“枢相”イグラは敗残兵   作:チト 熟練見張員

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や……やられる……
最悪R指定が変わる…?どうせ、すぐ夜逃げするんだこの小説も……
そんなに……チアキとのイチャイチャが見たいのか……
投票してくる……お前らが……悪いんだぞ……
書いて……やる……殺られる……前に!

アンケート結果:デート回<圧倒的一位>


第八話 こちらアビドス重力戦線、異常なし(下)

万魔殿(パンデモニウ・ソサエティー)執務室。

施工の半分は終わり、一部は既に会議室や執務室などとして稼働し始めていた。

だが、主を留守にしているこの部屋は、賑やかないつもとは違い暗い影を落としていた。

 

プルルルル…

 

黒電話にコールオンが鳴り響く。

この部屋の主の趣味嗜好か、この部屋の多くの雑貨や小物はこういった古風な物が多く、固定電話もその限りではなかった。

だがこの部屋に、その受話器を取る者はいない。

 

『ジ…こちらH.Q.(司令部)どうぞ』

 

誰もいない部屋に、電話の向こう側から声が響く。

電話のスピーカーがonになった。

 

『イグラ先輩、エラーです。』

 

『あぁ、チアキでしたか。どうしましたか?連邦生徒会長でも帰ってきましたか?』

 

電話から聴こえたのは、チアキとイグラの声だった。

勿論、二人ともこの部屋にはいない。

ただ通信が中継されているだけだった。

 

『当たらずとも遠からずです。マコト先輩が急にゲヘナへ帰ると言い出しました…』

 

『??妙ですね、あのマコト議長がイブキとの時間を蔑ろにするなど考えにくいのですが…』

 

『イブキちゃんがイグラ先輩も呼びたいと言い出し始めちゃって』

 

『ホンホンホンッ、人気者は辛いですね!』

 

『笑っている場合ですか!?はぁ、全く…先輩、今どこにいるんですか?』

 

『今ですか…?それはですね…』

 

『《ウィー…ギギギ,ガガガガガガ…》

《オーライ…オーライ…ジャスト!》

《誰か掘削機もってこい!!切断機もだ!》

《ギガがガガガが!!》

《不味い!予備電源がつきやがった!!作業停止ッ暴走するぞ!!》

《路線を全て破壊しろ!!逃すな!!》

《ドカーン!ピピピ…チュドーン!!》

《くっそ,バケモンじゃねぇのか!!この骨董品め!!》』

 

イグラ側の受話器からは,遠くから微かに数人の怒声と,機械のような何かの駆動音、そしてゲヘナでは聞き慣れた爆発音が聞こえてきていた。

 

『……ナンニモシテナイヨ』

 

『誤魔化し方下手過ぎですか!?ほんっとに、どこで何やってんですか』

 

『……谷』

 

『いや谷って!?』

 

『だからアビドス生徒会の谷…』

 

『ッッ……はぁ、何やっているか知りませんけど、ヤバイやつって事だけは分かりました…』

 

『ゴメン!まじで!一生のお願いだから!今バカマコトにゲヘナに来られるとめちゃマズだから!!どうにかしてマコト達をゲヘナに近づけないようにしてくれ!!!何でもするから!!今度埋め合わせするから!!頼む頼む頼む頼む頼むっっっ!!』

 

『ああぁ、もう分かりましたよ!その言葉忘れないでおいてくださいね!!』

 

『ン“ン“…私が約束を破ったことがありましたか?』

 

『もぅ……約束ですよ。』

 

 

 

 

 

 

 

キヴォトス某所

ペロロンランドにて

 

はぁ、どうしましょう。

マコト先輩を引き止めると言っちゃいましたが、何か良い方法は…

 

「……マコト先輩」

 

「キキッ?帰る準備ができたのかチアキ、皆もう荷物をまとめて…」

 

「えっと、そのですねぇ?…何というか…」

 

「どうしたのチアキちゃん?」

 

どうしよう、何か言ってマコト先輩達をゲヘナに帰らないようにしないと…

 

「えっと…ううう…」

 

だめ、何も思いつきません!

週刊パンデモで培われた我が文才よ、なぜ今発揮されないんですかぁ!!

 

「もしかしてチアキ先輩…どこか痛いの?」

 

「…え?」

 

「チアキ先輩、さっきから目を瞑って唸ってるから…」

 

「あー……」

 

くっ、各なる上は仮病を使う他なさそうですねッ!

イブキちゃんには心配させちゃって申し訳ありませんが、

ええい、ままよ!!

もうどうにでもなって!!

私は万魔殿の書記長ですよッ!?*1

 

「あ、あばばばば!?き、急にお腹がーー!!!」

 

ドサリッ

ここでお腹を抱えながら、大袈裟に倒れるッ痛いッ地面がゴツゴツしてる!!

 

「チ、チアキ!?!?いきなりどうしたんだ!?」

 

「イダダダダ!!ま、マコト先輩…ッ今すっごくお腹が痛いです!!!」

 

「な、何ぃぃぃぃぃ!?!?」

 

「だ、大丈夫なのチアキちゃん!?」

 

「いや明らかに演g…」

 

「あー!!すっごく痛いですお腹が!!」

 

「マコト先輩!チアキ先輩がお腹痛いって…ッ」

 

「よよよしッ、すぐに万魔殿に帰ろうチアキッ!!」

 

違う違う…そうじゃ、そうじゃないッ!!

軌道修正軌道修正ッ

保ってくれよ、私の演技力ッ!!

 

「いやッlこれは直ぐにでも病院に行かないといけないやつですッ!!はいッ!!」

 

「何ィィィ!?」

 

「よく分かんないですけど、これ多分今日が峠ですッ!!」

 

「何の話をしているんだチアキィィィ!?!?」

 

「いや、だからどう見てもコレ仮b…」

 

イロハちゃんンンンン!!!

言わないで!今は堪えて!!

私は必死にイロハちゃんにアイコンタクトを…めっちゃ嫌そうな顔ッ!!

 

「とッとりあえず、きゅ、救急車に通h」

 

「チアキッ…もしかしてお前…」

 

えっ、まさか仮病がバレ…

 

「虚血性大腸炎かッ!?!?」

 

ゑ……………

きょ…なんだって???

 

「マコト先輩…キョケツセイダイチョウエンって何?」

 

イブキちゃん、今の一瞬で聞き取れたの???

 

「ああ、イブキ…虚血性大腸炎とはだな、血流が断たれたために起こる大腸の損傷を起こす疾患のことだ。女性に多い病気だな!」

 

そうなんですかマコト先輩??

やけに博識ですね…

少し見直しましたよ、ミジンコの爪の先っちょくらい。

 

「或いは急性胃潰瘍…いや、倒れ込むほどとなれば尿路結石の可能性も…」

 

いやホント、なんでそんなに詳しいんですかマコト先輩??

先輩もしかして、昔に救急医学部候補生とかやってました?!

 

「ええいッ、救急車など待っておれるか!!ヘリを呼べ!ヘリを!」

 

アカン

なんか収集がつかないくらい大事になっていっている!?

い、イロハちゃん!!何とかして!!

私はイロハちゃんにアイコンタクトをとる。

それに気づいたイロハちゃんは、再度ため息を吐きながらもこちらにサムズアップしてくれた。

イロハちゃん!やっぱり、持つべきは友ですね!!

 

「はぁ……マコト先輩。そんな大層な病気なわけないじゃないですか。」

 

「何?!どういうことだイロハァ!!」

 

「たぶん拾ったもの食べたとか、そんな辺りじゃないですかね?」

 

「そ、そんなことで、ここまで痛がるものか??」

 

「え、いや知らないですけど……」

 

ちょっとイロハちゃん、なんでそこで突き放すようなこと言っちゃうんですか?

そこは拾い食いで突き通して欲しかったですね!?

 

「ううむ…サツキはどう思う?」

 

「えぇ、私??う〜ん…そうねぇ…チアキちゃん凄く痛そうにしてるし…えっと…

 

 

陣痛……とかかしらね??」

 

じんッ………ゑ……

………

……。

 

えええええええ!?!?!?

ある訳ないでしょ16歳ですよ私!?

 

「ブフォッ!!!」

 

「な……なにぃぃぃ!?!?赤ちゃん?!生まれてくるのか!!?!」

 

生まれませんよ!?!?あとなに笑ってんですかイロハちゃん!!

なんでそうなるの!!?バカなの!?!バコトなのマカ先輩!?!

もしかして私、妊婦さんに見えるほど太ってたって言いたいんですか!?

キレますよ!?

もし仮にそうだとしてもッ!刻むでしょっ!普通もっと…段階をっ!!

 

「wwwwチアキがwwwじんwww

じゃあもういっそwww此処(ここ)で産ませましょうwww」

 

☆ 産 ま せ ま し ょ う ☆

 

お腹を抱えながらサムズアップするイロハ。

完全に呼吸困難である。

悪ノリしないでくださいイロハちゃん!!

 

「そもそも、チアキから生まれてくる赤ちゃんは誰が父親なんだ!?」

 

「え、そこ重要ですか!?」

 

「当たり前だろ!!どこの馬の骨ともわからん奴だったら、ギタギタにすり潰して炉に焚べてやる!!」

 

【悲報】存在しない夫が上司に半殺しにされそうな件ついて。

貴女たち、もう一周回って大喜利でもはじめてるんですか!?

 

「はっ!?まさか……イグラか!?」

 

何故そこでイグラ先輩がッ!?

 

「クソッ!イグラめ、妻の大事な時にどこほっつき歩いているのだ!!」

 

妻じゃないですよ!!

というか、イグラ先輩も女性なんですけど!!

なんなら私も先輩も未成年なんですけど!!

なんで子供ができるという発想になるんですか!?

大体、イグラ先輩は別に私と付き合っている訳じゃ………

……。

……。

 

……イグラ先輩と……?

 

 

 

「ブッフォッwwww!!!」

 

「さ、サツキィィィ!!!イロハもお腹を抱えて倒れ込んだぞッ!?!?いったい、何が起きているというのだ!?!?」

 

「ねーねー、チアキ先輩赤ちゃんできたのー?」

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

アビドス砂漠_未知領域

 

『生徒会の谷』にて

 

 

「イグラ枢相。掘削の全行程を完了しました。現在、空輸に向け各部位の解体を行なっています。」

 

「ホンホンホンッ、ご苦労。温泉開発部にしては珍しく有意義な仕事でしたね。初めての勤労を味わった感想は?」

 

「砂漠…サバク…ゲンセン…ドコ?」

 

「ホンホンホンッ!ダメそうですね!」

 

生徒会の谷。

かつて繁栄の栄華を極めた大アビドス。

その生徒会長達の魂の眠る場所。

アビドス砂漠の過酷な環境によって、過去いかなる侵入者も阻んできた、幻の遺跡。

 

「しかし……これがセンセの言っていた、非対称戦力兵器ですか……かつて繁栄を極めた大アビドスの王の名を冠した、失われし巨大兵器……。はてさて、あれが歴史にどの様な影響を与えることになるのやら…」

 

その生徒会の谷には今、ゲヘナの校章が刻印された掘削重機によって掘り返されていた。

 

「ぬわーっはっはっは!どうだね、我が部の実力は!」

 

「見事なものですよ、ものの数時間でここまでの大発掘を行うとは。特に、“ブツ”に戦闘以外でのキズがつかなかったのも高評価ですね」

 

「な〜に、戦闘云々はそちらの問題であろう。我が部としては、存じ得ぬことだ。」

 

「ホンホンホンッ」

 

イグラの隣に立つ温泉開発部の部長、鬼怒川カスミは目を細めてそう言い放った。

 

「それよりも私は、枢相殿がこのような代物を掘り起こして、一体全体なにを成そうとしているのか興味があるぞ!」

 

カスミがそう言って指し示す先には、既に解体されつつある巨大な人工物が鎮座していた。

 

「あの兵器、確かかつてゲヘナでr……」

 

「鬼怒川さん。」

 

「ッ!?」

 

イグラはカスミの方を向かずに、同じくその人工物を見下ろしながら言う。

 

「貴女の仕事は、我々の指定した場所に来て、我々の指定した物を掘り起こす。ここで余計な詮索をするのが貴女の仕事でしたか?」

 

「………いぃや」

 

「とどのつまり我々は、仕事に来ているのですよ…非効率だと思いませんか?自分に割り振られてもいない仕事をわざわざするのは。」

 

言外に、これ以上の詮索はするなと伝える。

カスミは目を細め、イグラの方を睨みつける。

イグラはなにも発さずに、横目でチラッとカスミの方を見た。

無言の時間が数秒続いた。が、根負けしたのかカスミが目を逸らして大笑いした。

 

「………ハーッハッハ!その通りだ枢相殿。全くもって、その通りだとも!君達は宝探しがしたい。我々は万魔殿の免責が欲しい。ただそれだけの関係性だ!それ以上のことは、無粋というわけだな!ハーッハッハ!」

 

「ええ、貴女たち温泉開発部とは、有意義な協力関係を歩めていけそうで安心しました。」

 

「それはこちらも同じことだ!今後とも、是非我々(温泉開発部)をご贔屓に頼むよ!何せ、そこに温泉があるから我々がいる!いや、たとえ温泉がなくともいるのが我々だからな!ハーッハッハ!!」

 

「……ふむ????」

 

「おっとっと…トリニティあがりのお嬢ちゃんには、まだ早かったかもしれんな?なに、ゲヘナジョークというやつだ!ハーッハッハッハー!」

 

「あー、なるほど?ホンホンホンッ!」

 

バタバタバタ…

 

カスミをイグラが笑いあっていたところに、ヘリコプターのローター音が近づいてくる。

生徒会の谷に丁度入るかギリギリの、巨大な輸送ヘリコプーターがのっしりと降りてきた。

やはりゲヘナの校章が描かれた輸送ヘリのドアは、地上に着くと同時に勢いよく開けられた。

 

「イグラ殿、特殊作戦航空団、輸送ヘリ以下7名、到着いたしました。」

 

「ご苦労。既に荷造りは終えている。例のブツを、直ちに遅滞なく指定地点まで空輸せよ。中身の詮索はするな。」

 

「はっ!」

 

パイロットヘルメットを被った生徒は、イグラに敬礼するとヘリコプターの方へ去っていった。

 

「これで全ての作業行程が終了した。道具は全てこの場に破棄。掘削機器も全て、証拠に残りそうな物品、記録は、全て破棄せよ。“最終処理”の完了次第、総員直ちに撤収せよ。」

 

イグラが部下達に矢継ぎそう命令していく。

命令を受けた万魔殿の部下達/枢密院生達は、足早に散っていく。

 

その光景に満足したイグラは、持参していた保温瓶とティーカップを鞄から取り出し、優雅に小休憩をし始めた。

辺りに、紅茶の良い香りがたつ。

 

「あのぉ、枢相殿…最終処理装置、配置し終えました…」

 

くつろいでいるイグラの元に、白いヘルメットを被った薄着の温泉開発部員が報告しにきた。

 

「ご苦労……どうしましたか?顔色が悪いようですが…」

 

イグラに報告にきた温泉開発部員は、ひどく汗をかき顔を青くしていた。

 

「その、最終処理の件なんですが……」

 

温泉開発部員は、もじもじとしながらイグラに言う。

 

「おいらぁ、そこまでする必要はねぇんじゃねぇかと思って…」

 

「……なぜ?」

 

「だってよ、ここぉは アビドスの生徒会長さん達のお墓でもあるんだろ?そ、その…罰当たりなんじゃねぇんかなって…」

 

「罰当たり…ですか。」

 

イグラがそう呟くと、温泉開発部の生徒は怯えながら答える。

 

「だ、だってよ、温泉開発部は道だろうが務所だろうがお構いなく開発するけんどよ?流石に死者の墓を荒そうなんて、おいら一度もしたことが…」

 

「はぁ、そういうことでしたか。ホンホンホンッ!“大丈夫”です。」

 

イグラは、納得がいったかのようにそう言って、顔を青くする温泉開発部員に笑顔で振り向く。

 

「いま君たちは、公式記録ではゲヘナにいる事になっていますから。」

 

「………へ?」

 

「あぁ……うん、そうですねぇ……言い方を変えましょうか…」

 

イグラは頭を掻きながら一巡すると、体を温泉開発部員の方に向き直し、膝を曲げて目線が合うようにする。

 

「……?」

 

「……温泉開発部、よく聞け」

 

温泉開発部員の両肩を掴んだイグラ目を見開き、温泉開発部員の目を覗き込む。

イグラの後ろでは、着々と準備を進めていく部員たちの声が鳴る。

 

『セット完了、確認。要員退避、確認』

 

「お前達は、 “アビドスになど来ていない”。」

 

『最終セーフティー、解除ッ…カウント10』

 

「“なにも見つけてなどいない”。」

 

『総員、対ショック、対科学兵器防護マスク、用意ッ』

 

「“生徒会の谷”…?」

 

『装置、起爆』

 

カチャッ

 

キキキィィィィイイインンン………

 

「そんな場所はーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“ もともと 無いではないか ”」

 

バッ

 

 

辺り一帯を、白い光が埋め尽くす。

 

チュドッッッッッッッ!!!!!!!

 

次の瞬間、重い衝撃が温泉開発部員の体を強張らせる。

 

「グゥッッッ!?!?」

 

「…………。」

 

『ジッ…ジジッ………』

 

アビドスの奥地のある場所に、辺りを引き裂き焼き尽くすほどの閃光と轟音、そして衝撃が走る。

辺り一体が白く光り、辺り一帯の砂岩壁が吹き飛ばされた。

 

砂岩により形成されていた震源地一帯はズダズダに砕かれ、砂へと帰した。

爆発によって舞い上がった砂塵が覆い尽くし、辺りに暗く影をおとした。

 

 

「……こんな……ことが……」

 

先ほどまで生徒会の谷として存在していた天然の渓谷は、最早面影を残さず砂漠の砂に飲まれていた。

そんな光景を前に呆然と立っていた温泉開発部員は、自分が被っていたヘルメットを脱いで膝から崩れ落ちた。

 

「…ここは、お墓で……」

 

『おい、そこの部員!なにをしている、早くここを離れるぞ!ここは既に地盤が粉々になっているからな、長居は危険だぞ。』

 

後ろから、ガスマスクを被ったカスミ部長が寄ってきた。

 

「自分たちは…さっきまでここで、歴史的な…遺産を…」

 

温泉開発部員が虚に呟く。

 

『………まぁ、不幸な事件だったな。

 

早く忘れるといいぞ。先輩からのありがたいアドバイスだ。アビドスだけにな、ハーッハッハー!』

 

「……」

 

温泉開発部員はカスミ部長に肩を借りながら、立ち上がらされる。

肩やカスミは、テンション高めに部員に語りかける。

 

『早くここを出るぞ。

なんたって、いつぶりのシャバの空気だからな!大手を振ってゲヘナへ帰れるぞ!』

 

「……はい。」

 

『ゲヘナへ戻ったら、しばらくは風紀委員会に目をつけられない程度に、ひっそり温泉でも掘ろうではないか!

スリルのある温泉開発もいいが、私もちと最近は仕事をし過ぎた気がしてな、一度ここで腰を添えて、のんびり湯につかりながら、次の計画でも立てる事にしよう。何せ今までと違って、少なくとも次の違法行為をするまでは、風紀委員もヒナ委員長も我々に手出しはできないのだからな!!』

 

「……カスミ部長」

 

カスミは背中に部員を背負いながら、撤退作業を進める温泉開発部の作業者に乗り込む。

 

「………おいら、温泉入りたいだ…」

 

『おぅ、ゲヘナに帰ったらな!』

 

 

 

 

 

「温泉開発部も撤収したか…」

 

『はっ、イグラ様も早く車にお乗りください。ここは地盤が緩くなっており、危険です。』

 

「ん、わかった。」

 

温泉開発部は既に用を終え、自分たちの車で去っていった。

イグラ達枢密院生も最後の確認を終え、生徒会の谷跡地を去ろうとしていた。

 

「…そういえば、ここって一応お墓だったんですよね?」

 

『そう聞いていますが…』

 

「ミイラとか見かけませんでしたね。シェマタを置きにきた時に、全て回収されてしまったんでしょうかねぇ…」

 

『さぁ、自分にはなんとも…』

 

「…先人達の考えなど、考えるだけ無駄ですね。」

 

イグラは更地になった谷を一概し、万魔殿のマークの刻まれた黒塗りの車へと乗り込んだ。

その時だった、

 

ゴゴゴゴゴゴッゴ

 

「ッ、揺れか!」

 

突如地面が揺れだす。

車に乗っていたイグラ達は、必死にドアやハンドルに捕まりながら、外を見渡す。

 

「なんだ…あれは…」

 

砂漠の砂が大きく盛り上がり、何かが噴き出す…いや、這いずり出てくる。

12階建てビルはあろうかという大きさ。

白い装甲板のような人工物を身に纏い、有機的な動きで体をくねらせる。

その巨体は、神話において多々散見される、大蛇(ヨルムンガンド)

 

「あれは…機械…なのか…ッ!?」

 

「クソッ、なんであんなでかい機械仕掛けのヘビがいるんだよッ!!」

 

イグラの隣でハンドルを握っていた運転席の枢密院生は、車を急発進させながらそう叫んだ。

 

「……あれは、確か神聖十文字(デカグラマトン)の預言者、ビナー…なぜここに…まさか、さっきの爆破で眠りを解いてしまったのですか…ッ」

 

「イグラ様ッ、捕まっていてください!跳ばしますよ!」

 

「多少傷物にしても構いません、今は逃げることだけを。」

 

「はっ!」

 

ビナーは、逃げ去ろうとしていく車を視界に収めた。

 

ギギャアアアアアアアアッッッッ!!!!

 

首を大きく揺らして溢れんばかりの咆哮を鳴らす。

ビナーは口を大きく開けると、中にうっすらと光が集まり始めた。

 

「……ッ、ハンドルをきれっ!攻撃くるぞ!!」

 

「ッ?!口から光がッ」

 

「おいッ!!前を見ろッ!!尻尾にぶつかるぞッ!!」

 

「ッ?!しまッt」

 

ギャシャァァアアアンンン!!!

 

鞭のように大きく放り回されたビナーの尻尾が、イグラ達の乗る車の進行方向を塞ぐ。

一瞬反応の遅れた運転手は急いでハンドルを切ったが、間に合わずビナーの尻尾は万魔殿の車を正面から強打した。

突っ込んだ衝撃で止まった車体は慣性の法則に従い後輪が浮き、そのまま車体は前転してひっくり返った。

 

ビナーは尻尾を持ち上げ…

 

『ギガガガガガガ……!!』

 

仰向けにひっくり返る車体に、質量に任せ突き刺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドドドド………

 

「……?」

 

「…?どうかしたのかメグ?」

 

「いや……ん〜、なんでもないよ部長。」

 

温泉開発部達を運ぶトラックの車列が、砂漠に伸びていた。

トラック集団の先頭の一台の荷台で、赤髪の温泉開発部員が隣に座るカスミに話しかける。

 

「??そうか?疲れたのなら、私の膝の上で寝ていてもいいんだぞ!」

 

「う〜ん、じゃあお願いしちゃおうかな〜」

 

「ハーッハッハッハグェッ!?」

 

トラックがいきなり止まり、慣性の法則でカスミは前に倒れそうになる。

が、ちょうど自身の膝に頭を乗っけようと下げていたメグの頭にタックルされた。

メグのツノ付きの頭が、ペラペラのカスミの鳩尾にめり込んだ。

 

「あっ、ごめんー部長、ケガないー?」

 

「ゴホッゴホッ……いったい何故急に止まったんだ?」

 

カスミはお腹を抱えて蹲りながら、トラックの運転手に聞く。

 

「ぜ、前方ッ!風紀委員会のお出ましだ…ッ!」

 

 

 

 

 

 

「やーやーこれはこれは、ヒナ委員長ではないか!」

 

「…鬼怒川カスミ。」

 

荷台から降りてきたカスミとヒナを挟み、風紀委員会と温泉開発部は対峙していた。

カスミは馴れ馴れしくヒナの歩み寄る。

 

「こうしてシャバで堂々と相見えることが出来るようになるとは、想像もr…」

 

「_検挙」

 

ガチャッ

 

「っな!?」

 

近づいてきたに躊躇いなく、自身の愛銃『終幕:デストロイヤー』を押し付けるヒナ。

 

「まさかそっちから自首しにきてくれるなんて」

 

「はっはっは…自首?まさか…万魔殿からまだ何も聞いてないのだな?耳の遅い奴等め。」

 

「……戯言に付き合っている暇はないわ」

 

ヒナの指示で、風紀委員会の生徒がカスミの両脇を抑える。

この期に及んでカスミは、事態の深刻さを認識する。

それは、万魔殿から与えられたはずの免責が、紙切れ一枚の価値すらないという可能性。

 

「待て待てっ本当だ!我々はマコト議長から、今までの罪を免責してもらったのだ!」

 

カスミは、必死に声を張り上げる。

だが、当のヒナはいまいちピンと来ていない様子だ。

 

「…聞いてないわね」

 

「ほんとのことだ、確認してみるといい風気委員長!」

 

「興味ないわ」

 

ヒナはカスミの言葉をバッサリ切り捨てる。

カスミは、言葉に詰まる。

 

「なっ?!」

 

「たとえ万魔殿が許そうと、我々のやる事は変わらない…規則違反者を捕まえるだけよ」

 

「ッ…生徒会が許すと言ってr」

 

「そうね、例えば神が許したとしても、我々が見逃しはしないわ。それがゲヘナ風紀委員会の務めよ。知らないの?風紀委員会は規則違反者を捕まえる為のあらゆる特権を与えられているのよ。他自治区への侵攻以外なら、ね。今回はアビドスの要請があってアビドスへ来た。つまり、貴女を捕まえることに万魔殿の許可はいらないわ。」

 

ヒナがそう言い終えると、カスミの両脇にいた風紀委員会の生徒が、腰から手錠を取り出した。

他の風紀委員会も、カスミの後ろに控えた温泉開発部たちを捕まえるべく、動き出す。

 

「嘘…だろ…」

 

カスミの腕に、手錠が掛けられようとする。

 

「嘘…や…いやッ」

 

寸前で風紀委員会生の腕を振り切ったカスミは、覚束ない足取りで誰もいない方向へ走り出した。

 

「部長ッ!?」

 

メグの驚く声が響く。

 

「!!ッ逃げたぞ!」

 

ある風紀委員生がカスミの背中を指で指し、別の生徒は持っていた小銃を構える。

カスミは、脇目も振らず逃げ出した。

 

「ありえない…

 

こんなこと、ありえないんだ…ッ!!

 

だって……

 

だって……ッ

 

枢相殿はッ…」

 

「Mo non troppo…」

 

泣き喚きながら逃げていくカスミの背中を見ていたヒナは、ため息をつく。

持っていた機関銃を水平に起こし、カスミの背中に照準を合わせた。

 

「枢相!!イグラが!!

 

 

 

 

枢相イグラ(イギリス)は絶対に約束を守ると断言したんだっ!!!」

 

 

 

 

 

「…終幕。」

 

ビカッーーーーー

 

ヒナが引き金引く。

紫色の閃光が走り、銃口から放たれた弾丸は連なりさながらレーザーの様にも見えた。

そして、そのレーザーはカスミの背中を的確に射抜いたのだった。

 

「あらら部長、結局こうなっちゃったねー…」

 

諦めにも似たメグの声が聞こえ、ヒナもそれに同調した。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

「お帰りなさい、ホシノ先輩!」

 

“おかえり、ホシノ”

 

「うへぇ〜、おじさん後輩達に助けられちゃったよぉ……

 

…………ただいま、みんな。」

 

AM 16:30

シャーレ主導の多国籍軍は、要救助者の確保に成功した。

 

これにて、全ての作戦計画の完了を宣言する。

 

これにて、全ての戦闘の終結をーーー

 

 

 

「ヒフミ様、観測部隊より緊急報告ッ大質量の未確認兵器が、こちらへ向け進行中!!既に未確認のゲヘナ部隊の一部が交戦状態になっている模様ッ!目視の限りでは、被害は極めて甚大!!指示を請います!!」

 

「えええっっっ!?」

*1
関係ない




チアキがマコトを引き止めて
イグラが掘削して
ビナーお出しして
カスミを不憫な目に合わせて
ホシノ救出して
ファウスト覚醒(してない)…ッ

書くことがッ…多すぎるッ…!!
しかも最後が駆け足すぎる!!

アンケートご協力、ありがとうございました!!
大勢の方に投票していただき、感謝感激雨インフェルノ・カノーネです!!

アンケート結果を踏まえ、パヴァーヌ一章は全スキップ。二章をリオと駆け足でやっていきます。
番外編では、チアキとデート回。次の回でイグラがビナーに粉微塵にされなければ、ですけど!
IF雷帝、シャーレ加入、過去編は人気なっさそうだったので、もう少し温めておきますね。
ごめんねミカ!せめて優しく殺してね!

ブルアカ全然関係ないですけど、ジークアクスのイオマグヌッソ、実質ヤマトに出てくる瞬間物質移送器じゃないですか!もっと普及すれば、火焔直撃砲とかMSで七色星団戦法できますね。強すぎかよ。あと、土星船団がカッコ良すぎて、癖にブッ刺さりました!全滅してないで、船団もっと悲惨な目に遭って♡
ってか、アサクラ死んだじゃん。よかったねシーマ様。ギレン死んで、デラーズは宇宙の晒し者になっちゃったね。ニャァンとマチュは、早く殺し愛(百合)宇宙(そら)編してよねやくめでしょ。

カイザー潰しが終わった後のイグラは…

  • リオと共謀して魔王を倒しました。
  • セイアを誘拐しに行きました。
  • ティーパーティー候補時代を思い返した。
  • 雷帝になりたいと思いました。(if)
  • シャーレに加入しました。
  • チアキと過酷()したんだ!あいつら過酷s
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