いいとも!頼朝!いざ
ナグサ…どこ…?
第一話 特に謂れのない重罪が突如アコ行政官を襲う。
アビドス自治区のある街。
未だ砂漠に飲まれまいとするこの地で、四つの勢力が対峙していた。
「ん、便利屋の身柄は渡さない。」
【瀕死の病人】アビドス高等学校、対策委員会
ー総勢4名
「アコ、あんたの目的はシャーレ。最初から、先生を狙ってここまできたんだ。」
【一日一惡】非合法組織、便利屋68
ー総勢4名
「便利屋にカヨコさんが居たこと、失念していましたね…」
【国家を有する軍団】ゲヘナ学園、風紀委員会
ー総勢453名
“皆んな、準備はいい?”
【???】連邦生徒会、連邦捜査部シャーレ
ー総勢1名
ドンッ!
槍衾の前に集ったのである。
柴関ラーメン爆破の報を聞き、柴大将を救うため駆けつけた対策委員会とシャーレ。
そこに居たのは、かつて同じ屋根の下で飯を食べ、そして敵対した便利屋68。
そして、便利屋68の検挙を装い、シャーレの先生を捕縛しようと試みるゲヘナ風紀委員会。
便利屋68の加勢などもあり、アビドスと風紀委員会の戦いは膠着状況になっていた。
しかし、その戦況に転機が訪れる。
『…アコ?』
『この状況について…あなたの口からきちんと説明してもらえるかしら?』
「い、委員長ッ!?」
ゲヘナ最高戦力、空崎ヒナの登場により、ゲヘナとアビドスの戦闘は停止したのであった。
今回の騒動は、ゲヘナ風紀委員会の行政官による独断が引き起こしたものであった。
結果的に、風紀委員長が頭を下げることで、事態は収束したのだった。
「アコ、私たちは風紀委員会であって、政治組織じゃない。そういう事は、
「ほぅ?随分な物言いですな、委員長殿。」
だが、そこに聞いたことのない声が割って入った。
黒いシルクハットと細い金縁のモノクル。
黒い背広に長く結ばれた銀髪の揺れる生徒。
そして、背中には二対の猛禽類を思わせる黒い翼。
「……イグラ。なぜここに?」
風紀委員長は、明らかに嫌そうに眉を顰めた。
「昼食です。発破される前に食べ終えられたのは幸いでした。」
「……。」
「その顔、信用されてませんね。」
「当然。貴女たち
嫌そうに睨む委員長に、イグラと呼ばれた生徒は全く意に介せずといった態度で頭を振った。
『えっと、そちらの方はどなたでしょうか?』
急に重くなった場の空気に耐えかね、対策委員会の奥空アヤネは通信越しに聞いた。
「いい質問だね、私は…」
「彼女はゲヘナの政治屋、
「…ホンホンホン」
“枢密院…?”
シャーレの先生が疑問を口にした。
「枢密院は、
「フィクサーとはまた、委員長の買い被りです。」
「……それで?今更なんの用かしら?」
「ホンホンホンッ……万魔殿の許可なしに他校自治区への領土侵犯行為、そして戦闘行為。重大な違反行為だ。」
「しかし、我々の公務を妨害したのも事実。」
「外征は風紀委員会の公務ではない。それは我々万魔殿の仕事だ。」
「便利屋68を捕まえる為に外征することは、その限りではない筈よ。」
「だとしても、他校自治区への武力侵攻はやり過ぎましたな?」
痛いところを突かれたヒナは、言いづらそうに、しかし仕方なく行政官が口実にしようとしていた事実を伝える。
「……この土地は、アビドス生徒会がカイザーPMCへと売却した土地。厳密に言えば、ここはアビドス自治区の外よ。」
“ッ!?”
『どういう…ことですか…?』
ヒナの発言に、対策委員会の面々が騒然とする。
それの様子を見たヒナは、言ってしまった、と渋い顔をした。
だが一人、涼しげな顔をしていた。
「ホンホンホン、土地の売却ですか……ですが、ここがアビドス自治区には変わりない。」
「…どういうこと?」
「確かに、各学園自治区には裁量権が与えられ、土地の売買に連邦生徒会が介入するとことはありません。」
「なら…」
「しかし、自治区境界の変更は別件です。キヴォトス連邦憲章第1条第3節には、自治区境界の変更の権利について、次のように規定しています。“自治区の境界変更は、自治区議会での承認と連邦生徒会での承認、連邦最高裁判所での承認が必要である。”と。」
「……。」
「先ほど確認しました。確かにアビドス砂漠およびその外郭都市の地権の大半は、カイザーコーポレーションへとアビドス生徒会が売却していました。しかし、自治区境界の変更については、連邦最高裁判所の承認どころか、連邦生徒会で動議すら出されていませんでした。つまり、アビドス自治区の境界線変更は連邦生徒会によって許可されていない。」
「……。」
「カイザーの物だが、アビドスの領地。行政官も急ぎ過ぎましたな。
もしアビドス生徒会が抗議するのであれば、明日には行政官殿に出廷してもらわなくてはなりませんな…外患誘致罪の容疑で。」
「!?」
“ッ…”
ヒナと先生はその意味が分かったのか、体を強張らせる。
『がいかん…ゆうち…?』
「ホンホンホン…外患誘致。他自治区と通謀してゲヘナ自治区に対し武力を行使させた場合に適用される罪。法定刑は……極刑のみ。別に行政官がアビドスと通謀していた訳ではありませんが、戦争を誘発させる様な行動を取ったのは事実。」
涼しい顔のイグラとは対照的に、その口からツラツラと流れる言葉に対策委員会の面々は背筋を凍らせる。
なお、キヴォトスにおいて『極刑』とは、学校からの退学と永久追放処分のことである。
ただ学校を退学処分になると必然的にブラックマーケット暮らしとなる。ヘルメット団やスケバン達でさえ学校に所属してることからも分かるように、よほどの腕に自信でもないと人間的生活は望めないだろうという事はここに記しておく。
「……そんなことはさせない。アコは…」
「させるさせないを決めるのは、貴方ではありません委員長。アビドス生徒会です。」
そう告げるイグラを睨むヒナからは、威圧するようなオーラを放っていた。
が、そこに待ったを掛けたのは対策委員会だった。
『待ってください。私達アビドスは戦争を望んでいません。』
「ん、戦争は起きない。外患誘致じゃない。」
「確かにムカついたけど…でも別に、そこまでしなくてもいいじゃない!」
“皆んなこう言ってるけど…もちろん先生としても、極刑は見過ごせないよ。”
「皆んな…ありがとう…」
先ほどまで攻撃を指示していたアコを庇う発言をしだした対策委員会や先生に、ヒナは心強さを感じた…だが。
「ホンホンホン……お気持ちは伺いました。ですが、貴方方の意見もさほど重要ではないのですよ」
そうイグラが告げる。
「?どういうことよ。だって、アビドス生徒会が許せば良い、ってことなんでしょ!!」
「セリカちゃん、ちょっと訳し過ぎ…まぁ、同じですけど…」
「ん、話が違う。」
“どういうこと?”
対策員会の面々が抗議する。
だがイグラは言い放った。
「アビドス“生徒会”の許しがあれば……貴方達アビドス対策委員会は…正規の生徒会じゃないですよね?」
「はぁッ!?何が違うのよ!!」
『正規の…生徒会…?』
“……イグラ、どういうことか説明してもらえるかな?”
「ホンホンホン……調べましたがアビドス対策委員会は連邦s…」
そうイグラが言いかけたが、途中で誰かに遮られた。
「うへ〜…これって、一体どういう状況?」
「「『“ッホシノ(先輩)!!”』」」
イグラの説明を遮ったのは、対策委員会の委員長、小鳥遊ホシノだった。
「ホシノ先輩、今までどこ行ってたんですか?」
すかさずセリカがホシノにつっこむ。
「うへ〜お昼寝してた。」
対策委員会の後輩達からは、頼りにならない先輩に呆れ顔で詰めた。
「…小鳥遊ホシノ。まだアビドスにいたなんて…」
ヒナが一歩ホシノに近づく。
「うへ〜、おじさんのこと知ってるの?風紀委員長ちゃん。」
「諜報部にいた頃少しだけ……。てっきり、あの事件以降アビドスを去ったものと…」
「うへ〜……知ってるんだ。………で?これどういう状況?」
「……風紀委員会が、手違いでアビドスと衝突してしまった。」
「ホンホンッ……“侵攻を画策した”の間違いでは?」
「うへ〜おじさん困っちゃうな〜」
ホシノはゆるい声で呟きながら、頭を掻いた。
だが、
「これは政治的な問題なので、停戦交渉をと思いまして…」
「うへ〜、何それ。」
「ホシノ先輩、生徒会とか正規の生徒会だとか、そいつ訳分かんない事言ってるのよ」
「ふーん…」
イグラがホシノに近づき、耳元で言う。
「もし良ければ、貴女の意見を聞きたいですね…副会長さん?」
「ッ……へぇ?良い趣味してんじゃん?」
「…小鳥遊ホシノッ」
小鳥遊ホシノが小声で呟く。
対策委員会や先生の面々には聞こえていなかったが、真横のイグラと正面のヒナには届いた。
“ホシノ……”
「うへ〜おじさんとしては、次こういう事がないよう頑張ってくれれば良いかなぁ…って…」
「つまり、大ごとにしたくは無い……と?」
「……うへぇ。まぁそう言うことかな」
「ホンホンホンッ……分かりました。……命拾いしましたね、委員長。ああ、行政官が。」
「……ありがとう、小鳥遊ホシノ」
ヒナがホシノに頭を下げる。
「うへぇ!?頭あげてよ委員長ちゃん。」
「ん、ハッピーエンド。」
「いやシロコ先輩、柴関ラーメン燃えちゃったんだけど!?」
「幸い中の不幸という事で☆」
“あはは…”
対策委員会の面々も、話の成り行きから何となく大事には至らなかったことを察し、各々力が抜けた。
「……イグラ、分かっているけどこの事は」
「ホンホンホンッ…大事にしたくない、と先方からの要望です。報告はしません。」
「ならいいわ。」
では、とイグラは廃墟街の方に消えていった。
「ところで先生。実はアビドス砂漠にカイザーのーーーーーー」
こうして、アビドスとゲヘナの戦争は寸前のところで回避された。
だがそれは同時に、アビドスが更なる闇へと突き進んでゆく合図になろうとは、この時誰も思っていなかったのだ。
一人を除いて。
「うひょー生ホシノと話しちゃった!しかも激近距離から!チアキ、写メ撮ったか!?」
『バッチリです!御尊顔、頂きました!』
「おーし、撤退だ。
『こちらもビックニュースを頂きましたので!帰って原稿の準備ですね』
英印イグラ(3年生)
トリニティ生まれの転生者。ティーパーティー候補だったけど、おもろなかったのでゲヘナにトンズラした。一応怪しまれないよう、わざと政争に負けるよう仕向けた。推しは万魔殿一同。もちろんヒナもホシノも好き。わざと汚職官僚感を演出することで、二人のシリアス顔を近くで堪能していたマゾと言っても過言である。“ホンホン”という笑い方はキャラ付け。
元宮チアキ(2年生)
イグラが転校した時に出会った(当時1年生)。チアキを万魔殿に誘ったのはイグラである。イグラとは悪巧み友達で、よく他学園に二人で遊びに行く。薄々イグラが未来を知ってる(前科:連邦生徒会長失踪)ことになんとなく気づいている。イグラのoffモードを知る数少ない生徒。今回はビックネタがアビドスにあると聞き、イグラに付いてきた。
???(3年生)
なんで猿達と一緒に居るの?早く帰ってくるじゃんね☆。