「まさかこんな所で再会するなんてな」
「そうね………」
長い黒髪の少女“マーヤ・ディゼル”とまさかあんなところで再会するとは、八雲は夢にも思わなかった。
シンジュクゲットーでの戦闘から数日。
ひとまずケンプファーを隠せれそうな廃墟に隠し、ゲットーで身を潜めていた。
「とりあえずは食料をどうにかしないと」
これまでは陽菜たちから少し食料を分けてもらっていた。
その中で日持ちする食料は残すも、この数日で食べてなくなった。
「はぁ………本当に自分が情けない」
これまで自分より年下の女の子から食料を分けてもらい、いざそれがなくなると何も出来ない。
そんな自分を自嘲しながらコックピットのシートに体を預ける。
そもそも八雲だって働いて金銭を得て食料を手に入れたいと思っている。
しかし、身分を示せるものがないのだ。
そのうえ“八雲・アルステア”という名前から、ブリタニア人と日本人のハーフであると思われるかもしれない。
では名前を変えればと思うだろうが、折角授かった名前をそんな簡単に変えるのは嫌だ。
「といってもこんなんじゃざまあないな……」
そうして考えるもいい案は浮かばず、八雲は機体から降りる。
そして、八雲は気分転換にとブリタニア人が住む租界へと足を踏み入れる。
「(こうしてみると綺麗な街だと思うけど………)」
荒廃したゲットーとは真逆の街並みを見渡す。
この街ができた裏側にはかつての日本を壊したことで出来た。
「(前世が日本人である身としては複雑だな………)」
そう思いながらとりあえずは街を散策する。
「やめてください!」
少女の拒絶の声が耳に入り、何事かとこの方向を見る。
そこには金髪の学生と思われる少女が、いかにもチンピラだと言わんばかりの3人組の男に絡まれていた。
「そんなつれないこと言うなよ~」
「そうそう。ちょっと遊ぶだけだからさ」
「楽しいぜ~」
嫌がっている少女にチンピラ共はしつこく絡み、周りの人々は厄介ごとは避けたいのか遠巻きに見ているだけだ。
「はぁ……あれで日本人をよく侮辱できるな」
日頃から日本人を侮辱する割にああいう輩には何もしない周りのブリタニア人。
あれでよくそんなことできるなと思いながらも、八雲はこれ以上は見ていられないと少女の元へ向かう。
「なあ」
「あん?何だよ?」
「そんなに断られてるのによく誘おうとするなあ」
「ああ?」
「いや、あそこまで断られて誘おうとすることに感心するよ」
「てめえ、喧嘩売ってんのか?」
「別に売ってるわけじゃないけど、断られるのにどうして誘おうとするのかと思って」
「ふざけんな!」
激怒したチンピラは拳を振り上げて、こちらに向かって勢いよく突っ込んできた。
「危なっ」
八雲はかがんで振り下ろされる拳をよける。
振るわれた拳は空を切り、そこへ八雲は勢いよく頭を突き上げた。
頭突きはチンピラの顔に当たる。
「いった~」
八雲は頭を押さえながらチンピラを見る。
チンピラは顔に頭突きを食らい、バランスを崩して後方へよろめいていた。
「て、てめえ……」
「いつつ……まだやる?これ以上は騒げば警察が来るかもよ?」
八雲の言葉に遠巻きに見ていた人々が携帯を手に持っているのが見える。
「くそが!覚えてろ!」
捨て台詞を吐き捨て、3人組は何処かへと走り去っていく。
「やれやれ……なんともひねりのない言葉だなぁ」
「あの!」
「ん?」
「さっきは助けてくれてありがとうございます。私、ミレイ・アッシュフォードといいます」
「ご丁寧にどうも。俺は八雲・アルステアです」
「八雲っていうことは」
「………やっぱり気になりますか?」
互いに自己紹介を終え、ミレイは八雲の名前から日本人ではと思ったのだろう。
「ううん、珍しいと思っただけ。そうだ!助けてもらったお礼にお茶をごちそうしたいんだけど、いいかしら?」
「そ、そうだなんだ。けど、そこまでしなくても。それにそんな下心で助けたわけじゃないし」
意外と気にされなかったことにちょっと驚きながらも八雲は断りを入れる。
「いいの!それに助けてもらったのにお礼をしなかったら私が気にするの」
「しかし、そっちにだって用事とかあるんじゃないのか?」
「それはそうだけど………そうだ!ねえ、これから時間ある?」
そこから半ば強引にミレイに連れていかれていた。
ショッピングモールで手早く買い物を済ませると、八雲は買った荷物を持ってミレイに学園と思われる場所まで連れてこられた。
「それで何で手伝ってるんだろう………」
パーティーでも開くのかミレイは料理を始め、八雲は隣でその手伝いをしていた。
「ごめんね~実はある生徒達の歓迎会をするの。けど、人手が足りなくてね」
「うん、その歓迎会に何で部外者の俺が?」
この学園の生徒でもなければ関係者でもない八雲。
そんな八雲をミレイは問題ないということで学園に入れていた。
「折角だからそこで助けてくれたお礼をってひらめいたの」
「………強引にもほどがあるでしょ」
何故そんなひらめきが出るのか、八雲は頭を抱えたくなるも鍋をかき混ぜる。
そうしてたくさんの料理が完成し、会場に持っていく時だ。
「っ!?マーヤ!?」
「嘘!?八雲!?」
そこでどういうわけかマーヤと再会したのだ。
「あれ?知り合い?」
「まあ………」
「ちょっと………」
互いに気まずそうにしながらも答え、3人は会場であるホールに料理を持っていく。
ホールにはテーブルが並べられ、数人の生徒がいた。
「あれ?会長、誰ですその人?」
生徒でもない八雲がいることに青い髪の男子生徒がミレイに質問する。
「彼は恩人なの。買い出しで質の悪いナンパに絡まれてた時に助けてくれたのよね」
「ええ~!!大丈夫だったんですか?」
「うん。彼のお陰でね」
「そうなんですか。会長を助けてくれてありがとうございます」
「いや、そんな大したことは……」
オレンジ髪の女子生徒にお礼を言われて八雲はちょっとたじろいでしまう。
「そういえば自己紹介まだでしたね、私、シャーリー」
「俺はリヴァル。よろしく」
「………ニーナです」
「ルルーシュだ」
「………カレンです」
「どうも、八雲・アルステアだ」
「八雲?」
互いに自己紹介を終えた中でカレンは八雲という名前に反応する。
「まあ、変わった名前だけどよろしく」
もしやと思ったが彼らは気にすることなく普通に接してくれた。
「あの、シャーリーさん。この料理をテーブルに……きゃ!」
そこへピザの箱を持った車いすの少女がホールに入ってくるも、前に立っていたマーヤにぶつかってしまった。
少女の手から離れたピザはマーヤが落ちる前にキャッチした。
「あ、ごめんなさい!」
「私は大丈夫なのですが、料理は……」
「それは平気。落ちる前にキャッチしたから」
「ありがとうございます。てっきり落としてしまったかと」
「ミレイさん、あの子は?」
「あの子はナナリー。ルルーシュの妹よ」
そのルルーシュはナナリーも歓迎会を手伝っていたことに驚いている様子。
こうして歓迎会が始まろうとした矢先。
リヴァルが用意していたシャンパンでトラブルが発生した。
当然ながらシャンパンはお酒。
ここにいる面々はまだ学生で未成年だ。
未成年の飲酒は確実にアウト。
リヴァルとしてはパーティーだから羽目を外してもという思いから持ち込んだだろう。
そんなリヴァルにシャーリーは止めようとシャンパンを没収しようとする。
奪われまいとリヴァルはルルーシュにシャンパンを投げる。
突然のパスにシャンパンをキャッチしたルルーシュに、今度はルルーシュからシャンパンを没収しようとする。
その時何度も振ってしまっていたため、シャンパンから中身が噴出してしまった。
中身は不幸にもカレンの頭へとかぶってしまった。
そして、歓迎会は中断して掃除と洗濯をすることになった。
カレンはかぶってしまったシャンパンをシャワーで洗い落としに。
ミレイとシャーリーはカレンの制服を洗濯。
ルルーシュは替えの着替えを取りに行っている。
ホールには八雲とリヴァルとニーナとナナリーが残っていた。
「いやはや、こういうことよくあるの?」
「ないですよ。でも、カレンには悪いことしたな」
「まあ、羽目を外したいって気持ちわかるけどね」
「でしょ!八雲はわかってくれるか~」
「でも、お酒はよくないよ」
「それは確かに」
「うぐっ!反省してます……」
「掃除用具持ってきました。あれ?皆は?」
掃除用具を取りに行っていたマーヤは八雲達しかいないことに質問する。
マーヤにカレン達のことを伝えると、リヴァルは掃除用具を受け取ると掃除に向かう。
八雲も掃除用具を受け取ると、リヴァルと一緒に掃除を始める。
そして、掃除を終えたところで、洗濯が終えたミレイたちも戻ってきた。
「料理どうしようか?温めなおす?」
「大丈夫じゃないですか。カレンも戻ってくるでしょうし」
「そうしようか。八雲もごめんね、お礼のはずが迷惑かけちゃって」
「気にしてないよ、こういうのもいいもんだしな」
「ありがとう。そういえば八雲って……」
「えっ!?マジかよ!」
八雲へ質問しよとした時、リヴァルが驚愕の声をあげた。
「どうしたのリヴァル?何かあったの?」
「会長!それが大変なんですよ!マーヤ、テレビつけて!」
「どうしたの、急に?」
リヴァルの慌てように首をかしげながらも、マーヤはテレビをつける。
『速報です!政庁よりクロヴィス殿下が薨御されたことが発表されました』
テレビに映るキャスターから総督であるクロヴィスが亡くなったことが報道された。
「………ふむ」
キャスターはクロヴィスがシンジュクゲットーでテロによって亡くなったことを伝えると、政庁からの会見が始まることを伝えると再度亡くなったことを話す。
流石にこの状況で歓迎会を再開するというわけにはいかなかった。
お開きになり、八雲も学園の外に出ていた。
「なにかが動き出す気がするな。俺も機体の所に戻るか」
土産としてもらった料理をいれた容器をもって、八雲は機体の所に戻るのであった。
「いた!ちょっと待って!」
戻れるのであろうか。