低限の慣性・重力ドライブまで備えた大型かつ重武装の高速マシンだ。

 機首下部に対ウォーヘッド大口径レールガンがマウントされている。

 

 エトは整備の才能を認められ、早速整備チームを任された。

 整備担当のメイドお姉さん達は、少年の指示に忠実に従って動いてくれた。

 

 巨大企業(メガコーポ)の経済戦争の主戦場となっている地上ではなく、民間人が暮らす地下都市で何不自由なく暮らし、勉学に励み、メカを弄る日々を選ぶこともできた。

 だが、エトはナルカへの恩義から艦に残り、彼女の元で働くことにしたのだ。

 

 ナルカとしては、絶対安全圏となっている主要地下都市で過ごして欲しかったのだが、少年の意志を尊重した。

 メイド達も新たな主としてエトのことを大歓迎。カララトリの士気は爆上がりだった。

 

「ふぅ、これでよし」

 

 エトは額の汗を拭う。やれることは全部やった。スティレットは昨晩から入念に整備してある。

 設計者の茶髪眼鏡メイド、メガニカが気付いていなかった細かなネガを幾つも潰し、性能を向上させている。

 

 それでもエトは不安を拭えない。ナルカが請け負ったのは素人目にも危険な仕事なのだ。

 

(こんなの特攻と変わらないじゃないか。いくらナルカ達が強くても、こんなバイクじゃ――――)

 

 アンナベルタを指揮官とする戦闘担当のメイド達を伴い、ナルカは敵地に奇襲を仕掛ける。

 

 確かにステレットは重武装のヴィークルであり、火力と速力は申し分ない。

 問題は防御力。ホバーバイクには搭乗者を守る装甲がないことが、少年を酷く心配させている。

 

(ナルカはどうしてこんな依頼を……)

 

 褐色の長身無乳お姉さん傭兵が引き受けるのは、テロリストに占拠された孤島の軍事基地を奪還する依頼。

 自由企業陣営に属する依頼主はナルカのお得意様であり、基地への被害を抑えて欲しいとのこと。

 

 そこで、生身での白兵戦によって制圧することになった。

 

 明らかにハイリスクな作戦なのに出撃メンバーに指名されたメイド達はやる気満々。

 リスクを指摘したのは工作担当の理知的なメガネメイド、メガニカただ一人だけ。

 

 一騎当千のカーネイジモデル・ウォーヘッドであるフェンリスと高性能な量産型ウォーヘッド"レイス・レイヴン"の一個小隊も作戦に投入される。

 ウォーヘッドの火力は基地に損害を与える可能性があるため、ハティによる無人制御で陽動を担当するのみ。

 

 少年の不安を他所に、強襲打撃艦カララトリの主は意気揚々とやってきた。

 

「整備お疲れ様」

 

 貨物運搬用も兼ねたエレベーターを使い、ナルカは甲板に上がってきた。

 白いハイレグナノスーツ姿で完全武装しており、凛々しい佇まいが眩しい。

 

 同じく完全武装した六人のメイドは戦闘用ボディスーツに着替えて付き従っている。

 

 下半身の露出が激しく、扇情的なナルカのナノスーツと異なり、首から下を覆ったスーツである。

 しかし、素肌にぴったり密着していて極薄。扇情的な装いはスキンスーツと呼ぶのが相応しいだろう。

 

 ナルカとメイド達の姦しい様子と、余裕綽綽ぶりがエトの不安を増大させた。まるで、パーティーに出掛けるような気楽さだ。

 

 陽動があるとはいえ、身一つで対空砲火に晒されているというのに。

 

 厳酷なベルタやアーリィも窘めようとしない。これがカララトリの日常風景なのだろう。

 

「それじゃ、皆の素晴らしい仕事を確かめさせてもらおうかな」

 

「どっどうぞ!」

 

 整備班と一緒に整列したエトに言い、ナルカを筆頭とした戦闘チームはスティレットに近寄った。

 

「やっぱりエト君は凄いな~」

 

 自分の造ったスティレットの性能をアップさせ、問題点を解消してくれた少年の腕前に感心する茶髪のメガネメイド、メガニカ。

 慎重派な性格であり、カタログスペックに安心感を得るタイプだった。

 

「君? 不敬な呼び方ですね」

 

 メガニカの隣で感服したようにシートに跨っていたメイドが、その一言で険しい表情を向けた。

 仲間の不敬な物言いを鋭い眼差しで諫める黒髪ポニーテールのクールなアーリィ。

 

「今のは言い間違えだから気にしないでくださいアーリィ! エト様です、様!」

 

 笑ってしまうほど大袈裟に慌てふためきながら、メガニカは訂正する。

 

 満足した様子でアーリィはバイクを降り、整備メイドと一緒に並んでいるエトの元に向かった。

 

「完璧な仕上がりです。ありがとうございます、エト様」

 

 無表情だが敬意と感謝に満ちた態度。胸に片手を置き、礼を述べるアーリィ。

 黒髪ポニテのメイドは引き締まった肉体と豊満なバストの持ち主。

 

(近寄られるとますます目のやり場に困る……!)

 

 エトはアーリィの長身を見上げながら、悶々とした。

 

 スキンスーツはあまり薄く、異性の劣情を煽る外観なのだ。

 その厚さはなんと0.3mm。大部分を占める黒灰色のラバー被膜は、信じられないことに透けている。

 

 おヘソや腹筋が浮き彫りになるのは当然のこと。

 薄い被膜の向こうに柔肌が覗くだけでなく、双丘の先端が"つん"と突き出しているのが丸分かりだ。

 

 手足は流麗な漆黒のプロテクターがあり、洗練された企業ロゴや製造番号が装飾のように施されているが、申し訳程度の防護のように思えてならない。

 

 股間は流石に厳重に保護されている。細長いプロテクターが張り付き、局部をガードしている。

 

 プロテクターの後ろは食い込み、お尻に埋もれていた。

 排泄物パックを兼ねており、股間と肛門に完全に密着する。数百グラムの排泄物を迅速に処理可能で、長時間の任務でも衛生を保てる優れ物だ。

 

 アーリィに触発された出撃メンバーが少年を取り囲む。

 整備班は邪魔にならないよう、身を引いていた。メイドお姉さん達のチームワークは抜群なのだ。

 

「これなら絶対負けないぜ! ありがとなエト様!」

 

 銀髪に赤メッシュ、筋肉質な肉体が魅力的なゼンギは猛々しい。彼女は切り込み隊長あるいは軍曹的ポジションだ。

 

「エト様が手を加えてくれたおかげで自信が持てました。これなら作戦を達成できます」

 

 当初は作戦に異議を唱えてたメガニカもすっかりやる気だ。ストレートロングの茶髪が風に靡いた。

 

「出撃が待ち遠しいわ♪」

 

 金髪ウェーブが上品で明るい印象なレプレキアは、スティレットで風を感じたくてウズウズしていた。

 

「そうね。早く悪い子達(テロリスト)にお仕置きしたいわね」

 

 女王様風な紫髪のメイド、イクシィが妖艶な笑みを浮かべる。サディストなイクシィは、己を絶対的強者と確信しているような物言いだった。

 

「戦意旺盛でよろしい」

 

「皆、油断だけはしないように」

 

 勇ましく意気込みを語る仲間にナルカは頷き、ベルタは注意する。

 

 歩いたり、その場での身動ぎだけで、豊かな胸が弾むメイド達の巨乳ぶりの凄まじいこと。

 無表情で厳格。成熟した薄桃色髪のメイド長の双丘でさえ、慣性に抗えず揺れていた。

 

 揺れないのはナルカの無乳だけだった。後ろから見れば、尻肉の艶めかしい揺れで絶景なのだが。

 

 エトは息をできるだけ吸わないようにしている。

 少年を囲んだメイドお姉ズのスキンスーツは、汗と反応して独特の匂いを発散しており、体温とのダブルパンチでお姉さん達を強く実感させている。

 

 決して不快ではないが、独特なこの匂いは、いくら洗浄しても取れない。見た目と裏腹に、驚くほど頑丈な特殊被膜の唯一の欠点であった。

 

(なんでこんな気持ちになるんだ! ナルカやベルタさん達が物凄く強いって分かっているはずなのに!)

 

 普通なら色香で頭がいっぱいになり、その場で暴発してもおかしくないが、エトの理性は強かった。

 

 

 海面スレスレを疾走するホバーバイクの編隊は、対空砲火を華麗に躱す。奇襲は順調に進んでいる。

 

「このまま直進、一気に攻め落とすよ!」

 

 先頭を突っ走るナルカが灰白髪を靡かせ、後続に向かって叫ぶ。余裕の笑みだ。

 

「了解しました。我らメイド隊はナルカ様と共に――――」

 

 メイド代表として、冷厳な口調でベルタが応える。

 巧みにホバーバイクを操り、涼しい顔で砲弾を掠めながら前進するが、敵の弾幕は激しさを増していく。

 

「しまっ!?」

 

 あと一歩のところで避け切れなかった砲弾がエンジンに当たり、スティレットが爆散してしまう。

 

 両手をクロスさせ、顔を庇う格好で爆炎に呑まれる、薄桃髪のメイド長。

 爆発でちょうど弾け飛んだシートに太股の力で縋りつくように跨ったまま、ベルタは落下していく。なんとか生きていたが、衝撃で気絶してしまう。

 

「メイド長!? 指揮を引き継ぎます!」

 

 敬愛するメイド長の撃墜に衝撃を受けるが、冷徹な声音でアーリィが宣言。

 

 白い肌に恐怖による汗が滲み、スキンスーツの被膜と反応して匂いを強める。豊満なバストとヒップ、それに腋からの匂いは特に濃厚。

 

「ダメだ! 前に進むしかない!」

 

 後ろで起きた悲劇を受け止めながら、ナルカはメイド部隊を鼓舞する。

 だが無情にも対空砲火の精度は増す。威勢よく突き出されていたお尻達は、恐怖心から引き締まったり、必死な回避運動で扇情的に揺れ躍っている。

 

 白色のハイレグから大きく露出した豊かなナルカのお尻に大粒の汗が滑っていた。

 

「なっ!? 馬鹿なこの程度の損傷で!?――――落ちないでくれ! お願い!」

 

 不運にも僅かな被弾が致命的なダメージに繋がり、アーリィ機は航行不能に。

 懸命に立て直すが、水飛沫を上げて海面に墜落。黒髪ポニテのメイドはうつ伏せで力なく海面に浮かぶ。

 

「やっぱりこんな作戦無理だったんだ! しっ死にたくないのに! やぁ!? 今の揺れってまさか――――」

 

 泣き言を叫び、茶髪の毛先を焦げ付かせるメガネメイドのメガニカ。

 

「落ち着きなさい。まだチャンスはあるわ――――っ! 嘘でしょ、この私が!?」

 

 長い紫髪を靡かせ、鼓舞するイクシィだが、メガニカのホバーバイクと同時に被弾。

 

「「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」」

 

 同時に爆散するメガニカ機とイクシィ機。爆散したバイクから弾き飛ばされ、流麗な肢体が宙でもがく。

 

「メガニカ! イクシィ! 畜生、ぶっ殺してやる! この止まれよ! 止まれってばぁ!」

 

 切り込み隊長のゼンギが空中を舞う二人に叫ぶ。

 しかし、銀髪赤メッシュの彼女も既に被弾しており、空中でスピンするスティレットを止められない。

 

「ぎゃっ!」

 

 ついに振り落とされ、海に落ちる。

 

 勢いがあり過ぎてかなりの距離を飛び、先に海に浮かんだメガニカとイクシィの間に着水。大股を広げて意識を失うゼンギだった。

 

「やだ、弾幕濃すぎ! エト様、助けて!」

 

 金髪ウェーブのメイドさん、レプレキアはどうにか仲間たちのフォローに入ろうとするが、濃密な砲火に晒され、何もできずに撃墜されてしまう。

 スケスケなスーツが張り付いた大きな胸が派手に弾んでいた。

 

「残るのはボク一人だけ――――なら、せめて皆の仇を!」

 

 決意の眼差しでテロリストが占拠した島に突撃しようとする灰白髪に褐色のお姉さん。

 被弾しないように、空気抵抗皆無な胸をシートに押し付け、スティレットに抱き着く恰好になる。

 

「もう少しっ!――――え……!?」

 

 汗濡れになった肉感的な太股に力を込めて速度を増すが、それが災いした。

 真っ向からミサイルにぶつかってしまい、ついにナルカも撃ち墜とされた。ハイレグスーツの褐色長身が天高く舞って頭から真っ逆さまに海面に突っ込んだ。

 

 勇敢な美女が跨る特攻ホバーバイク部隊は、こうして無様に海面に浮かび、漂うことに。

 

 気絶した彼女達を助ける者はいない。

 やがて、凶悪な人相テロリスト集団を乗せたボートが高速で接近して、思い上がった女たちを捕らえにやってきて……

 

 これらは全てエトの不安が生み出した妄想だ。

 

 ナルカとメイド達の無惨な最期――――エトがそんな光景を想像してしまうのは、自分を庇護してくれるお姉さん達を大切に思い、喪いたくないが故である。

 

 そんな少年の純粋な想いは、内に秘めたモノのつもりであったが、ナルカの鋭い観察眼は見抜いていた。

 

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