機体を隠しているゲットーへ戻ろうとした矢先。
八雲は急いで追いかけてきたと思われるマーヤに引き止められていた。
「それでどうしたんだ?そんなに急いで?」
「貴方に……聞きたいことが……あるの」
急いで追いかけたせいか、息を上げるマーヤに八雲は場所を変えて話すことにした。
学園の近くでは余計な噂が立つかもしれない。
そうして公園へと移動した二人はベンチに座る。
「それで、何を聞きたいんだ?」
「………」
何を聞くべきか考えるマーヤ。
一方の八雲はマーヤが何を聞きたいか予想は出来ていた。
「シンジュクのことか?」
「………ええ。貴方もあの場にいたなら知ってるはず。あの場で起きていたことを」
あの日、シンジュクゲットーで起きていた虐殺。
八雲は今でも忘れられず覚えている。
「あの日、貴方はどうやって逃げ切れたの?」
「助けられたんだ」
「助けられた?……もしかしてテロリスト?」
「わからない。ブリタニア軍に撃たれる瞬間、青色の機体が助けてくれた」
「青色の機体………」
「それから隠れ過ごしているうちに突然停戦命令が出たんだ」
「そうなんだ。けど、無事でよかった」
「運が良かっただけだ。………俺からもいいか?」
「何?」
「その………陽菜たちのことだが」
口ごもりがらも尋ねられた質問に、マーヤは辛そうにしながら顔を俯かせる。
その様子に察した八雲は顔を背けて空を見上げる。
「………陽菜……皆………」
結局何もできなかったことに八雲は涙を流すのであった。
「その……すまん」
涙をぬぐった八雲は申し訳なさそうに謝る。
「ううん、気にしないで。それに……そう思ってくれて陽菜達も喜んでるはず」
「そうか……」
それから二人は一言も話さず、しばらくの間、静かな時間が流れた。
「今日はもう遅い。話はまた今度でいいか?」
「……わかった。八雲はこれからどうするの?」
「………わからん。何しろ身分を証明出来るものがないからな。まあ、どうにかするさ。それじゃあな」
八雲は立ち上がり、手を振りながら歩き去って行った。
それから周囲を警戒しながらゲットーに入り、ケンプファーの隠し場所へと戻る。
「ああは言ったけど本当にどうしようか」
身分示す物がなければ働くことも難しい。
「とりあえずは食べてから考えよう」
このまま考えてもいい案は浮かばないため、ひとまずもらった料理を食べることにした。
「………美味い。美味い!」
冷めてしまっているがそれでも料理は美味しく、八雲は口いっぱいに頬張る。
そうして食べ終わると、手を合わす。
「ごちそうさまでした。ぷはぁ~そういえばケンプファーの補給ってどうしよう」
食事を終えて一息ついた時、機体の補給のことを思い出す。
「もしかして自動ですることができたり……見てみよ」
コックピットを開くと、シートに緑色のコンパクトケースが置かれていた。
「これは………ハロ?」
警戒しながら恐る恐る手に取る。
手に取ったコンパクトケースを見ると、つぶらな瞳と緑色から八雲はハロを連想する。
コンパクトケースを開くと、ピピっと起動音が鳴って画面が映し出される。
画面にはGジェネに似たメニュー画面が映し出されている。
「生産、補給、破棄。それにこのポイント………思いっきりGジェネを基にしてるな」
生産のパネルをタッチすると、MSやMAに戦闘機などがずらりとコストが低い順に並べられている。
「補給と破棄は多分そういうことだろう。それにしても………このポイント」
ポイントの部分を見れば、そこには10400Pとポイントが映し出されている。
「どういう計算でこのポイントなのかは気になるが、今はこの補給だな」
補給のパネルを押すと、500P消費して補給しますかと画面が変わる。
「OKっと」
OKを選択してケンプファーを見る。
だが、ケンプファーに変わった様子はなかった。
「………補給されたのか?」
八雲は急に光るなど不思議な現象が起きるかと想像していた。
「ポイントは減ってるけど補給されるんだよな?」
徐々に不安になりながらケンプファーを見るも、一向に補給される様子はない。
「とりあえずは様子を見るしかないか。それにしても、残り9900ポイントか………。これじゃザクⅠすら生産できないな」
残りのポイントを見た後に生産リストを開いてどこまで生産できるか確認する。
「これは地道に稼ぐしかないか。今日はもう寝よう」
頂いた料理でお腹いっぱいになったこともあり、八雲はコンパクトケースを閉じるとコックピットに入ってシートに身を沈めて眠り始めるのであった。