“枢相”イグラは敗残兵   作:チト 熟練見張員

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や、久しいね。
鋼鉄大陸で、ミレニアム編のプロットが盛大にガバった筆者だよ。
心が折れたよ悲しいね


間話 絶対にマコトにバレてはならぬ24時〈1〉

調理兵とは、すなわち戦場で飯を振る舞う特技兵科である。

彼らは、兵士達に安全な飯を提供することが任務であり、それこそが彼らの戦いだ。

 

前線に出ない兵科ゆえに、しばしば銃後においては軽んじられる事もある。

だがしかし、調理兵は他の一般兵士に比べ比較的階級は高く設定されている。

なぜか?

それはまさに、兵士に飯を安定して食わせることこそが、戦場で最も困難なことであり重要なことであるからだ。

 

前線の兵士は、絶えず戦っている訳ではない。

塹壕やトーチカに身を潜め、敵の襲撃あるいは味方の攻勢の時になるまで、彼らは束の間の休みを得ることもできるだろう。

 

だが調理兵に休みはない。

たとえ敵が攻めてこようと砲弾が降り注ごうと、あるいは休戦、停滞していたとしても、彼らは戦場(調理場)にたち続けるのだ。

腹が減っては戦もできぬが、戦がなくても腹は減るのだ。

 

 

 

『厨房は戦場だ』

 

 

 

先代のゲヘナ給食部部長は愛清フウカにそう言い残した。

残されたフウカは、合点した。

全くもってその通りだと。

 

彼女の言葉

 

彼女の調理方

 

彼女の矜持

 

彼女の信念

 

先輩は……先代は全て正しかった。

何一つ間違えていなかった。

 

 

 

 

だから、ある日彼女(先代)が全てをフウカに託し、この厨房(地獄)から逃げ出したのも本当に正解だったのだろう。

先代はきっとこの地獄から抜け出して、自分の人生を買い戻したのだろうか。

今から思えば、それは懸命な判断であった。

 

 

 

 

**********

 

 

 

 

ゲヘナ学園

給食部にて

 

 

 

「3番テーブル、レバニラ追加〜」

 

「はいはい、少しお待ちください。ジュリー?」

 

「6番の方ポテトは追加しますか?」

 

「ねぇ、誰かオーブンの時間を測ってる?」

 

「弱火で3分ってことは、強火で30秒でいっか」

 

「バナナ、粉バナナ」

 

「わさび嫌いなやつ、これがち危機感持った方がいいと思う」

 

「温泉開発部から温泉卵貰ってきたよ!カスミーにありがとうと言って」

 

「パスタ長すぎて入らねぇ…………閃いた。」

 

 

 

 

『なぜレシピ通りに調合しない時間は厳守だ!!独房にぶち込まれたいのか!!火加減は指示書通りに、おい待てなぜバナナを入れようとしている!?わさびを早く冷蔵庫にしまえ!!冷蔵庫の扉を足で閉めるな!!その温泉卵は皮を剥いて薄切りにしサラダに乗せrパスタを折るなァ!!!!!!

 

 

 

 

 

ゲヘナ学園、今はお昼どき。

 

1000人単位のお腹を空かせた亡者たちが、食堂受付に押し寄せてくる。

戦力の逐次投入ではなくもはや波状攻撃。

予備戦力はなく撤退も後退も許されない。

部隊は充足割れで補給は無く援護もない。

 

そんな状況でフウカ率いる給食部他1名は、時に理不尽なクレームや、万魔殿の予算削減、美食研究会の拉致誘拐に耐え、日々孤軍奮闘していた。

が、今日は珍しく給食部に援軍が来ていた。

 

 

「はい1番テーブル、オムライス」

 

「いや頼んでねぇよ」

 

「黙って食え」

 

「ムグ?!」

 

 

 

飛行倶楽部の生徒達(暇人ども)である。

 

というのも、先日のアビドス事変でチャフフレアやミサイル、バルカン砲を雨霰とばら撒いた結果、予算が尽きたのである。

もはや燃料すら満足に揃えられず、部員達はバンドッグが気を利かせて送ったシミュレーター*1を交代で動かしながら、日々を無気力に浪費していた。

 

そんなある日のことである。

境界線監視のために*2偶々通りかかった風紀委員長に———

 

 

「そんなに暇なら、うってつけの仕事があるわよ」

 

「だが断る」

 

「そう……威勢がいいのね」

 

 

 

委員長秘伝のデストロイヤーで滅多撃ちにされ連れてこられたのが、ココ(食堂)だった。

キッカケは最悪だったが、厨房での骨の折れる仕事は暇を持て遊ばしていた倶楽部部員に勤労の意欲を呼び覚ました。

軽躁状態(ワーカーズハイ)というやつである。

 

 

 

 

「どうもフウカさん!誘拐しに「「「フォックス2(赤外線誘導ミサイル)!!!」」」がふっ!?」

 

 

突然食堂のドアが爆発し、美食研究会が乱入してくる。

このクソ忙しいタイミングに突然現れたアルビノのゴキブリに、思わず部員達は地対空携行ミサイル(FIMー92スティンガー)を贅沢に四発も使ってしまった(ブチ込んでしまった)

給食部も飛行倶楽部も、このデスマーチを前に気が立っているのだ。

 

〈-4,000,000円×4発+設備修繕費-500,000円〉

 

これで今日の飛行倶楽部の儲けは赤字が決定した。

倶楽部の会計は泣いた。

一方バンドッグはクックパットの記事にキレ散らかしていた。

 

 

 

 

**********

 

 

ミレニアム・サイエンススクール

セミナー給湯室

 

 

「だから“適量”ってなんだよ!!!」ガシャン

 

「お好み…お好みなんですってっ…!」

 

「仕様書のくせに主観的な単位を使いやがって、この紙屑がっ!」

 

「お…大雑把な会敵警告しかしない…先輩はどうなんですか…」

 

「俺が!運用する部隊がどうなろうと俺の勝手だろがっコユキィ!!」

 

「なんでぇ!?」

 

 

その後、バンドックがぶん投げたエプロン*3がコユキに躱され背後にいたノアの顔面にクリティカルヒット、通りかかったセミナー会計にバンドックとコユキが太ももの刑(意味深)されたのはまた別の話である。

 

 

 

 

 

 

**********

 

 

 

 

 

「皆んなここにいたんですか」

 

「あっフウカ先輩ー」

 

 

昼時が終わり休憩に入った飛行倶楽部の部員達のもとへ、白いエプロンを身につけた2人の生徒が労いの言葉をかける。

 

頭に鉤爪のような2本のツノに黒い前髪を掛けている少し背の子と、厳つい牛角が生えたピンク色の長髪の子。

ゲヘナのたった2人の給食部員、愛清フウカと牛牧ジュリの2人だ。

腕にはいっぱいのラムネ瓶とタオルを抱えている。

 

給食部の2人に気づいた倶楽部の1人が、駆け寄った。

 

 

「今日は手伝って頂いて助かりました。これ、よかったらどうぞ」

 

「タオルも持ってきました」

 

「おお」

 

 

ラムネを受け取った生徒は、手慣れた手つきでラムネの蓋を開け、一気に飲み干した。

ラムネはよく冷やされていて、労働の後の火照った体に染み渡った。

ぷはぁっと息を吐き、口を拭く。

 

 

 

「キンキンに冷えてやがるッ悪魔的だッ」

 

悪魔(ゲヘナ)なのはそう」

 

「そういう意味じゃねぇよ」

 

 

 

遅れて気づいた他の倶楽部部員たちも、ゾロゾロと給食部の2人に群がる。

フウカとジュリは、持ってきたラムネとタオルを全員に手渡して行った。

 

 

 

「俺たちは、この一杯の為に働いているッ」

「なるほど極めて硬度の高い救急医学が必要なようですね…」

 

「なんかバンドックと通話切れて全然繋がらん」

「風邪かな?」

「死んだんじゃないの〜」

 

 

ラムネを自慢しようとバンドッグにコールを掛けたが、生憎電話は繋がらなかった。

 

慣れない仕事をしたせいで、倶楽部の部員達は皆くたくただ。

一部はそのまま地面に仰向けになって、泡を吹いている。

 

 

「ランチの手伝いに入って、改めて給食部の過酷さと重要性を再認識しました。給食部の皆さんには尊敬します。」

 

 

倶楽部のみんなが思い思いの方法で体を休めている中、万魔殿の制服に飛行倶楽部のジャケットを羽織った生徒が遅れてやってきた。

昼食時が過ぎて客が少なくなったので、皆を休ませる為に先程まで1人厨房に残っていた生徒だった。

 

 

「ありがとうございますシトレ先輩。そう言って頂けると嬉しいです。」

 

「それなら、これからも手伝いに来てもいいんですよ?というか毎日来てください、いやホントお願いしますずっとここにいてください」

 

「いやそれはちょっと」

 

 

 

給食部の部長であるフウカは、新しい戦友(犠牲者)を逃しまいと食い気味に詰め寄る。

シトレは即答した。

 

 

 

「お願いい“か“な“い“て“ぇ“ぇ“ぇ“」

 

「あはは…」

 

 

足にしがみついて泣き喚く給食部部長に、倶楽部部長(シトレ)は頬を掻いて誤魔化した。

正直なところ、労働に対して利益が少なすぎて割に合わない。

仮にミサイルをブッぱなしていなかったとしても、利益は微々たるものだ。

倶楽部の金庫は傾いたままである。

 

 

「ま、まぁ今度時間があれば…」

 

「ほんとっ!?」

 

 

行けたら行くのニュアンスで行ったシトレだったが、給食部の2人はそれを聞いて目に涙を溜めて喜び合う。

騙した訳ではないが、ゲヘナ生にあるまじき善性さを持つ給食部の2人に少しの罪悪感を感じた。

 

 

 

(やはりイグラ先輩にお金を貸してもらうしか…)

 

 

やめとけ部長。

そいつ(イグラ)はヤクザだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

 

クレーマーやいつも誘拐してくるテロリストに対して、日頃の不満や愚痴を零し泣きつくフウカを宥める飛行倶楽部の生徒達だったが、不意に部長の電話が鳴った。

 

 

「イグラ枢相から?」

 

 

倶楽部の部員達が怪訝な目で見る中、部長が電話にでる。

通話の内容は他の部員達には聞こえなかったが、電話をする部長は何やらみるみると顔を青くしていく。

何か只事じゃない雰囲気を感じた倶楽部の生徒達は、コソコソと通話の内容を考察する。

 

 

「これガチでバンドックが死んだのか?」

「鮮度のいい死体…セナ部長が聞いたら喜びますね」

「お前の古巣は倫理観どうなってんだ(困惑)」

 

 

 

「ハイ…ハイ…分かりました…直ちに準備します」

 

 

そうペコペコ頭を下げ、部長は電話を切った。

電話越しでも頭を下げてしまうのは、やはり部長が元万魔殿生だからだろうか?

元来頭を下げるという事をしない一般ゲヘナ生からしたら、そういうお辞儀の文化は見てて少し面白い。

 

 

「おいお前ら、急いで部室に戻るぞ。出撃準備だ」

 

 

部長は掛けていたエプロンを綺麗に畳んで、フウカに返した。

倶楽部の部員達は、部長の指示に困惑する。

 

 

「出撃ってお前、予算尽きてんじゃねぇのか?」

 

「枢密院からの正式な依頼だ。金はあっちが持つ」

 

 

その言葉に、部員達は互いに顔を見合わせ湧き立った。

死んだバンドッグには申し訳ないが、シュミレーターだけでは荒くれ者の倶楽部員達には物足りないのだ。

やはり実機、実践に限る。

 

 

「それで、今度は一体どこへ飛ぶんですか?またヒノム火山?それとも境界線の向こう(トリ公の住処)?」

 

 

ワクワクした様子で、部下が部長に行き先を尋ねる。

 

 

 

「聞いて驚けお前ら———

 

 

これより我らは山海経へと向かう!!!

*1
バンドッグの自費である。ツンデレか貴様

*2
飛行場は境界線付近の監視所に建てられている

*3
必要だったのか?




人物紹介

・給食部部長(先代)
フウカの一つ上の先輩だった生徒。
結局、過酷な労働環境に精神を病んでしまい逃げてしまった。
だがその勇姿は、若かりし頃のフウカの目にしっかり焼きついている。

・風紀委員長
彼女らも別に悪い子たちではない。
問題なのは、あの子達がつるんでる狸たちよ。
それはそうと撃つけど。

・会計(飛行機倶楽部)
発狂した。
温泉開発部への転職を考えている。
少なくとも、そっちの方が肌には良い。

カイザー潰しが終わった後のイグラは…

  • リオと共謀して魔王を倒しました。
  • セイアを誘拐しに行きました。
  • ティーパーティー候補時代を思い返した。
  • 雷帝になりたいと思いました。(if)
  • シャーレに加入しました。
  • チアキと過酷()したんだ!あいつら過酷s
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