倉端直太だって恋がしたい! 作:ひよちゃんLove
「ふぅ……か、帰ってきたぁ……」
「ほ、本当に帰ってきて良かったんでしょうか……その、私の場合証言とか色々ありそうなんですけど……」
「まあそこはほら、佑斗と布良さんが何とかしてくれるでしょ!俺とひよ里ちゃんは一緒に逃げたから後で呼び出すとか言って」
「良いんでしょうか、それで」
「良いって良いって。それよりも今は色々とひよ里ちゃんと話したいことだらけだから」
家に帰ってきたは良いものの、直接の被害者になった……違法吸血されたひよ里ちゃんは多分あっちに残ってないといけないんだろうと思い返したけど今はそんなことより話がしたい。
だからすまん、佑斗、布良さん、何とか枡形さんには良い感じでごまかしといてくれ、俺はここだけは譲れないんだ。
「話したいこと……」
「うん。まずは、その。あの告白されたあとに家に帰ることが出来なくて、ごめん」
ここを逃すと次はいつちゃんと話せるか分からない。
今、勢いで押し切るんだ。
「何を言っても言い訳にしかならないから正直に言う。女の子の告白を受けて、ちゃんと返事を言えない男が同じ家にいちゃいけないと思った。……のもあるけど、半分くらいは顔が見れなかった。返事出来なかった上に嫌われたら死んじまうよ。ワガママな話だけど」
「それは……」
「でもそれって、結局俺だけの話で。ひよ里ちゃんのことは何も考えてなかったんだよな」
俺はそれを分かってて逃げた。
この子のことは何も考えてないことも、自分のワガママだけだってことも分かってて逃げた、だから俺は情けない男なんだよ。
「…………ほんとに、そうです」
ぷくっと頬を膨らませ、涙目になりながらそう答えてくるのが、どれだけ悲しませてたか良く分かる反応だ。
ほんと、胸が痛い……でもこれくらい傷付けてたんだよなあ、俺。ほんとバカ。
「私がどれだけ心配したか、分かりますか?」
「俺が、思ってる以上にはということは」
「いつもいる人がいない、私の告白のせいで思い詰めて何かあったんじゃないかって不安だったんですよ?布良さんから寮にいるって聞いてホッとはしましたけど、それと同時に今度は告白したから嫌われたんじゃないかってずっとずっとずっと……不安で不安で、眠れなかったんです」
「ごめん」
聞いてるこっちも辛くなってくるくらいの言葉だった。
今すぐにでも逃げ出したくなるくらい自分の情けなさを自覚してしまう、でももう逃げる訳にはいかない。
言い訳せずに自分の気持ちをちゃんと言わないと、結局また俺はこの子を傷付けてしまう、逃げられる訳がない。
「でも……助けに来てくれて、ありがとうございます。直太くんがそんなことをするはずないっていうのも忘れてしまうくらい洗脳されていたのに、一瞬で私を助けてくれて。まるで初めて会ったあの日みたいで」
ソファに座る俺の隣に座るひよ里ちゃんがずずいと近付いてきて、俺の肩に身体を預けるように寄せてくる。
温かくて柔らかい、女の子の感触にドキドキしてしまう。
でも……その首筋にチラッと見えた、吸血された時に付けられた傷も一緒に見えてしまう。
「俺がもっと早く来れてたら、その傷も……」
「ううん、直太くんは悪くないです。これくらいならすぐに治ります。だから問題ありません」
「……そっか」
ひよ里ちゃんはただの人間だ。
吸血鬼にはちょっと詳しいけど、それ以外は何も変わらないただの10代の女の子。
だから吸血鬼に銃を向けられて血も吸われて……ってとんでもなく怖かったはずなのに、めちゃくちゃ強い子だよ。
「だから、告白のことも、さっきのことも、負い目を感じなくて良いんです。忘れてください。だから私と一緒にいてください……私はたとえどんな関係になったとしても――」
「それは無理かもッ!」
でも、そんな強い子だからこそその言葉の先は言わせない、というか絶対に言わせたくない。
それを言わせたら男としてこれ以上情けないことが無いってくらいなさけなくなっちまう。
「あっ、え……」
だからちょっとショックを受けたような顔にさせるのを今は、今だけは許してくれ。
ちゃんと俺の本気で答えるから!
「告白の返事、今させてほしい」
「…………それは、私が返事を欲しいと言った、 から?」
「違うね、告白されてから今まででちゃんとした答えが出たから言いたいんだよ。ダメ?」
「告白、したのは私ですから。……どんな返事でも受け入れる心構えはしてます」
「ごめん、ありがとう」
さて心を決めろ倉端直太、今まで女の子大好き彼女募集中とかやってこっち来てからも矢来さん中心に目移りしてたけど、きっとほんとは最初、あの日出会った時から決まってたんだろうなって何となく分かる。
そんだけ、俺はアクアエデンにきてからの生活を大切にしていて、それ以上にこの人を大切に思ってたんだ。
「俺は……」
「俺は、ひよ里ちゃんのことが好きだ、大好きだ。友達とか、親愛とか、多分そういうのもあるけど、それ以上に『女の子として』好きだってちゃんと言える」
「さっきさ、ひよ里ちゃんが捕まってて操られてるって知った時めちゃくちゃ後悔したんだよ。俺の身勝手な行動で1人にさせたからあんなことになってって。それで、俺はこの子の傍にずっといたい、笑顔を見てたい、笑顔にさせたいんだって思った」
「その気持ちがなんなのかってのは、自分の中でもう決まりきってた。こんな気持ちになったのは人生初だし、ビビりで情けない俺でも命を懸けて助けたいって1つも怖気ずに向かっていけた唯一の女の子なんだよ」
「だから、この気持ちは間違いなく恋なんだ。こんな不器用で、情けなくて、ビビりで、顔もそんな良くなくて、冴えない男だけど、その分仕事頑張って、2人の時間だってちゃんと作れるように頑張って、それ以外でも友達との時間とかも作って、ああ1人の時間も作って……えーっとそれから……」
とにかく安心させたい、俺はキミのことが大好きなんだって、泣かなくても良いんだって、そのためならカッコいい言葉なんて言えなくても良いから。
とにかく喋れるだけ喋って、喋って、喋って。
必死に喋った。
「……もう、本当に直太くんは不器用です」
「えっ?」
「でも私のために真剣に考えてくれたのに情けないなんて思わないですし、2回も助けてくれたのに怖がりなんて思いません。顔だって笑顔が良く似合ってて眩しくてカッコいいです、だから冴えないなんてことは無いです。全部が全部、私は好きなんです。 変態なところもちょっとおバカなところも含めて、全部全部大好きなんです」
「なのでそんな自虐しないでください。……ちょっとくらい、彼氏さんの自慢とかもしたいな、なんて考えてるんですからね?」
「ひよ里ちゃん……」
何この子眩しいのはこっちの感想なんだけど。
そんな顔真っ赤で恥じらうように、でもまっすぐな言葉で言われて落ちない男っているの?俺は知らないよ?
とおどけたかったんだけど、あまりにも可愛すぎてちょっとそういうことを言ってる場合じゃなくなってる。
嬉し涙を溜めてこっちを見上げるひよ里ちゃんを見て、もう絶対に不安にさせちゃいけないってバカな俺でも分かる。
この手を絶対に離しちゃいけない、自惚れかもしれないけどこの子にとって俺しかいないんだって伝わってくる。
そんでもって俺からしても、もうひよ里ちゃん以外の女の子じゃ絶対無理だって確信した。
出会ってまだ1ヶ月くらいでここまで居心地が良く感じられて、幸せだと思える女の子なんて、もういないだろ。
「分かった、俺もちょっと自信持つようにする。ひよ里ちゃんの彼氏として……あと未来の夫として?」
「も……もうっ、気が早いですよ……でも、その時はよろしくお願いしますね……?」
「もちろん!だから俺と結婚を前提に付き合ってくださいッ!」
「はい……はいっ喜んでっ」
手と手を取りあい、そのまま2人の顔は近付いて……
とりあえず一言何か言うとしたら、初めての味は、めちゃくちゃ甘かった。
-AnotherView-
「夢じゃ……ないんですよね」
あの後風紀班の人達、主に布良さんと六連くんに呼ばれて取り調べを受けて帰りの車の中、私は首を長くして帰りを待ってるだろう、先に取り調べを終えていた直太くんの待つ家まで向かっていた。
操られていた時、私はまるで悪夢の中にいるような感覚でした。
目の前にいるのは直太くんだと分かっていたのに、まるであの人が悪いことをしたのを何も疑いもせずに。
だけど直太くんが身体に触れた瞬間に全て吹き飛ばしてくれて。
やっぱり私の王子様のようだった。
何よりも、あの後告白の返事も聞けて、こ……恋人になれて。
それが夢じゃないというのが、あまりにも幸せで。
「ほぇ?なんのこと?」
「あ、い、いえっ。ちょっと考え事をしてただけです」
「そっか〜今日は疲れちゃったもんね。家1人で大丈夫そう?」
「……ぁ」
そう、浮かれていたせいで私はミスをした。
車内にいるのは運転してくれている六連くんに布良さんだけだったとはいえ、まだ面と向かって交際報告をするのは恥ずかしすぎる……
せめて電話で話せたら良かったんですけど……これは逃がしてはくれない、ですよね。
「ん?どうかしたのか、大房さん?」
「その……あの後、紆余曲折ありまして。直太くんとお付き合いすることに……なりました……」
「ええ!?ほんと!?」
「まあ、あの雰囲気で2人帰ったらそりゃそうなるよな」
「私その下り見てない……!」
「はい……なので、時間を作ってもらえて本当にありがとうございました」
それに、言うのであればしっかりお礼も言いたいですし。
あそこで即取り調べなんてなったら、きっと今もまだモヤモヤした不安を抱えたままだったのは目に見えている。
お2人は恋のキューピットさんなのかもしれません。
「おめでと〜ひよ里ちゃん!これで気晴らしショッピングはしなくて大丈夫そうだね」
「気晴らしはしなくて良いですけれど、布良さんとのショッピングは楽しみにしているので後日またしてくれたら嬉しいです」
「そ、そう?だったらまた行こ行こっ」
「俺からも、おめでとう大房さん。恋愛の仕方が分からなくて困らせたと思うけど、ほんと良い奴だからさ」
「ふふ、そうですね。良く知ってます」
「なら大丈夫そうだな」
もう私は絶対にこの幸せを手放せないんだろうな、と。
そう確信して家路に着いた。
-AnotherView out-
倉端直太
いざちゃんとした恋愛をするとなるといつもの積極性が無くなっててんやわんやしてちょっとややこしい事になるのが偶に傷
なんやかんやあって恋人になるまで辿り着いたが、依然として
「王子ってガラじゃないだろ〜」
とはずっと思ってる
大房ひよ里
こと恋愛になるとエンジンの入れ方やセーブの仕方が分からなくなって変に積極的になってしまうタイプにした
1ヶ月くらい住んでて相性の良さを確認した上で2度目の救出劇を喰らってしまっては完全にノックアウトされてしまった
ひよ里目線間違いなく王子様に見えている
布良梓
2人の交際を聞いた上でショッピングそのものにも行けそうでウキウキしてる
六連佑斗
お前も恋愛未経験者だろ