倉端直太だって恋がしたい!   作:ひよちゃんLove

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例のあーんシーン…羨ましい、俺だって、俺だってなあ…!


chapter4-1『俺は目立ってないはず……あれ?』

「はいユート、あーんして。食堂の唐揚げ定食は美味しいんだよー、ほらほらエンリョしないでー」

 

「あのな、自分で食べられるって言ってるだろ」

 

「嘘ばっかり、ユートの利き手右手でしょ?それとも左手でお箸使えるの?」

 

「……使えないが」

 

「だったら、誰かに食べさせてもらうしかないよね」

 

「世の中にはフォークっていう便利なものがあってだな……」

 

 なんなんだろう、この光景は。

 佑斗が退院してきてちょっとお祝いでもしてやろうかと思ってた矢先にこんなものを見せられてどんな反応をすれば良いんだろうか。

 

 扇先生から聞かされた例の話で考えることも増えてきたけど今日はもうそんなのよりもこの状況に嫉妬全開で殴り掛かりに行きたい気分だ。

 

「はい、あーん」

 

「稲叢さん、エリナを止めてくれないかな?」

 

「はい、六連先輩。サラダもどうぞ」

 

「……こっちもかよ」

 

 そして案の定稲叢さんも参戦していた。

 この子根っからのお人好しっぽいしめちゃくちゃ優しいからこうなるのはなんというか、もう読めていたまである。

 

「2人とも何してるの。もっと考えないとダメでしょ」

 

「そうだ布良さん、ここは寮長として先輩として、びしりと言ってやってくれ」

 

 そんでもって布良さん。

 普段なら止める側なんだろうけど、今回は自分を庇ったせいで怪我をしたっていう負い目が大いにプラスされてるのと、俺が励ましついでに送った言葉のせいで多分佑斗お前の仲間にはならない。

 

「まずは温かいお味噌汁からが基本だよっ!はい六連くん、熱いから気を付けてね」

 

「順番が問題な訳じゃなーい!」

 

 知ってた、こうなるのはあまりにも知っていた。

 なんて羨ましいんだろうか、このハーレム王め。

 

 

「なんだか楽しそうですね」

 

「ほんと、アイツってなんでモテてる自覚無いんだろ」

 

「さぁ……私はそういう経験がないのでさっぱり」

 

「俺もだよ。まあこうしてひよ里ちゃんとのんびり食べられてるなら俺はそれで満足だけどね」

 

「ふふっ、嬉しいです」

 

 ものすごく羨ましくはあるが、俺はその陰でひよ里ちゃんとのんびり雑談して2人で食べるからいいもんねーだ。

 はぁ、やっぱりひよ里ちゃんは天使だなあ。癒される。

 

 

「むむむっそれならお味噌汁と一緒にご飯も!はい六連くん、あーん」

 

「どこをどう繋げたら『それなら』が出てくるんだ!?」

 

「でも、まるで王様みたいですね。両手どころか辺り一面お花畑じゃないですか」

 

「大房さんまでからかわないで!?」

 

「そうだよユート、こんなに可愛い女の子達が甲斐甲斐しく『あーん』してくれるシチュエーション、中々ないんだから。そんなに恥ずかしがる前に、喜んで良いんだよ?」

 

「そうだそうだー」

 

「直太まで便乗してくんな。てかこんな人目のつく場所で……」

 

 癒されるついでに便乗して軽く殴っておく。

 そうすることで大分落ち着けるってもんだ。

 ハーレム王してんだからそれくらい受け入れやがれ。

 

「人目がつくのはむしろ、食べないからじゃないでしょうか」

 

「そうだそうだー」

 

「……え?」

 

 周りからのジェラシーすら今まで感じてなかったのかお前は、なんて恐ろしい鈍感野郎なんだ。

 これだから俺からヤジられるんだぞ。

 

「ったく、俺達は俺達で静かに食おうぜ」

 

「……その」

 

「ん?どした?」

 

 全くコイツはとやれやれしながらひよ里ちゃんとのんびり食事に戻ろうとしたところで、ひよ里ちゃんの頬が若干赤くなってることに気がついた。

 あれ?どうしたんだろう、熱があるってワケでも無さそうだけど。

 

「わ、私達も……注目されちゃってると言いますか……」

 

「な、なにっ……!?」

 

 

「まるで自分は俺達と同じみたいな立場で喋りやがって……」

「ぐぬぬ、六連の周りにいる美少女達に負けず劣らずの美少女と一緒に食事なんてぇ……!」

「俺の……片想いが……」

「あ、終わったんだ俺の恋」

「許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ許すまじ」

 

 

「バカな……!?」

 

 まさか俺達まで注目されていたなんて。

 しまった、佑斗に全部注目が行くと思って油断していつもより仲良いアピールをしてしまった!

 いや、それ自体は良いんだけど佑斗にヤジを飛ばしたせいで目立ってバレることになるとは不覚だった!

 

「あ、あはは……恥ずかしいですね、こういうの」

 

「お、おう……ごめん、なんか」

 

「大丈夫です、直太くんとなら。……それよりも、私も『あーん』しちゃいましょうか?」

 

「ぅえ!?ちょ、ちょちょちょ!?」

 

 ってひよ里ちゃんは何その後は平然としてんだ!?

 俺となら大丈夫ってなに!?誤解されても良いの!?それ言われるといの一番に誤解する人がいます!!目の前に!!

 しかもあーんするかどうかなんて言われたら、そんなの断れる男子がいると思ってるんですか!?無理でしょ!!

 

 

「あの、迷惑でしたか?こんな風にするのは」

 

「……ごめんね、鬱陶しかったかな。私を庇って怪我しちゃったんだし、ちょっとでも力になれれば、って思ったんだけどね」

 

「わ……分かった、分かったからそんな悲しそうな顔しないでって!あ……あーん……」

 

 

 

 何よりも、断って女の子にああいう顔させるのは無理。

 特に、特にひよ里ちゃんをしょんぼりさせるのは絶対にダメだと男の本能が叫んでいる。

 

「じゃ、じゃあ……あ、あーん……」

 

「あー、ん……どうですか、直太くん」

 

「う、うん……お、美味しい……よ……?」

 

「あ……っと、その……や、やっぱり照れちゃいますね、こういうことすると。初めて男の子にやってみたんですけど」

 

「俺も……や、やられたのとか……初めてで……」

 

 本当になんなんだこの空間、なんで恋人でもないのにあーんしてくれてるんだこの子は、天使なのか?

 もう意味が分からないけど据え膳食わぬは男の恥だからな、目の前に仲良くしてる女の子からのあーんがあったら受けねば無作法というもの……拒否する方が恥というものだ。

 

 

「あれで付き合ってねえってマジで言ってる?」

「しかも六連より躊躇なく行きやがった!?」

「付き合ってもないのにどうして……どうして……」

「嘘だろ?それで終わったの?俺の恋……」

「認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない」

 

 

 ……後が怖いけど、後悔はない。

 きっと、多分、メイビー。

 

 

「なんか、六連くんのところも私達のところも同じくらい注目されちゃってますね」

 

「な、何故だ……人数ならあっちの方が上だってのに……」

 

 せめて注目度合いはあっちが上であれよ、どうしてこっちも同じくらい注目されてるんだよこっちは1人だぞ1人。

 確かにめちゃくちゃ美少女だけど!!

 

 でもほんと、ここまでされててなんでひよ里ちゃんは俺の隣に平然といるんだろうか……そこまで慕われてるってだけならそれはそれで嬉しいけど、それだけでここまでやるのかなあ……

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、佑斗も一緒なのか」

 

「ちょうどお店まで一緒なので」

 

「俺としても佑斗がゆっくりしてくれるなら良いよ、大変そうだもんな風紀班」

 

「地味な仕事も多いしな。その分やり甲斐はあるよ」

 

 今日はまだ腕が治ってないってことで佑斗はアレキサンドに顔を出してからカジノでゆっくり過ごすらしい。

 大変そうだし骨折もするしで新人なのに過酷っぽいから、こうしてのんびり出来る時にするのが一番ってワケだな。

 

 さっとアレキサンドのドアをくぐって、俺達は制服に着替えて佑斗には稲叢さんが接客。

 俺も大分ここには慣れてきた気がする。

 

「合成血液用のカクテル入りまーす」

 

 そういえばここには、人目についても問題ない合成血液用のカクテルというものが存在している。

 これなら人間にバレずに血を摂取出来て便利だからって最初に覚えさせられた記憶が蘇ってくる。

 もう今は結構な種類作れるレベルにはなった、それ以外のカクテルはまだまだ新米レベルだけど。

 

「あら、いらっしゃい」

 

「どうも」

 

 そんな店内では佑斗とオーナーが話してる。

 

「来てくれたんだ、ありがとう」

 

「俺も、話したいことがあったので」

 

「聞いたわよ、例の事件の話。布良さんを助けるために、身体を張ったんだって?」

 

「ええ、まあ一応」

 

「格好いいわねー、女の子のために自分の身体を張れる人間なんてそうそういないわよ?」

 

「そうでもないでしょう。俺だって深く考えてた訳じゃない、身体が勝手に動いた結果です。そういうバカな奴らならたくさんいるでしょう?」

 

 しっかし佑斗はほんとすげー奴だよ。

 聞いた話じゃ布良さんに突っ込んでくる車に対して咄嗟に吸血して能力の硬化を使って止めて助けたって話だもんな。

 

 ……ん?んんん?

 

 俺は自分で自分の考えてることの違和感に気が付いた。

 確か布良さんやひよ里ちゃん曰く、吸血鬼の能力は原則ほぼ100%1個で複数の能力を持つ可能性は理論上ありえないレベルだって話のはずだ。

 

 だとしたら、だ。

 

 最初佑斗が能力を使った時、矢来さんのボタンを弾き飛ばした能力と布良さんを助けた時に使った能力は……どう考えても『全くの別物』になる訳で。

 

「ふふ、残念ながら少なくともアタシが今まで生きてきた中では、そんないい男に出会えたことはないわね。――でも、倉端くんは貴方に負けず劣らず、かも?」

 

「ぶふっ!?お、オーナー!?いきなりなんスか!?」

 

「あら、だって貴方身体を張ってひよ里ちゃんを助けたんでしょう?だったらそれ相応の評価にはなるわよ」

 

 って人が考え事してる時になんて言う話題の振り方を!

 思わずつんのめったじゃないか、危うく恥を晒すところだった。

 

「ねえ、ひよ里ちゃんだって格好良かったって思ってるでしょ?」

 

「……そうですね、直太くんには感謝してもしきれませんし。かっこいいなって思ったのも、事実なので」

 

「なななっ……勘弁してくれぇ……あんまりそんな手放しに褒められたことないからどう反応していいか分からないんだよぉ……」

 

 それと、頬を染めながらそういうこと言うのやめてくれって。

 あまりに美少女すぎて女の子耐性ない俺だと尊さで消し飛んじゃうから。




倉端直太
お前はもう少しイチャイチャしてる自覚を持った方がいい

大房ひよ里
いいぞもっとイチャイチャしろ
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