聖なる雷を身に宿せ   作:INUv3

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《聖剣》

…夜、ヨーロッパ南部・アルプス山脈麓の森の中の秘境…

 

「はぁ…!はぁっ…!はぁっ…!はぁッ…!!!」

 

くそ!くそ!何でだ!何でなんだ!

 

必死の形相で駆け抜けるその影は明らかに人間ではない

…いや、厳密に言うならば上半身だけならば

それは人間のものだったのだ、だが下半身がそうでは無かった。

男性の上半身を支える、下半身についているのは

人外のまるで複数の獣を合わせたような4本の脚であった。

 

「嫌だ!嫌だァ!俺は…!俺は…まだ、人間になってない!人間に戻りたいんだァ!」

 

息を切らしながらも、悲鳴に近い声を上げながら

怪物はひたすらに走る、走る、走りきる。

背後から迫り来る"ナニカ"から逃げるために

そして少しでも長く生き延びるためだ。

怪物は後ろを振り向く…そこには

 

「………」

 

「ヒィッ!?」

 

"ナニカ"は迫り来ていた…いや、"救済"が迫っていた

見た目は20代か、そこらであり

髪は金糸混じりの白銀であるが

顔立ちから、まだ年若い男だと判別が出来る

そこまでならば、普通の若者だろう…

だが、修道服(カソック)を身に纏った彼は片手に聖書を

片手には眩い光を放つ"救済の雷"が握られているのだ

 

「嫌だ!嫌だァ…!ジニダグナィィィ!」

 

怪物…いや、非捕食者は逃げる脚を止めない

だが、それでも…絶望的に背は縮まる…

 

「ーかのものを救いたまえーーーものを導きたまえーー救いを与えたまえ…救済は吾が手にある、救済は吾が手に行う、主よ、かのものを許したまえ、許しはここに…吾が雷霆(ケラウノス)にてーーーーーー"Kyrie eleison(キリエ・エレイソン)"」

 

その詠唱と共に、右手に握られていた

雷霆は、憐れなる非捕食者を穿ち

痛みを感じさせぬまま、塵も遺さず消し去る

その場で、"(雷霆)"は片膝を着き祈った

 

「呪うならば私を呪え…人間ヒトとして生を受けた者よ…主よ、かのものを天の国に…次なる生を…無垢なる魂に、AMEN」

 

そして、彼は、一筋の涙を流し

簡易的ではあるが、かの者が居た場に

十字架のペンダントを置き立ち上がると

もう一度、祈りを捧げてから

その場を後にした…

 


…数刻離れた場…


 

青年は、1人しか居ない森の中でも

小高い丘の上に居ながら

携帯端末を耳に手を当て

誰か、と連絡を取り合っていた

 

「(プルルルルル…プルルルルル)…バジス・ジュピテルだ、S級はぐれ悪魔、始末四則の獣の討伐任務は完了した、怪我は無い、あぁ、分かっているとも、我が友、ミカエルよ…あぁ、心配感謝する、俺はこのまま次の任務に…何?聖剣が盗まれただと…?聖剣と言えば、まさかエクスカリバー(カリバーン)か?」

 

青年の顔は先程の無表情とは違い

軽く青ざめる、困惑の顔であったが、取り繕い

そのまま、盗まれた物がなんなのかを聞いた

 

「…そうか…そうか…了解した、ミカエル、どうする?俺が出るか?…あぁ、任せておけ…お前の気持ちも分かる、彼女をそうするしか無かった事の理由も知っている…神は居ない、それも俺は知りながら、お前と共に居る…あぁ、気にするな…ふっ、泣くな、友よ、我らの主は死してなお、我らを見て下さる、だから、我らは責務を全うするのだ、そうだ、仮面でもいい、外見を見繕え……四大熾天使の1人、ミカエルよ、人類に聖剣確保は任せろ、とりあえず、ヴァチカン法王庁に戻るとする、我が友よ」

 

青年は、そう言うと、通信を切り端末を仕舞う

一呼吸置いた瞬間に、先程の黄色とは違い

蒼白い雷霆を纏い、空を駆けた

 


《ヴァチカン法王庁》


 

荘厳な廊下に、一つの足音が響く。

周りに居る人物は全て 彼 を見詰める

その姿は、現代の英雄、その姿は、希望の使者

その姿が、真なる英雄、その姿が、人類最後の守護者

その人物が、この場に居ることすら珍しい

日や、世界を飛びまわり、人類を護り続ける存在なのだ

幾ら教会勢力の中心部とは言え、彼が来たとなれば

それ相応の"天啓"があったのだと分かるのだ

だからこそ、皆、息を飲み、その時に備える

そして、その足音は、とある扉の前で止まる

廊下に負けず劣らず壮大であり神威を感じる

木製の扉の前に、足を止めたのだ

彼は、そのまま、扉に手をかけ中に入って行った

 

「…失礼する、バジス・ジュピテル、この度の招集に応じ、参りました」

 

室内もまた、豪華なものだ

しかしそれは、対異形に対する備えを

多く施した結果によるものである。

純金などの光るだけのものではなく、

清められた純銀があしらわれたレリーフが殆どであり

全てから神威や、聖光を感じる程なのだ

だが、青年はそれらを見る事なく、部屋の中央を見据える

ステンドグラスが施された天窓の下で

祈りを捧げる"女性"の近くへとアクイラは歩を進める

 

「…お待ちしておりました、バジス、どうぞ、私の傍に…」

 

彼女は、振り返り、青年に微笑みながら

そう告げた為、彼は"女性"の前に立ち

すぐ様、片膝立ちの姿勢で、顔を下げる

だが、その態度が気に入らないのか

女性は軽く、頬を膨らませながらではあるが

文句?を言い始めた

 

「もう!何故、貴方は何時も私の隣ではなく、正面に立つのですか!」

 

「…そうは言うが、ガブリエル様、俺は人間だ、天使の、それも最上位である熾天使の貴方様の隣など、恐れ多いのだ」

 

「では何故、ミカエルとは対等に接するのですかぁ!」

 

「ミカエルは最古の友であり、盟友です、ならば対等に接する理由は十分でしょう。」

 

そう、青年が言うと

更にガブリエルは不機嫌になる

そうして、何度も押し問答を繰り返すが

最終的に、青年が折れ、近くの長椅子に座る

 

「はぁ…!はぁ…!こ、今回は私の勝ちですね!」

 

「はぁ…だからと言って、俺の横に座るのは違うと思うのだ…(小声)」

 

「ナニカ言いました?(満面の笑み)」

 

「…何でもありませんよ。ガブリエル様」

 

「だから!その他人行儀な話し方を辞めてくださいよぉ!何で、私やラファエル、ウリエルには他人行儀で、ミカエルのみ友人のように接するのですか!不公平です!」

 

そう言った、彼女は駄々を捏ねる様に

隣に座っている、彼の肩をポコポコと殴るが

その一撃一撃が、普通の人間ならば複雑骨折物だが

生憎、隣に居る青年は特別製であるため差程問題無し

 

「貴女方、四大熾天使の三柱は俺との関わりが薄い、ミカエルは制約無しの盟約を果たした友なのです。だからこそ、彼とは対等である。それは未来永劫変わる事ない物であり、それこそが貴女方と友の違いなのです。」

 

「むむむむむむぅ…!」

 

更に頬を膨らませて、横に座る無表情の青年を見る

側頭部で総て纏めた白銀色の長髪に所々には金が混じる

正に完璧な美を体現しているかの様な髪に鋭い黄金色の目

肌は純白とは言えないが白人特有の白色でありながらも

身長は185cmと高身長であり、総てが黄金比の肉体

純粋なる自然な美を体感する程に健康的な若い男

神秘と神威を身体に内包する、人理の英雄である

並大抵の上級悪魔等では到底太刀打ち出来ないのだ

 

「それで、何故、俺を呼び出したのですか?」

 

「むむむ…はぁ…聖剣の件です。貴方にはこれから、日本へと旅立ってもらいます」

 

「日本?…まさか、日本にあるのですか?」

 

「はい、日本の駒王町に」

 

「…そこは、悪魔の土地では?」

 

「その通りです。ですが、今回はどうしても乗り込まねばなりません。聖剣の奪還の為に」

 

「もしや、強奪犯は悪魔ではない…?」

 

「はい、正解です。襲撃者は、堕天使幹部コカビエルであり。手引きした者は、追放者バルパー・ガリレイと、はぐれエクソシストである、フリード・セルゼンです。」

 

「成程、堕天使幹部ですか…《ジョーカー》は?」

 

「彼には別件を頼んであります。」

 

「了解しました、バジス・ジュピテル、これより日本に向かいます。」

 

「はい、お願いします、それと、今回は二名、教会の戦士を派遣します。」

 

「…俺にですか?それは正気とは言えませんね。医務室か天界に戻りましょう。」

 

余りにも上司、それも彼女より上は彼の盟友しか

居ない程の存在に、なんて言う物言いだと思うだろうが

この発言は、結構、的を得ている物である

何故なら、相手は堕天使幹部であり、太古の生き証人

聖書にも記された存在であり、大戦を生き抜いた猛者

その力は天変地異に等しいものがあるのだから。

並大抵の戦士では、正直居るだけ無駄であり

人質などにとられた際にはこちら側が不利となる

リスクとリターンが少な過ぎるのだ

更に、彼の神器(セイクリッド)は個人戦でこそ輝くのだ

 

「はい、正気です。その…引率を出来て尚且つ、実戦経験を積ませる事が出来そうで、手が空いていたのが、バジス位しか居ないもので…」

 

「……(ふぅ…落ち着け…よし)分かりましたが、俺は子守りをする程、歳を重ねてはありませんよ?」

 

「ふふっ後輩の育成は大切ですよ?」

 

「俺はまだ、25歳です。」

 

「とりあえず、コレは既に、決定事項です。聖堂にて二人は、旅券と一緒に待たせていますから」

 

「…了解しました、それでは失礼致します。」

 

バジスは渋々、受け入れ、長椅子から立ち上がると

今一度、ガブリエルの前に立ち、彼の神秘である

を呼び出し、それを両手に持ちながら目を瞑る

 

「我が(イカヅチ)は人理を導く物、我が(ヨロイ)は人理を守護する物、我が心臓(ロシン)は人理に捧げる供物、我が肉体は()に廻える物、我が誓いは変わらず。」

 

「はい、貴方を待ち続けます…貴方が、使命を果たすまで」

 

ガブリエルは、バジスの両手に被さる様

両手を広げ、彼の誓いを許諾する。

 

「使命、了解」

 

そして、バジスは目を開けると、そのまま聖堂を後にした

その後ろ姿を、ガブリエルは愛おしそうに見詰める

 


 

聖堂

 

教会の信徒にとってとても重要なその場所で二人分の人影があった。

一人は青い髪に緑色のメッシュが印象的な少女。

もう一人は、茶髪をツインテールに纏めた少女。

年頃は、十代半ば程であろう、普通の彼女らだが

問題なのは、その格好だった。

 

黒いボンテージの様な格好。

一応、教会の戦士の戦闘服である

見た目は、アレだが。

激しい戦闘でも着用者の動きを阻害せず

関節などの可動域を塞いだりしない

見た目は、アレだが。

普通の服と比べても強度のある逸品だ。

見た目は、アレだが。

そんな彼女らは、とある人物の到着を待っていた

 

「ねぇ、ゼノヴィア、貴方は彼と会った事がある?」

 

「いや…無いな、確か、休む事なく世界を飛び回っていると聞いている」

 

「本当に人間なのかしら?何と言うか、天使様の様な…」

 

「だが、人間である筈だ、何せ神器を持っているとデータにはあるからな」

 

「噂は本当…って事ね」

 

ツインテールの少女、紫藤イリナは

その可愛らしい顔を訝しめながら

自身が聞き及んだ噂話…いや、伝説を思い出す

 

曰く、歴戦の戦士達を返り討ちにした悪魔を一撃で葬った

 

曰く、反乱を企ていた邪悪な教団を一夜にして壊滅させた

 

曰く、大海に逃げた最上級悪魔を"雷"で大海事消し去った

 

曰く、人類最後の抑止力であり、守護者

 

その他にも多数の逸話や伝説があるが

大半は信憑性を疑いたくなるようなモノばかり

本人が世界を飛び回って任務をこなしている為

その噂話に尾鰭が付くのは最早仕方のないのだ

彼女の口は止まらず聖堂内に声が響き続けていた。

その騒がしい声が止まったのは、聖堂の出入り口である

両開きの木製扉が、重々しくも開けられた時である

 

「すまないな、待たせてしまった」

 

2人の騎士甲冑が扉を開けた、その隙間から

白銀色の長髪を後頭部で纏めた黄金色の目を持ち

丈の長い修道服に、これまた丈の長い青黒い外套

首から白の無地のストラを下げており

足元は機械的…いや、鎧の様な物であり

おおよそ、靴とは言えないレッグ防具である。

右手は聖書を抱えており、脚を見なければ正に神父である

 

「お前達が、今回の同行者…という事で良いのだな?」

 

「あぁ、私がゼノヴィアと言う、教会の英雄と共に任務に当たれることを光栄に思う」

 

「ふむ、君が…成程、絶世の聖剣・デュランダルの担い手、教会が誇るストラーダ殿の後継人か、初めましてだな、バジス・ジュピテルだ、数々の異名で呼ばれているが、俺は唯の人間だ、気にしないで欲しい」

 

「了解した、よろしく頼む、ジュピテル殿」

 

青年は脳裏に、90に近いながらも

全く衰えを見せない教会切っての人類代表の1人であり

生きた伝説と言われている、1人の老兵を思い出していた

齢87歳の老人でありながら、その肉体は正しく巌と

称する事が出来るほどの体躯を有しており

全盛期を過ぎていながら、その実力は未だに

教会トップクラスという怪物であり

自身を除いた教会十指に入る実力派の英雄

もっとも、当人は体力的に衰えたと

不満を漏らしていたりするのだが…

ゼノヴィアの顔を見て、彼の顔を思い出しながら

隣の緊張している様子のツインテール少女に目を向ける。

 

「君は、擬態の聖剣を扱う、プロテスタント教会所属の聖剣使いか、よろしく頼む。」

 

「は、はい!紫藤 イリナです!教会の英雄と共に任務を受けれる事、本当に感謝致します!よろしくお願いします!」

 

「そう、堅くなる必要は無い、我々は主に忠誠を誓う者だ、そこに上下は必要ないのだ、それに、今回は互いの背を任せ合う仲間なのだからな。」

 

「はい!その、ジュピテル神父は今回の任務に関する詳細はご存知ですか?」

 

「あぁ、場所は、日本国の悪魔直轄の土地、駒王町だ、そこに潜伏しているであろう堕天使コカビエルに奪われた聖剣の奪還を目標としている、この奪還の際に聖剣の"元"さえ無事ならば良いと言われている」

 

「その地の悪魔は、どうするんだ?」

 

「既に一報は入れている、向こうに着き、予約してあるホテルに荷物類を置き次第、顔合わせを行う予定だ」

 

「「…」」

 

「ふむ、不安5割不満5割といった所だな?」

 

悪魔陣営と天界陣営と堕天使陣営の三つ巴の対立を

内包するのが、彼らの属する聖書陣営と呼ばれるもの。

世界最大規模の信仰を誇る聖書の神を筆頭とした

他神話にも影響力を持つ勢力である。

もっとも、現在は過去の大戦で勢力全体が疲弊中

蟠りを残しつつも、表向きの大規模な衝突は

今のところ起きていない…そう、今の所はだ

そして、イリナとゼノヴィアの反応は

正直教会に所属するものならば珍しくはない

寧ろ、平然としたタイプが珍しいと言える。

しかし、事今回に限れば彼女らの態度は宜しくない。

 

「だが、心配する事は無い、今回の相手は悪魔の中でも話が分かりやすい方のグレモリー家だ、君達は相手方の機嫌を損なう様な発言をしなければいい、大体は俺が交渉をする。」

 

「不満は…まぁ、我々は絶滅戦争をする為に行くのではないのだ、とは言え、我々の立場は、天界からの使者に等しい。その為、態度一つが絶滅戦争の引鉄となりかねない」

 

「…分かっている」 「…はい…分かってはいます。でも…」

 

「それでもだ、このまま絶滅戦争となれば、地球上の無辜の民の9割が犠牲となる、それは我々、天界は許容出来ない問題となるのだ…もし、今回、我らが引き金となり、戦争が始まった場合、我々は良くて死刑だろう、君達は外見がいいからな…悪ければ他属の供物になるな」

 

「「…っ」」

 

「分かったならば良しとしよう。悪魔との交渉中、君達は手出無用だ、それと一応、今回の任務は上下関係こそ無いが、俺が引率となる、俺の指示には、ある程度従ってもらう、良いか?」

 

「「はい!」」

 

「よろしい、そろそろ出よう、俺が運転する車がある、それに乗り空港まで行くとしよう」

 

厳しいが、しかし正しい指摘でもある。

組織に所属する以上、上に行けば戦う以上に

言葉をやり取りする場が増えていくのだ

自分だけで仕事は完結せず、周りに頼らなければ

武器を振るうだけでは確実に死ぬのだと

そう、2人の年若い少女は学び、彼の後を着いて行った

 


 

そうして駒王町に着いた、彼と彼女らは

それぞれの荷物を片手に、空港を出ようとしたが

彼女らの目の前に立つ、青年は眉間を揉んでいた

その理由は…彼女達の服装にある。

 

「本当ならば車でと言いたいが、如何せん悪魔や堕天使が扱う攻撃に耐える事が可能な物は、俺が知る限り、一般的には入手不可だ、悪いが徒歩での移動となるのだが…君達、まさか、その服しか無い…とは言わないよな?」

 

彼の服装は、出る前に空港の更衣室で着替え

今は、紺色の半袖オープンシャツに

長い脚を隠す為の、グレー色のストレートパンツ

そして薄地の白のカーディガンを着用し

鋭い目付きを隠す為のグラサンをし

髪は総て後頭部で纏めた物になっているが

彼女らの格好は、ローマから出た時と

変わらない服装なのだ…

 

「む?何故、この服が駄目なのだ?」

 

「全てだ。ヴァチカン内や、その影響力のあるローマ市内ならば兎も角、外国でその格好をすれば、幾ら寛容な国、日本でも警察の厄介になるだろう」

 

「うぅ…ごめんなさい、ジュピテル神父。任務って事だから、このまま来ちゃったの…」

 

「いや、俺が先に伝えなかった事、そして、教会側の連絡不足が招いた事態だ、とりあえず、空港内には大体、衣料品店がある、そこで衣服類を整え、下着類は…そうだな、多分、その場で買えるだろうから、君達に任せる、今回の任務で使用される金は、全て俺が出すから気にする事はない」

 

本音を言えば、今すぐにでも

この二人を教会に送り出して、単独で任務を遂行したいが

その気持ちをグッと抑え、空港内に設置された

衣料品店へと足を向け、歩き出す…周りの視線を黙認しながら

意外と、空港内での衣服の販売は需要がある。

コレは、出先の気候が思った様なものでは

なかった場合にその気候に合った衣類を調達する為と

その国特有の衣服類を置いておけば、良く売れるからだ

 

そうして、女性物が多数取り揃えているブランドの

衣料品店に入ってきた三人の内、後ろの2人を見た

店員は一瞬ギョッと目を剥いたが、そこは客商売である。

プロ根性で無理矢理に押さえ込んで笑顔で応対を行う

 

「Welcome, customer」

 

「すまない、日本語で大丈夫だ、この少女、二人に似合う服を頼みたい、彼女達の服を入れていた、スーツケースが消えてしまってな。乗り継ぎの際に何処かで置いてきてしまってな、私のミスでね。HAHAHA!」

 

バジスは笑いながら、適当にでっち上げた嘘を着き

彼女達に非は無く、自身に非がある様に言う

これは、引率が彼だから、そう言ってるだけで

普段ならば、そんな事は言わないというか

単独任務ばかりで言う事もないのだ

 

「成程、それは災難でいらっしゃいましたね…ご予算の方は」

 

「このカードで頼む、彼女達に金額は伝えずに、オススメの品を見せてあげてくれ、この通りのカードだ、金額は気にしないでくれ」

 

そうして、彼が財布から取り出したのは

ブラックカード、上限無制限のカードである

命のやり取りをする職業であり、単独での高難易度任務を

淡々とこなし続けて来た為、金は有り余っている。

更に、基本的に使わないせいで貯金残高は

どんどんと膨らみ続ける一方であり

とうとう、このカードが手元に届いてしまったのだ

 

カードを見た店員は、早速動き出した

ゼノヴィアとイリナ、どちらも美少女である

嬉々として、店員は二人を店の奥へと連れて行った。

二人を見送った後に、店を出てから

通路中央に複数設置されていた

ベンチに腰掛けた後に、携帯端末を取り出し

これから行く、ホテルに遅れる事を、ホテル側に伝える

 

その後に考える事は、これから行うであろう、任務である

相手は少なくとも、危険性は高い存在であり

聖書にも載る程の堕天使側の幹部 コカビエル

聖剣を扱う事が出来る、はぐれ悪魔祓い、フリード・セルゼン

聖剣計画の主任研究者で追放者、バルパー・ガリレイ

ハッキリ言うならば、単独ならば楽な任務である

だが、今回は聖剣を扱えるとは言え

まだまだ新米な少女2人を引率しながら

彼女達を育成する事も主目標の1つなのだ

億が一も無しに出来る実力は持っていると自負しているが

それでも犠牲無しで終わる保証は無いのだ

…最悪の場合は、聖剣を確保するだけで留めよう

だが、そもそもの話をすると、相手の狙いが分からない。

聖遺物である聖剣を盗み出せば、当然ながら保有している

教会勢力に喧嘩を売る事になるのだ

如何にコカビエルが聖書に記された堕天使幹部であったとしても

自身を含む、教会の本気の精鋭が集結し、当てられれば

堕天使幹部如き、無事では済まないだろう。

更に、彼はその場で仕掛ける事無く

手引きした二人を連れて遠い地の日本

それも、悪魔が統括する土地まで来たのだ

 

(聖剣3振り…堕天使幹部…教会の追放者二名……駒王町…駄目だな、今の情報では分かる事が少な過ぎる…だが、確実にコカビエルはナニカを行うはずだ)

 

推察は出来るが、そんなあやふやな推察で動くほど

バジスは可能性を楽観視している存在では無いのだ

彼は推察を辞め、思考を閉じてから、前を向くと

丁度、二人の着付けが終わったのか

この、日本という国だからこそ、目立つ青髪と

艶のあるオレンジがかったツインテールが

視界に飛び込んできた為、ベンチから立ち上がり

衣料品店の中に再度、入っていく

 

「終わったかな?」

 

「はい!お二方の素材が、とても良く、スタッフ一同で誠心誠意、選ばせていただきました!」

 

そうして、バジスは少女達を見る

少女達が今どきの年齢時に着る様な服ではあるが

青年達は目のやり場に困るだろう先程の戦闘服よりは

比べるまでもなく、マシである。

その他にも20着程度の服が何個もの紙袋に入れられ

それを少女達は分けて、片手に持っている。

 

「それは良かった…良く似合っている、では会計を」

 

「畏まりました。お会計は██████円です」

 

結構な値段にはなったが、金には困っていない所か

教会の運営資金として二割を

孤児院などの教会が保有する児童養護施設の

運営資金として六割を寄付しているが

それでも、金はどんどん増えていき

稼いだ金額は10桁はとうに超えている

彼が金銭面に関心が無く無頓着である事が分かる

会計を終わらせた為、さっさと荷物を持ち

ホテルに向かって歩き出した

 


 

ゼノヴィアは慣れない格好に

おっかなびっくりといった様子であり

時折小走りになりながら二人に置いて行かれない様に

付いて行くので精一杯であった

彼女は、ある意味、箱入り娘であるのだ

幼いころから教会で暮らし、戦士として

高い戦闘への頭脳と高い実力を有するが

その一方で世間一般常識や年頃の少女としての

嗜みという方向性は相当、欠けているのだ

しかし、沈んでいた女性らしさという部分が

今回の着せ替え人形事件で掘り出されたという方が正しい

主に掘り起こしたのは、先程の衣料品店の店員たちであるが

彼女らの仕事は服を買ってもらう事である。

その点において必須スキルである、服を買ってくれるであろう

少女2人をその気にさせる事など、簡単だろう。

ゼノヴィアもイリナも方向性は少々違うが

絶世の美少女という点では疑うべくもない。

顔立ちは誰もが羨む程、整っており

その肢体は鍛えている事もあって

女性としてのしなやかさを有しながら

程よく引き締まっている。

自覚しているにしろ、していないにしろ

人生を捧げる程に頑張った要素を

褒められて悪い気はしないだろう

ふと、ゼノヴィアは鏡に映った自分を見た。

教会が誇る、戦士としての格好とは違う

年相応の少女としての己が、そこには居た。

十代の少女は、己の事であったとしても

全てを理解できていない事の方が多いのだ

だが、今、外を知った、雛鳥は空に憧れ

何時しか、優雅に空に羽ばたいていくだろう。

 


 

「…教会からの使者、リアス、本当ですか?」

 

「ええ。それも聖剣使いと、執行者の使者が、よ。この間連絡が来たの。」

 

「…内容は、どのような?」

 

「この町で活動するにあたり、私たちへの挨拶をしたいらしいの」

 

最初に話し始めたのは、姫島 朱乃(ひめじま あけの)、堕天使と人間のハーフであり、現在は転生悪魔である。

それに応えたのは、姫島の主である

リアス・グレモリーである

 

ココは駒王町は駒王学園。

その木造旧校舎を根城としたオカルト研究部の部室にて

リアス・グレモリーはその端正な眉根を寄せて唸っていたのだ。

現在部室には、彼女と彼女の女王(クイーン)である姫島朱乃と

この部活に新しく入った、兵士(ポーン)兵藤一誠(ひょうどう いっせい)だけである。

 

「それはまた…」

 

珍しい、と言葉にせずとも分かる様に語る

彼女らオカルト研究部は悪魔の勢力。

リアス・グレモリーの眷属たちで構成されている。

そして、悪魔と教会は犬猿の仲であり、殺し合う仲だ

本当に臨時ならば共闘となる事はあれども

基本的には顔を突き合わせれば殺し合いになる事は常であり

逆に、殺し合わない方が珍しいのだ

 

だからこそ、リアスは困惑していた。

連絡に寄こされたのはメールであった

物凄く簡潔に言うと、交渉したいから席を設けて欲しい

という物であり、その文法も教会から来たとは思えぬ程

敬語であり、真面目さを感じさせ

逆に嫌悪などの負の感情は感じられなかったからこそ

彼女は大いに困惑しているのだ。

 

「連絡相手は?」

 

「バジス・ジュピテルよ」

 

「ジュピテル…確か、教会が誇る英雄ですよね?そんな人が何故…?」

 

リアスからの情報を受けた、朱乃は己の頭の中にある

他勢力間の強力な存在の情報を引き出した。

他勢力であっても、名の知られた存在は少なからず居る。

悪魔側は、トップである四大魔王や大王家の悪魔など。

或いは、大怪我すらも一瞬で治癒する事が出来る

フェニックスの涙を造り出せるフェニックス家の悪魔などだろう。

天界側と言えば、四大熾天使に熾天使

天界の切り札ジョーカーに生きる伝説。

そして、人類最後の英雄(ラスト・ガーディアン)であろう。

堕天使側なら、幹部陣と総督がコレに当たるのだ

その中でも特段のヤバさを誇る、人類の英雄から

届いたアポイントメントである

 

「交渉内容は書いてないわね、それに、メールで届いたのよね…」

 

「まぁ、メールと…珍しいですわね。」

 

「メール!?教会が!?」

 

兵藤 一誠はそれに驚き身を出した

 

「そりゃメールくらい使うわよ、教会サイドって人間多いもの。」

 

「いやそうじゃなくて、この部活って、メールアドレスあるんですか?」

 

「部活宛てではなく理事長に届いたわ、この学園自体が悪魔の影響下にあることを理解した上での行動でしょうね。」

 

「成程…既に相手方は分かっていると言う状態ですか。」

 

そう語る2人の顔は固い、だがそれも仕方ないだろう。

現在悪魔と教会、そして堕天使の3つの勢力は

休戦しているとは言え、対立状態にある。

そんな中で急に接触を図られたら

緊張の一つや二つはするものだろう。

 

「あの…その、英雄って、強いんですか?」

 

「分からないわ…目撃情報こそあれど、戦闘方法は全くの不明、勿論、その実力もよ」

 

「隠密性の高さから、暗殺者なのでは?と言われていますが、分かりませんね。強いて挙げるならば、全身を覆う防具を身にまとっている位でしょうか?」

 

「まぁでも、相手が敵対の意志を見せたら、此方もそれ相応の対応をしましょう、舐められたら終わりだものね。」

 

「リアス、穏便に、ですよ?」

 

「!分かってるわよ…」

 

「そ、そうなんですか…で、その教会の人達?は、いつ来るんですか?来週くらい?」

 

「明日よ。」

 

「明日ぁ!?」

 

驚愕する一誠に、リアスは頷きながら

頭痛を誤魔化すようにこめかみを揉んだ。

 

「はぁ…ただでさえ祐斗の様子がおかしいのに、こんな問題まで起こるなんて…タイミングが悪過ぎるわよォ〜…」

 

ため息と共にリアスはそう呟いた。

 


 

一方、教会勢力の3人はとあるホテルの前に居た

 

「「(絶句)」」

 

眼前に聳え立つホテルにイリナと

ゼノヴィアはあんぐりと口を開けた絶句していた

諸々の買い物などの準備を終え、食事を済ませた後

次はホテルにチェックインだと連れて来られたのが

二ツ星のホテルである。

一泊するだけでも結構な値段が飛んでいくのだが

バジスは、そんな事知らないと言わんばかりに入っていく

 

教会の戦士は、立ち位置としては

そのまま聖職者としての側面が強い

彼らの強みは、天界からの加護である。

これにより、身体能力の上昇や天使などが用いる

光力を光の剣や光の弾丸として用いる事が出来る様になる。

その力の根底にあるのは、信仰心である為

聖職者としての一面にも繋がってくるのだ

普通ならば、聖職者よろしく清貧さも求められ

欲の味に溺れた者でもなければ慎ましいのだが

バジス・ジュピテルは、結構変わっている

 

「衣食住に妥協を許した場合、我々、戦士は余裕が無くなる、そうなれば負けに繋がるのだ、特に寝床には妥協を許す事はしない、これから暫くは調査の為に動き回る可能性を加味すれば、体を休める場所を疎かにしては、支障をきたす。先程も言ったが、今回の調査は総て俺が持つ、気にする事はない。」

 

そう、後ろ姿のまま、話すと、彼はまた歩き出す

呆けていた二人は、慌ててその背を追って

ホテルの中へと足を踏み入れた。

吹き抜けのロビーに豪華なシャンデリアと

西洋の城を感じさせる造りだ

しかしその一方で、室内は静寂を保っており

僅かな吐息すらも騒音に感じそうなほどに凪いでいた。

バジスは、さっさとフロントのスタッフに話を通し

鍵を受け取ると未だに呆けている2人に向かって歩く

 

「君達にはシングルレディースを隣り合わせで二部屋取ってある、1つの部屋に寝たいならば今のうちに言ってくれ、ツインかコネクティングに変更してもらう」

 

「あ、いや、大丈夫だ…」

 

「す、凄いぃ…」

 

「そうか、では鍵を渡しておく、無くした場合はロビーに行き、フロントに話してくれ、俺の名を出したら大抵は何とかなる」

 

「「分かりました…」」

 

聞いているのかいないのか分からない様な

呆けた少女たちの反応だが、気にせずに

エレベーターの方に歩くと、少女達も着いていく

それを見た、フロントの女性は、親子?と思ったとか

 

程なくして、彼女らの部屋があるフロアへと辿り着いた。

 

「今日のPM.12:00より悪魔との顔合わせを行う。PM.11:00にはロビーに集合してくれ、では、俺は部屋に行く」

 

「あ、はい…って!ジュピテル神父!質問が!」

 

「聞こう」

 

「そ、その〜…格好はどうしたら?」

 

「修道服でもあれば、そちらを着せたが、無い物を強請っても無いものは無い、戦士の服を着てくれ」

 

「わ、分かりました」 「分かりました…」

 

それだけ言うと、バジスはエレベーターに乗り

自身の部屋があるフロアに行った

廊下に残された少女二人は顔を見合わせる。

 

「…とりあえず、ゼノヴィア、どっちの部屋にする?」

 

「特に差が無いのなら私はどちらでも構わないが…」

 

気疲れした、その言葉で2人は揃った

今日一日で、二人は教会に居るだけでは

絶対に経験できない少女としての

普通の生活を体験する事が出来たのだ

教会に居る時は清貧を求められるとしても

彼女らはまだまだ花の十代。

先は長く、しかし同時に今しかできない事が山ほどある。

少なくとも、今日の経験は決して間違いではなかったと

彼女ら2人は、思う事にした

 


 

時計の針は進み、深夜12時前

駒王学園の旧校舎にあるオカルト研究部の部室には

グレモリー眷属の一同が揃い客人を待っていた。

部室内の空気は、重い。常ならば

もっと和やかなのだが今夜は異様に張りつめている。

その理由は今から来る、存在に執着している

金髪の少年、リアス・グレモリーの眷属であり

騎士(ナイト)木場 祐斗(きば ゆうと)が原因である

彼はジッと扉を見ているのだが

その目には常にある穏やかな気風は欠片も感じられず

黒い炎のような憎悪が揺らめいているのだ

並々ならぬ雰囲気に、しかし周りが言える事は無い。

人は誰しも、その胸の内に何かしらを抱えている。

良くも悪くもそれが力になる事もあれば、足枷になる事もある。

今回は後者となってしまったのだ。

 

一分が十分に、十分が一時間に感じられるような時間

この時間を打ち破ったのは、12時の10分前にあった

部屋に響いた三度のノックだった。

 

「!…どうぞ!」

 

地獄に仏。

悪魔に手を差し伸べる仏が居るのかは疑問ではあるが

この気まずい空気を打破するチャンスが

向う側から、やってきたのは確かである

リアスは直ぐに入室の許可を出す。

 

「…夜分遅くに失礼する。」

「失礼します」 「失礼」

 

扉を開け、入ってきたのは三人組。

黒い修道服カソックの上に青黒いロングコートを羽織

その上に、無地の白のストラをかけ、サングラスをする青年

それから、彼の左右斜め後ろに付き従う

白いローブを纏った二人の少女だ

 

「まずは初めまして、Ms.グレモリー、この様な時間に我々と面会の機会を作って下さった事を感謝する、俺はバジス・ジュピテル、今回のみ教会側からの代表だと認知してもらって構わない、後ろの2人は後々、紹介しよう。」

 

そう言った、バジスは社交辞令とはいえ

見惚れる程に洗練されたボウ・アンド・スクレープで

彼ら彼女らに、敬意を示した

 

「え、ええ、よろしくお願いするわね。知っているみたいだけど、リアス・グレモリーよ、この子たちは、私の眷属達、同席しても良いかしら?」

 

「無論だ、我々の勝手に付き合わせてしまったのだ、それくらい事ならば許容する。」

 

サングラスの隙間から覗き込む眼光は正に黄金

側頭部で纏めた白銀色の長髪と合わさり

ジュピテルの人相は敵対者からは不評だ

だが、その受け答えは実に丁寧だ。

下手に出る事無く、しかし伝えるべき

感謝は確りと伝えている。

リアスに促され、バジスは彼女の対面のソファへと

腰を落ち着け残りの二人はソファーの後ろに立つ

 

「さて、貴重な時間だ。巻いて行くとしよう。我々がこの町にやってきたのは、任務の為だ。」

 

「…内容を聞いても良いかしら?」

 

「無論、その為に我々は来た、コレは極秘情報だ…ハッキリ言おう、これを聞いた場合、君達は部外者から、この事件の関係者となる」

 

「御託は良いわ、要件を言ってちょうだい」

 

リアスとバジスが静かに睨み合うがリアスは軽く押されている

そしてリアス以外の眷属達はと言えば

部室内に満ちる聖剣の放つ聖なるオーラに

完全に圧倒されていた。

夏だというのに一誠の肌には鳥肌が立っている。

そんな彼や他の眷属達を気遣うかのように

リアスは睨みながらも話を促した。

 

「…この感じ…赤龍…いや、良い、無駄な思考だ(ボソッ)…要件は、そうだな、何処までなら話せるだろうか…」

 

「(何なんだコイツ…!さっきからリアス部長を馬鹿にする態度で…!)」

 

バジスは、今回、初めて相対した彼女に

"何処まで"を話して良いかを迷っている

その理由は、想定以上に彼女らが弱いからだ

だからこそ、戦闘に巻き込まれないよう

顎を撫で、内容を吟味していたのだが

自分の主をバカにした様に見える

その様子に一誠の頭に血が昇る。

 

「ふむ、とりあえず、ここまでならば良いだろう。まず、今回。我々が伺った理由は、カトリック教会本部ヴァチカン、プロテスタント側、正教会側で保管されていた三振りの聖剣が強奪された後、この駒王町に襲撃犯と首謀者が、潜伏しているとの情報により、こうして来た訳だ」

 

「聖剣が強奪?」

 

「聖剣…!」

 

バジスの言葉を聞いた

茶髪の青年は、聖剣が強奪された事に疑問を抱き

聖剣という単語を聞いた、金髪の少年は反応する。

一瞬だけ、黄金の瞳がそちらへと向けられるが

今聞く話題でも無ければ関係も無い為スルー

代わりに、リアスが続きを促す形となる

 

「強奪?盗まれたって事よね?」

 

「そうだ。教会の保有する六振りのエクスカリバーの内、三振りが持ち出された。天閃(ラピッドリィ)夢幻(ナイトメア)透明(トランスペアレンシー)の三つだ」

 

「え…?エクスカリバーってそんなに数があるのか?」

 

それを聞いた、バジスはサングラスの隙間から

疑問を浮かべる、茶髪の青年、兵藤 一誠を見定める

(彼が、今代の赤龍の依代…だが、何故だ?ドライグは、騎士王の炉心であった筈だ、ならばエクスカリバーは星の内海に返され、現存する物は総て贋作と知っていても可笑しくない…まさか、ドライグはまだ覚醒していない?)

黄金の瞳が向き、気まずそうに顔を歪められたが

バジスは、もう一度、リアスへと視線を戻した。

 

「…彼は、新人なのだろう?ならば他勢力の事を、知らなくてもしょうがないな」

 

「えぇ、そうよ、ごめんなさい、まだ彼はこちらの知識が不足しているの」

 

「他勢力の聖遺物や神器を知らないのはしょうがないだろう、だが無知程怖いものは無い、しっかり教育は施す事を推奨しておくっと言っておこう、さて、今回は俺の知識ではあるが、補足しよう。」

 

バジスは出された紅茶を、音も立てることなく

スっと取ると、匂いを楽しみ、そのまま口にし、飲み込む

それを見た、後ろの2人と前に居る悪魔達は驚いた

敵勢力ともいえる悪魔の出した物を飲み食いできる

聖職者は多くないだろう。

ただ、こうして躊躇いなく口にするのは

相手への一定の信頼を示す上で効果が見込めた為である

 

「…エクスカリバーは一振りの聖剣だ、かの有名なアーサー王伝説に登場する、世界的に名を知られた代物を思って間違いじゃない、ここまでは分かっているだろう?」

 

「お、おう…」

 

「だが、本来のエクスカリバーは、過去の大戦の渦中で折れてしまっている」

 

「え?聖剣が折れる?」

 

「あぁ、折れてしまった7つの破片を現在まで続く人類が錬金術などの技術を用いて打ち直し、能力を一振り毎に分割したものが今のエクスカリバーとなる」

 

「へぇ~……アレ?錬金術で戻せるなら、何で一振りにしなかったんだ?」

 

「良い着眼点だ、少年。理由は主に二つだ、技術的な部分と政治的な部分がある」

 

茶髪の青年に向けた、左手の人差し指を

そのまま天井に向けてから親指を出す

 

「まず、技術的理由は、その時点では単純に一振りに戻す技術が足りなかったのだ、今の分割されたエクスカリバーは、折れた元々のエクスカリバーを芯としてその上から剣としての体裁をとったものだ。そして、政治的な理由だがコレは単純に教会が一枚岩ではないからだ」

 

「えっと……?」

 

「つまり、教会内でも、主…神の教えに対して各自の解釈が分かれているという事だ、その衝突は、言葉だけで止まらない場合がある」

 

教会という聖を司る癖に皮肉な物だがなっと

バジスは言いながら、彼に向けて苦笑する

 

「そんな者たちに、折れてしまった、とはいえ星が生み出した、神造聖遺物の一つが集中するのは、他宗派の教会に対して要らぬ軋轢を生む事になる。故に、数がある事を利用してそれぞれに均等に分配。そして最も力のある一振りは、とある名家に収められていたのだが…今は行方知れずだな」

 

「ええ!?じゃ、じゃあ、それも奪われたり…」

 

「それは無いだろう、あの家の当主しか扱えない代物なのだ、それに、当主はその代の最強が着くことになっているのだ」

 

「…知っている相手なの?」

 

「知らん、だが、もし奪われていたならば、俺が殺してでも奪い返すだけだ」

 

そうして、もう一度、紅茶を飲んだ

 

「さて、ここまでが、教会から教えられる事だが、矛盾点が存在している。」

 

「「「「「「「え?」」」」」」」

「!?」

 

「ふむ…誰も知らないっと、ならばコレはオフレコだ、まず、星の聖剣と言うのは三振り存在する、原初の星から造られた最強の聖剣・エクスカリバー、星の抑止力から造られた最高の聖剣・ガラティン、湖の乙女が1人の騎士の為に造り上げた至高の聖剣・アロンダイト、この内、エクスカリバーは隻腕の騎士・ベディヴィエールによって、アロンダイトは担い手である最強の騎士・ランスロットによって、湖の乙女に返却されたのだ、そう、ならば、後ろの彼女達が持つエクスカリバーは何なのだと言う話になる。」

 

「え、え〜っと…その残ったガラティン?って奴がエクスカリバーの元になったのか?」

 

「いや、ガラティン…此方で言う、ガラディーンは違うな、かの聖剣は壊れる事が無い…と言うより、他のエクスカリバーやアロンダイトも壊れる事は無い、そしてガラディーンは、天界の奥底に安置されている…俺とミカエル以外には侵入すら許されない厳密な場所に、な」

 

「それじゃあ、エクスカリバーは何なのかしら?」

 

「コレは俺の推測なのだが、現代のエクスカリバーとは、かの円卓の騎士を束ねたブリテン最後の王が使用していた、選定の聖剣・カリバーンだと思っている」

 

「カリバーン?」

 

「そうだ、かの騎士王が、1人の少女から騎士を束ねる王になった時に使われたと言われている。」

 

『な!?貴様!何故、彼奴の事を知っている!』

 

「ド、ドライグ?どうしたんだよイキナリ…」

 

彼の右手が赤の龍の腕となり

その篭手になったオーブから、声が発生した

 

「やはり覚醒していたか、二天の片割れ、赤き龍よ」

 

『応えろ!何故、現代を生きる貴様が、彼奴を知っている!』

 

「簡単な事だ、俺は神器が持つ記憶を保持している、そして、エクスカリバー・ガラディーンが存在しているならば、自ずと正体は分かるというものだ。そして誇り高き赤き龍、ドライグ、貴殿は王の炉心であった…そうだろう?」

 

『確かにそうだ…だが、あの時代には神器なぞ無かった筈だ…!』

 

「そうだ、この神器は特殊なのだ、他の神器とは違う、何せコレは神造兵装なのだからな。」

 

『!?まさか…!』

 

「それ以上はよそう、それに、余りにも話がそれ過ぎた、話を戻すと、カリバーンは騎士王が振るった後、壊れた為、湖の乙女に返却した、それを直し、神に渡したのでは無いかと思っている…まぁ、湖の乙女に聞かなければ分からないが、それを知る存在は居ないからな。実態は分からないと言えるだろう。カリバーンとエクスカリバーは同一視されているからな、まぁ性能に差はあるだろうが、どうでもいい事だ」

 

やれやれっと言う風に

バジスは肩をすくめながら

残った紅茶を全て飲みきる。

 

「ふむ、美味かった、感謝しよう。さて、これで持論混じりだが星の聖剣・エクスカリバーの解説を終わる。確かにエクスカリバーが無いならば、カリバーンを使うと言うのは間違いではないな、では、脱線した話を戻そう。」

 

そう言うと、またリアスを見据える

 

「エクスカリバーの強奪に関与した存在は、追放者バルパー・ガリレイ、はぐれ祓魔師フリード・セルゼン。この二人が教会側からの手引きと、並びに追手の殺傷を行っている」

 

「フリード…!奴も、絡んでるのね」

 

「そちらも何か、因縁がありそうだが、我々は関与しない、まぁ、フリード・セルゼンが居る理由は、聖剣を扱うには、因子が必要となるからな。恐らく、ガリレイ側からの依頼にこたえた形だろう。そして、一番の障害は堕天使幹部の存在だ」

 

「ッ!?…堕天使が関与しているのね…」

 

「そうだ、堕天使幹部コカビエル。聖書にも記された、神話の怪物が相手だ」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「さて…ここからは君達にとって、気分が悪くなるだろうが、言わせてもらう。はっきり言えば、教会は悪魔も堕天使も欠片も信用していない、確かに聖剣を盗んだのは堕天使側だ。だが、そこに悪魔が関係してない保証はない…何せ聖剣がなくなって教会が弱体化すればどちらにも利があるからな、だからこそ言わせてもらう、今回の事件に関与していた場合…我々、教会は全力を持って君達を倒す、例え、魔王の妹だとしてもだ」

 

「なるほどね…!」

 

怒りからか震え始めたリアスが

バジスを睨み付けながら口を開いた

 

「私を魔王の妹と知っていると言うことは相当上の方に通じていると言うことね。ならば、言わせてもらうわ。私はリアス・グレモリーは堕天使などとは手を組まないわ!絶対によ。グレモリーの名にかけて、魔王の顔に泥を塗るような真似はしない!」

 

それを聞いた、ゼノヴィアとイリナは

臨戦態勢に移ろうとしたが、

バジスは制する様に両手を上げ

2人の眼前に指を向けた、止まれの合図だ

 

「そうか…それを聞けただけでも、我々は嬉しく思う」

 

バジスは目を瞑りながら、ふっと笑うと

そのまま、手を下ろしながら組み直し

また話し始めた

 

「今回、我々、教会が君達に要求するのは二点。一つは、町内での戦闘行為。態々教会を襲撃し奪った聖剣を奪還されるとなれば、まず間違いなく、相手は表に出てくるだろう…それも、周りの被害を考慮せず…な」

 

「…貴方達だけで、勝てるのかしら?」

 

「無論だ、ハッキリ言うならば、後ろの2人は実戦経験を積むために連れてきただけで、コカビエル程度ならば、俺一人で十分なのだ」

 

「…そう、それで?もう1つは何かしら?」

 

「悪魔側の静観を所望する」

 

「ッ…ふぅーーー…一応、理由を、聞かせてもらえるかしら?」

 

リアスは青筋を浮かばせ、目の前に座る

バジス・ジュピテルを睨み付けるが

彼は平然と回答を叩き出す

 

「君達と堕天使、相性の問題だ。堕天使は、天使から堕ちた結果生じる種族だが、その存在は悪魔と天使、双方に弱点を突く事が出来る。Ms.グレモリー、そしてこの学園に在籍するMs.シトリーは、何れも現四大魔王の肉親だ。もし億が一、貴女方に何かが起きてしまえば今度こそ、三大勢力の滅びる様な絶滅戦争となりかねない。こちらとしても、それは何としても避けたいのだ」

 

本当ならば、後ろの2人の護衛として使おうと考えたが

悪魔側が余りにも弱い為、彼女らに預けていたら

2人が倒され、聖剣が強奪されるだろうと重い

それを辞め、彼女らに静観を求めたのだ。

自分達を軽んじられるような発言に

一瞬頭に血がのぼっていたリアスだったが

淡々と事実を語られてしまえば黙るしかない。

 

「… 自己防衛位なら良いでしょう?まさか、狙われて無抵抗で居ろ、なんて言わないわよね?」

 

「無論だ、其方には若いとはいえ、最強の一角、ドライグが居るのだ、倒してしまっても構わん」

 

「そう…わかったわ、でも、一つ目の条件は必要以上の破壊が認められたらこちらも介入せざるを得ないわ。管理者として、管理地を守る為に」

 

「了承した、では、コレにて会合は終わるとしよう。」

 

思ったよりも、荒れなかった。

両者の軋轢を知っている者ならば

ここまで大人しく終わるとは予想できない事だっただろう。

ただ、火種と言うものは誰しも予想していない所に

普通に埋まっているものである。

 

「さて…ここまでは会合だ、貴方の処分を言い渡そう、聖女・アーシア・アルジェントよ」

 

「「「「「!?」」」」」

「…っ!」

 

話題に上がったアーシアが体を竦ませる。

かつて聖女と呼ばれていた彼女は

今や魔女にして転生悪魔─祓魔師の怨敵なのだ

 

「アーシア・アルジェント?…あの『魔女』のか?」

「魔女…あの噂になってた『元』聖女の?悪魔と堕天使も癒せるっていう」

 

咄嗟に、茶髪の少年が庇うように彼女の前に飛び出す

その前に、二人の少女の脳天に拳骨が叩き落される。

 

「馬鹿者共、俺達は聖女に話をしに来ただけだ、戦争の火種になる様な物言いは辞めろ」

 

「い、いたぃぃぃ…」 「ぬ、ぬぐぐぐ…し、しかしっ!」

 

「反省の色なし、もう一度遂行するか?」

 

「「ご、ごめんなさい!」」

 

頭を押さえて蹲る青毛の彼女

ゼノヴィアが抗議の声を上げようとするが

拳を見せつけられて、何故か隣のイリナまで

謝罪したのだが

驚くべきは、彼女らの頭に拳骨を落とした

バジス・ジュピテルの速度だろう。

何せ、彼が、ソファーの後ろに動いたというのに

"一切、物音が無く、テーブルに置いていたカップすら揺れ動いていないのだ"

 

「(ま、全く見えなかった…!)」

 

最強の一角を内包する茶髪の少年も

魔剣を内包する神器を持ち

速度特化の駒である金髪の少年も

猫の妖怪として動体視力に自信がある銀髪の少女も

堕天使の血を持ち、最強の駒である黒髪の少女も

魔王の妹であり、上級悪魔である赤髪の少女も

誰も、反応出来なかったのだ…

 

先程まで確かに座っていた彼が

ソファの後方にいつの間にか移動していた。

真正面に居たリアスは、感覚ですら追う事が

出来なかったのだ。

すると、バジス・ジュピテルは

テーブルを挟み、アーシア・アルジェントの前に立つと

そのまま、頭を下げて、謝罪した

 

「済まないことをした、聖女アーシア・アルジェントよ、貴方様の事情を知らず話し始めた彼女らの責任は此度の任務監督である俺にある、後日、慰謝料と菓子折りを送らせてもらう。それで、この度の件を不問にしていただきたい、どうか、頼む…」

 

「い、いえ!大丈夫です!それより、憧れの英雄である、貴方様に頭を下げられる程では…」

 

「いや、私は所詮、暴力装置だ、人を癒し、身体を癒し、心を癒す、それを出来る存在は、貴方様だけなのだ、これくらいせねばならん…」

 

「と、とりあえず!本当に私は大丈夫です!」

 

「本当にありがとう…では、処分…と言うと、重いな…進路と言い直すか」

 

そこからバジスは

柔らかい笑みを浮かべながら

アーシアの前に座り、話し始めた

 

「まず、アーシア・アルジェント、君の異端認定取消を許可出来なかった事を謝罪しよう。」

 

「…!?」 「な!?」

 

「俺、バジス・ジュピテルは、君の異端認定取消の権限を持っていたが、それを許可出来るほどの判断材料が無かった、ココに、その内容を書いた書類がある、読むといい」

 

テーブルの上に1枚の書類を落とした

 

「君の異端認定取消助命は、トータル200以上は超えていた、その歳で、あの短期間の任期で、だ…君は相当、愛されていたっと言う訳だよ。アーシア・アルジェント」

 

アーシアは紙の裏を見ると

多数の人名が書いてある事に気付く

すると、茶髪の少年がバジスの右横に立ち

その襟を掴み、無理やり立ち上がらせた

それを見た、リアスは辞めるように叫んだ

 

「なんで…!なんで!お前はアーシアの異端認定を取り下げなかったんだよ!」

 

「一誠!辞めなさい!貴方は戦争を始める気!?」

 

「答えろ!」

 

だが、一誠は停めることなく

バジスの襟を掴みながら、右手で殴り掛かるが

その拳は左手で止められた…そう、左手でだ

 

「…危なかったな、少年、俺が止めなかったら、戦争が始まっていた可能性が高いぞ、そして、ゼノヴィア、イリナ、お前達もだ、俺が聖剣を止めなければ、少年を殺していたぞ、はぁ…説教が必要か?」

 

「は?」

 

一誠は横を見ると、バジスの右手で止められた

此方に迫っていた、2本の剣が見えたが

それを止めている、腕があった

 

「う、うわぁ!?」

 

「す、すみません!」 「…ごめんなさい」

 

聖剣を納めた2人は、すぐ様、バジスに謝り

一誠は危機的状況に置かれていた事に驚き

後ろに尻餅を着いたが、目の前に手があった為

それを掴むと、一気に立たされた

 

「うぉっと!?い、イキナリだなぁ…」

 

「さて、少年よ、俺の話を聞いて欲しいが、可能かね?…よし、では、アーシア・アルジェントの件は教会の本当に無駄潔癖な部分が悪い方向へと作用した結果だ」

 

「そ、それって、どういう事だよ?」

 

「彼女の神器【聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)】は、回復に特化している。この神器は神滅具(ロンギヌス)には無い特徴を持つ、それは種族宗派問わずに回復を可能とする点だ」

 

「それが、追い出された理由に何の関係があんだよ…!」

 

「上層部が疎んだのは、彼女が傷付いた悪魔を治療したから、とされているが本質は違うという事だ。奴らが疎んだのは、悪魔を治療したという事ではなく、聖女として象徴とされたアーシア・アルジェントが教会と敵対し、和解が無い存在である【悪魔】を治療した、という自分達の印象操作…まぁ教会の威信とかだな、ここら辺に都合の悪い事実が付いてしまう事だ。先ほど言ったが、聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)は種族問わずに傷を癒す。神器の特性、つまり生み出した神の決めた事だ、普通ならば悪魔さえ治す慈悲深い聖女として祀り挙げただろうが…結局のところ、上が好き勝手に自身らの立場が悪くなる事を危惧しているのは変わらないな」

 

どれ程、最初の心持が崇高だろうとも

思考あるものが集まり、時が経てば食べ物のように

経年劣化していくのが組織と言うものだ。

厄介なのは、この腐った組織構造が腐った食べ物のように

すぐ様、ごみ箱に捨てるような事が出来ない事。

腐った巨大な組織というのは

その内側に甘い汁を啜る(害虫)たちが居るからだ。

彼らは、なまじ権力がある分、余計にタチが悪かった。

 

「さて、話を戻すが、先程の通り、アーシア・アルジェント、君は教会には入れないと言う事を念頭に置いて欲しい、それで問おう、アーシア・アルジェント、君は自身の意思で転生悪魔になったのだろうか?」

 

その質問にグレモリー眷属全員が息を呑んだ。

なにせアーシアが悪魔になった時

彼女は一度死んだ状態だったのだから。

 

「…いいえ」

 

それに対してアーシアは正直に答えた。

それを聞いた、グレモリー眷属は全員、顔が沈んだ

彼女に否応なしに眷属にしたのは、彼等の我儘なのだから

 

「でも、後悔はしてません。私は、悪魔になって良かったと思ってます」

 

「そうか…ならば、ここで君への処罰、追討命令は必要が無くなった」

 

微笑んで言ったアーシアに、バジスも薄く笑った。

少なくとも彼女は笑えているのだ、ならば処罰する

必要は無い、異端審問官でも無いのだから。

 

「さて、仮にも執行人(エクスキューショナー)であり、祓魔師(エクソシスト)の俺が、言って良い物では無いが、アーシア・アルジェント、君の未来がより良い物になる様、祈っている。」

 

「仮にも人理の英雄が悪魔に転生したことを、祝うのは良いのか?」

 

「普通は駄目ですよね…」

 

「まあそこは考えないことにしましょう。」

 

その言葉にアルジェントが苦笑するが

バジスは見ないふりをして、立ち上がる

 

「アーシア・アルジェント、君が癒した悪魔、その存在には警戒した方がいいぞ」

 

「それは…どういう事でしょうか?」

 

「何故、悪魔は敵対、それも因縁が深い教会の、それも聖女に治されたか、何故、悪魔は安全な自分達の組織ではなく、君に治されたのか」

 

「!つまり、アーシアに助けを求めた悪魔は何かしらの狙いがあって接触してきたという事?」

 

「仮説の段階であり、憶測の域は出ないが、気を付けた方が良いだろう。」

 

そう言って、バジスは扉の方に歩いていく

リアス・グレモリーは、目の前の神父の

底知れなさに内心で戦慄を覚えていた。

戦闘力こそハッキリとはしないが

上級悪魔の目でも追えない速度の移動

情報から脳内で推論を組み立てる頭のキレ

こうして相手が友好的な姿勢を

取ってくれているから良いものの

本来は敵対組織の人間である事を

思えば冷たい汗が頬を伝った。

 

バジスが扉を出て、他の2人も出て解散っという流れだった

ーーーーーそれに待ったをかけた存在が居た

ガキンッ!という金属同士がぶつかり合う

甲高い音と火花が響いた

 

「ーーーーもう帰るのかい?」

 

その音の出所の片方はグレモリー眷属の騎士

木場 祐斗である、彼が神器セイクリッド・ギアである

魔剣創造(ソード・バース)】で生み出した剣を

片手に持ち、バジスに振り向けており

 

「…随分なご挨拶だな、悪魔(デーモン)。これがグレモリーの総意と言うことでいいのだな?」

 

無表顔で木馬の剣を手刀で停めたバジスから

尋常ではない量の聖光が漏れ出し、悪魔の肌を焼く

 

「ちょ、ちょっと祐斗!何やってるの!?」

 

自身の眷属の凶行にリアスが驚き

全力で止めにかかる。

駒王の地を預かるものとして

なにより眷属たちの『王』として

彼女には教会陣営との戦争に発展させる

つもりはかけらも無いのだ

 

「止めないで下さい、部長!僕は、聖剣に、エクスカリバーに復讐する為だけに生きてきた。こんな機会は、逃せない…!」

 

「成程、復讐か…Ms.グレモリー、コレは貴女、貴殿らの答えと受け取っても良いのだろうか?」

 

「いいわけないでしょ!祐斗!やめなさい!」

 

「止めないでください部長!」

 

「祐斗!?何をする気!?」

 

リアスの悲鳴を無視して飛び退いた祐斗は

その手に一振りの魔剣を出現させると

相対するバジスに斬り掛かる

普段の彼らしからぬ行動に、悪魔側も動揺。

ゼノヴィアとイリナも突然の事態に

帯剣していた聖剣の欠片へと手を掛ける。

だが…

 

「【魔剣創造】か…創造の速度は悪くない、だが、構築された武装の芯が完成していないならば、ただの塵芥だな」

 

「なっ…!?」

 

人差し指で停められと同時に、魔剣は崩れた

神器である魔剣創造は、その名の通り様々な

魔剣を創り出す事が可能である

その手数は、かなりのモノだが

その一方で創造されるのはあくまでも模造品の魔剣。

オリジナルには及ばない、それ故に手数と多様性で

勝負するトリッキーなタイプ。

目を見開く祐斗だが、咄嗟にもう一振りの魔剣を

創造しコレを振るって、バジスを倒そうとしたが

 

"眼前にある、指によって、剣を振ることを止めた"

 

「俺は、復讐と言うものを肯定はしている。それは原動力としては魅力的だからだ…しかし、幾ら敵対する悪魔とはいえ、犬死しに行くだけの者を死地に送る様な、愚かな真似をする気は毛頭無い」

 

「っ誰が…!「魔剣創造による魔剣は、所詮模造品だ。禁手(バランスブレイク)を果たし、魔剣を理解しているのなら、未だしも、この程度の性能では如何に欠片といえど、本物の聖剣には到底抗えん。何より、頭に血が上った今のお前では、聖剣を扱う存在には一合と持たずに切り殺されて終わる」ッ、黙れェッ!!!」

 

激昂のままに、祐斗は、目の前の指を退け

猛然とバジスへと斬りかかっていた。

彼の憎悪は、深くどす黒い。

怒りと憎しみ、悲しみが彼の目を曇らせて

その剣筋を大きく荒れさせていた。

 

そしてこれを、真正面から捌いていく。

全てを人差し指のみで崩し切る

折るのでは無い、崩すのだ

当然、周りは止めようと動くのだが

二振りの魔剣を砕かれようとも

即座に新しく創造し直して斬りかかる祐斗と

そんな暴走する彼を真正面から指1本で

押し留めるバジスの間に飛び込む事は難しい。

悪魔側は仲間意識があるから手を出すなっと

予め“待て”を指示していた為、聖剣を扱う少女2人は

静観していた。

 

「ーーーー時間の無駄だ、終わらす」

 

そう言った瞬間に、祐斗の身体に…

いや、四肢の重要な関節部位に4つ穴が空いた

 

「ーーーーえ?」

 

その一瞬の攻撃に、痛みは無い

その穴から血は流れない

 

「祐斗!?」

 

「木場あああ!!!」

 

バタッと大の字に倒れた木場に対して

オカルト研究会の部室に悲鳴が上がる。

その悲鳴になんの興味も示さずバジスは

音もなく祐斗のほうへと歩み寄った。

 

救済()を欲するのか?それとも試練()を欲するのか?選びたまえ、少年」

 

そう言うと、膝立ちし、祐斗の首に左手を当てる

ただの他人が、見れば、神が地に付する人間に

救済を与えんとする光景に見えただろう

 

「我々は教会 [人間に仇なす者を許さぬ] 少年、君はどちらだ?」

 

バジスの右手から、光が漏れ出始めた

無表情による、死の宣告であった

人界を守護し、人外を屠る者の殺意の表れ

 

「僕は…ッ!僕はァッ…!」

 

「そうか…了承した、君は試練を選んだ」

 

そう言うと、バジスは何も纏っていない左手で

パンッと言う音と共に、祐斗の首に一撃を入た

祐斗は、大の字で倒れて、身動きも取らなくなった

どうやら、気絶したらしい。

祐斗が沈黙した事を確認したバジスは立ち上がり

呆気にとられているリアスへと向き直った。

 

「騒がせて申し訳ないな、Ms.グレモリー。少々手荒くなった」

 

「…はっ!いや、その…ごめんなさい。まさか、祐斗が襲い掛かるほどに追い詰められているとは思わなくて…怪我は無いかしら…?」

 

「怪我など無い。先ほども言ったが、俺は復讐を否定しない。ただ、今の彼は冷静じゃない。そんな状態で、悪魔に対し強力な効果を持つ聖剣へと挑めば、どうなるか火を見るよりも明らかだからこそ、止めただけだ」

 

「でも……そう、ね。事を荒立てずに治めてもらったもの。感謝するわ」

 

「ならば、よく話し合う事うといい、彼が何を抱えているか知らないが、怒鳴ろうと口をつぐもうと、辛抱強くただ聞いてやれ。その上で、結論を示してやればいい、此度は帰らせてもらう」

 

ではな、と悪魔側に厳しい目を向ける

少女二人はバジスに付き従う様に部室を出ていった。

波乱はあれども最悪には至らなかったのであった…

 

 







全神の権能(ケラウノス)


ケラウノスとは、ギリシャ神話に登場する全能神・ゼウスが扱う
タルタロスから解放した、キュクロープス達に造らせたという
伝説の武装であり、雷そのものだが、彼が扱うケラウノスは
性質が変化していた、彼が扱うケラウノスは厳密に言うと
1つの神器では無いのだ、内包されている神器は3つである

人理を守護する盾(イージス)


永久不滅の星炉心(アダマスタイト)


全知全能の雷霆(オムニシテント・ケラウノス)


イージスは彼の鎧であり、神界最高の盾である
その強度はありとあらゆる、攻撃を拒絶する物であり
一部に纏っただけでも、その部位の身体能力を
格段に上げる、神造兵装である。
全て纏った場合は、オデュッセウスと似た鎧となる
白銀の上に青と赤のラインが特徴的な色である。

アダマスタイトは彼の心臓でありイージスを動かす為の
無限の動力源であり、人間の意志によって生成される
エネルギーが上下するものである。
本来の用途である、アダマスの剣として使用可能だが
その場合は、心臓部に疑似心臓が発生する。

オムニシテント・ケラウノスは彼が武器として扱う
全能神・ゼウスが扱う雷そのものである
それ以上でも、それ以下でも無い、形状不明の武装である

秘技:星光を絶やす雷霆(スター・ブレイク・ケラウノス)
オムニシテント・ケラウノスの権能を使い
物凄い範囲に巨大な落雷を落とす秘技であるが
範囲を絞る事が難しい為、使われない
最大レンジは大都市一個分以上

絶技:其、星を導く雷霆(ワールド・インデックス・ケラウノス)
オムニシテント・ケラウノを
全力で使用し世界を切り裂く絶技
星炉心である、アダマスタイトを
オーバーヒートさせる程の出力を放出する
簡単に言えば、全て等しく無に帰すである
原初の雷の再現。壊せぬ物は無い
大気中の魔力を力の源とするため
魔力濃度の濃い場所ならば魔力消費は微々たるもの。
アダマスタイトがオーバーヒートを起こす為
心臓が止まる、いわゆる自爆技である

概要
全神の権能は実際は、神器では無く、権能であるが
過去未来現在を見通しても一度も使用者が居ない
その理由は、権能に耐えうる器が居ないからだ
全知全能の神、ゼウスの権能を、その身に宿すとは
すなわち、神と同列の肉体を持たなければならない
だからこそ、使用者は居らず、覚醒する事もなく
感知される事もなく、何代も続いてきたの権能である



名:バジス・ジュピテル/雷神

性別:男性 神器:全神の権能(ケラウノス)

地域:ギリシャ 属性:中立・善・天

身長:185cm ︎︎体重:75kg

誕生日:8月1日 ︎︎年齢:25

種族:人類 ︎︎ランク:英雄

一人称:俺 二人称:君/○○(呼び捨て)
 
好きな物:特になし。
 
苦手なもの:特になし。強いて言えば、とある熾天使
 
得意なこと:戦闘
 
天敵:神々

Cv.保志総一朗
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