“枢相”イグラは敗残兵   作:チト 熟練見張員

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更新遅れて、申し訳ございませんでした。
ベアトリーチェと地下生活者が、腹を切ってお詫びいたします。
「すまんってこったぁ!」


第九話 違いを痛感する静観の理解者(上)

小鳥遊ホシノを救出することに成功したシャーレと対策委員会。あと色々*1

カイザー理事とPMCを倒した彼女だったが、戦いは終わってはいなかった。

 

「なななっなんですってー!?」

 

便利屋の社長が、白目を剥きながら驚愕した。

 

“蛇の巨大ロボット!?”

 

「先生、なにちょっと興奮してるのよ!?」

 

「あれれ〜、おじさん今日はもう戦う雰囲気じゃないと思ってたんだけどな〜」

 

巨大ロボットの蛇が現れ、アビドスにいる生徒たちを襲っている。

その情報がシャーレにもたらされたのは、小鳥遊ホシノ救出直後のことだった。

 

「カイザーの真打でしょうか…?だとしては、出てくるタイミングが遅すぎる気がしますが…」

 

「巨大って、具体的にどれくらい大きいんでしょう?」

 

「3mくらいとか?」

 

『交戦中の現地の部隊は混乱状態のようで、詳細な報告は上がってきていません。ですが、トリニティの観測部隊によれば、背丈は8階建のビルに相当する高さと…』

 

通信してきた風紀委員会の生徒が、ホログラム越しに伝える。

 

「8階建ビルッ!?」

 

「ん、背丈がデカすぎる。」

 

「ちょっ、シロコ先輩!?それって…」

 

「……??」

 

「……あ、やっぱなんでもない…です…。」

 

「……。」*2

 

「うへ〜、セリカちゃん…私の説教が終わったら、次はセリカちゃんの説教だね?」

 

「ゑ」

 

「それで、どうするの?先生。」

 

便利屋の社員、カヨコが先生に尋ねる。

先生は生徒たちに振り返って、伝えた。

 

“もちろん、助けに行くよ。手伝ってくれる?”

 

「「「「はいッ!!」」」」

 

『お急ぎの便なら、我々にお任せください。』

 

『最速の配送をお望みで?』

 

“!?き、君達は…”

 

「ん、空からなんか降りてきた。」

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

アビドス砂漠、未知領域。

 

焼けこげた砂漠の砂を踏み締めて歩く、人の姿があった。

長身で黒いスーツに身を包み、紳士然とした大人の男性。頭とおもしき部位からは黒い炎の様なものが吹き出す異形の姿。

炎は白くひび割れ、それが顔の様にも見えた。

 

男は砂塵の吹き荒れる砂漠を歩き続け、目的の場所までたどり着く。

 

「クックック……かなりの深手を負いましたね?英印イグラさん。」

 

「……確かお前は……」

 

「“黒服”、そうお呼びください。」

 

そう答えた男の目線の先には、ひっくり返り鉄屑と成り果てた車の残骸に背をもたれて倒れる、一人の生徒がいた。

長細いパイプの様な残骸が、その生徒の腹を突き破り、空高く伸びている。

黒服にイグラと呼ばれた生徒は、自身から流れ出た血の海に浸っていた。

 

「クックック、かつて雷帝が残したとされる禁忌、その封印を解いた貴女には、丁度いいお灸だったのでは?」

 

「ホンホンホン……下手なジョーク…だ……、差し向けたのは、お前のく…せに」

 

「クックック!これはこれは人聞きの悪いことを。私はただ、パスの再接続の為にスリープモードを解いただけに過ぎません。無闇矢鱈と爆発を起こしてビナーを呼び寄せたのは、貴女の自業自得だと思いますがね。」

 

黒服はやれやれと言ったふうに、わざとらしく肩をすくめた。

 

「それはそうと、貴女の傷。完全に致命傷ですよ?今すぐ医者に駆け込めば足すかもしれませんが、生憎そのような親切な方は、ここには少ない様ですね?」

 

そう言って辺りを見回す黒服。

チラッと横に逸らしたイグラの目には、先ほどの襲撃で全滅した部下たちが倒れているのが見えた。

気絶はしているが、幸いにも命に関わる怪我をしている者はいない。

黒服は一通り辺りを見回すと、こちらを見つめてきた。

それは暗に、君を助けられるのは自分しかな居ない、と言っていた。

しばしの沈黙の後口を開こうとする黒服だったが、それをイグラが遮る。

 

「ホンホンホン……ゲマトリア、私と契約をしませんか?」

 

「ほぉ?貴女の方から契約を持ち掛けてくるとは。何か私に対価として払えるものがるのですか。」

 

「困ったね、生憎と今は手持ちがないよ。ポケットを落としてきてしまったのでね。」

 

「では、交渉は無理ですね。」

 

黒服は、この死に瀕した一人の生徒が、自ら自分に契約を持ち掛けてくるという事態に、少しの期待を抱いていた。

最初はそれこそ、かつての雷帝の遺産に当てられた愚人だと思っていた。せめてその最期を、神秘の露散というなかなか見ることの叶わない現象の観察に利用するくらいにしか考えていなかった。

だがどうだ?彼女はあくまで私を知っているかの様な口ぶりで、瀕死だというのに私に契約を持ちかけてきた。

他の子供とは何かが違う異質な、テクスチャか何かを黒服はこのモノクルの生徒から感じ取っていた。

だが、それも空振りだったらしい。

交渉をするにも、ないも手札がない様ではただの虚栄か、或いはただのおちょくりか。

何か、ここからドンデン返しでもあるのか、私を驚かせる程の何かがあるのではないか、と少しでも期待してしまった分、黒服の落胆は明らかなものだった。

他とは何か違うものを発見できたという、科学者としての喜びから、既知への無関心へと黒服の彼女への興味は反転した。

 

「せめて、私の研究の糧にでもなってーーー」

 

「情報。」

 

「……情報ですか?」

 

情報。

彼女がそう口にしたということは、この場をひっくり返すほどの情報でも、彼女は握っているのだろうか?

黒服はしばし目を閉じ、一考する。

 

ーーーあり得ない。

一考の末、黒服は断じた。

 

列車砲シエマタ、そしてこのアビドス生徒会の谷を見つける事ができたのは、確かに彼女が他より多くの情報を持っている証左にはなるだろう。

だがしかし、それは我々を驚かせるほどの情報ではない。

必要がなかっただけで、我々はすでにそれらの情報を握っていた。

彼女が情報通であることはわかるが、それはあくまで表世界でのこと。

神秘という、ある種この世界の本質にメスを入れる我々にとって、彼女たち神秘を認識すらしない子供が知る情報が、我々を上回ることなどないだろう。

黒服はそう結論づけた。

 

彼女が身にまとうボロボロの制服を見るに、元は大層高貴な職…政を司る立場にいたのだろう。

それは当然、駆け引きや情報の売り買いなどが求められる立場。

その経験と自信が逆に、我々大人が彼女たち子供と同じリングで戦っていると、自らの手札が十分通用する相手だと錯覚させてしまったのだろう。

だとしたら、実に哀れである。

子供特有の過信、若さ故の蛮勇。

 

やはり子供とは、どこまで行っても子供。

所詮は、本当の意味で大人に予想を上回ることなどーー

 

「2ヶ月以内に、色彩は降臨する。」

 

「ッ」

 

上回ることなどないーーその考えは、この瀕死の生徒の放った一言で覆った。

 

色彩

 

このキヴォトスを歪め、崩し、崩壊させる。

解釈されず、理解されず、疎通されず――ただ到来するだけの不吉な光。

目的も疎通もできない不可解な観念。

 

我々が本来覆すべき、明確な“敵”が

 

その生徒は到来すると言った。

 

いや、そんな筈はない。色彩はキヴォトスを認知できない筈だ。

そうでなくてはならないのだ。

 

ここにきて黒服は、自身がより慎重にこの生徒と交渉に臨まなければならないと認識した。

訂正しよう、この生徒は自らを過信する愚者ではない。

信じ難いことだがこのモノクルの生徒は、瀕死なれど大人である筈の黒服と同じテーブル(立場)に座っている。

 

「その情報、どこで手に入れたのですか?なぜ?貴女は一体何を知っているというのです?」

 

「どうだったかなぁ、ユダ(裏切り者)が誰かなんて聞かれてもねぇ、お腹が痛くて忘れてしまったよ。」

 

「興味深い話、是非お聞かせ願いたいですね…クックック…」

 

ここは既に子供の範疇を超えた、大人(黒服)大人(イグラ)の戦場。

先生以来の、自身と同格の相手との話し合い(戦い)に黒服は、密かに興奮を抑えられずにいた。

 

「刺身も情報も鮮度が命。さぁさぁお客さん、この情報おいくらで買います?」

 

 

 

ーーーーーーーー

 

アビドス砂漠

ゲヘナ担当地区。

 

 

万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)麾下の近衛連隊は、担当区一帯の掃討を終え帰路に着く筈であった。だが、それも今は阿鼻叫喚へと変わっていた。

 

「撃て撃て撃て!撃ち続けろ!!」

 

「全火力を、あの蛇野郎に投射しろ!!」

 

ゲヘナ近衛連隊は、移動中を襲撃された。

だが、襲撃したのはカイザーPMCではなかった。

 

純白の装甲を纏う、機械仕掛けの大蛇。

しかも口からレーザービームを撃つ系のヘビだった。

 

「くそッ、88mm(アハトアハト)の直撃だぞ!?」

 

戦車隊の一斉砲撃が、ビナーの頭部に命中する。

だが、その攻撃はビナーの頭部装甲を煤で汚すだけに留まった。

 

「敵の咆吼部に、光が集まっていきます!」

 

「!?またレーザーか!?」

 

「か、回避間に合いませんっ!!」

 

「狼狽えるな!Sd.Kfz.184(フェルディナント)の正面装甲ならッ」

 

ビナーの口から、無慈悲にも光線攻撃が繰り出される。

光線は寸分違わず戦車隊を貫き、片っ端から鉄屑へと変えていった。

 

「救援要請はどうなっている!?」

 

「ダメです!電波妨害されています!!」

 

「…万事休すか」

 

戦闘指揮車の屋根から身を乗り出し状況を見ていた指揮官の生徒は、既に全滅*3しつつある万魔殿

近衛連隊と戦車部隊を憂い、悲惨な最期を幻視した。

 

「レーザー、来ます!」

 

「くッ……」

 

再び機械仕掛けの蛇の口から光が漏れ出す。

大蛇の次の狙いは、指揮官である自分。

解き放たれた光の柱は、真っ直ぐこちらへ向かってくる。

指揮官の生徒は、来たる衝撃に備え顔の前で腕を十字に組んで庇い、目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

「うへ〜、先生も無茶言うよ〜」

 

キィィィイインンン!!

 

辺りの空気が揺れる。

だが、身構えていた程の衝撃が来ず不審に思った指揮官の生徒は、うっすらと目をひらく。

 

「うへ、大丈夫?ゲヘナの指揮官ちゃん。」

 

「お、お前はッ…」

 

ピンク色の髪に、低い背丈。

戦車隊の前を機械仕掛けの蛇から庇うように盾を構え立っていたのは、先程まで捉えられていた筈の小鳥遊ホシノその人だった。

 

「なぜ、ここに!?無線封鎖されていた筈…それに、ここからPMC本部まではかなりの距離が!」

 

「うへ〜、それ君達(ゲヘナ)が聞くの〜?」

 

そう呆れた目で問いながら、ホシノは空を指差した。

そこには、ゲヘナ万魔殿(パンデモニウム・ソサエティ)の章が刻まれた3機のVTOL機が空から降り立とうとしていた。

 

「加勢にきたわ。」

 

「「ヒナ風紀委員長!!」」

 

加勢にきたのは、ホシノだけではなかった。

ゲヘナ最高戦力、風紀委員長

空崎ヒナ

 

「やっと骨のある敵が出てきたってところっスかね〜」

 

正義実現委員会、中隊長

仲正イチカ

 

「不始末なゲヘナの為に、わざわざきてやってよ!」

 

「あまり力になれないかもしれませんが、手伝わせてください。」

 

ティーパティー麾下、砲術研究会

中隊長(エセお嬢様)

 

覆面水着団、リーダー

ファウスト(ペロきち)

 

「ふふふ、最後まで仕事を全うするのが、我々便利屋68よ!」

 

便利屋68、社長

陸八魔アル以下4名

 

『そして我々、ヘリコプター愛好会!』

 

『隊長、また名前変わってるぜ!?』

 

ゲヘナ特殊作戦航空団、団長

以下、3機6名

 

 

 

“助けにきたよ、皆んな。全員、配置について!”

 

連邦生徒会、連邦捜査部シャーレ

先生

 

 

キヴォトスの名だたる強者たちが、大蛇を狩る為一同に会した。

両者はこうして再び、槍衾の前に立ったのである。

 

機械仕掛けの大蛇は、その八つの目で、自らに対峙する眼下の強大な神秘たちを一概に見下ろす。

 

 

【総力戦】

////////////////// BINAH //////////////////

—— D E C A G R A M M A T O N ——

 

 

 

AWACS BANDOG

<<作戦司令部から緊急指令だ。内容は未確認機械兵器を破壊せよ。君らを名指ししてきた。>>

 

『万魔殿の皆さんは一時後退し、体制を立て直してください。ホシノ先輩と空崎ヒナ委員長は、体制を立て直すまでの間、敵の注意を遠ざけてください。』

 

先生の合図で、生徒たちは一斉に動き出した。

 

“それじゃあ皆んな、作戦開始!”

*1
重要

*2
砲技研「これ指摘したら淫夢厨ってバレますわね…」

*3
戦力の50%以上の失陥




一話で終わらせたかったビナー編。
どうしても決着の付け方が思いつかず、ずるずると引き延ばしてしまいました。
次話で終わらせるので、許してつかぁさい。

それはそうと、キキョウ(水着)……エッッッッ!!!!
「エッチなのは駄目!死刑!」
「だそうだ被告。街中引き回しの後、絞首刑に処す。」

“大人の土下座をする。”

まぁ、石無いんですけど!ヨホホホホ!

カイザー潰しが終わった後のイグラは…

  • リオと共謀して魔王を倒しました。
  • セイアを誘拐しに行きました。
  • ティーパーティー候補時代を思い返した。
  • 雷帝になりたいと思いました。(if)
  • シャーレに加入しました。
  • チアキと過酷()したんだ!あいつら過酷s
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