クラフト旅物語 ―螺旋の証と絆のキセキ―   作:ユゥイ

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あれ?キャラクターが動き回る…
私の考えを超えていく…。

続きが気になってる人…居るんでしょうか?
そこはちょっと心配ですが、せっかく書いたので投稿は続けようと思っています。
皆さんにも楽しんでいただけると嬉しいです。


第2章 ジョウト地方へ向け出航。(ジョウトに着くとは言っていない)

 

 

故郷を出た少女は、大きな港のある商業都市「ナゴミシティ」に辿り着いた。

この町は数少ないシンギ地方と他地方を繋ぐ玄関口。

ここからジョウト地方とホウエン地方へ向かう定期船が出ている。

 

空は晴れ渡り、まさに旅立ち日和。

けれど、胸の奥にはどこかざわめきが残っていた。

 

「…ジョウト地方、か」

 

アブソルの白い毛並みが陽の光にきらめいている。

少女はリュックを背負い直した。

足取りは軽い。船の出航までまだ時間があった。

 

ふと、思い出す。

父と叔母がよく語っていた、幼い頃に一時暮らしていたというジョウトの町並み。

活気にあふれる市場、見たこともないポケモンたち。

 

(……本当に、行けるんだ)

 

小さく、胸が高鳴った。

しばらくして少女はアブソルと視線を交わすと、ゆっくり船に向かって歩き出した。

 

汽笛が鳴っている。

⸻出航の合図だ。

 

ふたりは誰に手を振ることもなくただ前を見つめ、これからの旅路に想いを馳せる。

 

白い船は大海原へと滑り出していった。

 

 

 

 

 

 

 

辿り着いたのは、潮風と陽射しの強い活気ある港町だった。

 

だが、どこか懐かしさを感じさせる潮の香りとは裏腹に…建物の作りも、人々の着る服も少女の故郷シンギ地方とはまったく異なっていた。

 

そして、それ以上に感じる違和感がある。

 

 

持ってきた手作りの地図を開き、少女は首をかしげた。

 

「……ここ、本当にジョウト地方?」

 

それは世界地図。幼い頃に父が使っていた手作りのものだったが、町の名前と大まかな位置は確認できる。

 

見れば見るほど、今いる場所はジョウト地方ではなかった。

そもそも目の前の看板に大きく『カイナシティ』と書かれているのだから間違いない。

 

 

そう、ここはホウエン地方。

活気あふれる港町「カイナシティ」である。

 

 

「なぜだ」と言いたげな目をして固まるこの少女、本人にあまり自覚がないが裁縫以外にも大きな弱点があったのである。

 

前代未聞、超弩級の「方向音痴」

 

存分に発揮されたその壊滅的方向センスにより、乗る船を見事に間違えていたのだ。

直感に優れるアブソルがカバーし切れないほどであることから、その重傷度合いがわかる。

 

 

それでも本人に自覚はない。それどころか「ちょっと道に迷いやすいだけ」と本気で思っていた。

アブソルの深いため息は、この先の己の苦労を知らせる前触れのようだった。

 

アブソルは不安げな視線を少女に送る。

しかし、アブソルの思いは今回も正しく伝わっていないようだ。

 

「……うん、大丈夫。旅なんだもの。最初から思い通りにいかない方が当たり前、だよね。」

 

少女はアブソルの頭を軽く撫で、港の賑わいの中へと足を踏み出した。

 

 

ここカイナシティは貿易の中心地として知られ、たくさんの人とポケモンが集まる街だ。

 

 

(……あの人も、この人も、何体もポケモンを連れている)

 

シンギ地方では考えられない光景だった。

自分の故郷では、相棒は“唯一無二”の存在であることが常識。複数のポケモンを持つことは、あまり歓迎されない。

 

法律的にはポケモンを3体まで所持することができるものの、複数のポケモンを連れていると耐え難いほど冷たい視線にさらされるのだ。

 

交易の拠点となる大都市を除くといまだポケモンは1人一体が主流なのである。

シンギ地方が他地方と交流が少ないのは、これが大きな理由だろう。

 

 

そのため少女は、噂でしか聞かない複数のポケモンを手持ちにしている人々が町をゆく光景に目を丸くしていた。

 

そんな街でも時折、アブソルとすれ違う人から警戒するような視線を投げられることがある。

 

開放的で活気に満ちたこの街にも古い迷信は残っているらしい。

シンギ地方のそれとは異なり、あくまで「古い話」として扱われる程度なのだろう。視線といっても、少し怪訝な顔をされる程度であった。

 

少女は心の中で苦笑したが、特に気にする素振りは見せなかった。

故郷での出来事と比べれば、何もないに等しいからだ。

 

 

そんなことを考えながら歩いていると、

通りの向こうからひときわ大きな声が響いた。

 

 

「誰かー! 青い帽子を被った男の子を見ませんでしたか!? いなくなっちゃったんです!」

 

慌てた様子の少年がライチュウを連れて人を探している。

その焦った声に周囲の人々もざわめいたが、忙しさもあってか誰も足を止めようとはしない。

 

少女はアブソルと顔を見合わせ、迷わず歩み寄った。

 

「何か困ってるなら手伝うよ」

 

そう声をかけると、少年は驚いたように少女を見た。

一目で他所から来たと分かる服装の少女と早々見かけない珍しいポケモンのアブソルの組み合わせに戸惑った様子だったが──すぐに縋るように頷いた。

 

「あ、ありがとう! 実は弟が迷子になっちゃって…。たぶん、遊んでるうちにはぐれちゃったんだ!」

 

「どんな子?」

 

「えっと、ミズゴロウみたいな顔で…青いキャップをかぶってる!」

 

(……ミズゴロウ、みたいな顔?)

内心で軽くツッコミを入れつつ、少女はアブソルに目配せした。

 

(…帽子の色しか、分からない)

 

微妙な情報だったが少女は頷いた。

静かに尻尾を振り、こちらを見つめているアブソルに「探しに行こう」と合図を送る。

 

自然災害を予知し「災いポケモン」と誤解を受けるほど直感に優れるアブソルと協力しての捜索。

クラフトマスターとして鍛えた観察力も活かし、少女とアブソルは直ぐに小さな違和感を拾った。

地面に微かに続く小さな足跡。

アブソルが感じ取った人混みを避けるように流れる子供の気配。

 

捜索をはじめて数十分。港にある倉庫の影でひっそりと身を潜める小さな男の子を見つけた。

 

「……いた」

 

声をかけると、男の子はびくっとして振り向いた。

初めて見る少女と、傍らに立つアブソルに怯えた様子だったが──

 

「……大丈夫。君のお兄ちゃんが探してるよ」

 

ライチュウを連れた少年なんだけど、必死に君を探しているんだ。と言葉を添えて少女は優しく手を差し伸べた。

少し悩むように躊躇ったあと、男の子はその手を取った。

 

無事に少年の元へ弟を連れて帰ると、彼は涙ぐみながら何度も頭を下げた。

「本当にありがとう!お姉さん‼︎」

 

頭を上げると、しがみつくように弟を抱きしめた。

「かっちゃん、本当に無事でよかった…!」

 

弟もはぐれて心細かったのだろう。少年の姿が見えると駆け寄り、今までずっと泣いていた。

 

弟が泣き止むと、少年は一枚の地図を差し出した。ホウエン地方の地図のようだ。

 

「これ、じいちゃんが昔使ってたやつなんだ。よかったら旅のお供にして!」

 

僕はポケナビがあるから使わないんだよね。と言葉を続ける少年から地図を受け取る。

詳細で読みやすい。思った以上にしっかりとした作りの地図だ。

 

「ありがとう。大事に使わせてもらうよ」

 

そう言って、少女は少しだけ柔らかく笑った。

 

こうして最初の町、カイナシティでひとつの小さな絆を結んだ。

慣れないこの異国の地で始まった、彼女とアブソルの冒険。

マイペースな少女としっかり者のアブソル。

ふたりの行く先はハプニングと異文化交流に満ちたものになるのだろう。

 

そう、この物語は『異国の少女に振り回される周囲と少女自身の成長の物語』である。

 

 




(小話)主人公と別れた後の話↓



「ねえ、お兄ちゃん!あのお姉さんなんて名前なの?」

「え?」

少年はハッとした。

「やっちまった…どうしよう!」

「?」

兄のあまりの慌てように弟は首を傾げる。

「かっちゃん…俺、お姉さんの名前…聞き忘れちゃった」

ショボン、という音が聞こえそうなほどの落ち込みぶりだ。

「お兄ちゃん、大丈夫だよ!あのお姉さんってなんか目立つし、とっても良い人だから…また会える気がする!」

「かっちゃん…」

弟は満面の笑顔でこう続けた。

「今度出会えたら僕たちがお姉さんを助けてあげれば良いんだよ!お・ん・が・え・し!」

確かに古風で特徴的な服装の少女だ。
困っている人を放っておけない優しい人。
そして異国の少女の1人旅。
噂にならないほうがおかしい。

「そうだね。その時は、忘れず自己紹介してお礼をもう一度伝えよう!」

縁は繋がり、まわっていく。
再会の日は必ず訪れるだろう。
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