担当はハイスペックウマ娘   作:カニ漁船

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※お詫び

これで2回目の再投稿ですが、続きを書いていたデータおよび構想のデータが吹き飛びました。萎えました。なので全編書き直して再構築して投稿しました。お騒がせしました。


全てがBIGなウマ娘

 事の始まりは、カイザーとクラフトがトゥインクル・シリーズを引退してから数ヶ月が経過したある日のことだ。

 

「たづなさん、俺も海外研修とかできないですか?」

「どうしたんですか急に。確かにできますけど」

 

 たづなさんにあるお願いをしていた。それは海外研修のお願いである。

 

 トレセン学園は海外にも勿論存在している。欧州やアメリカがそうだし、それぞれの場所で特色が異なる。

 特色が違うということは、自分の知らない何かを学べる良い機会ということ。自己研鑽を積むにはもってこいの研修なのだ。

 

 確かに俺は世界一に輝いたし、世間では俺のことを天才トレーナーだの世界一のトレーナーだのいろいろと持て囃している。嬉しいし超テンションが上がるけど、肝に銘じておかなければいけないことが1つある。

 

「いえほら。俺ってまだまだ新人じゃないですか? 勉強すべきことがたくさんありますし、海外で研修すべきだなと思いまして」

「榊トレーナーはすでに世界一に輝いているので、新人の枠組みに収まってはいけないと思いますが」

「それはまぁ、そうなんですけど。でも、年数的には一応新人ですよね!?」

 

 難しい表情を浮かべないでください。まだ2人しか担当してない上に、積み重ねた日的にもまだ新人ですよ。ビギナーですよ俺は。実績? 知らん。

 俺には何としても海外研修に行かねばならない理由がある。だからこそ、頭を下げて必死に頼み込む。

 

「どうか俺を海外研修に行かせてくれませんか! お願いします!」

 

 頼み込むものの、たづなさんは訝し気な目だ。どこにそんな疑う要素があるというのか。

 

「どうしてそんなに必死なんですか。榊トレーナーのことだから、絶対になにかありますよね?」

 

 やっべ、俺の考えが見透かされてる。そりゃこんな必死にお願いしてたら疑われても仕方ないか。

 

「何かありますよね? それを言わない限り、海外研修の件については保留せざるを得ません。なにせ、榊トレーナーは引く手数多なんですから」

「あれ、そうなんですか?」

「そうですよ。あなたが海外研修なんて言い出したら、世界中が注目すると思いますよ? それと、是非我が国に、という声で溢れかえると思います。それだけの人物なんですよ、あなたは」

 

 やだちょっと嬉しい。そこまで評価してもらえるなんて。でも、言わなきゃ海外研修の許可は出ないと来たか。

 

 ……仕方ない。言いたくないけど、こればっかりはもう避けられないだろう。

 

「その、カイザーとクラフトのこと、なんですけど」

「あ、はい。申し訳ありません。それ以上は大丈夫です、私の気が回っていませんでした」

 

 秒で謝罪しないでもらえるでしょうか? 泣きますよ。

 

 

 海外研修に必死になる理由。それは担当ウマ娘であるカイザーとクラフトが関係している。端的に言えば……アイツらの猛アタックがキツくなってきたのだ。

 事あるごとに近づいてくる上、魅惑のささやきを使ってくる。魅惑のささやきをレース外で使うなレースで使え。

 ボディタッチも多いし、人目を避けては抱き着いてくる。お出かけも執拗に迫ってくるし、お出かけでは恋人のような距離感で迫ってくる。勘弁してくれ本当に。

 

 ぶっちゃけて言うと、流石にこれ以上はまずいというか。風紀的な問題もそうだし、俺がいつ警察のお世話になってもおかしくない状況になりつつある。それが今の我がチームの現状だ。目を背けたいけど現実が目を背くことを許してくれない。

 

「カイザーとクラフトの2人分ですよ? 取り合いで俺が大岡裁きにならないのはいいけど、さすがにまずくなってきたというか」

「あ~……学園でも度々話題になっていますものね。ラインクラフトさんはともかく、ハレヒノカイザーさんの方は」

 

 クラフトの方はまだいい。恥ずかしさがあるのか少しは我慢をしてくれるから。後はもうちょっと自制心を働かせてくれれば文句はない。

 だがカイザーは別だ。アイツには羞恥心という概念がないのか、所かまわず抱き着いてくる。その度にアイツの胸が俺に押し付けられる。本当に勘弁してくれ。なまじシンボリルドルフに似ているからギャップが凄いんじゃ。

 

「そういうわけです。学園の風紀的にも良くないですし、ここでいったん距離を置いた方がいいと思うんですよ」

「距離を置いたらその分また会った時に爆発しそうですね」

 

 やめてください本当に。そうなる可能性大だけど、むしろそうなる可能性しか見えないけど。それでも一旦距離を置いた方がいい、絶対に。

 

 

 そんなわけで、俺は海外研修を望んでいるのだ。研修している間は別のトレーナー預かりになるし、少なくとも俺との距離は物理的にも遠くなる。

 それに、離れておけば落ち着く可能性は……那由多分の1ぐらいはあるかもしれない。そのことを願って、俺は海外研修を申し出たのだ。

 

「というわけで、海外研修させてくれませんか? まだ定員募集してましたよね?」

「そうですねぇ……あるにはありますが、慎重に吟味してくださいね?」

 

 お、ということは!

 

「ひとまずは了承しました。理事長に話を通して、その後にまた研修先を決めましょう。私もお手伝いさせていただきます」

「ありがとうございます! 助かりますたづなさん!」

「いえいえ。これもまた私のお仕事ですから」

 

 俺の海外研修が決まった。やったぜ。とりあえず、2人にちゃんと話しておかないとな。

 

 

 で、2人に話したわけだが。

 

「え~~~!? トレーナーさんは世界一のトレーナーなんですから、研修なんてしなくてもいいじゃないですかぁ!」

「う~ん、トレーナーが研修する必要あるの?」

 

 案の定猛反発された。だが、こちらにも秘策がある。

 

「あのなぁ、俺はまだ一応ギリギリ辛うじて新人にカテゴライズされる人間だぞ? 確かに実績はあるけど、まだまだ勉強不足感が否めないんだよ」

「でもでも、世界一ですよ! 世界一の新人さんです!」

「だとしても、だ。それに、学んだことを次に入ってきたウマ娘に活かせるかもしれない。お前たちとはまた別のタイプの子かもしれないし、この機会に学んでおいて損はないんだ」

 

 新人で、勉強のために研修に向かうということ。前向きな理由で研修するんだ、断ることなどできるはずがない。だってやましいことなんてないのだから。俺が内心どう思っているかは別として。

 というか、研修自体そもそも勉強のためだ。より自分を磨くためのものであり、普通ならば歓迎して然るべきこと。強くは言えまい。

 

 勉強のため、ということを言われてか、クラフトもカイザーも強く言えないようで。

 

「わ、分かりました……勉強のためですもんね」

 

 落ち込みながらも納得してくれた……あの、ごめん。さすがに目の前で悲しい表情をされると罪悪感が半端じゃない。俺の決心が揺らぎそうになる。

 

「勉強のためなら仕方ないよね~。頑張ってきてね、トレーナー」

 

 逆にカイザーはあっさりとしていた。まぁカイザーならそんなものか。いつもこんな感じだし。

 

 クラフトの表情が心にクる。でも、これで退くわけにはいかない。ちょっと距離を置かないと、この先絶対にまずいことになるからだ。だから俺は、2人に対し分かってもらえるように説得する。心を鬼にしなければならない。

 

「そうだ、勉強のためだ。それに、研修を終えたら帰ってくるし、その研修も期間は半年ぐらいだ」

「あれ、結構短いんだね。1年ぐらいはあると思っていたのに」

「それな。大体半年らしいぞ」

 

 研修自体は半年で終わる。なので、長いようで短いのだ。研修なんて年単位でやるようなものなのに、この期間にも理由はあるのだろうか。

 まぁ気にするものではない。カイザーとクラフトからすればありがたいことかもしれんし。

 

「俺が研修に行ってる間、クラフトとカイザーは文乃先輩に頼んである。2人とも文乃先輩の言うことをよく聞くんだぞ」

「はーい! プイちゃんがいるぞ~!」

「はーい」

 

 2人に俺がいない間のことを話して、しっかりと言い聞かせておく。問題はないだろうけど、一応ね。

 

 

 それから諸々の手続きをして、俺の海外研修が決まった。この期間で2人が大人しくなってくれたらいいんだが……一縷の望みにかけるか。

 

 俺の研修先は──アメリカ。カイザーとクラフトは一度も走ったことがない場所で、俺の研修が始まることになる。

 

 

 

 

 

 飛行機の長いフライト、さらにバスでの長い移動を経て俺はアメリカのスクールに到着した。うん、でかいな。トレセン学園に負けず劣らずというか、向こう以上のデカさがある。これがアメリカンサイズか。

 

「冗談はともかくとして、まずはあいさつからだな。お偉いさんに会わなければ」

 

 急ぎ足でスクールへと入っていく。守衛にあいさつをして、こっちの案内してくれる人と合流し、最初の挨拶へと向かった。

 

 向こうはかなりの歓迎ムード。俺の姿を見るなり、大層嬉しそうにしていた。

 

「『初めまして榊さん! 今世界で一番熱いトレーナーが我が校に来てくれるなんて、嬉しくて踊りたくなっちまうよ!』」

「『ありがとうございます。ただ、まだまだ私は新人の身。この機会にたくさん学ばせてもらいます』」

「『任せてくれたまえ。世界一のトレーナーに教えることなんてないかもしれんがね!』 AHAHA!」

 

 うーん気の良い人達だ。握手してバンバン肩を叩いて、フレンドリーさを醸し出してくれる。これだけフレンドリーだとこちらとしてもありがたい。厳格な雰囲気はそんなに得意じゃないし。

 

 こうして話した後は現地のチームのサブトレーナーとして就く。

 

「『世界一に輝いたトレーナーが俺のチームになんてね。恐れ多くて震えちまうよ』」

「『いやいや、そんな畏まらなくても。俺まだ新人ですし。というか、冗談ですよね?』」

「お、『分かっちまうか? ま、緊張をほぐすためにちょいと、な。とにかく半年の間、よろしく頼むぜ!』」

「『こちらこそ!』」

 

 トレーナーも陽気な人、きっと楽しい研修になるだろう。それにしても、海外遠征する時に鍛えた英語が早速役に立っている。学んでおいてよかった語学。

 

 ウマ娘側も俺に興味津々かつ、特に不快感はないようだ。歓迎ムードが漂っている。

 

「『世界一のトレーナーだって。興味あるよね』」

「『うんうん! でも、こっちのレースは未出走らしいよ?』」

「『将来はダートの子を育てるのかな? だったら、榊トレーナーは我々が育てた、なんて言えるんじゃない?』」

「『やっばそれ楽しみ~!』」

 

 いろいろと言われているが、微笑ましいものだ。よし、研修頑張ろう。

 

 

 トレーニングが始まってすぐのこと。チームのウマ娘が辺りを見渡している。

 

「『ところでガーネットは? なんでいないの?』」

「『さぁ? どうせどこかで寝てるでしょ。で、ゼニヤッタが探してる』」

「『毎度毎度大変だね~。可愛がってるのは分かるけどさ』」

 

 どうもガーネット、というウマ娘を探しているらしい。このチームの子らしいが、ここにはいないようだ。

 

「『すみません、彼女らが言っているガーネット、というのは?』」

「あ、あ~……『ガーネットは、な』」

 

 気になったので聞いてみると、凄く歯切れの悪い言葉が返ってきた。なんか、嫌な予感しかしねぇ。

 

「『アイツはとんでもなくマイペースでな。たまにトレーニングの時間に来ないこともあるんだ』」

「『そうなんですね。苦労しているんですか?』」

「『遅刻は他のメンバーもたまにあるし、それ自体は気にしてない。むしろアイツの場合は……いや、この辺で止めておこう』」

 

 うん、やんごとなき事情があるんだな。なら触れておかないでおこう。俺も藪蛇をつつく趣味はない。

 

 っと、少しトイレに行きたくなってきたな。

 

「『すみません、お手洗いに行ってきてもいいですか?』」

「『お、そうか。お手洗いはこの先だ。中央広場を突っ切った先だな』」

 

 場所を教えてもらいお手洗いへ。急いで戻らなければ。

 

 

 お手洗いをした帰り道のことである。中央広場と言われる噴水の場所へ目を向けると。

 

「……」

「デッッッッ」

 

 とんでもなくデッッッッ! なウマ娘がいた。行く時は急いでたから気づかなかったけど、どうやらここで寝ているらしい。

 

 黒く長い髪に白いメッシュがところどころ入っており、立ち上がれば間違いなくでかいことが分かるウマ娘。というかいたるところがでかい。目を逸らそうと思っても逸らせないというのは、こういう子のことを言うんだろう。そう思わせるほどの威圧感だった。

 

(とりあえず起こすか? でも、気持ちよさそうに寝ているところを邪魔するのは悪いしな)

 

 ここは見なかったふりをして退散しよう、そう決めた次の瞬間。

 

「……『お腹空いた』」

 

 そのウマ娘は起きた。カイザーを思い出させるような赤い瞳がきょろきょろと視線をさ迷わせ、俺へとロックオンされる。やっべ逃げ遅れた。

 

 一体何を言われるのか。少しだけドキドキしていると。

 

「『ねぇ、僕ハンバーガー食べたい。食堂連れてって』」

 

 開口一番、知らん人間に対してご飯を要求してきた。おい、嘘だろコイツ。

 

 

 

 

 

 

 あの後、どんどん不機嫌になっていくウマ娘を前にして俺の選択は限られており。仕方がないので食堂へと連れて行った。事前に見取り図をもらっておいてよかったと心の底から安堵している。

 

 目の前のウマ娘は満足げな表情で山のように積み重なったハンバーガーを平らげた。めっちゃ食うな。身体に違わず、ってところか。

 

「『悪いね、榊幸光。起きたらお腹空いちゃってさ』」

 

 悪いと思ってるならもうちょっと申し訳なさそうな表情をだな。いや、別にいいけども。

 

「……『まぁいい。てか俺の名前知ってんだな?』」

「『当然でしょ。世界一のトレーナーの名前なんだから』」

 

 どうやら思ったより浸透しているらしい。ちょっと嬉しいな。

 

 で、だ。この子の名前はなんて言うのだろうか? せめてそれを知る権利ぐらいはあるはずだ。いや、ステータスが見える目を使えば一発で分かるんだけど、一応聞いておきたい。

 

「『君の名前は? てか、どこのチームもトレーニングしているし、君もすぐに行った方が』」

 

 いいんじゃないか。そう言い切る前に彼女は自分の名前を口にする。

 

「『ロードライトガーネット。ロードライトガーネットだよ』」

「……『はい?』」

「『何、聞こえてないの? 僕はロードライトガーネットだよ』」

 

 チームのみなさん、あなた方の探しているガーネットらしき人物がここにいますよ。てかこの子がガーネットか?

 いや待て。まだだ、まだ慌てるような時間じゃない。もしかしたら違うかもしれない。なんせガーネットというのは愛称だ。別のガーネットって子がいるかもしれないからな。だから違う可能性も十分にあり得る。

 

「『はいはい、ロードライトガーネットね……ところで君、××ってトレーナーのチームに所属してる?』」

「『そうだよ。君がお世話になる予定のチームに所属してる。それがなにか?』」

 

 はいほぼ確定です。いや、確定だからなんだって話ではあるんだけど。

 

 それにしても、この子がロードライトガーネットか。

 

「『そういえばもう練習始まってるや。まぁいいでしょ、適当に流して』」

「『コラ、ガーネット! ようやく見つけましたよ! 貴方は何をやっているんですか!』」

「あ、『ゼニさんだ』」

 

 なんというか、うん。

 

「『こんなところで何をやっているんですか!』」

「『ご飯食べてた』」

「『なんでご飯を食べて……あぁもう、早く行きますよ! トレーニングは始まっているんですから!』」

「『ゆっくりで大丈夫でしょ。どうせ遅刻してるんだし』」

「『そういう問題ではありません! 全くもう……榊トレーナーも申し訳ありません、本当に!』」

 

 マイペースそうな子だな。




ロードライトガーネット


身長:207cm
体重:全てがBIG
スリーサイズ:122/71/115
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