倉端直太だって恋がしたい!   作:ひよちゃんLove

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chapter5-1『俺って、ほんとヘタレ』

「……で?なんでここにいるんだ、直太?」

 

「頼む、とりあえず理由は聞かずに数日で良いからこの寮にいさせてくれ」

 

「分かった分かった、一旦お前がここに居たいのと今は理由は聞かれたくないのは分かったから。とにかくまずはみんなに聞かないといけないから」

 

「最悪外にある倉庫の中でだって構わない」

 

「本当にお前に何があった!?」

 

 みんなでプールで遊んだ翌日、俺は土下座をして佑斗にそうして懇願をする羽目になっていた。

 前々からコイツのことはハーレムだと思ってたしめちゃくちゃ羨ましいとも思っていたからいつかこの寮で数日間過ごしたい……なんて言う気持ちはあったけど、今回はそんな話ではなかった。

 とりあえず心を落ち着かせられる場所が欲しい、ということで。

 

「あれ、倉端くん?どうしたの?」

 

「ああちょうど良かった布良さん。実は直太のやつ、理由は分からないがちょっとの間ここに置いてもらえないかって言ってて。それもふざけてる訳じゃなくて置いてもらえるなら外の倉庫でも良いって言い出してて……」

 

「ええ!?う、うーん……他のみんなにも確認しないとだけど、倉端くんの性格や人となりはみんなも知ってるし大丈夫だと思う。だから倉庫で暮らすとか言うのは禁止ね」

 

 布良さん優しすぎない?

 ここの寮長もしてるって話だけどこれは納得だな、普段から見ててしっかり者だと思ってたけどこれは頼られる訳だ。

 今の俺だって頼りたくなってんだもの。

 

 優しさが身に染みる……

 

「ぁぃ……」

 

「理由は……あんまり聞かれたくないんだよね?」

 

「まあ、大房さんとこから抜け出してきてこう言うって時点である程度察しは付くがな」

 

「うぐっ」

 

「こーら六連くん、いくら親友でも人様のデリケートな部分にはあまりツッコんじゃダメだよ」

 

「すまん、つい……」

 

「いや……2人しかいないからある程度は言えるけど、まあひよ里ちゃん関連ではある……」

 

 それこそ2人以外がいるなら考えてしまうが、親友と今の流れで特別信頼しても良いと感じた布良さんにならちょっと話しても良いかと思ってしまう。

 もちろんそれでも全て言うことは無理だけど。

 

「あー……やっぱりか。まあその、深くはツッコまないでおくからちゃんと解決させるんだぞ?」

 

「あ、ああ」

 

「私からもそれとなくひよ里ちゃんに話を聞いておくよ。……もちろん、倉端くんが大丈夫って言ってくれるならだけど」

 

「いや、うん、それは大丈夫だけど……そこまでしてもらう必要は」

 

「あるんだよ、だってひよ里ちゃんは大切な友達だもん。友達のひよ里ちゃんと、そんなひよ里ちゃんが最近ずっと仲良しだった倉端くんに何かあったって言うなら話を聞くくらいはしたいよ」

 

「……ごめん、ありがとう」

 

 優しすぎて涙が出てきそう。

 それと同時に自分が情けなくて仕方ない。

 どうしてこんなことに……って言える権利すらないからな、だって元凶が自分であることは知ってるんだし。

 だから自己嫌悪しちゃってるって話なワケでして。

 

「あれ、ナオタ?なにしてるの?」

 

「倉端先輩、いらっしゃいませ。コーヒー淹れましょうか?」

 

「あはは、ありがとう。……まあちょっとワケありでね」

 

「なるほど、これは事件のヨカン!」

 

 後輩組も降りて来たみたいだけど、うんいつも通りで安心する。

 いつも通りすぎて話しにくいまであるけど。

 

 まあ話さないといけないよなあ。

 

「事件ってほどじゃないけどさ、ちょっとの間ここに置いてくれないかなーと。数日くらい。今佑斗と布良さんは良いって言ってくれたところだけど……」

 

「あ、それくらいなら全然。でもいきなりどうしたんですか?確か先輩は大房先輩のところで暮らしてるんでしたよね?」

 

「うーんにゃるほど、つまりのっぴきらない事情アリってワケだね。私は大丈夫だよ、あとはミューとニコラだけど、2人もそろそろ降りてくると思うし呼んでこよっか?」

 

「……オネガイシヤス」

 

 同じことしか言えないけど優しすぎるってこの空間。

 女子ってこんなに優しかったんだなあ。

 稲叢さんとエリナちゃんの優しさが泣けてくる。

 

「……エリナに呼ばれてきたけど?何事なのかしら、倉端くんがここにいるって」

 

「やあやあ!呼んだかい?」

 

 そして最後の2人も降りてきたか。

 ぬおおおお、胃が痛い……どこまで話せるんだろうか俺は。

 

「お、オハヨウゴザイマス……」

 

「おはよう。それで?用件は私とニコラ以外には伝えてあるの?」

 

「ま、まあ……」

 

「用件を聞く前に。みんなは了承したの?」

 

「ああ。あとは美羽とニコラだけだ」

 

「ふーん、そ。で、なんだったかしら」

 

 今はそのドライな聞き方が一層緊張感を高めてくるんだよなあ。

 いつもなら喜んで受け入れたって言うのに……でもここで言わない訳にはいかないもんな、俺のせいだし。

 

「えっとですね……ちょっと事情がありまして……数日、ここに置いてほしいと思ってまして……ハイ……」

 

「……これは本当にワケありって感じだよね」

 

「まあ、大方聞かれたくない事情があるのは察したわ。まったく……ニコラはどうなの?」

 

「ボクかい?ボクは直太くんの顔色や表情を見る限り本当に人に言いたくない事情があると思ってるし、信用出来る人だって思ってるから数日手助けしたって良いんじゃないかなって思ってるよ」

 

「に、ニコラァ……」

 

 ニコラは空気を読むのが得意な奴だ。

 ド派手な改造制服やカラコンをしてても学院側が文句を1つもニコラに言わないしクラスメイトも自然と受け入れてるのがその証拠だ。

 だからこの言葉には大いなる説得力が生まれる、本当に心強い言葉になるってワケだ。ありがてえ。

 

「みんなが優しいから敢えて私は厳しいことを言わせてもらうけれど、確かに倉端くんの人となりは見てきて信用に値するとは思ってるし数日泊める程度問題も無いと思ってる。言えない事情があるのも分かった。

だけれど何日もここにはいさせられない。そうしてしまうと問題解決に支障が出ると思っているから。だから2日よ、それまでで貴方の抱えている問題は解決させなさい、良いわね?」

 

 矢来さんの言葉が身に染みる。

 ほんと、自分勝手なことしてるなあと感じてしまう。

 でもそれでも優しく言ってくれるから、事情を言えなくてもみんなが信じてくれるから絶対に裏切れないと心に誓う。

 

「分かった、2日でちゃんと答えを出すよ。本当にありがとう」

 

「今までの付き合いがあるから、まあ多少は力になれればと思っただけよ。言えない事情もある程度は予想がつくし」

 

「……そんなに分かりやすかった?」

 

「ええ、それはもう」

 

 しかも多分事情はバレてるしな。

 言えない上にバレてるんじゃ、尚更嘘は言えない。

 自分の為、ひよ里ちゃんの為、みんなの為にも何とかしてこのヘタレ野郎の心を解決させて決断せねば。

 

「あ、ごめんね私達これから風紀班の仕事だからもう行かなくちゃ」

 

「仕事前にほんとありがとう」

 

「おう。んじゃ行ってくるわ」

 

「あ、倉端せんぱーい、コーヒー入りましたよ〜」

 

 ほんと、みんな良い人達なんだから。

 だからこそ余計に自分の仕出かしたことが情けなくなるわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「気付いてしまったんです。ずっと直太くんに一番に見てもらいたくて、私だけを見てほしかったんだって」

 

「…………これが、恋だってことにも」

 

 

「出来れば……答えが欲しいです」

 

 

 そう言われて、俺はとても嬉しかった。

 一番仲良くしてる女の子に異性として好意を向けられて、そんな気持ちを素直にストレートにぶつけられて、嬉しくないはずが無かった。

 吸血鬼になった時、俺はこの都市で暮らすことになるなら彼女を作りたいと思ってたしそれがようやく叶うなら断る理由なんてどこにも無い、そのはずだった。

 

 でも。

 

 でも俺は、答えを出せなかった。

 大切だと思ってる女の子だからこそ、自分自身のこの気持ちが恋なのか恋じゃないのか、ハッキリしないまま適当に返事をすることがとても失礼だと思えてしまって、言いたくなかった。

 

「…………俺は。……ごめん、答えが出せない」

 

「そ…………う、ですか」

 

「あ、そのっ、嫌いって訳じゃないんだ!仕事も住む場所もくれたし最初に仲良くしてくれた女の子だから特別な友人だとも思ってる!女の子としての魅力が無いとかっ、そう言うのでもない!ただ……自分自身、気持ちに答えが……まだ出せないんだ。ごめん」

 

「……謝らないでください、私が焦って言ってしまっただけなので。今のは出来れば気にしないで」

 

「ひよ里ちゃん……」

 

 気にしないで、と彼女は言った。

 でもとてもじゃないけどそんな気にせずに過ごせる程、俺は度胸が無かった。何よりも……ひよ里ちゃんの目がとても悲しそうで、今の俺がそんなひよ里ちゃんと共に過ごして良いとは思えなかった。

 

 

「って言っても無断で出てきちゃったのはさすがにアホすぎるよなあ。ほんと俺って、どこまでいってもバカだよ」

 

 今はただただ、自虐するしか無かった。

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