それは、ある晴れた日の朝の急報通知から始まった。
執務室に枢相の素っ頓狂な声が響く。
「は?山海経に外交使節として赴いたチアキとイブキが現地警察に投獄された?」
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山海経は、キヴォトス北東部に存在する自治区であり、現代でいうところの中国に当たる地方だ。
その実、山海経は半ば国家の体を成したヤクザであり、実態は中国というよりかは地中海シチリア島のマフィアの巣窟に近い。
その所為か山海経は他自治区との繋がりが薄く、また山海経自体も外との繋がりを快く思わない節があった。
歴代の指導者に比べ、今代の門主である竜華キサキは良識派であり、積極的に山海経を外へ開こうとする変わり者であった。
それ故に、ゲヘナと山海経の使節会談が行われる運びになった。
当初は山海経は別の自治区との外交を予定していたが、ある日急に連絡が着かなくなり、代案としてゲヘナが選ばれた経緯がある。
トリニティやミレニアムも候補に上がっていたが、トリニティは現在ホストが不在となっていてそれどころではなく、ミレニアムはミレニアムプライスに向けての準備で忙しい為、見送られることになった。
最初は、山海経へは羽沼マコトが直々に赴こうとしていた。
だが学園主催のパーティーの準備が忙しかったので、断ることにした。
のだが……
「イブキ、パンダ見てみたい!」
と鶴の一声により、イブキだけでもということになった。
流石にイブキだけ行かせる訳にはいかず、付き添いでチアキが一緒にいく事になった。
この面子では流石に政治的な取り決めなどは行えない為、ゲヘナとしては親善訪問、山海経としては外交に慣れるための練習として、という暗黙の了解があった。
ちなみに、イロハは黄金のマコト像の発注に忙しいため、血涙を流しながらイブキとチアキを見送った。
それから数日が経ち、今日はチアキ達が山海経に到着する日だった。
そんな中での、冒頭の報告である。
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4代目
「厄介な事になりましたね〜ホンホンホン」
執務机に座りそう笑う目の前の枢相は、勤めて平常に見える。
だが明らかにいつもと違う圧が滲み出ている彼女に、補佐官は息を呑んだ。
イブキは万魔殿の中心的存在だ。
もはやマコトを含め万魔殿の主な業務内容は、イブキを可愛がる事と風紀委員会への嫌がらせだ。その片手間で、外交や国政をしている。統治はしていない。
基本万魔殿は無気力なのだ。
本質的に自由人なゲヘナ生を、ルールを弾く事はできても、統治する事はできない。
ゲヘナに必要なのは担任の先生でもルーム長でもなく、クラスの中心となるガキ大将。
ガキ大将に同級生は頭を下げ、あるいは親しくないので関わらない。
クラス企画は主導するが、暴れ過ぎれば風紀委員が飛んでくる。
実に奇妙なのは、ガキ大将がクラス投票で決まった事だが。
そんな両者が力を携える時があるとすれば、同級生に手をあげた糞教師の顔面を凹ませる時であろう。
クラスの友人達は、過去一に結束感と達成感に包まれた。
すぐ破綻したようだが…
閑話休題
「チアキはともかく、イブキが捕まったのは不味いですねぇ…チアキはともかく」
「直ぐにマコト議長に「待ちなさい」ッ!?…」
直ぐに電話を掛けようとする補佐官に、イグラは待ったをかける。
怪訝な目をする補佐官に、イグラは窓の外を見ながら説明する。
「報告すれば、間違いなく戦争になります」
「せっ…!?」
「あのマコト議長のことです。イブキが投獄されたとなれば、もはやなり振り構わなくなることは、容易に想像がつきます。」
「ですが、仮にそうなればヒナ委員長がお止めになるのでは?」
「マコト議長は旧政権下の参謀本部次席ですよ?
仕事の割り振りすら満足にできない、用兵に関してトーシローに毛が生えた程度の元諜報部あがりの彼女が、なぜ本職相手に対等に渡り合えると?」
「……」
「フィジカルだけで全て解決できるというナイーブな考えは、今すぐ捨ててください」
こちらに振り返った枢相と目が合い、補佐官は冷や汗をかいた。
薄っすらと細める目から覗くイグラの
「でっでは…イロハ先輩には伝えますか?」
「彼女は彼女で危険牌ですね…イブキに万が一があれば、止まらないのは寧ろ彼女の方ですしょう。こういう時こそマコトは勤めて冷静になるでしょうが、イロハはきっとブレーキが外れるでしょう。」
苦虫を潰したように、爪を噛むイグラ。
「ではどうすれば?」
「至急、ミレニアムの専属空中管制官に連絡を入れてください。」
「はっ」
「私は風紀委員会に会ってきます。」
**********
ゲヘナ風紀委員会
本部棟
風紀委員会の応接間で、風紀委員長である空崎ヒナと万魔殿枢相である英印イグラが、机を挟んで向かい合い座っていた。
「それで?何の用事なのイグラ…私は忙しいのだけれど」
「6時間後に、我がゲヘナはある自治区に攻撃を仕掛けます」
「ッ……何のつもり?」
イグラの突然の訪問に心底迷惑そうに懐疑的な目で問う空崎ヒナは、返ってきたイグラの発言に耳を疑った。
武力侵攻など、絶対に認められない。
前にアコがやらかしたけど。
「その前に……」
「?なっ何ですか!?」
イグラは話に入る前に、雛が座るソファーの横に立っていたアコ行政官に目線を向ける。
それは、言外に『出てけ』という意味だ。
「アコ、申し訳無いけど部屋の外に出ていて頂戴。」
「いいえヒナ委員長。この何を考えているのか分からない怪しい羽付きトリニティ野郎と委員長を、密室で2人だけにさせるなど認められません!!」
「いいから出てって。話が始まらない。」
「くっ……分かりました…」
「ホンホンホン」
キッとイグラの方を睨んだアコだったが、涼しい顔で紅茶を飲んでいるイグラに無視される。
最後まで粘ったが、ヒナに言われ渋々と部屋を後にした。
「アコを遠ざけてまで隠したい事なの?」
ヒナの純粋な疑問だった。
アコは感情的になりやすい事が玉に瑕だが、優秀な行政官である。
ヒナの右腕とも言える彼女を、わざわざ外す理由がわからない。
そも、イグラがこうしてヒナと面会する事自体が今まで無かった。
ヒナはイグラの事が苦手だ。
マコトと一緒になって悪巧みをするイグラは、元トリニティ生という事実を除いても苦手意識を持つのに十分な動機になった。
だが一方のイグラは、仕事でたまたまヒナと現場で会った時に、すごい気安く話しかけてくる。
いつも適当にあしらっているが、すごく馴れ馴れしい。正直うざい。
だがこうして仕事中の私に時間を取らせ、会いに来ることは無かった。
平然と執務室に上がり込んできてアコや私を煽りまくるマコトとは、大違いだ。
彼女もそこまで非常識ではないのだろう。
だからこそ、イグラが直接会いに来たということは、何か重大な事が起きているのではないかとヒナは察した。
そしてそのヒナの勘は、残念ながら的中した。
イグラは、ヒナに全てを打ち明けた。
……
………
…
…
…
「なるほど山海経でイブキとチアキが…ね。」
「ご承知かと思いますが、もしこれが仮にもマコト議長の耳に入れば」
「戦争は避けられないわね…」
イグラは自分のソーサーに入った紅茶を一気に飲み干す。
ヒナは頭を抱えた。
ヒナはゲヘナ旧政権下で諜報部をやっていた。
だからこそ、マコトの
「それで?なぜ私にわざわざ?言っておくけど、成り振り構わなくなったマコトを止めるのは、私でも正直厳しいわよ。マコト本人を潰す事はできても、マコトの建てた計画の全てを潰すことは不可能に近いわ。」
「ええ、ですがまだマコトの耳には入っていません。」
「なぜ分かるの?」
「電話が来てませんから。」
「……頼られているのね」
「ホンホンホン」
イグラは笑う。
マコトは部下も同僚もこき使う。
言い換えれば、よく他人を頼る。
マコトは自らの手の届く範囲を、よく理解している。
対してヒナは部下を信頼こそすれ誰かを頼る事は少ない。
それは部下が頼りないのではなく、ヒナが頼り下手なのだ。
組織として、万魔殿より風紀委員会の方が劣っていると、ヒナは認めざるを得ない。
まあそもそもの話、ただの軍閥と治安組織を比べてるのがおかしいのだが。
絶対、その他の部分で風紀委員会が勝っている。仕事量とか…
「私は速やかに山海経に報復攻撃を仕掛け、事態を収束させるつもりです。マコトも、すでにケジメを付けさせて終わった話を掘り返す様な事はしないでしょう。」
「具体的には?どうするつもりなの」
「賠償金は当然として、経済的賠償、現物賠償……具体的にチアキたちがどういった状況に置かれているのかは未だ不明ですが、場合によっては一部領土の割譲なども視野に入れています。」
「少しやり過ぎじゃないかしら?」
「マコト議長に矛を納めてもらう為にも禍根は残せません。使節が投獄されてる以上、何かしらの賠償をさせなければゲヘナの威信に関わります。」
イグラの言い分は正しい。
ゲヘナは仮にも3大学園の一角だ。
下手に加減しようものなら、他校に舐められる。
アビドスへアコが勝手に風紀委員会を動員した時、すぐに撤退させられなかったのも同じ理由だ。
現在はゲヘナ風紀委員会の名声が世に知れ渡っており、他自治区への事件捜査も難しくない。
だが弱小相手に頭を下げて引き下がったと広まれば、他の自治区も介入を拒否し出すかもしれなかった。
ヒナは万魔殿も政治も嫌いだが、ゲヘナの影響力を軽んじている訳ではない。
「私に何をさせるつもり」
「パーティー会場を襲撃してください。『発注されている銅像の顔が気に食わない』とか適当にそれっぽい理由をつけて」
「マコトの注意を風紀委員に縛っておく魂胆ね?」
イグラは何も言わず肩をすくめた。
ヒナはため息を吐いて重い腰を上げる。
勢いよくドアを開けると、ドアの前で耳を立てていたアコが吹き飛ばされた。
「あふっ!?」*2
「アコ……」
おでこを抱えて床に蹲り行政官を見下ろし、ヒナは可哀想なモノを見る目を向ける。
アコは数秒そのまま悶えていたが、ふと我に帰りヒナの前で正座になった。
「……聞いていなかったでしょうね?」
「はい委員長!悔しいことに何も」
「……。そう、いいわ。すぐに皆んなを集めて。」
「?何か事件が起こったのですか?」
アコが立ち上がって姿勢を正す。
アコの問いにヒナは一巡し、イグラの方をチラッと見てからアコに向き直る。
「いいえ———
私たちが起こしに行くのよ事件を」
キリッそう言ったヒナは、自分の背丈ほどあるデストロイヤーを豪快に担ぎ、バサっとマントを翻し廊下の奥へ消えていった。*3
その姿を唖然と見ていたアコ行政官は、ハッと我に帰って素っ頓狂な悲鳴をあげた。
「ヒナ委員長にグレ期?!」
「ホンホンホン」
**********
山海経
留置所にて。
「チアキ先輩…イブキ達これからどうなるの?」
「大丈夫ですよイブキちゃん!すぐに誤解は解けますよ!」
牢の中で、金髪の幼いゲヘナ生が、長い黒髪のゲヘナ生の膝の上でそう言葉を漏らす。
その他にも、牢屋の奥や隅に2人と同じ制服を着ているゲヘナ生が何人も収監されていた。
「誤解が解けたら、一緒にパンダを見に行きましょう。」
「………うん」
不安そうにぬいぐるみを抱いて頷く生徒の頭を優しく撫でながら、帽子を被っていた生徒が今後の後処理に頭を悩ませる。
(どうか……どうかイグラ先輩とマコト先輩が、山海経を滅ぼしませんように…)
万魔殿書記の元宮チアキは、そう神に願わずにはいられなかった。
続きは考えているが、ストックはない…
カイザー潰しが終わった後のイグラは…
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リオと共謀して魔王を倒しました。
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セイアを誘拐しに行きました。
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ティーパーティー候補時代を思い返した。
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雷帝になりたいと思いました。(if)
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シャーレに加入しました。
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チアキと過酷()したんだ!あいつら過酷s