※1.pixivにも投稿アリ
※2.2025/05/31 誤字修正しました、報告ありがとうございます。
最初は、ただのお遊び。ただの思い付きだった。
別にアビドス唯一の三年生であることを不満に思ったわけじゃないし、それを嫌だと思ったことも無い。
ただ。
ただ少しだけ。疲れてしまった、そんな時があった。それは日課のパトロールを休んで、一晩ゆっくり寝てしまえばすぐにでも解消されるような、そんな疲労だったけど。
そういうのを抱いた時に限って丁度、のほほんとした……いや、あれは多分業務に追われて成す術が無くなって開き直ってる顔かな……。とにかく、そんな表情をした先生がいるものだから。
つい。八割の好奇心と。一割の興味。そして一割の背徳感を持って、尋ねてしまったのだ。
「うへ、先生~。ちょっとだけ、おじさんに『首輪』なんて着けてみない~?」
なんて、そんな事を。
*
”首輪って……”
ごとり。
そんな擬音を想像してしまうくらいには大きな首輪。そして、それに繋がる鎖。そんなものをカバンから取り出しながら訪ねてみたら。
ぎょっとした顔をしながら、予想通り先生は難色を示した。当然と言えば当然。仮に逆の立場になったとしたら、私だってびっくりするし、えっ? て顔をすると思う。だけど、今日の私はなぜだかここで引く気には慣れなかった。
「ほんのちょっと付き合ってくれるだけで良いんだって。こんなこと、後輩たちには頼めないし」
それくらいわかってくれるよね? 後半は言葉に出さずに目線だけで問う。
”……大体ほら、そういうのってペット用の使うと肌に悪いんだって”
あ、墓穴掘ったね。首輪のインパクトで動揺したのか、余計なことまで言ってる。普通はペット用とかプレイ用とか、そんな区別がある事なんて知らないんだよ? ……そういう効果は期待してなかったけど嬉しい誤算。
「随分と詳しいんだね、先生。……もしかして、やったことある?」
”あっ……いや、別に”
しどろもどろになった先生が言い訳にもならない言い訳を重ねる。そう言えば風の噂で聞いたことがあったような無かったような。「お堅い風紀委員と首輪プレイしてる」とかなんとか。
その時は随分と過激な噂が立つものだなあなんて考えて特には気にしなかったけれど。もしかして本当だったのかな?
「おじさんは構わないんだけどね? 先生がどんな趣味を持ってたって。でもさ~、対策委員会のみんなが聞いたらびっくりしちゃうかも?」
”ぐっ……”
ふふ。ここで否定しないって事はほぼ確定だね。間違いない。初手のインパクトが大きかったからか、全然取り繕えていない。なら、ここで一気に畳みかけないと。
「大丈夫だよ、心配しなくて。ちゃんと『そういうの』買ったからさ」
殊更にゆっくりとした動作であろうと意識して、「それ」を自分の首へ。自らが小柄であることは自覚してるけど、それを差し引いてなお、圧迫感のある首輪をつける。先生の目線が、逐一私の動作を追う。ただ抱えていただけの首輪を、私の首へ近づけていくその一挙手一投足を。
その目線を浴びるとなぜか背筋にぞくぞくとした快感が奔った。ここまでは、経験済み。一人でなら。
でも、今日の私には「その先」がある。
首輪の先、繋がった
なぜホシノが? どうしてこんなことを?
そんな戸惑いと、失望? ……ちょっと違うか。理解できない。でもやって上げた方が良いのかも。それで
それが、良い。その目線を『甘さ』だと。『甘美』という言葉の意味を、意識に刷り込まれる。脳髄が、そう認識している。……人の目があるだけでこんなにも差が出るなんて、思ってもいなかった。
「うへ~、先生。お願い、したいな?」
対策委員会としてのリーダー。アビドス唯一の三年生。
それに不満を持ったことは無い。不満じゃないけど、どう表現したらいいものか。
その責任を、一瞬だけ降ろしたい。ずっとじゃなくていい。ほんの少し。背伸びが疲れちゃったときにだけ。誰か、信頼できる人へ、手綱を預けてみたい。そんな欲求に付き合ってくれる先生には感謝しないとね。
ふと思う。
……本当に首輪を嵌められたのは。私なのか先生なのか。加虐と被虐の狭間で思考が揺れて。より一層、脳に甘さが広がる。舌じゃない別の器官で味わう、格別な
うへ。癖に、なりそう。かも。これ。