異世界解放戦線~終わりかけの世界に転生って許されて良いんですか?~   作:缶 切男

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クソ雑魚ギャンブラー

ここは賭博場における休憩室、のような場所。

 

「うぅ……えぐ……ぐす」

 

 主に財布の中身を搾り取られた一人の女がいた。

 

「圧倒的にギャンブルが弱すぎる……」

 

 なぜこうなったか、少々時間を遡ってみよう。

 

 

 

 

「すごいぞ少年! この魔法さえあればお姉さんは億万長者になってしまう!」

 

 現在リードはラスが作った魔法を使って賭博場で荒稼ぎしていた。

 

「いやもうやめとけよ……そろそろ店側で対策されるぞ」

 

「なあに大丈夫大丈夫、この時のために他にも魔法は用意してあるからね」

 

 リードは調子に乗っていた。

 

「あ、あれ、ちょっと調子が悪かったかな?」

 

 最初に負け始めたのは全体から見て少ない額からだった。

 恐らく店側にも法術使いがいるのだろう。この時点でラスの作った魔法は徐々に見破られ始めていた。

 というより、対策自体は簡単なのだ。

 賭けが成立した後に出目を変える。

 たったこれだけで対策が完了してしまう。

 まあ見咎められなければいいという条件下でイカサマが許容されているのだ。

 逆に店側もバレないようにイカサマをしてくるだろう。

 それを対策する魔法も作ろうと思えば作れるが、ラスは最初の36倍勝ちで満足しておりそれ以上賭け事をするつもりがなかった。

 

 リードも店に対抗するよう法術を行使するが、店側のほうが一枚上手だった。

 それもそうだ、一個人のプレイヤーと店では出来ることが違いすぎる。

 最初に勝たせるだけ勝たせておいて、後からそれを搾り取れるよう細工が仕込まれているのだろう。

 

 それを繰り返し、冒頭に至る。

 

「圧倒的にギャンブルが弱すぎる……」

 

「2回も言わなくていいじゃないか!」

 

 そう、リードはギャンブルが好きだが圧倒的にその才能がない。

 最初は良かった。だがその勝った金で次の勝ちを呼び込もうとしたのがいけなかった。

 負けたことを皮切りにムキになってその負けを取り戻そうとし、更に負けていく。

 

 勝ったときの快感が忘れられず、引き際を見誤った。

 それだけでリードの財布の中身はすっからかんになった。

 

「よし、帰るぞ少年! 今日は自棄酒だ!」

 

「帰れるなら何でも良いけどさ、金は大丈夫なのか」

 

「安心したまえ、天魔を殺せば使い切れないくらいの金が入ってくるからね」

 

「本当に楽しむためだけに有り金溶かしたのか……」

 

 賭け事の付き合い方としては間違っていない。破滅するよりはマシだが、それで有り金を溶かすのは刹那的快楽主義が過ぎるだろう。

 

 そうしてリードの案内で地上へと戻ってきた。

 外はもう暗くなっていた、常に曇天ではあるが一応昼夜の概念がある。当たり前だが昼はそれなりに明るいし夜は暗い。

 

「階段を降りてたはずなのに、いつの間にか地上に出てるのはビビる」

 

「言っただろう、変動していると。それを利用すれば近道も可能なのさ」

 

「物理法則が機能しないとは思わんだろ普通」

 

「そりゃ法術によって作られた空間だからねぇ、常識が通用しないのも納得できるものだよ」

 

 場末も含めたら地上より広いらしい。

 

「じゃ、俺はここで」

 

「……? 何言ってるんだい? キミも付き合ってくれないと困るぞ」

 

「え、嫌です……」

 

 本日2回目である。

 

「息抜きは必要だぞ少年、まあ私が飲みたいからと言うのは否定しないが」

 

 まあ確かにラスはこの都市に来てからずっと訓練をしていた。

 グラートが仕事でいない日も基本的には自主練をしていたし、そんなラスにはリードの提案は都合が良かった。

 今日のこれもリードなりの気遣いなのだろう。それで賭博場や飲みに誘うのは最悪だが。

 

「……分かったよ」

 

 ラスは観念したようにそう言い、リードと共に夜の年経繰り出した。

 

 

 

 

「さ、好きなものを頼みたまえ」

 

 ラスとリードは深夜まで営業されている酒場に来ていた。

 

「じゃあ肉と野菜とパン」

 

 ラスは周囲を見遣るが、何故かラスとリードの周りには人が居ない。

 近くに人避けの結界が張られてるのではなかろうかと思えるくらいには。

 遠くの客はラスとリードを見て小声でなにか喋っているようだ。

 

「なんか避けられてない?」

 

「まあねぇ、私は嫌われ者だからね」

 

 以前もリードのことを聞いた時は皆避けているようだった。

 

「なぜ」

 

 リードは煙草をくわえ火を付ける。先程までの明るい表情を一変させ憂いを帯びた表情になる。

 

「……以前天魔の侵攻があってね、そこで生き残ったのが私一人だけだった。そこから変な噂が広がったようだ」

 

 そうして避けられるようになったのだと言う。

 やれ不吉だの、やれ天魔の間者だの、色々言われて避けられる様になったのだと。

 

「ほーん」

 

「ほーんって、キミね……」

 

 ラスの反応としては(へーそんなことがあったんだー)くらいのものである。

 

「いやまあ、俺はここに来て1ヶ月ちょっとだしな。殆ど訓練だったし」

 

 そもそもラスは転生者だ。カス女というのは今日で分かったが、この世界特有の色眼鏡がない。

 

「まあそんなこんながあり、こうして避けられるようになったわけさ」

 

「大変そうだな」

 

「いや? 楽なものだよ、落ちる名声なんてものがないから好き勝手できるし」

 

 ちょっと寂しいけどね、と付け加えるリード。

 

「それでもキミみたいに私を避けない人間は多少はいるものだ」

 

 恐らくグラートやシャーリア辺りだろう。

 

「仮に民衆の悪意に晒されたとしても、天魔も殺せないような腑抜け共に私をどうこうすることも出来ないからね」

 

「ふーん……」

 

 と、ここで食事と酒が提供された。店員はラスを奇特な目で見つつも足早に離れていった。

 

「さ、飲みたまえ。私からの奢りだ」

 

 先程までの暗い雰囲気を吹き飛ばすため、リードは明るい様子でそう言った。

 

「いや、忘れてるかもしれんが俺まだ12の子供だぞ」

 

「確かに推奨はされないが、推奨されないだけだ。他の町のようにそれが禁止されてるわけじゃない」

 

「いや、やめとくわ。流石に」

 

 前世では相応に歳を重ねていたため抵抗は無いが、一応遵法精神というのも存在してるためラスは断った。

 断ったが……

 

「賭博をしたんだ、そこまで良い子ちゃんというわけでは無いだろう? それとも何だ、お姉さんの酒が飲めないというつもりか?」

 

「カスのアルハラだ!」

 

 そうしてリードとラスは酒場で夜を明かした。

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