この先ノーミスならお釣りが来るので続行です(吐血) 作:呂斗六
目標、7月にある魔物襲撃イベントまでにアイン{勇者(予定)}を鍛え上げる。
その為にもまずは、アインと知り合わないといけない。
現状俺に友達は愚か知り合いすらいない、俺自身が作らなかったし、周りも平民の俺と喋るくらいなら大貴族の息子娘に媚び売った方が百億倍建設的なので誰も話しかけてこなかった。
残念ながらこの学園は平民も平等に学べることを謳いながら平民がいることがほぼ想定されてない。なぜなら、この世界の平民は勉強できる環境が全くないからだ。
幼少期から家庭教師を雇ってる金持ちが自ずと上位を埋め尽くし、枠が余ったらそこに入ることもあるかもね、みたいな分断を産んでいる。
俺は筆記はRTA知識で誤魔化し、実技でゴリ押した。これも親が猟師だったからなんとかなっただけで、農家だったら原作に絡むのは諦めてたかもしれないと考えると、やっぱり生まれの差ってのは大きい。
これは俺と同じ平民なのに圧倒的才能で合格してモリモリ縁を作る勇者がおかしいだけだ。
それはともかく、誰かにアインを紹介してもらうという手段はとれない。
まぁもし居たとしても、平民が平民に紹介する事を頼むなんてこの学園では意味のわからない事になる問題ない、正直俺に友人ができたところでイベントが発生してロスだし。*1
このゲームで勉強といったら図書館、通えば早いうちに知り合えるだろう。
実際行ってみたらドンピシャ。本と睨めっこしながらうんうん唸っていた。俺は勇者のことならなんだって知っている男だぜ!*2
なんか俺ストーカーみたいだな……
いや俺ストーカーだな、まあ俺は正義のストーカーだからセーフ…セーフか?まぁセーフだろ
……おそらくアインはテストで最悪に近い結果を取って焦っているはずだ。
そして勉強しまくり、その結果知力を必要としない襲撃イベントで散々な結果になる。初心者にありがち…というか俺が初見でそうなった。
それを防ぐには俺が軌道修正する必要がある、じゃあまずは話しかけて……
話しかけ……
はなし…………
女の子に勉強を教えるってどうやるんだ………?*3
え?だって知り合いですら無い相手だぞ?勉強を教わるじゃなくて勉強を教えるだぞ?初対面でだぞ?そんなの相手が男でもめっちゃ変な奴扱いは免られないぞ?それが女の子?そんなの勉強を口実にお近づきになれたらなムホホwみたいなやつじゃん。終わりやん。え、じゃあ話しかけない?いやでもそれはそれでステ足りなくて勇者が死亡したらそのまま世界滅亡じゃん打てる手は打っときたいじゃんでも不審者じゃん同じ平民なら行けるかなってワンチャン狙ってる奴みたいじゃんいやでもしかしいやこのままうだうたしても始まらん行けなんとかなるだろ恐るな行け!
「おい、そこ」*4
あああああバカばかばガバガバかあああばばばばばば
アホアホアホアホどんな声の掛け方じゃボケ
ほらアインさんびっくりしてるじゃん怯えてるじゃんおれのせいじゃん
会話!かいわつづけなきゃやばしぜんになにかないか
「さっきからうんうんうるさいぞ、ここは図書館だろう」
お わ っ た
はい…はい…本当に申し訳ないですこんな変質者が声かけて。
未来の勇者様と仲良くしようだなんておこがましいにも程がありました…
RTAなんて非生産的な事を好んでやる変な奴が人付き合いを上手くやれるわけがありませんでした……*5
え?テストの順位?いや一位でしたけど…RTAやる上で問題の答えは暗記してるので…
あ、これ学歴マウントか?あれ俺クソ嫌な奴じゃね?努力してる主人公馬鹿にするカスポジションじゃね?
あ…ああ……クっ!クソ!クソゲー!クソゲー!クッキ*6
「あの…勉強を…教えてくれたらなぁ……って」
……ん?
今、勉強を教えてくれって言ったよね?
いや待て、がっつくな…あくまでクールに……勉強を教えたくて話しかけたとバレないように……
「えっ…い、いいの!?」
生きてるゥーーー!帰って来れたーーー!
いやーナイスリカバリー!自分で自分を褒めてやりたい!試験で一位になっててよかったー!*7
これから一緒に勉強頑張ろうな!アイン!!
勉強を教えると言ったな、アレは嘘だ。*8
いや……勉強は教える…教えるとは言ったが……今とは言ってない!
というわけで、休日に二人で学園の外、森に行く。
ここで何をさせるかといえば、もちろんレベル上げ…ではなく、魔物や動物相手の経験を積ませる。
元のゲームだったら今の時期では外出して森に行く事はできなかった筈だが、そんなシステムめいたものはこの世界には存在しなかった。その代わりに入学したばかりの未熟な学生が森に行くのは危ないからという理由で行けない。つまり、ゲームのシステムは辻褄を合わせて実装されている。
だが、俺たちは二人とも平民なのと、猟師の息子の俺がいるという理由で許可された。
自分の行動で良くも悪くもシステム、そしてストーリーが変わりうるという訳だ。
まぁ俺がいきなり発狂してアイン殺したらそれだけで世界が詰む時点でさもありなんって感じだけどな、寧ろ世界は発狂しない俺を褒めるべきだろ。*9
アインに歩き方のアドバイスをしながら森の奥へ奥へと進んていくと、自ずと魔物に遭遇する、だが、俺は手助けはしてもトドメは刺さない。それは、勇者アインにやらせる。
一度殺すと、殺すという選択肢が入り込む。
そしてそれは、いざ殺さなければならない時、迷いという隙を消してくれる。
殺さないという選択肢はない。
生物である以上、殺さないで生きる事は不可能だ。
だから、殺しに意味を持たせろ、自分達が生きる為という意味を。
俺はそれを、猟師の親父と森にボッコボコにされながら学んだ。
コンプライアンスのコの字もない教育がどれだけバイオレンスか心で理解した。ありがとう日本。さようなら現代社会。ラブアンドピース。*10
変にカッコつけてアインにペラペラ語ったが、要するに『殺し合い』と目を逸らさず向き合わせたかった。
ゲームで主人公より実力があった筈の貴族共が襲撃イベントでピーピー言いながら逃げ回ってたのも、護衛まみれの安全な狩りがせいぜいで殺し合いの経験が全くなかったからだし、そんな中勇気で魔物に立ち向かった主人公が一目置かれることで好感度が上がりやすくなる。
だが、勇者がぶっつけ本番で敵を倒してくれる事を祈るのは他力本願がすぎるという事でわざわざここまで来たわけだ。*11
学園のある王都の近くの森なんてガッチガチに管理されてるから滅多な事起こらないのも都合が良いしな。エンカ率もゲームと変わらないならフリじゃなくてマジで出ない。少なくとも魔王が復活するまでは。*12
ある程度殺しの経験を積ませたところでさっさと引き上げて、次の休みからは一対一の実践形式で訓練し、平日は勉強を教える。
めっちゃハードワークだが、アインはテスト最下位という実績をちらつかせばキッチリこの特訓に食らいついてくるし、剣術はマジで才能ウーマンなので逆にこっちがボコされる。
ここらへんはさすが主人公と褒めてやりたいくらいだ。主人公って何?って聞き返されるのが目に見えてるので言わないけどな。
そんな特訓を続けること数週間、とうとう襲撃イベントが起こりうる日になった。
ここで今後の動きが全て決まるといっても過言じゃない、なにせこの世界では襲撃イベントが起こらない可能性がある。その時はこの先全てがアドリブになる。流石にここの好感度バフを取り逃がすといよいよ縛りプレイの域に突入する。ぶっつけ本番でそれは想像しただけで吐きそう。
負けて死んだ時の事は…まぁ考えなくていいか、勇者が死ねばどうせ世界滅びるし。
そんな心構えで過ごしていると、学園中から爆音、そして悲鳴が聞こえてくる。
これは…襲撃イベント発生!やったぜ!これでオリチャー回避!運が向いてきた!じゃあここを勝てたとして次は…
そんな狸の皮算用をしていたら、アインが剣を持って走り込んできた。
え?皆が魔物に襲われてるから一緒に来て?いいよ♡
それじゃあ本来負けイベのチュートリアルボス戦、いくぞー!!*13
ローア
RTAで培われたゲーム脳とこの世界の狩りで培われた死生観が悪魔合体している
次回 勇者アイン視点