クラフト旅物語 ―螺旋の証と絆のキセキ―   作:ユゥイ

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人の役に立てるって嬉しいな。 
そんな話です。

なかなか、皆さんご存知のキャラクターが出てこず…すみません。
今回も少女の日常回です。次の話では1人、皆さんがご存知の方がチラッと登場します。


第4章 コトキタウンの水車

 

 

高い木々に囲まれた道を、少女は静かに歩いていた。

あれから数日滞在したのち、カイナシティを出て隣町のキンセツシティを目指していた。

カイナシティの人々から「ホウエン地方の中心に位置する近代的な街だ」と聞いたので次の目的地としたのだが…

 

……そう、彼女の方向音痴は筋金入りだ。目的地に自力で辿り着けたことは、いまだ一度もない。

 

彼女が歩いているのは「静かな小道」

サイクリングロードなどの近代的なものは全く見当たらない。

 

 

そうしてたどり着いたのはのどかな田舎町、コトキタウンだった。

傍らに寄り添う相棒、アブソルの瞳は「やれやれ、今度はどこに着いたのだろう」とでも言いたげだ。

美しい体毛を揺らしながら、周囲に気を配って歩いている。

 

流石に少女も、また違う町だと言うことは直ぐに気付いていたのだが…

ものづくりの経験や見識を深めたいとは思っているが、確固たる目的を持った旅でもない。

そのため(ま、良いか。綺麗で落ち着く街だな)くらいに考えていた。

 

そしてふたりは町中を散策しようと静かな小川を眺めて歩いていた。

すると、壊れた水車小屋と困り顔でそれを眺める人たちに出会った。

早く修理したいが、直せる職人がぎっくり腰で動けないらしい。

 

「よければ、わたしが直しましょうか」

自分の技術が役に立つのではと考えた少女。「わたしはクラフト職人で修理に必要な技術を身に付けている」と説明してみる。

しかし、少女の若さゆえに周囲には戸惑いの色が浮かんだ。

だが、その腰につけたクラフト用工具と真摯な瞳を見て…まとめ役らしき年配の男が頷いた。

 

任せてみよう、と。

 

そのまま町のすぐに近くにある材木置き場へ向かうことになった。

アブソルはその鋭い感覚を頼りに、道中の安全確認を欠かさない。

 

木々の影などに潜み襲いかかっててくる野生ポケモンをいち早く察知しすると、アブソルの体から光の幕が瞬時に張り巡らされる。その幕が飛びかかってきた野生ポケモンの爪を防いだ。自分の判断で「まもる」を的確に使っているのだ。そして次の瞬間には、鋭い一撃を相手の脇腹に叩き込む。「じごくづき」だ。反撃の隙すら与えない。

 

材木置き場に到着すると、木材の中から乾燥具合のちょうど良い適した樹種のものを探す。

 

「これがいいかも」

少女が材木に手を伸ばすと、アブソルは目を細め、静かに首を縦に振った。

アブソルはとても長寿なポケモンである。シンギ地方で育ったことで、ものづくりについての見識も深い。

優れた直感、そして知識と経験に基づくアブソルの判断は少女の中にある不安をいつも追い払ってくれるのだ。

 

作業を始めると、アブソルはさらに力を発揮する。

それは阿吽の呼吸とも呼べる連携だった。

少女は木目をよみ木材に墨付けをするとアブソルに合図を送る。

 

アブソルが正確な角度で「サイコカッター」を放ち、不要な部分を切り落とす。

その正確無比な動きに、町人たちは息を呑んだ。

 

年若いながらもマスターに到達した少女のクラフトの腕前とふたりの絆が見てとれる。

 

次に少女はベルトポーチからノミや鉋を取り出し細かな調整や細工を施していく。

大きな材木を動かさなければならない場面では、野生のポケモンたちや町の人が連れているヤルキモノが手伝ってくれた。

 

人懐っこいのか、興味深げに見つめてくるポケモンの視線を感じていた少女。

この町の人たちは野生のポケモンたちとも良い関係を築いているのだろう。

 

少女は手慣れた様子で、彼らと作業を進めていく。

重たい丸太や材木を運んだり、ホゾを切った木材をはめ込んでいく。ポケモンと協力して作業する文化をもつシンギ地方ではどこでも見られる自然な光景。少女の瞳が溌剌と輝いていた。

アブソルはそんな少女に意識を向けつつも作業全体を冷静に見守り、安全管理に勤しんでいる。

 

流れるように進む作業。

作業の様子を覗き込んだ町人たちは、言葉もなくその手捌きに見入っていた。

刃の流れ、音の響き、少女とアブソルの息遣いすらが一つの“技”のように感じられた。

 

 

日が傾く前に新しい羽根板が完成した。

 

少女の見立てでは、長年の使用により羽根板が傷つき傷んでいた。

雨の日などの川の水には土砂も含まれるだろうから長年使っているのならばおこる故障だ。

丁寧に使われてきたのだろう、軸などの構造を支える部分は傷んでいなかった。

 

そんな大切に物を使う人々だと見てとれたからこそ、助けたいと思ったのだ。

 

 

さっそく水車の修復作業に移る。

町の男たちも作業に加わり水車から破損した羽根を取り外し、新しいものを取り付ける。

アブソルが周囲を見張り、足元の濡れた石に気をつけるよう促してくれる。時には「みらいよち」で危険を予知し、事前に注意を促すこともあった。

 

そしてみんなが見つめる中、水車は緩やかに回り出した。

水しぶきがキラキラと舞い、水が羽根板を叩く音が心地よいリズムで辺りに響く。

その音に合わせて、住人たちのの歓声が森にこだました。

 

「本当に、ありがとう!」

少女の両手をとり礼を言う住人たち。少女はアブソルと顔を見合わせ、静かに微笑んだ。言葉は多くないが、ふたりの絆は誰よりも強い。それがこの作業を成功に導いたのだと無言で確かめ合った。

 

夜、町の人々と共に食卓を囲みながら、少女は改めて思った。

——どんな土地でも、自分たちの力でできることがある。『ポケモンと心を合わせればきっとどこにいても役に立てる』と。

 

翌朝、住人たちから贈られた小さな木彫りのお守りを握りしめ、少女は再び旅立った。アブソルも静かに寄り添う。この道の先にまだ見ぬ世界が待っている。

 

 

——どこにいても、ポケモンと心を合わせれば、きっと役に立てる。

心から信じられるようになったその思いを胸に、ふたりはまた歩き出す。

 

 




〈主要キャラクター紹介〉
⚫︎少女(主人公)
「アブソル、ホウエンの人はみんな優しいね」

地元を飛び出し、ジョウト地方を目指して旅に出たは良いものの…船を間違え、着いてみればホウエン地方。
そして、カイナシティからコトキタウンに辿り着いた方向音痴ガール。
君はどうやって川を渡ったんだろう。

⚫︎アブソル
少女のパートナーポケモン。献身的に寄り添うできる女(♀)。
マイペースな少女が心配すぎて、モンスターボールに入る気にならない。
それを知らない少女が相棒のために「快適なモンスターボール」を作ろうと一生懸命に励んだ結果、シンギ地方で一番腕の立つボール職人に。

↑それが不本意な形で旅立たねばならなかった遠因のひとつである。
…なんてこった。
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