天使使役系の美少女にTS転生しました。お金ください(切実) 作:寺西
気づいたときには見知らぬ孤児院にいた。
ヨーロッパ風の装飾の建物にて、謎のシスターの格好をした連中に抱っこされ、ドロドロに溶かされた離乳食のそれを口にあーん、されている時に俺は自分が転生者であることを知った。そして、ここが異世界であることをすぐさま理解した。
それから8年後、同時に自分がTSして白髪美少女になっていることを自覚した。鏡を見てみると、明らかに自分の容姿が他の連中に比べて別物なんだよね。
正直自分で言うのもなんだけど、俺ってだいぶ可愛い。
いや、ね。マジで。本当に可愛いんだよね。
さて、そんな事はさておいて、この世界には魔術なんて言う素晴らしい物があったりする。それが存在することを知ったのは転生してすぐだった。なにせ、孤児院のシスターたちが照明をつける時に指パッチンで火をつけていたのだ。それも日常的に。
だから、もしかしたら転生チートかなんかで自分にも魔術の才能があったりするかも、ついでに国家公認魔術師になって人生安泰ルート──だなんて期待に胸を躍らせていた時期が俺にもありました。
蓋を開けてみると、魔導書なんて一ミリも分かんなかったし、魔術式構築のところとか感覚的にすぎて意味不明だった。なんていうか、文系から見た数Ⅲみたいな感じなんですよね。流石に厳しいっす。
──と、そこで「あら残念」
だなんて割り切れたら良かったんだけど、話はそう単純じゃない。そもそも、俺が魔術師になりたかったのは、今の俺が孤児だからだ。両親なんている訳もないし、頼れる人もいない。当然そんな状況で一人で生きていけるわけがない。
さらに加えて、この近世ヨーロッパみたいな世界では、女にはほとんど権利なんてないし、職人になったりもしくはどこかの工場に勤めたりだなんて事は出来ない。基本的に女は成人したらどっかの男と結婚するのだ。
まぁ、結婚しようと思えばすぐにできると思うよ?
だって俺可愛いし。皮肉にも、面だけはいいんだ。
そこいらの男を篭絡するだけならちょちょいのちょいである。
……けどまぁ、嫌だよねー。
なにせ俺は外見では美少女なのかもしれないが、中身は男なんだ。野郎と子作りだなんて死んでも御免である。いや、本当に。
だからこそ、女でも働けて、加えて金もたんまり稼げる”国家公認魔術師“になるっていうルートを辿りたかったわけなんだけど……いかんせんなぁ、魔術の才能ないんだよなぁ。ああ、最悪だよ。
で、どうしよっかって悩んでいるうちに辿り着いたのが”天使召喚”ってワケ。
天使召喚っていうのは、ゲートを召喚して天使を呼び出す術の事。魔術とどう違うのかって言うと……まぁ、厳密には天使召喚も魔術の一種なんだけど、一般的な魔術と違って、複雑な魔術式を構築する必要がないってところが違うのかな。
ちょっとだけ分かりずらかったかもしれないけど、要はこっちの方が楽ってコト。
こっちなら魔術センス皆無の俺でもまだ扱えるし、極めれば魔術師になれるかもしれないって目論見があったりする。
とは言っても、ゲートを召喚するには簡単とはいえ魔術を扱う必要があるからなんとかそれだけを習得するまで結構時間がかかってしまった。けど、一度ゲートを召喚してしまえばこっちの物だ。ゲートを開いてしまえば対価を準備するだけで天使はこちらの呼びかけに応じてくれるのだ。
と言う訳で、最初は毎日コツコツと溜めてきた昼食のパンを10切れ捧げてみる。
出てきたのはのっぺらぼうの人間の形っぽいなにか。背中から羽が生えているから辛うじて天使だってことがわかるけど、ぶっちゃけかなり不気味な見た目である。
てっきり美少女天使ちゃんが出てくるのかと想像してたから、ちょっぴり落胆してしまった。
気を取り直して、話しかけてみたが返事はない。無言でだんまりだった。でも、ジャンプしろだとかしゃがめだとかの簡単な命令は相変わらず無言のまま従ってくれた。
……けど、”代わりに手紙を書いてくれ”なんていう高度な命令は聞いてくれなかった。尤も、それが天使の特徴なんだけど。
天使というのには意思がない。というか、意思がないからこそ多くの魔術師たちは天使召喚を嫌煙しがちなのである。だからこそ、天使召喚を駆使する魔術師として物珍しさでデビューできないかなー、って思ってたけど、まぁ現実はそう甘くはないわな。
より上位の天使になってくると、多少は”あのモンスターを俺と協力しながら倒せ”だなんて難しい命令も聞いてくれるようになってくれるらしいけど、それでも意思がないせいで多くの魔術師がその扱いに苦労するのだ。
……うーん、どうにかして天使に思考能力を持たせられないかな。
そしたらちょっとは魔術師デビューに近づくと思うんだけど。
▽▲▽▲
あれから8年後、つまりは俺が16歳になったころ。
ついに天使に思考能力を持たせることに成功する。
どうやったのかというと、天使を殺して別の天使のその残滓を吸収させて、個性を習得させて蓄積させていったのだ。
ちょっと何言ってるのかよく分からないと思うけど、というか俺自身もよく分かってないけど、4年ぐらい天使召喚と向き合っているうちに少しだけ面白い事を発見したことによって、なんとか意思を持たせられることに成功したのだ。
というのも、天使にも微妙に個体差があるのだ。
つまりは、僅かながらに”個性“なるものがあるって事。
だから、それを利用して一度天使を魔力まで分解する。人間の見た目からかけ離れているとはいえ、ちょっぴり罪悪感を覚えたので両手を合わせて南無散、と念じておく。
話がそれたが、一度分解した天使は、その天使の特徴を保存した魔力を遺す。そして、それを別の天使に吸収させてその天使の個性を継承させるのだ。
そして、微妙な個性を持った特徴を、何度も何度も天使に継承させていくと……じゃじゃーん、意思を持った天使の完成である。
あ、ちなみにこの最初に意思を持った天使ちゃんの名前はアルファね。ほら、ゲームとかでも開発段階の試作品ってαバージョンって言うから。ああいう感じのノリの名づけである。
えーっと、で、話がそれたけどさ……これ実は結構凄い事したんじゃない?
だって「おはよう」って喋りかけたら「おはようございます、マスター」だなんて返してくれるんだよ?さらには、「手紙を書いて」って言ったら拙いながらも、ちゃんと手紙を書いたりするんだ。
何気に会話できる天使ってこの世界初だと思う。
いや、マジですごいことだと思うんだよね。
マジで良く頑張ったな俺。やるやん。
……まぁ、どうして自由意思を持った天使が誕生したのかは分からないけど。まぁ、そんなのどーでもいいんだよな。ちゃんと正常に思考で来ているならそれでいいんだ。理論なんてどうせ後の世の人々が頭ひねってくれるやろ。知らんけど。
と言う訳で世界初(?)の自律思考型の天使を創り出すことに成功したわけなんだけど……だからと言って調子に乗ってはダメだ。まだまだ問題は山積みなのである。
というのも、この天使ちゃん、実はまだ顔はのっぺらぼうなのだ。それに加えて、戦闘力も皆無である。試しにその辺の犬と戦わせてみたけど、あっさり負けるくらい弱い。
うーん、これはまだ改善の余地ありだよなぁ。
このままじゃ国家公認魔術師試験を受けようにも、まともに戦うこともできないだろう。
それに、このα天使ちゃんの創り方的なマニュアルを世に出して特権として金を得ようにも、どうせすぐに技術盗用されそうだし、そうなったら俺には一銭も金が入らなくなるんだよね。
どちらにせよ、このα天使ちゃんを改善していって、β天使ちゃんにすることが先決だろう。
ずっと天使に意思を持たせられないか試行錯誤し続けてようやっと発見したところだけど、まだ調子に乗ってはダメだ。勝って兜の緒をなんちゃらって感じ。
自分を褒めるのはいいけど、褒めすぎるのもかえってダメなんだ。こう言うのはちゃんと目的が果たされるまで気を引き締めなきゃいけない。
というわけで、早速天使ちゃんの改善を進める事にしよう。