担当はハイスペックウマ娘   作:カニ漁船

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ハレヒノカイザーの実力

 本日はお日柄もよく、気持ちよく走れそうなトレーニング日和と言える。とても天気がよろしい。

 やるのは担当ウマ娘であるハレヒノカイザーの能力チェック。参加してくれる子がいるというのでウキウキ気分だったよ。

 

(どんな子が来るんだろうな~? これで世代とか分かればいいな~)

 

 なんて、軽い考えでいた俺の前にお出しされたのは。

 

「さて、カイザー。いつもと変わらずあまり出力を上げすぎないように」

「も~、分かってるってばルドルフ会長」

 

 まさかのシンボリルドルフである。お前どんな人脈しとんねん。

 

 

 【皇帝】シンボリルドルフ。トレセン学園の生徒会長を務めるウマ娘でレースにおける実力も圧倒的。史上初の無敗の三冠ウマ娘であり、その実力は疑う余地もない。

 なんでそんな相手がカイザーと既知の仲なんですかねぇ、なんて思いもしたが。

 

(よくよく考えればこの2人似てるし、史実で繋がりがあったんじゃないか?)

 

 傍目で見るとこの2人は似ている。細かく見たら違いはたくさんあるんだが、ぱっと見なら間違える人もいるんじゃないか? ぐらいのレベルで。

 シンボリルドルフの関係性でまず挙がるのは、やはりトウカイテイオーだろうか。この2人は史実で親子だったらしい。

 この2人の特徴的な部分といえばやはり白い前髪。流星と呼ばれる部分だ。カイザーにもキッチリとある。

 

(なら、割と関係性は見えてくるな)

 

 ハレヒノカイザーとシンボリルドルフは史実で親子だったんじゃなかろうか。もしかしたら姉妹、じゃなくてあっちだと兄弟か。そっちの線もあり得る。

 

 これは重要なヒント。ひとまず、2人の関係性について聞いてみよう。まだ準備は終わってないみたいだし。

 ストレッチをしているカイザーは、邪魔しちゃ悪いからシンボリルドルフの方に聞くことに。近づいて、できる限り声を抑えて話しかける。

 

「あ、あの~、すみませんシンボリルドルフさん。今日はお忙しいところ」

「いえ、構いません。むしろ私の方がお邪魔をさせてもらっている身。突然の参加申請を受けていただき、感謝しています」

 

 お互いに社交辞令を済ませて、と。

 

「ところで、お2人はどのような関係なんですか? もしかして、姉妹だったり?」

 

 そう聞くと、シンボリルドルフは一瞬呆けたような表情をした後笑った。この反応、どうやら違うみたいだな。

 

「フフ、確かに私とカイザーの容姿は似ていますが、姉妹ではありませんよ。何より彼女はシンボリの者ではありませんから」

「ですよね。聞いてみただけです」

「後、砕けた口調で構いません。あなたの方が歳は上、人生の先達なのですから」

 

 あ、そうなの。それじゃあ遠慮なく。

 

「ならそうさせてもらうわ。それで、実際どんな関係なんだ?」

「特にこれといった深い関係ではありません。彼女のトレーニングを見てあげている、それくらいです」

 

 そう語るシンボリルドルフ。たまにトレーニングを見てあげてる、ねぇ。

 

(それが本当ならかなり凄いことでは?)

 

 生徒会の仕事もあるだろうし、普通はそこまでしないだろう。仕事の合間を縫ってでも見なきゃいけない何かがある、そう考えるのが自然か。

 

(理由がなんなのか、聞きたいところではあるが)

「よーし、準備運動終わり! それじゃトレーナー、トレーニング始めようか」

 

 準備ができたらしいカイザーがすぐにでも動きたそうにしている。後でいろいろと聞けばいいし、今はとりあえずこっちに集中しよう。

 

「じゃあまずは4ハロンから測っていくか」

「はーい。やったやった、走れるぞ!」

 

 素敵な笑顔。う~ん癒される。ほっこりするね。

 

 トレーニングしている間、能力をONにする。ステータスが見えるこのチート、能力のONとOFFが切り替えれるから凄い便利。

 で、カイザーのステータスを見るわけだが。

 

 

スピード:E

スタミナ:F

パワー:F+

根性:F

賢さ:F+

 

 

 お前どこで因子継承してきた? まさかそれが初期ステータスとかいうんじゃねぇだろうな?

 

(初期ステがEのウマ娘なんか聞いたことねーよ! シンボリルドルフから因子継承でもしたんかお前!?)

 

 三女神像の前に行ったんか、スピ18積んだんかお前。もう一人の相手誰だよ。

 ぶっちゃけステータスなんて飾りだ。指標の一つにしかならんということは分かっているけど、初期ステEとかどうなってんだ。史実でなにしたらそんなことになるんだよ。

 

 規格外っぷりには相変わらず慣れそうにない。なんならこの時点でスキルをいくつか持っているし。

 

(シンボリルドルフが教えたんだろうけど、それにしたってヤバいだろ)

 

 スタート時点で違いすぎる。ここからどんだけ成長するんだこのウマ娘は。

 

 

 

 

 

 

 トレーニングをしていく最中で、改めてハレヒノカイザーの素質を見せつけられる。

 

(ダイヤの原石、なんてレベルじゃないな)

 

 ダイヤすらも超えた原石、デビュー前から完成していると思わせるほどの強さを誇っている。

 デビュー前のウマ娘が出せる4ハロンの平均タイム。おおよそ54秒、メイクデビューで1着を取る子は54秒を切るくらいだ。54秒を切るのが目標となるだろう。

 この情報を踏まえた上でハレヒノカイザーが記録したのは、53秒1。

 

(1ハロンごとのタイムが13から14秒ほど。これを狙って出してるんだからえげつない)

 

 ほぼブレなく13秒を記録。息もそれほど乱れず、当然とばかりにこなしていた。これで本気を出したらどうなることやら。今から怖いぜ。

 

 てか、記録の測り方も普通じゃないんだよなコレ。

 

「さて、カイザー。トレーニングの復習と行こうか」

 

 シンボリルドルフが常に張り付きながらやってる。いや、なんで?

 

(確かに協力するとは言ってたが、ここまでしてくれるとはなぁ)

 

 これほどおせっかいをするのはあまり見ない。トウカイテイオーにも親バカと言われるくらいには甘々だったし、やはり史実の子は可愛いってやつか。カイザーはルドルフの子説がより強固なものとなったな。

 

 さて、現実逃避は止めるか。

 

(なんでシンボリルドルフに張り付かれながらこのタイムを記録できるんだよデビュー前のウマ娘がよぉ!)

 

 揺さぶりをかけられても動じない、フェイントにも引っかからない。というか併走で闘争心を煽られているはずなのに、ハレヒノカイザーは全く意に介していない。なんだアイツの精神力、鋼か? 鋼通り越してオリハルコンじゃねぇか?

 いかん、アイツのバケモノっぷりがどんどん浮き彫りになる。

 

(これが成長しきったらどうなるんだマジで)

 

 通常ウマ娘ってのは、闘争心を煽られたら競わずにはいられない性分だ。この闘争心こそがウマ娘の強さを支えているものであり、基本的な軸になっている。

 闘争心が弱いウマ娘は強くなれない。時にはコンディションにすら影響を及ぼし、一部例外を除いて闘争心が薄いウマ娘はレースを勝てなくなる、と思われている。

 

 では、目の前で走っているカイザーを見てみましょう。

 

「アハハ、アハハハ! 楽しい、楽しいなぁ!」

 

 う~んすっごい笑顔。素敵な笑顔でこっちもつられて笑っちゃいそう。可愛いね♡

 ではなく。始まった時からずっとあの調子だ。口を割って走り、それでいてなおハロンごとのタイムはブレていない。いや、どうなってんのマジで?

 

(確か口を割るのは良くないことだよな。スタミナの消費が激しいからなんとかで)

 

 なのにこれってどういうことだ。こんなの絶対おかしいよ。

 

 しかもコーナリングとかの技術も見事の一言。通常、外に膨らむことが多い中カイザーは最内をキープしながら走っていた。デビュー前のウマ娘がMAXスピードを出しながら、そのスピードをコントロールしているといえばいいのか。

 普通は無理だ。デビュー前のウマ娘は特に顕著なのだが、タイムを出すことに意識を割きすぎてコーナーまで頭が回らない。矯正しつつ、自分の最適なペースを探って、どうすれば上手く曲がれるのかを試行錯誤しながら改善していくものだ。

 だが、カイザーはすでにモノにしている。完璧なペース配分にコーナリング、どれをとっても隙がない。相手になる子が可哀想になるほど。

 

(これでまだ本気じゃない。いやはや)

「改めて思い知らされたわ。とんでもねぇスペックだ」

 

 適性だけじゃない。あらゆる値が飛び抜けた天才児。それがハレヒノカイザーなのだと。シンボリルドルフとのトレーニングで判明した。

 

 

 トレーニングが休憩に入ると、シンボリルドルフがこちらへと歩み寄ってきた。歩いているだけでも様になるな、このウマ娘。

 

「それで、いかがだったかな? ハレヒノカイザーは」

 

 分かっているだろうに、そんなことを聞いてきた。俺の口から直接聞きたいのかどうなのかは分からんが、言うべきことなんて決まっている。

 

「ダイヤの原石すら超えた存在。それだけじゃ言い表せないな、こりゃ」

「はは、他のトレーナー陣も同じことを仰ります。加えて選抜レースもあったから、無理もない話ですが」

 

 あー、カイザーの選抜レースな。あれもあれで凄かったな、人だかりが。

 

 別に飛び抜けた勝ち方をしたわけではない。大差で圧勝したとかスーパーレコードで駆け抜けたとか、そういうのでもない。いたって普通の勝利だ。

 ただ一点、違ったのは。

 

「笑いながら勝った。中央に入学するようなウマ娘を、アイツは笑いながら千切ったからな。そりゃ騒ぐわ」

「余裕を見せての勝利。彼女の才覚を人々が認識するには、十分すぎる内容でした」

 

 今みたいに笑いながら勝ったってところだ。マジ? って思うかもしれないだろう。これが本当のことなんだな。内容も3バ身差の快勝、とんでもない強さだ。

 

 世代屈指の実力に底の見えない将来性。どんなトレーナーでも喉から手が出るほど欲しい逸材。なんで俺は逆スカウトされたのやら、これがわからない。

 

「私のトレーナーも彼女を狙っていました。ですが、振られてしまったようで。落ち込んでいましたよ」

「へ~……え? シンボリルドルフのトレーナーといえば、あの人じゃ?」

「えぇ。私のトレーナーは一人しかいませんから」

 

 皇帝の杖。学園でもトップレベルのトレーナーだ。そんな人のスカウトすら断ったのかカイザーのやつ。いよいよもってなんで俺が選ばれたのか分からん。

 

 ま、これに関してはいいだろう。答えはカイザーのみぞ知る、ってやつだ。何かがアイツの琴線に触れたんだろう、多分。

 

「トレーナー、結果はどうだった?」

 

 シンボリルドルフと話しているとカイザーもこちらへ。偽ることのない結果を伝える。偽るような成績でもないし。

 

「とんでもなく凄いな。同世代の中でも抜きんでていること間違いなしだ」

「ふーん、そうなんだ」

 

 反応うっす。記録とかに拘らないのか、あんまり興味なさそうだった。それならそれでいいけどさ。

 

 記録を聞いた後、こちらへと顔を近づけてくるカイザー。ガチ恋距離みたいな距離感だ。やめろ好きになるだろ。

 

「トレーナー、もっと走ってもいい!?」

「休憩したらな。もうちょっと休憩したら、またシンボリルドルフとトレーニングだ」

「は~い」

 

 本当に走るのが好きなんだな。つまりサイレンススズカの同類、ってことか。

 

 改めて記録の紙を見てみる。う~ん、いつ見ても素晴らしい。

 

「今からデビューしても余裕で勝てそうだな。メイクデビューもなければ未勝利戦の出走資格もないけど」

「レースはそう簡単なものではない、と言えればいいんですけどね」

 

 シンボリルドルフの困った表情。俺の意見を否定しきれないところを見る限り、彼女も同じことを思ってるんだろうな。

 

「私もレースに出たいけどな~。みんなと走る良い機会だし、楽しそうだし!」

 

 カイザーもこの表情。良い笑顔です。

 しかしレースで楽しそう、か。なんともカイザーらしくていいな。

 

「今はまだ力を蓄える時。いずれは君もデビューの時がやってくる。それまで待とうか」

「分かってるよルドルフ会長。大丈夫」

「心配はしていないさ。ただ、もしかしたらカイザーはかのディープインパクトと同世代になるかもしれない。それだけは頭に入れておいてくれ」

「プイちゃんと走れるのか~。うん、それも楽しみだね!」

 

 おい待て、今さらっととんでもない情報が開示されたぞ。これは、もしかするともしかするかもしれない。

 

(ディープインパクト、ということはつまり)

 

 カイザーの世代は、彼女が相手にすることになるのは。

 

「お互いにデビュー前ながら頭角を現し始めている。君とディープインパクトは、すでに世代の代表候補と噂されているよ」

「ふ~ん。走ったら楽しそうだよね。いいやきっと楽しい! 楽しいこと間違いなし!」

「君はブレないなぁ」

 

 やっぱりディープインパクトか。つまりカイザーは、2005年のクラシック世代で確定ってことだろう。

 

 

 実はこの世界、前世のアプリでは未実装だった子も生きている。それこそ、今のディープインパクトが良い例だ。

 初見はガチでビビったね。同期が実装を切望していた子がいたんだから。

 

 それでディープインパクトなのだが。それはもう強かったらしい。シンボリルドルフレベルの実績、日本の歴代でも最強クラスだったとか。二つ名は【英雄】。かっこよ。

 しかも後世に与えた影響も計り知れない。ディープインパクトの子は大ブレイクしたとかなんとか。

 

(俺はよく知らんけど、名前だけはニュースで聞いたことあるんだよな)

 

 そんだけ強かったって話だ。

 

 で、ディープインパクトと同世代かぁ。

 

(こればっかりは向こうの走りを見ないと分からんな。カイザーの方しか見てないし)

 

 ディープインパクトの実力がよく分からない。史実で強いってのは聞いたことがあるけど、レースなんて見たことがないから実際にどれくらい強かったのかなんて分からないし。

 現時点ではどっちが上かが判別つかない。なので勝てるとは言えないな。

 

 しかしこれは嬉しい情報だ。世代が確定したのだから、誰と当たるかも……。

 

(ラインクラフトにシーザリオ、エアメサイアとデアリングハート。全員ティアラ路線だから当たらなくね?)

 

 ウマ娘で実装されていた05世代、全員クラシック路線じゃないから関係なくね問題が発生した。なんてこったい。

 しいて言うならラインクラフトがNHKマイルカップに出走するから、そこぐらいか。進展したようで進展してねぇなこれ。

 ただ、前後の世代で当たる相手は想像がつく。ゼンノロブロイとか、スイープトウショウが相手になるだろう。

 

「一歩前進、だな」

「なにが? トレーナー」

「あぁいや、大丈夫だカイザー。こっちの話」

「え~? 気になるから教えて教えて」

 

 こらカイザー。人に寄りかかるんじゃありません。体重をかけてこようとするんじゃない勘違いするだろ。

 この子ちょくちょく距離感が近い。めちゃくちゃ詰めてくるのだ。一歩引いたら二歩ぐらい詰めてくる。警戒心がないというか。

 

「こら、カイザー。榊トレーナーに迷惑をかけてはいけないよ」

 

 最終的にシンボリルドルフが引きはがしてくれたから事なきを得た。なお、鋭い目で睨まれた。怖いのでやめて。

 

 

 ひとまず世代は確定。後はメイクデビューとか諸々考えますかね。

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