カンナとインモラルにいちゃつく話   作:33z

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水着カンナ実装発表後~「司令室より監視員、スライダーに急行を」開催前に書いたやつ
※pixivにも投稿アリ


今日一日の感想ですか、

 ”うん。「普段」と違っただろうから、どうだったかなって”

 

 時刻は深夜。終電も終わった外の暗闇と、日が暮れて尚残る夏特有の熱気。そして、それら全てを遮断している窓の内側。暑さとも湿気とも隔離されたクーラーの効いたシャーレの執務室に残っているのは、いつもの通り私と先生。

 

 初めてここを訪れた時からどれだけたったか。思い起こそうとすれば多少の時間を要する程にはここに通ってきた。

 当番として。そして他でもない私自身の意志で進めた、垣根を超えた関係として。

 

 深夜残業明けに端を発し、ハロウィン、バレンタイン、ホワイトデー。そして何でもない日常の中で、密やかに重ねた睦み言。

 

 嗅いだり嗅がれたり、はたまた縛られたりと。なんだか一般的にイメージされるそれらとは少しだけ外れていた自覚はあるが、その中でもこれは。

 言葉にすればなんてことは無い。ただ単に日中の業務をこなして、以前から予定されていた当番の為に時間通りにシャーレに赴いただけ。なんなら、緊縛よりは余程まともかもしれない。

 

 個人的な認識が、常識が、そう考えることを許さないだけで。……私自身はむしろ危険だとさえ考えている。境界というか、それこそ垣根というか。それらをぐちゃぐちゃにして混ぜあわされてしまうような気がするから。

 

 ──身に纏うインナーが、水着である。

 たったそれだけでこんなにも。火照ってしまうだなんて。考えたことも無かった。

 *

 言葉を探し、でも胸の内の感情を上手く出力できないまま。

 

 先生の言葉に促されて。

 躰の奥からの熱に浮かされて。

 艶の籠る吐息が自身の喉から漏れ出して。

 

 タイピンを外し机に置く。カツン、という硬質な音がやけに耳に響く。

 ネクタイの結び目に人差し指を引っ掻け、首元を緩める。夏の暑さとは別の、私自身の熱さが少しだけ外気に溶けて心地が良い。

 

「朝起きて、シャワーを浴びて。いつもの通りに下着を取ろうとして」

 

 一つづつ丁寧に。普段であれば夜の、非日常へと移行する為の動作がしかし。今は「今まで」の時間を、日常を丹念に思い浮かべる時間に変わる。

 

「でも、すぐにそうじゃなかったと思い、これを取りました。……その時点でもう」

 

 言葉を切って緩めた結び目を解き、ネクタイを一枚の布に戻し畳んでタイピンの横に置く。

 首元から発散できる体温だけでは到底処理が追い付かなくて、はけ口を求めてワイシャツの第一ボタンを外そうとする。

 

「水着を着て、その上にいつもの制服を纏いました。そして、寮を出ました」

 

 外そうとして、手袋を付けたままの指先ではうまくボタンを外せなくて。熱を吐き出した口で手袋を噛み、右手を解放する。

 

 ”そっか。どうだった? ”

「別に、普段と変わりません。……その筈でした」

 

 見られている。

 ……どうにも前回からこっち、「見られる」事も愛撫なのだと知識ではなく躰が理解していて。彼が私の動作を追っているという事に、別方向からの熱をくべられてしまい。

 

「でも、どうにも人の視線が気になってしまい。……サンドイッチを買ったコンビニの店員にも、挨拶を交わした部下にも、目を合わせられなくて」

 

 外から見れば何の変哲もない私。けれど私の意識だけが違う。身に着けたインナーが違う。いや、そもそもインナーでは無くて水着なのだ。

 だからなのか、普段は気にも留めない、人からの視線を意識してしまっていた。

 端的に言って。

 

「……ドキドキ、しました」

 ”なんでドキドキしたんだろうね? ”

「……普段と違う、格好をしていたからだと」

 

 自由になった両手でようやく第一ボタンに指をかける。熱に浮かされて手が震え、上手くボタンを掴めない。もどかしさに苛まれながら。二度三度と失敗してようやくボタンを外せた。

 

 ”どうして? だって誰からも分からないよ? ”

 ”カンナが、下着代わりに水着を着ているだなんて”

「……っ」

 

 これは、問いかけの形の自問自答。

 何にドキドキしたのか、何に興奮するのか。……いわゆる「性癖」を、自らに分析させ言語化させて、それを語らせる。

 そういう類の、羞恥プレイ。

 

 ……何も興奮しているのは私だけではない。

 いつもとは違い、背もたれを前にして顎を置き、一段と目線を下げた先生の視線。()め付けるような角度からの目線。そこには夜特有の、私しか知らない「色」が多分に含まれており。興奮を共有しているのだと肌で感じる。

 

 私を辱しめ、その色に染まっている。

 

「……私自身が、水着を着ていると。人前で着ることのない水着を、誰にも分らない様にわざわざ。本来であれば着る必要も実利も無い水着を、その事実に」

 

 そして。あの「色」をもたらせているのが、他ならぬ私であると。二つの事実が私を脚から絡め取って、どうしようもなく躰が疼く。

 

 続けてボタンを外していき、行儀よく整列したボタンが全てみっともなく取っ散らかる。

 収まるべきところに収まらず、両端を閉じる役目を解かれて隙間を作り出した。

 隙間から感じる外気が火照った体の熱を逃がしていく。一筋の空間から外の風が入り込んで、熱と冷気のコントラストが心地よく。

 

 しかしまだ、まだこれを開く時では無いのだと。まだ「隙間」の状態で良いのだと。散々「いろいろ」を教え込まれた躰が訴えてくる。

 

 ”その後はどうだった? ”

 

 だから私は、続いて、スカートのホックに手をかけた。……ああ、私も既にどうしようもなく、「色」に染まっている。

 

「公安局について、部下と接して、午前中は書類仕事でした。……普段と変わらない部下からの視線がどうにも気になって、それで仕事に」

 

 あえて焦らすように、意識して手元をもたつかせて、ホックを外す。興奮を共有しているのであれば、私がスカートを卸すことに私自身も、そしてそれを眺める先生も昂ぶりを覚える筈だから。……本当にもたついたのか、私が意図出来た通りに焦らすことができたのかはさておいて。

 

 ”……集中できたでしょ? ”

「……はい、驚くことに」

 

 ホックを外したスカートを床へ降ろし、ブーツへ引っかかりながら片足ずつ外していく。

 ……本当に自分でも驚いたのだが、なぜかとても仕事に集中できたのだ。

 部下からの視線が、そんな訳が無いのに私を苛んでいるような気がして。「何をふざけているのか」と。言われていない妄想の、諫める言葉が。後ろめたさを抱えている私を突っつき、責めて。

 

 本来なら。本来なら下着を身に付ければ良い。その為の機能を十分に備えていて、それが本来の目的なのだから。

 それを無視して、「日常生活における快適さ」では(キヴォトスでの技術を十全につぎ込んで快適性を増していて尚)軍配が上がる下着を付けずに水着を着ている。

 何も業務に差し障りが出ている訳でも、疎外される訳でも無い。それでも、普段であれば行わない行為が。

 たった、たった下着を水着に変えただけの行為でここまで興奮するだなんて、思っていなくて。

 

 日常を興奮に変えているというのが、私が抱えていた後ろめたさ。それを更に熱に変えて、また後ろめたさを持つ。

 その永久回路で頭が沸き立って、逃避の様に業務に打ち込んで。結果的に、普段より仕事は捗った。そういうからくり。

 

 ……火照った熱の行先を持て余した、私を除けば。

 

 ネクタイと、手袋と、スカート。

 制服の要所要所のパーツは剥かれているのに、ジャケットと、中途半端に隙間を晒したワイシャツと。水着を覆うタイツと、ブーツはそのまま。

 

 隙間の奥に見える、白と黒で彩られた競泳水着。今日一日の、私のインナー。

 本来の役目でないのに、私と先生のプレイの為に身に纏わせた水着。

 

 アンバランスな格好にさせられ。

 制服(日常)水着(非日常)がぐちゃぐちゃに混ぜられ、一緒くたになって。

 今までは隔離された空間で重ねられていた睦み言が、私の日常へ侵食し始めたのに。その事実に陶酔感を覚える私はいよいよ、どうしようもなくなっている。

 

 恥ずかしさに伏せていた目を先生へと向ければ、言葉を促すための無言と頷きを一つ示された。

 焦らそうとした私は何のことは無い、私も勝手に自爆しただけ。

 

 ……心のどこかでは分かっていたし、望んでもいた。なぜなら、これが一番興奮するのだから。

 彼にいいように責められている。求められている。──興奮、させている。私が。私だけが。このキヴォトスで。

 

 後ろ暗い愉悦と艶めきが私の火照りを加速させていよいよ抑えられなくなって。少しでも涼しさを。熱を鎮める何かを求め。

 開いたワイシャツの右端と左端をそれぞれ指で持って。

 

「……私は」

 

 ゆっくり、ゆっくりと左右に広げる。目の前にいる彼に見せつける為に。

 

「水着を身に着けて」

 

 今日一日の感想なんて、今の私を見れば一目瞭然なのだと。言葉より雄弁に躰が語る。

 

「興奮していました……っ」

 

 彼の視線が私の肢体を余すところなく貫き、深く湿気った影を落とした。それが、昼と夜をごちゃ混ぜにした深夜を始める合図。

 ──今日は多分、これまでで一番長い夜になる。

 そんな確信と共に。私は彼の元へ一歩、歩を進めた。

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