ツルギミコ   作:シマムラテツカネ

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エレサガの更新が2年間ないにも関わらず本小説を読んでいただき、誠にありがとうございます。
本作のキャラクターは全て私のオリジナルですが場合によっては見覚えがあると感じるかもしれません。
もし作中の描写によって不快な思いをしたら読むのをやめていただいて構いません。
これは私が書きたいように書いた物語です。


特別体験版・前編

見渡す限りの青空。

遠景に広がる廃墟群。

廃材を再利用して作られた東洋風の建築物。

まるで夢か幻想のような出鱈目な光景の中を、ひとりの少女が歩いていく。

少女は巫女のような服装をしてはいるが明らかに一般的な巫女装束ではない。

胴衣は丈が短すぎてへそが見えており、側面は紐一本で繋がっているため腋も脇腹も丸見えだ。

一見袴に見える腰の装束もやけに丈が短く、太腿が見えるか見えないか。

露出度が高いだけでなく腕にはサラシを巻き脚には革靴の上から巫女袖を履くなどあまりにも奇抜な格好だ。

加えて勾玉の首飾りと「ヒ」の字が書かれた鉢巻を身に付け⋯手に握られているのは、一風変わった両刃剣。

 

「おい」

少女は目の前の人物にぶっきらぼうに呼びかける。

「あ?なんなのだお前は」

人物と言うには語弊がある。

何せ、相手は姿形こそ人間の少女だが猫のような耳と尻尾を生やしていたのだから。

「ってお前はいつもの巫女なのだ」

「ミケ、俺にはヒミコって名前があるんだよいい加減覚えろ」

可憐な容姿に反して荒っぽい口調の巫女⋯ヒミコは猫女のミケに言う。

「お前な、村の子供の小遣いなんか巻き上げて何がしたいんだよ」

「何って⋯オイラは泣く子も黙るナゴロ山賊団の頭領だから盗みを働くのは当たり前なのだ」

ミケは悪びれずに言うが、山賊と言うには規模が小さすぎる。

「わかったからさっさとその金返せ。あともう真面目に働け」

ヒミコは剣を構え言う。どうやら実力行使に出るようだ。

「真面目に働きたくないからオイラは山賊になったのだ、今日こそはお前を倒して名を上げてやるのだ!」

ミケも鉈を構え言う。ヒミコの剣と同じ素材で作られているようにも見えた。

「越えろ、『クサナギ』」

「奪い取れ、『カゲヨリ』」

先に動いたのはミケだった。カゲヨリと呼ばれたその鉈を両手で持ち、猫のような瞬発力で距離を詰め脳天に振り下ろす⋯

「に゛ゃっ」

「あほ」

ヒミコにとっては直線的な動きは想定内だった。姿勢を低くして前方に滑り込み、ミケの背後に回る。

「こうなったら奥の手を出すしかないのだ⋯」

「お前前回もそれ出して負けてたよな」

カゲヨリの柄が指示棒のように伸び、刀身の向きが変わる。先程まで「鉈」だったその武器は、「大鎌」へと姿を変えた。

「お命頂戴!『猫猫大回転(ネコネコダイカイテン)』!!」

鎌をめちゃくちゃに振り回し攻撃するミケ。

「そうかそうか、新しい技を考えてきたんだな」

ヒミコはクサナギを逆手に持ち、

「そんなの技じゃねえよバカヤロー」

刃の合間を縫ってミケの腹に柄を叩き込んだ。

「あるごすっ」

謎の断末魔と共に吹き飛ぶミケ。

「この国の決まりだ。どちらかがシンギを失うか気を失うか⋯あるいは負けを認めるまで戦いは続く。今日はもう降参した方がいいんじゃないのか?」

腕を組みヒミコが言う。対してミケは一発、それも剣でも技でもない柄殴りを喰らっただけなのに虫の息だ。

「こ⋯今回のところはこれで勘弁してやるのだ⋯」

負けたのになぜか上から目線のミケ。どうりで子供の小遣いばかり狙うわけである。

「次回も勘弁しろ、というかお前俺のこと全く怖くないんだな」

「お前が弱者に本気を出せない性分なのは身を持って証明済みなのだ」

「仮にも頭領なのに誇りどこやった」

ヒミコはミケの首根っこをつかみ片手で持ち上げる。自身より小柄とはいえ片手で持ち上げていいものではない気がする。

「ほら、子供達に謝りに行くぞこの馬鹿猫」

「待つのだ!そこを持つのはやめるのだ!」

2人は村の方角へと歩いていった。

 

「どうもありがとうございます、全くあの猫はいつも人に迷惑かけて⋯」

「子供にマタタビでも持たせたらどうだ?」

どうやらあの後ヒミコは被害者の家に招かれて昼食をご馳走になったようだ。ミケはというといつの間にか逃げ出していたが今日一日は腹の痛みが消えないだろうから放っておいて大丈夫だろう。

「さて、と⋯」

ヒミコは耳元に方陣を出現させ独り言を呟く。どうやら遠く離れた相手と通話できる技術らしい。

「⋯馬鹿猫の次は阿呆妖精かよ⋯」

面倒そうに溜息をつきながらも、ヒミコは次の目的地へと向かって行った。

 

「来たね巫女ちん!!」

「よう猿」

「シャラって言ってんじゃん!!何をどうしたら聞き違えるかなあ!?」

炎の翼を持つ小柄な少女、サル⋯ではなくシャラは言った。

「声がでけえんだよお前は、なんかもう色々と暑苦しいんだよ」

「ひどい!!アタシはアツイのがお好きだと言うのに!!」

「だからって周囲の気温を上げすぎだ、わかったからもう少し落ち着け」

ヒミコは剣を構えて言う。

「むぅ〜⋯だったらその服を腋汗でグショグショにしちゃうんだからね!!」

「濡れる箇所ねーよ」

シャラは右手に一本の短刀を持ち、左手の指の間に計三本の短刀を挟んだ。

「越えろ、『クサナギ』」

「燃え上がれ、『カネツグ』」

シャラは戦いが始まるや否や翼で上空に飛び上がる。

「しゃあっ 『ヰノ㋭・シラヌイ』!!」

シャラが叫ぶと無数の炎がヒミコに降り注ぐ。まるで魔法のようだ。

「『ヱノ㋩・タテナシ』」

ヒミコは落ち着いてそう言い、半透明な障壁を発生させる。炎は全て防がれ、ヒミコには一発も当たらなかった。

「お前が他に術式を使わない事は知ってるからな、どうせ次は得物を手裏剣にして投げてくるんだろ」

どうやら彼女達が使っている能力は術式というらしい。

「な、なんでわかったの!?」

「新技考えてくる分猫の方がマシだったぞ」

ヒミコは跳躍し、シャラの眼前に迫る。

「殴られるか蹴られるか斬られるか好きなの選べ、抵抗したら全部やる」

「やれるものなら!!」

シャラが何をしたかったのかは本人にもわからない。なぜなら次の瞬間、ヒミコの拳骨を喰らい地面に落ちたからだ。

「⋯ねえもうやめようよ!!その剣使わないでアタシをボコすのさあ!!お前アタシのこと格下だと思って舐めてるんだろ!!そうだろ!!」

「うん」

大の字になって寝転がるシャラをヒミコは座りながら見ていた。

「ところで降参しなかったら踏むけどこれからどうする?」

「どこを!?」

「主に翼を」

「見た目炎っぽいけどこれ普通に神経通ってるんだからね!?」

「嫌なら負けを認めて今日は涼しく過ごせ」

「むぅ⋯」

シャラは起き上がってヒミコに頭を下げる。

「もう周りの人の意見を無視して周りを暑くしたりしません⋯明日までは」

「肌寒くなる頃までだったら猫よりマシになってたのにな」

ヒミコが呆れた、その時だった。

 

「がッ⋯」

僅か一秒。その間にヒミコはシャラを突き飛ばし、どこからか発射された雷の矢をその身に浴びていた。

「ヒミコ!!」

シャラは珍しくヒミコの名前を呼ぶ。それだけの緊急事態だ。

「どうってことない⋯なんて言ったら嘘になるな。一応俺人間だし」

ヒミコが矢の飛んできた方向を見ると、そこには長い白髪に黒を基調とした服装の少女が風変わりな弓を構えて立っていた。

「⋯先に聞いておくけど、今のはシャラを殺すつもりで撃ったんだよな?」

「何が悪い」

白髪の少女はあくまで冷静に、そして冷酷に言う。

「妖魔に生きる価値は無い。それは妖魔を擁護する人間も同じ事だ」

「ああそうか、それなら話は早い」

ヒミコの剣が変型する。刀身が滑るようにして突き出していき、埋まっていた持ち手が姿を現す。

それは「剣」ではなく「薙刀」だった。

「今回ばかりは手加減できねえからな⋯!」

ヒミコの目つきが変わる。

「妖魔を裁くのは巫女ではない。私だ」

人ならざる者を滅ぼす道を選んだ人間と、人ならざる者との共存の道を選んだ人間。

相容れない道が、今交わった。

 

後編へ続く

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