異世界解放戦線~終わりかけの世界に転生って許されて良いんですか?~   作:缶 切男

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武器とその意味

「さて、訓練を始めよう」

 

 ラスとリードは第七訓練場の中央で相対していた。

 第一訓練場とは違い、他に利用する人間が居ないようだった。

 それでも整備は行き届いているあたり、リードも教官なのだろう。

 

「訓練って言ったって何をするんだ?」

 

「そうだな……まずキミの持っている物を見せてくれたまえ」

 

 そう言われたラスは両親から贈られた物を取り出す。

 剣と本、そして杖。

 贈られたは良いがラスには剣以外の物の使い道をよく分かっていない。

 

「まず剣から見ていこうか」

 

 ラスの持っている鋼の直剣。一切の装飾は省かれており、武骨な印象を与える。

 訓練では最多の使用回数を誇り、派手な効果が無いが強力な特性を持っている。

 

「ふむ……死ぬほど頑丈そうだね、少なくとも見た目以上には」

 

「ああ、以前身体強化の魔法を使ってグラートと全力で打ち合ったが、刃毀れすら見せなかった」

 

「それはそれは……良い武器だ。戦場では継戦能力が重要だ、壊れないというのはそれだけで信頼できる」

 

 次は本だ。これに関しては使い方が全くわかっていない。

 

「これなんだが……正直使い方がわからないんだ、インクで書けないし」

 

「おやおや……これは”白紙の特異点”じゃないか」

 

「白紙の特異点?」

 

「ああ、これは理力を込めると無限に頁が増えるんだ」

 

「いや、増えたところで書けないんじゃ意味が」

 

「まあまあ、少し貸したまえ」

 

 その本を受け取ったリードは頁を一枚破き理力を込め始める。

 すると普段見ている魔法陣がその紙に焼き付くようにして刻み込まれる。

 

「以前キミが使っていた『ミダスの掌』だ、発動してみてくれ」

 

 その紙を受け取ったラスは、詠唱し魔法を発動させる。

 

「……消費が少ないな」

 

 魔法を発動させると紙が燃え広がる。不思議と熱くはない。

 焼け落ちた紙がラスの手から零れ落ちる。

 

「その通り、事前に法術を刻んでおけば理力を踏み倒すことが可能だ」

 

「最強じゃん」

 

 転生前のゲームではコストの踏み倒しは往々にしてあったが、そのどれもが強かった記憶がある。

 

「いや、そこまで便利じゃない。頁を生むのに理力は必要だし、術式を刻むのには通常より多くの理力を消費する」

 

 それに、とリードが続ける。

 

「本の頁が増えれば増えるほど、頁を生むのに必要な理力も割合で増加するし、本から切り離した頁の術式は1日もすれば消えてしまい消費の踏み倒しも出来ない」

 

 だがラスの持っている本は辞書並みに分厚く、早々使い切ることもできそうに無さそうだ。

 

「誰から貰ったかは分からないが、キミはその人から愛されていたようだね」

 

 恐らくラスの両親がこの本に大量の理力を込めたのだろう。

 両親の愛を感じ、ラスの心は燃えるように熱くなる。

 それと同時に抑え込んできた天魔に対する怒りが溢れるのを感じる。

 

「やっぱり、天魔は殺さないと駄目だな」

 

「ふむ、キミに何があったかは、まあ予想がつくが。その心意気で天魔をぶち殺していこう」

 

「ああ」

 

「さて、次は杖だ」

 

 ラスは腰から杖を取り出す。それは木で作られており、おおよそ30~40cm程の長さで表面には幾何学的な文様が刻まれている。

 ラス自身、杖がなくとも法術の発動が出来るためこれも使った例がない。

 

「これはこれは、また面白いものを出してきたな」

 

「これも使い方がわからん」

 

「そうだな……一度これを使って法術を使ってみたまえ」

 

「え、でも以前試したがあまり効果は実感できなかったぞ?」

 

「まあまあ、いいからいいから」

 

「……わかった」

 

 ここは目で見てわかりやすい形のほうが良いだろう。

 

『荒れる埋火 暗き火鳥 それを逃れること適わず 盛る炎は獲物を逃さず 飛んで火に入れ夏の虫』

 

 ――黒煙の雲雀

 

 以前試験で使用した『飛炎』の改良魔法である。

 以前よりも大きく、そして黒い煙を放つ炎の鳥は設置されてた魔法に突撃する。

 藁で作られた案山子のような的は突撃の瞬間に爆ぜ、その的を燃やし尽くす。

 消費理力と威力を大幅に改善した代物である。

 

「おお、良い魔法だ。威力は申し分ないし、見た目が派手で華がある」

 

「発動はさせたが、どうすれば良いんだ?」

 

「ああ、少しだけ理力を込め『反響』と唱えてみたまえ」

 

 ラスは少量の理力を込め、『反響』と唱えた。

 すると、先程発動された魔法と同様の黒煙を放つ鳥が再度燃え尽きた的に突撃する。

 

「……え?」

 

「たしか、再演だったか反響だったか。そんな感じの名前が付けられている法術の杖だ」

 

「理力の消費は殆ど無いし、最強か?」

 

「いや、そういう訳にもいかない。別の魔法を使ってみると良い、誰も使ってない理由がよく分かる」

 

 そう言われてラスは以前グラートとの実践訓練で使った身体強化の魔法を試す。

 

『唸れ骨肉 満ちよ鮮血 際限なき心ガッ!?」

 

 詠唱段階で大量の理力を持ってかれたラスが、立つことも出来ずにその場に膝をつく。

 

「分かっただろう? 次に使う理力の消費が大きく増加するんだ」

 

「さ、先に言ってくれ……」

 

「いやあ、大した危険でもないし自分の身で知るのが手っ取り早いだろう。それに理力消費増加は次の1回にしか効果は出ないし、時間が経てば自然と消えるものだ」

 

「それにしたって消費が多すぎる……」

 

 順調に理力が増えてたラスは、規模の小さい法術を数回唱えただけでは枯渇しないはずだったが、この”反響の杖”の消費はラスの理力の大半を消し飛ばすものだった。

 

「廃れた理由がわかるだろう?」

 

「なるほど、だから誰もわからんとしか答えなかったのか」

 

 過去に作られ、そして廃れた法術の道具。

 グラートも食堂で出会うベテラン法術使いも、口を揃えて知らないと言うばかりだったので、今日リードに教えられるまで杖も本もその効果が不明だったのだ。

 

「いやまてよ?」

 

「どうした少年」

 

「いや、一つ思いついたことがあってな」

 

「ふむ、では休憩にしよう。そろそろお昼どきだしね」

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