倉端直太だって恋がしたい!   作:ひよちゃんLove

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chapter5-3『運命の分かれ道②』

「はぁ……あっついなぁ」

 

 散歩に出てきたのは良いけど、正直吸血鬼と太陽の相性の悪さをめちゃくちゃなめていた。それこそこれくらいなら大丈夫だろって思うくらいにはなめ腐っていた。

 実際のところ、アホみたいに暑い。今日は確かに気温が高いとは言ってたにせよまだ春なんですけどね。

 上手く眠れなかったのも体調に響いてるのかもしれない、だとしたらなんて自業自得なんだろうか。

 

「……やっぱ連絡くらい入れといた方がいいよなあ」

 

 というかいくらなんでも連絡くらいは入れないとダメだよな。

 事情は布良さんが話してくれただろうし、多分ちゃんと言いたいことは伝わるはずだから。

 

「ふぅ……って何緊張してんだよ俺は。ひよ里ちゃんに電話するくらいでこんなに緊張したことないだろう俺」

 

 あとはケータイの番号を押すだけ……なんだけど、妙に緊張する。

 今まで出会ってからこんなに緊張したことなんて無いはずなのに、ちょっと関係が崩れそうだからって手が震えてたらそれこそ情けないにもほどがあるじゃないか。

 

「ええいままよ!」

 

 躊躇する右腕を左腕で押さえ込み無理矢理押す、傍から見たらまるで封印された右腕が疼くとかそんな風に見られそうだがそんなことは気にしてられない。

 

 待機音が鳴り響く……鳴り響いて、鳴り響いて……あれ?出ない?

 

「んんん?」

 

 着信拒否されてるならすぐにでもそうなるはずだし、電源OFFにされてるのならそれもそれですぐに切り替わるはず。

 だと言うのにずっと……1分くらいずっと続いてるのはちょっと不自然過ぎやしないか?

 

「いや……ちょっと待てよ?」

 

 吸血鬼は身体能力が上がる、というのは最初に聞かされた話だ。

 純粋に走力だったりパワーだったり夜目が効いたりと、そんな感じで色々なものが人間より良くなる。

 もちろんそれは、耳に関してもそう。

 

 ……じゃあ今少しだけ聞こえてる『バイブ音』はなんだ?

 

 吸血鬼の身体能力じゃなきゃ聞き取れないくらい小さい音だけど、確実に聞こえる。

 それもちょうど俺がひよ里ちゃんの番号に掛けた時くらいから聞こえているんじゃないか?

 最初はそれこそただ疲れてるから聞こえる幻聴程度だと思っていたけど、良く耳をすませばこれは幻聴じゃない、どこからか聞こえてくる音だと分かった。

 

「こっちか……?」

 

 今直接会ったら多分めちゃくちゃややこしいことになるのは前提として、それでもひよ里ちゃんにもしも何かあったんだとしたらと思うと心配だ。

 今だけは俺の気持ちよりもひよ里ちゃんの心配を優先しよう。

 

「音が大きくなってきた」

 

 間違いない、音は本物だ。幻聴じゃない。

 しかも俺が近付いても少しずつ大きくなるだけで急に大きくなったり聞こえにくくなったりしない、つまり……動いてない証拠。

 

 やーな予感がするぞ……

 

 いやまさかな、大丈夫だ、偶然に決まってる。

 そう言い聞かせ、次の曲がり角から半身乗り出しチラ見する。

 

「なっ!?佑斗に布良さんと……ひよ里ちゃん!?」

 

「うげっまだいるのかよ」

 

「直太!?」

 

 そこには……いた、確かにひよ里ちゃんがいた。

 ただそれは、最悪の予感が的中するという形で、だった。

 明らかに様子のおかしい布良さんとひよ里ちゃん、それに対する佑斗と元凶そうな男が1人。

 

 どう見たってヤバいって分かる。

 

「佑斗!これはどういう」

 

「話は後だ!!その男の声に耳を絶対貸すなよ!!2人ともそれで操られてる!!」

 

「ええ!?わ、分かった!」

 

 しかも洗脳系能力の吸血鬼が相手なのかよ!

 洗脳系はエロ漫画かエロアニメかエロゲーだけにしてくれよ!

 

「無駄だ、お前はイレギュラーだったんだろうがそっちのバカそうな奴に効かないはずがない!聞いてくれ!俺は敵じゃない!俺は悪くない!悪いのはそいつなんだ!」

 

「うわっまずっ」

 

 容赦も無いのかよちくしょう!

 ダイレクトに声聞いちゃったよ!頭に声が響いてくる……まっずいなこれ、このままだと俺まで洗脳される!?

 

 なんなんだよほんと!俺も吸血鬼なら吸血鬼らしく、このピンチをチャンスに変えられるような能力の1つでも手に入れたいっての!

 なんで覚醒してねえんだよ俺は!情けないったらありゃしない!

 

「ははっ、これで手駒がまた増えるなァ?」

 

「くっそ……」

 

 頼む、頼むよ。

 みんなを助けたいんだよ。

 

 

 いつも優しくしてくれてる布良さん

 ずっと親友でいてくれた佑斗

 

 それに。

 

 

「よ……良かったらわ……私と一緒にお仕事して、私の家で一緒に住みませんかっ」

 

 右も左も分からずに困っていた俺を助けてくれた

 

「でも、直太くんが話しやすい人って言うのは本当ですよ。明るくて優しくてとっても楽しいですから」

 

 俺のことを真っ直ぐに見てそう言ってくれた

 

「あ……っと、その……や、やっぱり照れちゃいますね、こういうことすると。初めて男の子にやってみたんですけど」

 

 間違いなく、人生で一番胸が高鳴った

 

「気付いてしまったんです。ずっと直太くんに一番に見てもらいたくて、私だけを見てほしかったんだって…………これが、恋だってことにも」

 

 そして……人生で一番大切なことだと思ったからこそ、俺は一歩踏み出すのが怖かった

 

 

 でも、このまま終わって良いなんて一言も言ってない。

 

 

「俺はまだ……ぐっ、答えを言ってないんだよ……」

 

「はァ?」

 

「俺ってばバカでヘタレで一番大事なところで日和る、どうしようも無い奴だけどさ……」

 

 だから、だから。

 

「こんなところで、終わってたまるかああああああああああああ!!!!」

 

 俺に、力を――

 

 

 

「なっ……ば、馬鹿な!?俺の催眠術がこんなアホそうな奴に破られた!?」

 

「へ……へへっ、アホそうで悪かったな!アホキャラってのは古今東西、そういう催眠術には強いって決まってんだよ!」

 

 俺の脳内には、もうコイツの言葉は響いてこない。

 バチン、と何か弾けるような、弾くような音が響いてから全くもって脳みそがスッキリした気分になった。

 

「ナイスだ直太!ナイスついでで悪いが大房さんの洗脳を解いてくれ!多分、動揺させれば大丈夫だと思うから!」

 

「お、おう!布良さんは?」

 

「それはこっちでやる!布良さん、良く聞いてくれ。俺はロリコンなんだ、幼女でしか興奮出来ない体質なんだ、済まない」

 

「嘘だろお前」

 

 俺がカッコよく洗脳を振り切ったと思ったら今度は佑斗が世界一カッコ悪い洗脳の解き方をしていた。

 佑斗にはどうやら恥も外聞もないらしい。

 

 ……ところで、洗脳を弾いたのは俺の能力な訳なんだが俺の明確な能力ってどういうものなんだろうか。

 無効化……だと、何となくさっきの洗脳を弾いたってニュアンスに違和感が出るし、当てずっぽうだけどこういうのはアニメで良く見るタイプだとすると……反射か?

 

 なんにせよ今はひよ里ちゃんの洗脳をどうにかしないと。

 

「ええいなんなんだあの男は!?意味が全く分からんぞ!?クソッ、かくなる上は!!君、あの男を止めてくれ!俺は襲われそうなんだ!」

 

「ダメじゃないですか直太くん、何の罪も無い人を襲うのは良くないです」

 

「ひ、ひよ里ちゃん!聞いてくれ!俺は――」

 

 肩に触れる。

 とにかく何がなんでも取り戻す、その一心で今までしてこなかったようなボディタッチをした。

 と、その瞬間だった。

 

 

 ――バチンッ

 

 

「え?」

 

「は?」

 

 

 大きな『何かを弾くような音』が聞こえる。

 それはまるで、俺が洗脳を振り切った時のようで……

 

「え?あ、あれ?……な、直太……くん?」

 

「ひよ里ちゃん!?洗脳が解けたのか!?」

 

「わ、私さっきまで……なんてことを……」

 

 見えた、ハッキリと。ひよ里ちゃんが動揺するのが。

 洗脳が無くなったのだと分かった。

 そして俺の能力もほぼ確実に反射だと理解した、さっきのはひよ里ちゃんの身体に触れたから掛かってる催眠術を反射させたんだ。

 

「ロリコンなんてダメなんだからね!六連くん!」

 

 あっちも解けたらしい、効果抜群なのがシュール過ぎる。

 

 

「良かった……良かったよ……」

 

「わぁっ……な、直太くん……だ、抱き締め……」

 

 でも今はそんなことはどうでもいい、ギュッと抱き締める。

 やっぱり俺にはこの子がいないとダメなんだとハッキリした。

 

「よし直太、後は俺がやるからお前は大房さんを連れて退避してくれ!」

 

「分かった。それじゃ行……」

 

 後はここを離れてゆっくり話そう、それで良いはずだ。

 そう思って手を繋ぐ……と、首筋に不自然な怪我があるのが見えた。

 まさか、こんなことがあったんだからどこかにぶつけたかなんかしたんだろと思うのは簡単だ。

 

 でも……俺の直感がこれを無視するなと言っている。

 

「なあ、ひよ里ちゃん」

 

「ふぇ?は、はいっ」

 

「……もしかしてあの男に吸血された?」

 

「…………ごめんなさい」

 

 目を伏せながら謝る彼女の姿に確信する、やられたんだと。

 だと言うのに俺がこの場からノコノコ逃げて良いのか。

 対処する手段が無いなら分かる、でも俺には少なくともこの男の洗脳くらいなら弾き返せるくらいの反射がある。

 反射なら自分で自分の言葉に洗脳されないのかって言うところはあるけど、そこは難しいから飛ばすとして。

 

 男として譲れないものがあるだろうよ。

 

「佑斗」

 

「…………はぁ。言っても引かないんだろ」

 

「当たり前だ。自分の大切な人が無理矢理吸血されて、首に傷が付いて、怒らない男なんていねえだろ」

 

「ってことらしい。悪いけど布良さん」

 

「仕方ないなぁ。主任には正当防衛だったって伝えておくよ」

 

「悪いな」

 

 2人とも、俺の意志を汲み取ってくれたみたいだ。

 なんてありがてえことなんだろうか、告白の返事もまともに返さず家にも帰らなかった俺みたいなヘタレが今さらなんだって話だけどさ。

 

「ほんとになんなんだお前ら!!クソがッ!!ちょ、ほんと誰か助けっ」

 

「のろーい!!」

 

「ぎゃあ!?」

 

 佑斗がアッパーを入れる、のを見計らってフラフラになった相手を力任せに背負って……

 

「ふんっ!」

 

 叩きつける!!

 

「ぐぼぁ!?こ、こんな結末……ありえ……ない、ガクッ」

 

「ざまぁみろ!他人様の女に手出す方が悪いんだよーだ!バーカバーカ!」

 

「まあ、俺だって大切な仲間を洗脳されて思うところがあったしな。大丈夫だったか布良さん?」

 

「大丈夫だけど六連くんは大丈夫じゃないよね?ロリコンは大丈夫じゃないんだよ?」

 

「いやあのそのそれはですね?」

 

 地面でピクピクしながら泡を吹いて気絶してる男を見て渾身の罵倒を繰り広げる、ちょっとはスッキリした気にもなった。

 

 ってそうだ、ひよ里ちゃんは!?

 

 俺はイチャイチャしてるそこの2人をほっといて駆け寄る。

 

「大丈夫だった?首以外に怪我してない?」

 

「あ……は、ぃ、その……怪我してない、です……」

 

「ほ、ほんと?顔赤いけど……」

 

 無理してないだろうか、気を使ってないだろうか、本当に大丈夫だろうかとオロオロしてしまう。

 もじもじしていたひよ里ちゃんはゆっくりと言葉を続ける。

 

「そっ!それは、そのその……だ……」

「だ?」

 

「抱き締め……られたのと」

 

「ぅびっ!?」

 

 し、しまったそれがあった!

 心配しすぎてさっきやったことを忘れていた、あの時思わず抱き締めたの人生最大の出来事なのに何忘れてんだ俺は!

 

「『他人様の女』……って。そ……れって、つ、つまり……直太……くん、は。わ、私のこと、自分の………………と、言っ……て……」

 

「ぁ」

 

 何やってんだ俺は!

 気が緩んでそんなこと言うなんてぇ!!

 俺はただ、仲直りしてあと数日ちゃんと悩んで答え出そうと思っただけなのに!!

 

 もう答え見つけちゃってるじゃんかよ!!

 

「い……1回!1回場所変えよう!な!?ゆ、佑斗!?後は任せた!!」

 

「おう、お幸せに」

 

「六連くんはこの吸血鬼さん縛ったらこっちに来てね?私とじーっくり、お話しよっか」

 

「ヒィ!?」

 

 とりあえず全速力で帰ろう、ひよ里ちゃんの家に。

 

「わっ……お、お姫様抱っこ……」

 

「と、とにかくさ。色々話さないといけないことばっかだけど、家に帰ってゆっくり話そう」

 

「……ですね」

 

 体裁は、今回は気にしなかった。




倉端直太
能力は『反射』
少なくとも高野豆腐の洗脳程度なら軽く弾き返せるくらいの強度がある反射だと判明した
勢い任せに色々やったせいで自滅、数日の猶予が無くなった
さっさといちゃいちゃに戻れば良いと思うよ
ちなみに定期検診で能力チェックのための吸血があったのをわざわざ言わせたのはここに繋げる必要があったため

大房ひよ里
二度も直太に救われて心も身体もこれまで以上に釘付けにされてる
お姫様抱っこされてる間クラスメイトともすれ違った気がしたけどきっと気のせいだと思ってる

六連佑斗
原作と違ってゲイにはならなかったが代わりに純粋なロリコンになった
どうせ梓ルートなんだからロリコンで良いだろ

布良梓
ロリコンダメ絶対だけど自分がロリ扱いされたのを知ってるので、内心は結構嬉しかったりもしてる
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