倉端直太だって恋がしたい!   作:ひよちゃんLove

17 / 44
chapter5-2『運命の分かれ道①』

-AnotherView-

 

「さてと、まだ出勤まで時間はあるし……先にひよ里ちゃんに電話しておかないと」

 

 保存してある電話番号からひよ里ちゃんの名前を選び、ポチリ。

 本当はあんまり出勤前に他のことをするのはしないんだけど、今回は倉端くんとひよ里ちゃんのためだからちょっと別。

 2人のためにやれることをしないと集中出来そうにないもんね。

 

『……はい。布良さん?』

 

「あ、ひよ里ちゃん」

 

『あの……どうかされたんですか?』

 

「ちょっとね。倉端くん、少しの間こっちにいるみたいだから」

 

『……そう……ですか』

 

 やっぱり元気無さそう、これは2人で喧嘩……でも無さそうなんだよね、倉端くんの声色と電話の向こうのひよ里ちゃんの様子を見た感じ。

 そうなると私の予想が当たってる可能性は高いよね。

 

 実のところ、言われるまでもなくちょっと2人の様子がおかしいことにはみんな気が付いてたりした。

 飲み物を買ってきた後からなんだか気まずそうというか、いつもなら人目も気にせずナチュラルにイチャイチャしてるのに大人しいというか。

 甘い雰囲気が無くてなんか気になってたんだよね、それもあってみんなちょっとずつ察してたところはあるというか。

 

 うーん、とりあえずここは何があったか聞くのはあんまり良くないだろうし気晴らしに出来ることを提案する方向で行こう。

 

「……ね、お仕事終わったら2人でお買い物行かない?」

 

『……え?』

 

「うーんとね、何があったか私には分からないし聞かないけど、ひよ里ちゃんが元気無いのはやっぱり友達として心配だから。だから、ちょっとでも気晴らしに出来ることをしたくって。ダメかな?」

 

『布良さん……ううん、ダメじゃありません。ありがとうございます。そうですね、それも良いかもしれないです。甘えてしまっても良いですか?』

 

「もっちろん!じゃんじゃん甘えてきて!」

 

 良かった、ほんの少しだけど声に元気が戻ってきた気がする。

 私から見ても2人は本当に仲良しだし、いつか恋人さんになるんだろうなって思ってるからいつもの空気じゃないともう心配で気が気じゃなくなっちゃってるんだよね。

 それだけ、六連くんとおんなじように倉端くんもここに馴染んできてたんだよね。

 

『少しだけ元気が出た気がします』

 

「ほんと?良かった〜」

 

『なので今日は久々に日光に当たりに、お散歩にでも行こうかなと思います』

 

「うんうん、それが良いよ〜」

 

『本当に、ありがとうございました』

 

「いいっていいって。うん、うん……あ、1人で外に出るなら気を付けてね。今ちょっと危ない組織がいるみたいだから。……はーい、それじゃね」

 

 電話を切るとホッと自然と息が漏れた。

 私に出来るのは多分これくらいしか無いから、今日は思い切って奮発する勢いでお金下ろそうかな。

 2人だけでショッピングも久々だし、そういう意味でも楽しみだな。

 

-AnotherView out-

 

 

 

 

 

 

 

 

「……眠れねえ」

 

 いつもならぐっすり快眠の朝、ひよ里ちゃんの家で居心地良く過ごしていただろう時間にそんなことを呟いてしまう。

 この寮は元々宿泊施設だったところを月長学院が買い取って寮にしてるから部屋数が多くて俺1人増えたところで空き部屋は結構あるみたいで、一室借りたんだけどやっぱり眠れなかった。

 別にこの寮が居心地悪いとか緊張するとか、そういうものじゃない。

 ただ単に、ひよ里ちゃんのことが心配だった。

 

 どの面下げてそんなこと言ってんだかってのは自分でも思うくらいではあるけど、だからこそちゃんとどうにかしないとと思ってる訳で。

 

 それに、大きくはひよ里ちゃんのことが9割くらいだけど残りの1割は別の心配事もあった。

 

「まだ俺の能力は分からないんだもんな」

 

 今日の定期検診でも俺の能力は分からなかった。

 あの日から毎回の定期検診で吸血をして能力の試し打ちをしているけれど、毎回失敗に終わってるんだよな。

 いくらゆっくりで良いって言われたからって自分の力も分からないんじゃあ、少しくらい不安にもなるって話だ。

 何より例の事件のこともあるんだ、自衛出来る能力なら早く使いこなしたいと思うのも当然。

 

「はぁ……散歩行こうかな」

 

 仕事行った風紀班組以外はまだ寝てるだろうけど、起こさずそっと起きて外に出る。

 もちろん書き置きも忘れずに。

 

「うへぇ、眩しい……」

 

 あの日からほとんど……どころか多分1日もまともに日差しに当たってなかったからかちょっとだけ目がチカチカする。

 吸血鬼にとって日光はあまり良くないものなのは分かってるけど、それでも何となく散歩でもしてないと気分が落ち着かないんだから仕方ない。

 

「……そういえば今あんまり外には出ない方が良かったんだっけ」

 

 ふと、仕事に行く直前に佑斗に言われたことを思い出す。

 

 

 

「良いか?今ちょっと危ない組織がその辺うろついてる可能性があるから、外に出る時は気を付けろよ。まあそもそもアクアエデンは本土と比べると治安悪いから気を付けてるとは思うが」

 

 

 

「さすがにそんなフラグにはならないか」

 

 多分陰陽局が追い掛けてる組織なんだろうなと思いつつも、出会ったところで逃げれば良いやなんて楽観的に思考を放棄する。

 今の俺に何かを考えるような気力は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

-AnotherView-

 

「……帰ってきたらちゃんと謝らないとダメ、ですよね」

 

 ベンチに座ってふぅ、と息を漏らしながらそうやって呟く。

 いつもならそんな時「どったの?大丈夫?なんかあった?」って声が隣から聞こえてくるはずなのに、今はその声が無い。

 

「私のせい、ですから。何もかも」

 

 その声が聞こえなくなったのは私のせい。

 元より彼を吸血鬼にしてしまったのは私が鈍臭かったからで、それさえ無ければあの人は、直太くんはこんなことにならずに済んだ。

 でも、ワガママにも私はそんな私を助けてくれた彼をいつの間にか好きになってしまっていて。

 

 ……いいえ、本当は『いつの間にか』じゃなくって一目惚れだったんだと思います。

 

 それが一緒に過ごしていくうちにどんどんちゃんと自分にも自覚出来るくらいの形になっていって、ここまできただけに過ぎない。

 

「言わなければ、今まで通りでいられたのに。バカだなあ、私」

 

 直太くんが他の女の子を見る度に、私の心は穏やかじゃなかった。

 直太くんが私を見てくれる度に、私の心はドキドキしていた。

 まだ出会って2ヶ月も経ってないけれど、話す度に優しくて、面白くて、一生懸命で、ちょっと変態だけれどかっこいい彼のことをハッキリと好きだと言えるくらい、好きになっていた。

 

 でも結局のところ、私は彼を巻き込んだだけだった。

 吸血鬼になったあとのサポートは確かにしたし、働く場所も、住む場所も、一緒が良いから私がお誘いしたのは確か。

 でもそれは、吸血鬼になったから出来たこと。

『人間』の倉端直太くんには迷惑しか掛けられなかった、何も助けられずに吸血鬼にさせてしまった。

 

 だと言うのに、私はあろうことか告白までしてしまった。

 釣り合うはずが無いのに。

 太陽みたいなあの人と私じゃ、無理なのは分かっていたのに。

 

「でもせめて、これ以上心配掛けさせてしまわないようにしないと」

 

 だから、告白は無かったことにする。

 私の中で封印して、これまで通り友達で、同じ家に住んで同じ職場で働いて、それだけで充分な贅沢を過ごせるはず。

 なら、それ以上を望んではいけない。

 本来私は、嫌われてもおかしくないようなことをしてしまっているという自覚を持たないといけないんだから。

 

「うん、もう少し歩いて落ち着いた方が良いかもしれないですね」

 

 そうと決まれば少し頭の中を切り替えないと。

 今日は布良さんの仕事終わりにショッピングもするし、もう少し睡眠時間も頭を切り替える時間も欲しい。

 あともうちょっとだけ歩いたら家に帰ろう。

 

 布良さんやお父さんからも言われていますからね、恐らく今風紀班が追ってるんだろう組織がいるから危ないってことを。

 とにかく今は、難しいことを考えるのはやめておこう。

 帰って寝てショッピングして、それから考えよう。

 

 

「そいつはどうかな?」

 

 その思考を切り裂いたのは、知らない男の人の声だった。

 それと共に、冷たい、ひんやりとした無機質なものが頭に突き付けられていることを感じる。

 

「え?あ、え……?」

 

 状況が上手く飲み込めない、でもそれは間違いなく銃で。

 それが私に間違いなく突き付けられていて。

 それだけが誤魔化し様の無い真実だった。

 

「お、大房さん……なんでこんなところに」

 

 そして私の視界に映る、六連くん。

 ああ……布良さんにもちゃんと注意されたのになあ、それなのに不用意に出歩いたのがダメだった。

 

「その……気晴らしにって、散歩してたら……」

 

「なんだ、知り合いか?まあいい、ちょっと黙ってろ」

 

 怖い、漠然と、でもハッキリと感じる。

 殺されるかもしれないと。身体が震える。

 

「安心しろ、殺す気はねえよ。場合によっちゃどうなるか分からないがな」

 

「大房さんを離せ。どの道逃げられやしない」

 

「確かに、人質を1人とったところで難しいだろうな。俺もこれで逃げられるとは思ってない。けどな、他に良い方法があるんだよ」

 

「なっ!?お前吸血鬼!?」

 

「ああ、言ってなかったか?俺もお前のお仲間さんだよ」

 

 その言葉を言われた瞬間、首筋に鋭い痛みが走る。

 血を……吸われている、間違いない、彼は吸血鬼だ。

 直太くんに吸われた時はちょっと恥ずかしかっただけで、そんなに痛くもなかったのに、今はただただ痛くて怖い。

 

「くっ、ぅ……」

 

「高野ァ!」

 

「おっと、落ち着けよムトウくん。今下手に動くと、指が滑って引き金を引いちまうかもしれねぇだろ?」

 

「くっ」

 

「そうそう、大人しくするのが一番だ。お前も、死にたかねえだろ?」

 

 恐怖で支配された私は頷くことしか出来ない。

 本当は迷惑になんてなりたくなかったのに、情けない。

 

「なあムトウくん、1つ相談なんだが、俺のことを見逃してくんねえか」

 

「何をバカなことをっ」

 

「けどよ、このお友達のこと大切なんだろ?」

 

 こんな時でさえ、彼のことを思ってしまう。

 直太くんの顔が浮かんでしまう。

 助けて、と。

 

「それに、聞いてくれ。仕方がなかったんだよ……生きていくのには金がいる。けどよ、この海上都市でも差別があるのは、アンタだって、それにそっちのアンタも知ってるだろ?

俺だってこんなことはしたくなかったさ。けど、生きるためには、こうするしかなかった、分かるだろ?」

 

 なのに頭の中がビリビリとして、その思考がどんどんモヤが掛かっていくように消えていってしまう。

 

 頭が痛い、ボーッとしていく。

 

 だから私は必死に考える、直太くんのことを。助けてと。

 

 助けて、助けて直太くん……助けて、助け……あれ?私何考えてたんだっけ、おかしい、さっきまで……考えてたはずなのに……考える……何を……私、は……

 

 

-AnotherView out-




倉端直太
原作だとお前の方が捕まってる側だったんだぞ

大房ひよ里
今作ではこっちが捕まった

布良梓
包容力の塊は友達にも適用されます

六連佑斗
原作通り高野豆腐と鬼ごっこしてたらこうなった
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。