クラフト旅物語 ―螺旋の証と絆のキセキ―   作:ユゥイ

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9章 始まりの風、心を結ぶ旅へ ①

〈第1節 前夜の静寂〉

 

 

カナズミシティの空に、静かな夜が降りていた。

石造りの宿の屋上でアマネは手すりに身を預け、満天の星空を静かに見上げていた。

隣ではアブソルが同じように空を仰ぎ、彼女も物思いに耽っているようだ。

 

「……明日から、また旅が始まる」

 

ぽつりと漏らした言葉が、夜風に運ばれて消えていく。

 

「いろんなことがあったね。悲しいこともあったけど、素敵なことがたくさん」

 

アブソルはただ静かに聞いている。

 

「迷子の果てにたどり着いた街だけど、ここに来て、良かった……心からそう思うんだ」

 

「アブソル。私は、知らないことがあまりにも多いんだね……その答えを探してみたい。君と一緒ならそれができると思う」

 

 

アブソルは深く頷いていた。でもその瞳に、どこか懐かしい“悲しみ”の影が揺れて見えた。

幼い頃に見た、あの瞳。

今の彼女が重なって見えた。

 

 

君にも抱えているものがあるんだろう。

私に伝えられない秘密が。

 

そして、私たちの絆が試される日が来ることも確信している。

 

「大丈夫。アブソル、何度でも言うよ」

 

「私たちは、何があっても唯一無二の相棒(パートナー)だ」

この『絆』は何があっても変わらない。

そう何があっても。

 

知らないのはいつも私。

けどね…実は君が知らないことも、あるんだよ。

でもそれは言葉にしない。今は伝えない。

 

…君が私の言葉の意味に気づくのはいつだろう?

 

「これからもよろしくね。アブソル」

アブソルはただアマネにピタリと寄り添っていた。

 

ふと、ひとつ脳裏をよぎることがあった。

そう、思い出したのはひと月前のこと。

故郷を発つと決まったとき、貴重品以外何も持たずの有り様で私は旅立とうとした。

旅支度にかけた時間などないに等しく、翌日の夜明け前に。

家族の機回しがなければ、本当に何も持たずに旅立っただろう。

 

持っていくものなどない。

アブソルさえ側にいてくれるなら何とでもなると…本当にそう思ったんだ。

 

でも、今の私はそのような極端な行動はもうしない。

このホウエンの人々…特に彼女のおかげで、私は大事な一歩を踏み出せたような気がする。

 

 

強く穏やかな風が、ふたりの間を静かに吹き抜ける。

アマネはもう一度空を見上げた。

さまざまな想いが胸を過ぎていく。

明日の旅立ちを思うと、これまでのさまざまな記憶が頭を巡るのだ。

会議の後も今日まで慌ただしかったことを思い出す。

 

 

 

夜は静かに更けていく。

アブソルとふたり夜の風の中、思いを馳せる。

その静寂は穏やかに流れていく。

 

 

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