白騎のナルカ   作:欲丸出汁

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エピローグ

 

「何だか落ち着かない様子ですね~♪」

 

 自慢の巨乳を下から持ち上げるように腕組みして、金髪ウェーブヘアのレプレキアが指摘する。

 薄すぎるスキンスーツで胸の先端が透けてることなど、お構いなしという態度。むしろ、少年に見せているのだ。

 

「そっそんなことは!」

 

 慌てて否定するエト。悲しいかな、その反応が本心を如実に語っていた。

 

「本当かしら? もし具合が悪いのなら大変よ」

 

 紫髪の女王様系メイド、イクシィの鋭い眼差しが少年を見下ろす。

 

「作戦の中断も視野に入れなければなりませんね」

 

「ええ!? そんな必要ありませんよ!」

 

 イクシィに同意するメイド長のベルタ。整備が終わったのならば整備員に用はない。

 エトの体調を心配する意味などないはずである。

 

 過保護ぶりに狼狽える少年を見下ろしながら、

 

「……冗談ですよ」

 

 無表情で述べる薄桃髪のメイド長。ベルタは冗談を言ったのである。

 

「エトが何を考えているのか、このボクが皆に教えてあげよう」

 

 ナルカは唐突に宣言して、腹筋や胸の先端がうっすら透けるぴっちりスーツ姿のメイド達の注目を集める。

 

 腰に両手を当て、脚を肩幅より開き、白ハイレグスーツの股間を強調するかのように堂々たるポーズだ。

 そんな格好のせいだろうか。誤魔化しようのない薄い胸とショートカットの髪型がボーイッシュなナルカは、長身でありながら子供っぽく見えた。

 

「ちょっと強いだけでイキったお姉さん達が、こんな頼りないバイクで特攻したら無様に爆散しちゃうよ~って妄想しちゃったんだよね?」

 

 少年の姿を反射する深紅の双眸はどこか冷たく感じられる。それは不埒な妄想をしたことで、エトが抱いた後ろめたさによるものだった。

 

「なーんて、適当に言ってみたけど、その反応は図星だね」

 

 揶揄うような口調で完璧に本心を言い当てられ、返す言葉もない少年であった。

 

――やばい、怒られる!!

 

 整備班のメイドも含め、周囲の視線が一斉に突き刺さり、エトの心臓は破裂しそうなほど高鳴った。

 

「そこまで私達のことを想ってくださったのですね。心より感謝いたします」

 

 不埒で不敬な妄想をした咎で、メイド達に激怒されると怯えたエトを安心させるように、ベルタは深々と頭を下げる。

 

「なーんだ、そんなことか! 顔色が悪いから心配しちまったぜ!」

 

 大袈裟な身振りをして、ぶるん!と効果音がしそうなほど爆乳を弾ませるゼンギ。周りのお姉さん達もくすくすと笑い合う。

 

 アーリィはまずメイド長とアイコンタクトして許可を得てから、エトに向き直る。

 

「ナルカ様、退いてください」

 

「なんだよ、不敬だぞ」

 

 抗議するナルカだが、黒髪ポニテの「いいですから」とぞんざいに扱い、押し退ける。

 交替して、アーリィがエトの正面に立つ。鋭く、冷たい美貌に微かな笑みを浮かべる黒髪ポニテのメイドさん。

 

 ヒール状になったプロテクターが甲板に響かせる靴音が、やけにはっきりと聞こえるような気がした。

 

「私達の態度がエト様に無用の心配を抱かせてしまったのですね。

 このような話で安心いただけるか分かりませんが、我々も戦闘に恐れを感じています。こうして軽薄とも取れる会話をするのは、緊張を解し、恐怖を紛らわせるためなのです」

 

 ここでゼンギが不満そうな顔に。

 

「オレは戦うのは、怖いなんて思ったことは一度も――――」

 

「しー、ここは空気を読んでください」

 

 口を挟もうとするが、茶髪ロングの眼鏡メイド、メガニカが静かにさせる。

 

「こちらをご覧ください」

 

 そんなやり取りを横目に、アーリィは続ける。

 

 凛々しい立ち姿から一転して脚を軽く開き、エトに対して股間を強調するように下腹部に手を這わせる妖艶な仕草とポーズを取る。

 

 しかし、その表情は真顔。黒髪ポニテのメイドは、いついかなる時でも真剣であり、だからこそ副官的な立場を任されているのだ。

 

「私達のスキンスーツの股間には排泄物パックが備わっています。

 このパックは肉体的な反応だけでなく、精神的な反応からも私達を護り、衛生を保つためにあるのです。時に戦場の恐怖は想像を絶するものですから」

 

(それってつまり……)

 

 アーリィが静かに口にした生々しい単語に衝撃を受けたエトは赤面し、心拍数が上がった。

 

 周りのぴっちりスーツ装備のメイド達が、何やら局部に密着した装甲をアピールするような姿勢を取っているのは多分気のせいだろう。

 

「私は三回に一回は使うけど、イクシィは?」

「そんな話、するものじゃないわ――――片手で数えるくらいよ、趣味じゃないもの」

 

 レプレキアとイクシィが何から小声で会話しているが、きっと戦闘中のトイレの話ではないだろうと、エトは考えた。

 

「アーリィって意外と大胆なんだね。新発見だ。エトがいるせい、じゃないよね?」

「ふんっ」

 

 煽るような口振りのナルカと黒髪ポニテの従者と視線が激突して、火花が散る。

 

(女の人同士の喧嘩って怖い……)

 

 周りのメイド達にとっては、日常茶飯事のようだが、慣れない身には非常におっかないと感じるほど迫力がある。

 

 体型に髪色、それにバストサイズまで何かと対照的なナルカとアーリィ。

 

 首から足先までぴっちり覆うスキンスーツと、腰や太股が大きく露出するハイレグ。

 カラーリングも含めて、二人の着用している戦闘スーツのデザインも対照的と言える。

 

 エトは至近距離で舌戦を繰り広げる、アーリィとナルカのスーツの股間部分を見比べるように視線を泳がせていた。少年をスケベと糾弾することはできない。どちらも視線誘導が物凄いのである。

 

「ちなみにボクのナノスーツもちゃんと対策されてるから安心してね。

 こんな形(ハイレグ)だけど最新のスーツだからね。ここの性能も桁違いなんだ」

 

 当然、ナルカは行ったり来たりする視線に気付いており、自慢気に説明する。

 ナノ・プロジェクション・スーツの本体に当たる局部アーマーは前張り状のため、見た目はかなり心許なかった。

 

「そっそうなんですか」

 

 衝撃的な発言と異様でさえある状況にエトは茫然とし、どうにか言葉を絞り出すしかなかった。

 

「我らは恐怖を伴として己を律し、慎重を期して任務に臨んでおります。このアンナベルタが全員の生還を約束しましょう」

 

 最後はベルタが断言し、メイド長らしく場を収めた。

 

*

 

「さて、おふざけはこれくらいにしてっと。出撃にちょうどいい時間になったね、行こうか」

 

 ナルカはそう呟いてホバーバイクに跨った。

 

 それが合図だったようで、メイド達も一斉にバイクに跨り、エンジンを始動。

 

 スティレット・ホバーバイクは前傾姿勢で操縦する。

 白ハイレグスーツの褐色のお尻と、本来の肌色が透けるほど薄い黒いスキンに覆われたお尻達が突き出されることになる。

 

 後ろで見守るエトに挨拶するかのように、七つのお尻がきゅっと力強く引き締まり、気合を発する。

 ナルカの褐色のお尻は特に鮮烈な印象を与え、少年は見惚れてしまった。

 

「発進する!」

 

 スティレットを浮遊させて高度を十分に取ると、凛々しい声音でナルカは宣言した。

 

 頭上に轟く轟音。

 ナルカの騎乗する機体がまず発進し、メイド達のバイクがそれに続く。編隊は六機ずつ左右に広がっている。

 まっしぐらに飛ぶスティレットの姿は、あっという間に水平線の彼方に消えた。

 

 ハンドルを握る両手とシートを挟む太股の力だけで、ナルカ達はホバーバイクに跨っている。

 身体を固定するハーネスの類はない。危険なヴィークルだった。

 

「エトのためにも必ず作戦を完遂しよう!」

 

『無論です』

 

『りょーかい♪』

 

『腕が鳴るわね』

 

『全員ぶっとばしてるぜ!』

 

『ジャミングと火力支援は任せてください!』

 

『各員、気を抜かないように。ナルカ様もですよ』

 

 威勢よく返事をするメイド達。ナルカの掛け声に応じて、「エト様のために!」と唱和する。

 

 エトの心配が杞憂だったと思い知らせるかのように、ウォーヘッド部隊の攪乱に乗じて、ナルカ達は圧倒的な強さでテロリストを殲滅した。

 

 対空砲火を易々と掻い潜り、スティレットの搭載兵器による攻撃で防衛設備を無力化。

 

 ハティ率いる小隊の陽動のため、基地に残されたウォーヘッドは数機。それもベルタが難なく撃墜した。

 

『ナルカ様は司令部の制圧に移ってください』

 

 レールキャノンで撃ち抜かれ、墜落した人型機動兵器の機能停止を確認しながら呼び掛ける薄桃髪のメイド長。

 

 冷徹な表情で隊を指揮しながら、自らも戦闘に参加している。

 発汗により、ベルタの肉感的な臀部はスキンスーツと汗が反応して、匂いの濃さが増していた。

 

「イクシィ、アーリィ、メガニカ、援護お願い!」

 

 メイド長の通信に応え、ナルカはメンバーを選び、突入した。

 

 スティレットから飛び降ると灰白色の髪を靡かせ、愛用の刀を片手に突進。

 地を這うように駆け抜けて、ゲート前に布陣するテロリストを叩きのめす。その背後をイクシィ達が守っている。

 

 フェンリスが到着する頃には戦闘は終結していた。

 

 基地を奪還するまでに、ナルカ達が放出した体液は運動による汗だけで、血の一滴も流していない。まさに完全勝利だ。

 

「ただいまー」

 

 カララトリに戻ったナルカとメイドお姉さん達は、汗に濡れた生々しくも活き活きとした姿。着替えをすることなく、戦闘スーツのままだ。

 

「誰一人欠けてないし、傷の一つも負ってないよ。約束を果たしたボク達を褒めて欲しいな」

 

 ナルカ達は少年を取り囲み、無事を伝えるべく、体温と汗と柔肌の感触をたっぷり味わわせる。

 

「んっんぅぅう~~!!」

 

 文字通り、エトはもみくちゃにされる。返事をすることもできず、濃厚な汗とフェロモンを強制摂取させられている。

 

 不埒な妄想をした罰として、少年はそれを甘んじて受け入れるのだった。

 

 

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